先生があなたに伝えたいこと / 【内藤 正俊】治療法や合併症について、いつも頭の中にあります。最近では、特に骨切り術での負担の軽減や神経ダメージの軽減が少しでもできないかと日々考えています。

先生があなたに伝えたいこと

【内藤 正俊】治療法や合併症について、いつも頭の中にあります。最近では、特に骨切り術での負担の軽減や神経ダメージの軽減が少しでもできないかと日々考えています。

福岡山王病院 院長 (福岡大学名誉教授) 内藤 正俊 先生

福岡山王病院 院長(現 福岡中央病院 院長)(福岡大学名誉教授)
ないとう まさとし
内藤 正俊 先生
専門:股関節

内藤先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
治療法や合併症について、いつも頭の中にあります。最近では、特に骨切り術での負担の軽減や神経ダメージの軽減が少しでもできないかと日々考えています。

2.休日はどう過ごされていますか?
ゴルフが好きで、月に一度コースを回ったり、40年以上も大ファンの歌手がいて、そのライブにあちこち遠征したりしています。

先生からのメッセージ

治療法や合併症について、いつも頭の中にあります。最近では、特に骨切り術での負担の軽減や神経ダメージの軽減が少しでもできないかと日々考えています。

福岡山王病院 院長 (福岡大学名誉教授) 内藤 正俊 先生Q. 股関節はどんな構造か、それぞれの部位や働きを教えてください。

A. 股関節は、大腿骨の先端にある大腿骨頭(だいたいこっとう)と、骨盤側で骨頭の受け皿になる寛骨臼(かんこつきゅう)との組み合わせでできた関節です。ボールの形をした骨頭と深いお椀の形をした寛骨臼は可動域が広く、接合部分が球状をしています。また、肩関節などに比べて負荷がかかりやすく、片足で立った時にかかる負荷は体重の4倍に当たります。これを中殿筋(ちゅうでんきん)などの大きな筋肉が支えて股関節を安定させています。

股関節の構造

Q. 股関節にはどういった疾患があるのでしょうか?

A. 圧倒的に多いのは、軟骨がすり減りることで起こる変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。幼少期に脱臼を起こし、成長する過程で大腿骨頭に寛骨臼がきちんと被らなくなる寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)が原因で発症します。大腿骨頭と寛骨臼の接する面積が狭いと、そこに体重が集中して軟骨がすり減っていき、最終的に骨が変形してしまって痛みを伴います。他にもアルコールの過剰摂取やステロイドが原因で起こる大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)や、足を組み続けるなど決まった姿勢が引き起こす大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)などもあります。

FAIが起こる要因

FAIが起こる要因

FAIが起こる要因

Q. 変形性股関節症はどのような人に多く、発症するとどういった症状が現れるのでしょうか?

A. 壮年期以降の40〜50歳代女性に多く、筋力の弱い人や肥満体型の人も引き起こしやすい疾患です。初期症状では歩行時に感じる股関節の違和感が、その後、徐々に痛みを伴って頻度が増しますが、見た目でわかる腫れなどはありません。そのため、年間300〜500万人が気づかないうちに変形性股関節症を発症しているといわれています。重度になると少し歩くと痛み、休むとまた歩けるという疼痛性歩行(とうつうせいほこう)が起き、和式トイレでかがめなくなるなど日常生活に支障をきたします。これらは大腿骨頭と寛骨臼の間にある軟骨のすり減りが原因ですが、軟骨は血管やリンパ管、神経が通っていないので一度すり減ってしまうと再生することができません。

Q. 変形性股関節症の具体的な治療法について教えてください。

A. まずは起立時や足を曲げた時など、多角度から撮ったレントゲンをもとに診察をします。軽度の場合は痛みを抑え和らげる内服薬を処方し、運動療法を取り入れます。痛いからといって動かさないと筋力が落ちてさらに症状が進行してしまうので、軟骨に少ない負担で筋力をつけるプールでの歩行や自転車で筋肉を鍛えることが重要です。この治療でも改善が見込めない場合や、日常生活に支障をきたすレベルにまで症状が悪化していた場合は、寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)人工股関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)などの外科的な治療法を考慮します。

Q. 手術を行う判断はいつするのでしょうか?

A. 基本的には保存療法を続けていても日常生活に大きな支障がある場合に、手術の検討を始めますが基本的には患者さんの意思を最優先しています。

寛骨臼回転骨切り術Q. 寛骨臼回転骨切り術はどういった手術でしょうか?

A. 寛骨臼の周りを大きく切って回転させ、寛骨臼が大腿骨頭にしっかり被さるようにする股関節の手術です。

Q. 人工股関節置換術はどのような手術なのでしょうか?

A. 寛骨臼と大腿骨頭をともに人工関節に置き換える手術を、人工股関節全置換術(じんこうこかんせつぜんちかんじゅつ)といいます。寛骨臼側にカップ、大腿骨側にステムと呼ばれるパーツを設置します。

人工股関節置換術

Q. 人工股関節そのものは以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 人工股関節には骨に接合させるためにセメントを入れるタイプとセメントレスのタイプの大きく2つ種類があり、素材はステムはチタンが一般的で、大腿骨頭の代わりをするボールはセラミックス、軟骨の代わりをする部分にはすり減りにくいポリエチレンを使用するなど、それぞれの品質は昔と比べて向上しています。手術をする際に使用する器具もより精密になり、耐用年数は大幅に延びていくと思います。特にポリエチレンの性能の進歩は大きく、最近はほとんどすり減らないだけでなく、体内で酸化しにくい素材も開発されています。

Q. 人工股関節手術の方法(手技)も以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 股関節に至る切開方法についてもいろいろな手技が開発されています。それに伴い使いやすい器具も開発され、手術がやりやすくなってきています。切開方法は患者さんのお尻側(後方)からメスを入れる手術が一般的でしたが、反対の前側からメスを入れる「前方アプローチ」と呼ばれる手法が行われるようになりました。この方法では、健康な筋肉を傷つけず、術後の脱臼のリスクも少ない手術ができます。

後方アプローチ

前方アプローチ

福岡山王病院 院長 (福岡大学名誉教授) 内藤 正俊 先生Q. 人工股関節置換術のリハビリについて教えてください。

A. 当院では術前から退院するまで担当医師が理学療法士や薬剤師、看護師と連携して患者さん一人ひとりに寄り添います。リハビリメニューは、年齢や症状を考慮しすべてオーダーメイドで設定しています。通常は、術後2日には起立の練習を始め、歩行器、松葉杖、歩行と段階を踏んで訓練をします。これに、ゴムチューブを使って下肢を広げる中殿筋を鍛える「股関節外転筋力トレーニング」を取り入れて股関節を安定させる筋力を付けます。術前の状態によって術後のリハビリにも個人差が出ますが、ほとんどの患者さんは2〜3週間程度で退院できます。

Q. 人工股関節置換術の手術後の日常生活で気をつけることはありますか?

A. 基本的にはほぼもと通りの生活が送れますが、脱臼には注意が必要です。和式トイレを使うときに120度以上股関節を曲げてしまったり、正座で深くお辞儀をしたりとすると脱臼してしまうことがあります。また、ラグビーやサッカーなどの激しいコンタクトスポーツも脱臼を招く恐れがあるので控えましょう。術後1〜2年は少しでも違和感があればすぐ病院に行くことをおすすめします。

福岡山王病院 院長 (福岡大学名誉教授) 内藤 正俊 先生Q. 最後に先生が医師を志された理由をお聞かせください。

A. 小学校5年生の頃、野球の守備でランナーと接触して左手を骨折しました。その時に整復をしてもらってすごく楽になったことが今でも忘れられません。兄が医学部で整形外科に進んでいたこともあり、私もこの道を志しました。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

内藤 正俊先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.9.11

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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