先生があなたに伝えたいこと / 【小西 義克】病状だけでなく、生活環境や生活背景まで考慮し、お一人おひとりに適した膝関節の治療を行っています。

先生があなたに伝えたいこと

【小西 義克】病状だけでなく、生活環境や生活背景まで考慮し、お一人おひとりに適した膝関節の治療を行っています。

医療法人 北辰会 西条市民病院 小西 義克 先生

医療法人 北辰会 西条市民病院
こにし よしかつ
小西 義克 先生
専門:膝関節、股関節、リウマチ

小西先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 整形外科の分野でも、今後ますますAI活用が進んでいくと思います。そのため普段から疾患の鑑別や治療法の検討にAIを活用するようにし、時代に取り残されないように頑張っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 船釣りや読書をしています。海の上で風を感じながら魚と向き合う時間は、仕事のことを忘れてリフレッシュできます。また、患者さんに運動を勧めている立場なので、自分自身も筋トレに励んでいます。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

先生からのメッセージ

病状だけでなく、生活環境や生活背景まで考慮し、お一人おひとりに適した膝関節の治療を行っています。

Q. 膝関節の代表的な疾患を教えてください。

A. 代表的なものは、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)のほか、外傷後の膝関節症、骨壊死(こつえし)、関節リウマチなどがあります。なかでも最も患者数が多いのが変形性膝関節症で、特に60代以降の女性に多くみられます。
変形性膝関節症は加齢に伴って、膝関節の軟骨がすり減っていくことで発症します。肥満などで膝への荷重が大きい方や、膝に負担がかかる仕事に従事している方は発症リスクが高く、過去のスポーツ歴などが影響することもあります。

変形性膝関節症の図

骨壊死は、骨への血流が低下し、途絶えることで骨組織が壊死する疾患です。膝に生じる骨壊死は比較的まれですが、60代以降の女性に突然発症することが多いです。また、ステロイドの使用や過度の飲酒が原因になるケースもあります。
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に慢性的な炎症が起き、軟骨や骨が破壊されて関節が変形する自己免疫疾患です。30~50代の女性の罹患率が高く、膝だけでなく手や足など複数の関節に症状が出るのが特徴です。

医療法人 北辰会 西条市民病院 小西 義克 先生Q. 関節リウマチによる膝関節症は、どのような特徴がありますか?

A. 日本人の一般的な変形性膝関節症は、膝が内側に曲がるO脚(内反変形)によって膝の内側の軟骨がすり減っていくケースが多くみられます。一方、リウマチによる膝関節症では、外反膝(がいはんひざ)といって膝が外側に曲がるX脚(外反変形)になりやすく、外側の関節面が傷んでいくことが特徴的です。

Q. 変形性膝関節症の治療法を教えてください。

A. まずは保存治療から始めます。なかでも重要なのが、理学療法を中心とした運動療法です。大腿四頭筋(だいたいしとうきん)など膝関節周囲の筋力を鍛えることで膝関節の安定性を高め、膝にかかる負担の軽減を目指します。さらに、補助的な治療として、ヒアルロン酸などの関節内注射や、消炎鎮痛剤などの薬物療法を組み合わせます。こうした保存治療を十分に行っても症状の改善がみられず、日常生活に支障が続く場合には手術を検討します。

Q. どのような手術がありますか?

A. 半月板(はんげつばん)の損傷などがある場合は、症例によっては関節鏡視下手術を行うことがあります。膝の中にカメラを入れ、関節内を観察しながら変性した組織を切除したり、必要に応じて縫合したりする手術です。滑膜(かつまく)の炎症が強い場合は、滑膜を取り除く滑膜切除術を行う場合もあります。

関節鏡視下手術のイメージ図

膝関節の変形が進行している患者さんには、骨切り術が選択肢の一つになります。これは骨を切って膝の荷重軸を変える手術です。比較的若い方や活動性の高い方に対して、ご自身の膝関節を温存することを目的に行われます。
一方、膝関節を人工物に置き換える人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)という選択肢もあります。人工膝関節の耐用年数は、素材や手術手技の進歩により以前より延びてきているといわれていますが、患者さんの状態や活動量、使用状況によって異なります。使用期間が長ければゆるみが生じてくる可能性もあり、膝を酷使すると人工関節が損傷するリスクもあります。そのため、患者さんの年齢や画像診断による変形の進行度合い、日常生活での活動レベルなどを総合的に鑑みて、治療方針を決定します。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の図

Q. 関節リウマチによる膝関節症の場合は、どの手術になりますか?

A. 関節リウマチの患者さんは、炎症や治療の影響などによって骨質が弱くなりがちなので、膝関節の変形が進行したケースでは人工膝関節置換術となることが多いです。また、外反変形が多いことから、内反変形が多くみられる一般的な変形性膝関節症の手術とは違った手技上の工夫が必要になります。
例えば、外側の軟部組織のバランスを調整したり、骨を切る角度を調整したりするなど、注意すべき点が多くあります。また、人工膝関節の固定においても、骨質が弱くても十分な安定性が得られるよう慎重に行う必要があります。

Q. 人工膝関節置換術の手術手技は進歩していますか?

A. この分野の進歩は目覚ましいものがあります。コンピューター支援による手術計画や骨切り位置の検討を支援する技術が用いられるようになっています。
CT検査の画像をもとに専用のアプリケーションや3Dテンプレートを用いて、患者さん一人ひとりの骨の形状を確認しながら手術計画を立てます。近年は、ロボット技術と組み合わせた手術も行われるようになりました。
また、皮膚の切開をできるだけ小さくし、筋肉や周辺組織へのダメージを抑える小侵襲手術の技術も進んでいます。さらに、術後の疼痛管理や出血対策なども向上し、患者さんの身体的負担の軽減を目指した取り組みも進んでいます。
私が整形外科医になった30年前と比べると、人工関節手術は身近な手術になったといえるでしょう。現在は、施設の体制や症例に応じて、より多様な医療機関で行われるようになっています。

Q. 先生は手術において、どのような点を重視されていますか?

A. 実際の手術で大切にしているのは、患者さんが術後にどのような状態になるかを具体的にイメージすることです。術前に立てた手術計画を一つの設計図として、手術中の実際の膝の状態を確認し、術前計画にフィードバックしながら調整します。
例えば、膝関節の可動域が狭い患者さんの場合は、その方の状態に応じて骨切りの量を調整し、軟部組織の剥離をする際にも、組織の状態を見ながら必要最小限にとどめるなど、お一人おひとりの状態に応じた手術を丁寧に行うことを重視しています。

医療法人 北辰会 西条市民病院 小西 義克 先生Q. 人工関節手術が治療選択肢の一つとして広く行われるようになった現在、今後の課題はありますか?

A. ロボット支援手術など、手術手技のさらなる進歩も大事だとは思いますが、特に私が重要だと考えているのは、術後のリハビリテーションです。膝関節周囲の筋力を鍛えることは、膝の安定性を保ち、日常生活への復帰を目指すうえで重要です。また、人工関節を良好な状態で使い続けるためにも、術後の筋力維持は大切だと考えています。
人工関節の手術を受けられる患者さんは、60~90代までと年齢層が幅広く、ADL(日常生活動作)にも差があり、病態の進行程度もお一人おひとり異なります。そのため、リハビリテーションも一律のメニューではなく、患者さんの状態に合わせてオーダーメイドで考える必要があると思います。患者さんそれぞれの運動能力や生活環境を踏まえ、個々に合ったトレーニング方法をご提案することが今後の課題だと考えています。

Q. では、手術の合併症について、またその対策についても教えてください。

A. 主な合併症としては、感染と出血が挙げられます。感染対策においては、術前から口腔ケアを行っていただき、お口の中の細菌を減らすようにしています。また、手術前日には清拭や入浴を行い、身体を清潔に保っていただきます。糖尿病など、感染リスクの高い患者さんには、骨セメントの中に抗生剤を混入することもあります。ほかにも、術後の栄養状態を管理することも感染予防には非常に重要です。
出血対策においては、手術中の丁寧な操作と徹底した止血を心がけています。必要に応じて止血剤を用い、術前には静脈に、術直後には関節内に投与することで、出血量をできるだけ抑える工夫をしています。

Q. 最後に、治療にあたって先生が心がけていることを教えてください。

A. 手術から退院後の生活への復帰までは、治療だけでなくリハビリや生活環境の調整など多面的なサポートが欠かせません。そのため、医師や看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなどが連携し、チーム全体で患者さんの日常復帰を支える体制を重視しています。
もう一つ大切にしているのが、患者さんの病状だけでなく、生活環境や生活背景まで考慮して治療を行うことです。一人暮らしかご家族と同居しているのか、住まいは一戸建てかマンションか、階段の有無はどうかによって、退院後に必要となる身体機能は変わってきます。そのため、お一人おひとりの生活を具体的にイメージしたうえで目標を設定し、例えば階段の上り下りが必要な方には階段昇降の訓練を重点的に行うなど、リハビリテーションも個々の生活に合わせて調整しています。
手術をすれば治療が終わるわけではなく、退院後にその方らしい生活へ戻るところまでが治療だと考えています。

リモート取材日:2026.7.28

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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