先生があなたに伝えたいこと / 【横山 徳一】「もし自分の家族だったら」を理念に、患者さんと距離の近いチーム医療を提供していきたい。

先生があなたに伝えたいこと

【横山 徳一】「もし自分の家族だったら」を理念に、患者さんと距離の近いチーム医療を提供していきたい。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック
よこやま のりかず
横山 徳一 先生
専門:人工関節手術(膝関節股関節

※第2回インタビューについてはこちら

※第3回インタビューについてはこちら

横山先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 将来の日本のこと。あまり楽観的な未来がやってくるとはいえないかもしれませんが、その中で、自分の子も含めて子ども達が夢を持てる社会であってほしいと思います。そのために今からどうすべきかを考えることがよくあります。

2.休日には何をして過ごしますか?
 子どもが4人おりまして、一番下の2歳の子を公園に連れて行ったり、じゃれて遊んでいます。本屋さんにはかなり出現していますが、子供のお稽古などの運転手をしてることも多いですかね。子育ての難しさも実感中です(笑)。

先生からのメッセージ

「もし自分の家族だったら」を理念に、患者さんと距離の近いチーム医療を提供していきたい。

Q. まず、人工関節を一つの柱としたクリニックを展開する利点について、どのようにお考えでしょうか。

A. これは人工関節に限らないと思いますが、専門的に治療を行うこということは、小さな所帯であっても少数精鋭のスタッフで治療に当たれるということです。知識、技術を持つ専門のスタッフが、全員で理念を共有し、患者さんが良くなるように努力を行うことができる。スタッフが一丸となって患者さん一人ひとりと向き合い、同じ目標に向かって進んでくことが大きなメリットです。

Q. 理念とは?

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 私たちのクリニックでは「If the patient is your father or mother, what should you do?」という理念を掲げています。もし自分の家族だったらどうするか。これは医療の基本だと思います。実は私がまだ研修医の頃でしたが、自分の子どもが頭蓋骨骨折で入院したことがありました。やはり家族が入院するとなると気が気でない。担当医が部屋の近くを通るだけで「自分の子どもは大丈夫なのか、呼び止めて聞いてみたい」という不安な気持ちにかられるんですね。治療を示唆されても、それがベストなのかどうかさえもわからない、"とりあえず一番いいようにお願いします"という感じです。同じ医者でも専門から外れると、こんなに不安になるものなのかということを、身を持って体験しました。一般の方ならなおさらですよね。家族というのはその人のことだけを考えますので、本当の意味でのベストの治療方針が選べると思うんです。医者目線の医療と患者さん目線の医療は少し違っていることがあります。最新の医療はもちろん素晴らしいですし、医療に対する研究機関は必要なのはまちがいありません。ただ、私たちの立ち位置では、患者さん個々に対して、「本当にこの人にとって、いいこととは何か」を考えられる医療をやりたい。私は常にそう思っていますし、これはうちのクリニックにいるスタッフ全員の気持ちだと思います。

Q. クリニックの役割についてはいかがでしょうか。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 地域に根ざした医療を行うクリニック、ということです。最近ではテレビや雑誌を見られて、非常に遠方の病院で手術を受けられる方がいらっしゃいます。しかし遠方で手術をするとなると、本人にも家族にも負担が大きいですし、ご家族の方がお見舞いにも行けない。何か患者さんが不安になったときにすぐに駆けつけられないということでは問題です。それなら私たちが地域で医療を提供することで、当エリアの人々が少しでも幸せになれるのではないかと。我々が大切に考えていることは、実際の距離的にも、患者さんと医師との間も、「近い距離」で専門的な医療をご提供するということです。もちろん、これがベストというわけではありませんが、その地域に合った医療の形というものを、医療業界全体で考えていかなくてはならない時代ではないでしょうか。

Q. 先生のお話を聞いていますと、地域におけるクリニックの重要性がよくわかります。先生は大病院からクリニックへ移られたわけですが、そのときの思いを教えていただけますか。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 具体的にこちらへ移った理由は大きく2つあり、1つは本当の意味でのチーム医療がしたかったということ。常々、医者だけが医者目線で医療を行っても、医療としては完成しないと思っていました。受付の時点のスタッフから、看護師、理学療法士、放射線技士等々、全員が、患者さんのことを理解して治療に当たることが重要です。そのためにチーム医療が必要なのですが、大病院では時としてスタッフがよく変わり、そのたびに一から教育し直さなければならなくなります。それになかには、「家族だったら...」の思いを同じくすることなく、治療に当たる人もあるかもしれません。また医師自体も、くるくる変わっていきます。そのような不安定な環境のなかでは、治療を行う"輪"が崩れてしまいます。みんなが同じ方向を見ることができる、そんな看護師スタッフと治療に当たりたいと考えていました。 もう1つは、日本では今、医療崩壊が問題視されています。それは医者不足や看護師不足というような、医療資源に限りがあるということがベースにあるかと考えます。しかし、そんな時代だからこそ、バランスをとることにより、地域医療の質を保ったまま医療資源を有効に使えないか、と考えたわけです。たとえば命に直結するような病気や怪我は大病院で治療するほうが、非常に安全で余裕の持った治療が行えます。緊急や命にかかわる治療というものは、人員も数多く必要ですし、包括的に治療を考えたとき要求される設備も並大抵ではありません。それに対して人工関節手術は予定手術ですし、きちんとしたことを行った場合は、比較的安全性の高い手術です。このような違いがある状況下で、予定手術だけで大病院の手術枠を使い切ってしまい、"ベッドが足りない"とか"手術をすぐに行えない"とかいう事態を起こしてしまったらどうなるか。その結果として、命の狭間にいるような方がたらい回しにされることはあってはならない、と思ってきました。限りある医療資源を無駄遣いしないような医療システム全体の一部分として、我々のよう看護師スタイルも一つの形ではないかと考えます。

Q. それでは、チーム医療についてどのようなお考えをお持ちなのか、ぜひ聞かせてください。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 繰り返しになりますが、私は、医師一人で治療ができるとは思っていません。医師もチームの一部なのですね。ただ、誰かが陣頭指揮を執らなければみんなが動けないわけで、その役目を務めるのは医師だと考えています。船での航海でいえば船長がいるから、目的地に向かうことができるわけです。船長である医師が、どの方向に向かって治療をするのか指示しなければ、スタッフが混乱してしまいます。それぞれの現場にそれぞれのスタッフがおり、みんなが同じ方向にオールを漕ぐからこそ、船がそちらへ力強く進むのですから。チームの総合力が、治療する力につながると考えております。

Q. なるほど。チーム医療において医師は船長であると。

A. ええ。でもいくら船長が声をあげても、クルー(船員)が反対の向きに漕いだりしてしまうと、船は前へは進みません。目的地を見据え、そちらの方向に一丸となって進むからこそ、到達すべきところへたどり着くことができます。業種に関わらずチームというのはそういうものだと思いますが、医療は特に気持ちを重ねて治療するということが、患者さんのために何より大事なのではないかと思います。

Q. 目指すチーム医療のために、具体的にはどのようなことを行っているのですか?

A. 知識を共有できるように勉強会やカンファレンス(会議)を全員で開くようにしています。カンファレンスは、医者だけの方針ではなくて全員の方針として各職種が集まって行います。手術はどのように行うか入院生活はどうか、などを考えて話し合います。そして新しい技術や知識が入ってきたときなど、それを医者だけが知っているのではなくて、できるだけスタッフ全員が知って、それを患者さんへ還元できるようにする。こういうことができるのも小さなクリニックならではだと思います。また各部門ごとでは、たとえば看護師と理学療法士という組み合わせなどで、ほぼ毎日患者さんについてのミーティングを行っています。

Q. 次に、人工関節手術に対して、先生はどのように考え、取り組んでおられるのか教えてください。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 人工関節の特殊性ということになると思うのですが、たとえば骨折であるとか盲腸なら、骨がくっついたり盲腸が取れればほぼ治療は終わり、もう病院にいくことはなくなってしまいます。それに対して人工関節というものは一生ものなのですね。患者さんは、何年たってもその人工関節で体を支え、生活をともにすることになる。ですから最初の1年目が良かったからそれでいい、という意識ではいけないと思います。
患者さんと主治医の関係も、ずっと続く。主治医がころころ変わって、「先生が変わってしまったから病院へ行きたくない」というようなことは、あまりよろしくない。一生のおつきあいであることを認識する必要があります。
現在あるほとんどの人工関節は大変精度のよいものが用いられておりますが、0.0何ミリというような、わずかずつですがすり減っていく可能性もあります。機械ですので問題が生じることが全くないとはいい切れない。そのときに、この関節はうまく機能しているのか、傷んでいるのか、やり直しのタイミングではないのかを見極めないといけません。そのような一生のおつきあいが、地域に根差したクリニックだと、やりやすいのではないかなという気もしますね。
実は、私の3番目の子どもが産まれたとき、ちょうど人工関節の執刀中でした。そのときの患者さんがやや遠方の方なのですが、1年に1回きっちりと診察に来られます。その子はもう小学生なのですが、定期診察の際に機嫌よくしておられる患者さんを見て、「あぁ、この関節もうちの子と同じように元気だな」と本当にうれしくなります。この子が成人して、さらに成長する過程とともに、自分の手術した人工関節が長持ちしていってほしいという思いを毎年心に抱きます。

Q. 患者さんのそのような様子を見るのが、先生としては何よりの喜びでしょうね。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. はい。人工関節手術は、患者さんがよくなっていくというのが目に見えるんですね。最初は足が曲がってよたよたしながら杖をついて来られていた方が、手術をして、最初は痛いといいながらも頑張ってリハビリを続け、だんだん杖が要らなくなっていく。退院後は、"お孫さんと遊びに行ったよ"や、"海外旅行にいって、いっぱい歩いたよ"というような話をしてくださるわけです。そういう話を耳にさせていただき、「動けなかった患者さんがこれだけよくなっている」と感じることで私たちスタッフは嬉しくなりますし、よりいっそうハッピーになります。

Q. まるで家族のような...。

A. そうです。人工関節という手術は、人工の機械を道具で叩いて体に入れていくようなイメージかもしれません。オートメーションな作業と思われがちですが、そこは「人対人」の治療ですから、オートマチックに手術していくという考え方はどうも嫌いで(笑)。その人のキャラクターを認識して方針を決め、ケアをすることを大事にしたい。いつもスタッフに話していることですが、人工関節の手術というのは、その患者さんにとって一生に一度、左右であっても2度の手術です。医療者側からしたら、毎週同じ手術かもしれませんが、患者さんからしたら、一世一代の大イベント。その大イベントを、一緒に成功させるパートナーであるべきと思います。

Q. なるほど、人対人としてちゃんと向き合うことが先生の治療の基本なんですね。

A. ずっと忘れたくない大事なことですね。治療に求めるものは、患者さんによって違います。その意味でも、湿布を貼る、注射をする、リハビリをする、サポーターをするなどといった初期の治療から手術まで提供できるようにし、患者さんは自分の希望に応じて選択できるほうがいい。同じレベルのレントゲンが2つあったとしても、この方は手術、この方は注射、と選ぶなどといったことが必要です。その分、患者さんには、よりきちんとした説明が求められるわけですけれども。

Q. きちんとした説明は患者さんに安心感を与えますよね。

A. 患者さんが不安になるのは知識がないことが原因です。患者さんにとって、医者目線で「あなたにはこの治療しかない」と断言されてしまうのは困ると思うんですよね。必要なことはできるだけお話をして、その上で、「このクリニックに任せよう」と思っていただけたら、我々はその気持ちに全力で応える。患者さんを不安にさせるような医療の一人歩きはよくありませんね。難しい文言を書いた用紙を渡すだけではインフォームドコンセントとはいえません。模型や写真を使ったりして、相手がわかりやすいように情報を与えることが肝要です。

Q. そういえば診察室で、電子カルテはクラーク(※)の方が打たれていて、先生は患者さんの目を見て、体を乗り出すように患者さんのお話を聞き、説明をしておられるのが印象的でした。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. それは患者さんとの距離を近くするためです。電子カルテを入力する画面ばかりを注視して、患者さんのほうをろくに見ずに診察、ということでは患者さんを不安にさせてしまいます。それに患者さんと医師とが共感し合えないと思うんです。共感する力が医療従事者には大切であります。クラークをそばに置き外来診療を行うことは、その患者さんと目を合わせてお話しし、共感できる一つの形だと思います。クラークもドクターの考えをよく理解してくれており、患者さんとお話している内容、診察所見を電子カルテに打ちこんでいきますから、私は安心して患者さんとの時間に集中できます。

※クラーク:医師の補佐をする担当事務員。医師の本来の業務である医療行為に専念できるよう、医療行為以外の事務作業をサポートする。

Q. これからのクリニックについてはいかがでしょうか。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. 重複しますが、クリニックが目指すのは、地域に根ざし患者さんといろいろな意味で患者さんとの距離が近い医療です。私たちの立場からしますと、医療現場というところは大変なところもある反面、みなさんから「ありがとう」をいっぱいいただけるところ。だから若い医師、スタッフもやりがいを見出せる、夢のある現場であるべきだと思っています。「このような治療を一緒にやりたい」という人が集まってきて、その思いを地域の患者さんに還元できるようなクリニックにできればなと。実はスタッフを連れていろいろな他施設へ見学に行くんですよ。そこで"いいな"と思うことはどんどん取り入れていきます。異業種から学ぶことも、山ほどあると思います。視点を広く、柔軟な考えで、常に高いところへ向かう。これからも地域の臨床家としての視点を忘れず、皆で医療に従事したいと思っています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

横山 徳一 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2012.5.10

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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