先生があなたに伝えたいこと / 【白土 英明・老沼 和弘】DAAは多くの患者さんにとって福音なのです。

先生があなたに伝えたいこと

【白土 英明・老沼 和弘】DAAは多くの患者さんにとって福音なのです。

船橋整形外科病院 白土 英明 先生

船橋整形外科病院
しらつち ひであき
白土 英明 先生
専門:股関節外科

白土先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 実際には、なかなか休みがとれないのですが・・・。休めたときには歌舞伎や映画鑑賞、美術館へよく行きます。

2.最近気になることは何ですか?
 近頃の混沌とした政治情勢ですね。国政がこれからどうなっていくのか。このインタビューの後には衆議院選挙の結果も出てきますが、これからの日本の政治に強い関心があります。

船橋整形外科病院 老沼 和弘 先生

船橋整形外科病院
おいぬま かずひろ
老沼 和弘 先生
専門:股関節外科

老沼先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 最近、思い切ってゴルフを始めました。ドライバーで何とかまっすぐ飛ぶように、休みの日にはなるべく練習場へ行くようにしています。

2.最近気になることは何ですか?
 ゴルフのボールが何でまっすぐに飛ばないのかと(笑)。あまり練習しますと腰痛と肩こりがひどくなりますので、それも気になり、ほどほどを心がけています。

先生からのメッセージ

最新の手術では筋肉を切ることなく、人工股関節を正確に設置することが可能です。(白土先生)
筋肉を切らない手術方法で、画期的ともいえる早期の回復が見込めるようになりました。(老沼先生)

Q. 最近、最小侵襲手術(MIS:Minimally Invasive Surgery)について良く目にするようになりました。今回は、その最新の手術法について教えていただきたいと思います。まずMISとは、どれくらい前に考えられ、日本ではいつ頃から行われるようになったのでしょうか?

DAAの皮膚切開のライン老沼先生:MISは20世紀末ごろからアメリカで始まり、日本で活発になったのは2003年から。世界的にもその頃がピークといえるでしょう。その頃までは皮膚切開が小さいというのがMISとされて、学会などでいろいろメリットがあるんじゃないかという発表があったのですが、実は切開を小さくしても何も大きくは変わらないという意見も多数出てきて、MISは一時の勢いをなくしました。では、"本当のMISとは?"ということで注目されたのが、皮膚の切開の長さだけではなくて、中にある筋肉を切らずに患部に進入する方法です。筋肉を温存するわけですね。その手術方法が前方進入法(DAA:Direct Anterior Approach)です。当院ではこの手術方法を採用しています。

Q. それでは、その前方進入法(以下、DAA)にテーマを絞りたいと思います。それは具体的にはどのような手術なのでしょうか?

船橋整形外科病院 老沼 和弘 先生、船橋整形外科病院 白土 英明 先生白土先生:筋肉を傷つけることなく、筋肉を分けるだけで人工股関節を正確な位置に設置する、という手術です。後方や側法からの進入では、どうしても筋肉を傷つけてしまうんです。
老沼先生:DAAはフランスの一部で行われていた手術法で、これを見た白土先生が、日本で初めて導入しました。2003年11月でしたね。実際に当院で本格的に始めたのが2004年8月です。

Q. 日本では白土先生、そしてこちらの病院が最初だったのですね。現在、普及率はどれくらいですか?

船橋整形外科病院 白土 英明 先生白土先生:日本では、人工股関節手術全体の20%くらいになりました。当初はうちだけですから、それを思うとすごい伸び率で、特に若い先生方は大変興味を示しています。

Q. DAAの患者さんへの具体的なメリットを、もう少し詳しく教えてください。

船橋整形外科病院 老沼 和弘 先生老沼先生:まず医師側からしますと、筋肉を切ってしまうと、いくらしっかりと縫い合わせてもほつれてしまう不安があり、1週間~2週間でしっかり歩いてくださいということがなかなかいえなかった。縫合不全を起こしてしまいますと、そのまま筋力低下につながりますから。DAAではこの不安がないですし、翌日から歩いていただけ、数日経った頃の歩き方は、筋肉を切る手術の場合と全然違っています。私はこれは画期的な手術だと思いましたし、看護師、理学療法士からも、「まったく別の手術を受けたみたいですね」といわれました。
白土先生:半年後の成績はほぼ同じになるかもしれません。けれどその半年というのは患者さんにとってはすごく貴重な時間だと思うんですね。働き盛りの方や子育てをされているとか、そういう方も多いですから。できれば早く退院して社会復帰したいと思われるのは当然のことです。
老沼先生:目標とする到達点に達するまでの時間のかかり方が、まるっきり違うんです。その意味でもとても必要性の高い手術だと思いますよ。

Q. とすると、入院期間も短くなるのでしょうか?

老沼先生:片側だけの手術で5泊6日、両側の手術で7泊8日。ほかの進入法では両方の股関節を同時に手術しますと、退院まで通常、数ヶ月かかります。
白土先生:この期間内でリハビリも行って、外が歩けて階段の上り下りができるようになって退院、というのが当院での一般的なケースです。

Q. そんなにも早期の退院が可能なんですね。

船橋整形外科病院 白土 英明 先生老沼先生:ええ。特に両方の股関節の場合、DAAですと一度に手術ができますが、ほかの進入法ではこれはなかなか難しいんです。両方の股関節を病んでいると、本当に歩くのがつらいんです。それが一気に良くなるので、退院の時には「これで人生が変わります」といって涙を流して喜んでくださる患者さんもいますよ。
白土先生:筋肉を切るってね、肉離れを想像してみてください。痛くて歩けないですよ。野球選手なら1シーズンがパーになる。そう考えると、早期の退院も納得いただけるのではないでしょうか。

Q. なるほど。それは私達にもわかりやすいです。

老沼先生:そしてもうひとつは、人工股関節の性能が良くなったことも大きいですね。特に初期固定がすごく良くなりました。手術直後から全体重を支えられるくらい。しかも筋肉を切っていませんので、すぐに力が入れられます。

Q. 人工股関節の性能が良くなったということですが、最新の技術の進歩にはどのようなものがあげられますか?

老沼先生:最近では、たとえばAquala(アクアラ)という技術が出てきました。材質がずいぶん良くなっている上に、関節面に水の膜のようなものを作ることで、さらに低摩擦となり、人工関節の耐用年数がかなり伸びると期待されます。この摩擦力が少ないというのは、患者さんが動き始めに感じる違和感も少なくしているはずだと思いますよ。

Q. わかりました、ありがとうございます。ところで退院後のリハビリは必要ですか?

老沼先生:自宅での軽い運動で大丈夫です。退院時にそのためのプリントをお渡しして説明しますし、そんなに難しい運動ではありません。3週間後に検診に来ていただきますけれども、ほとんどの患者さんはそれで十分という結果です。もちろん、患者さんの状態に応じて、必要なら通いのリハビリをしていただきます。

Q. 手術後あるいは退院後の動作の制限などについてはいかがでしょうか?

船橋整形外科病院 老沼 和弘 先生老沼先生:脱臼のリスクがありますので、3週間程度は動作の制限、特に曲げる動作を制限する必要があります。このことについても、退院される折にパンフレットをお渡しして説明します。ただ、DAAでは、もし脱臼するとしたら、かなり早い時期に起こりますし、3週経ったら動作の制限は、ほぼ解除できますね。一方、後方進入法ですと、生涯にわたってというか手術後、かなり時間が経っても脱臼の起こる可能性があるんです。3週以降、自由にやって脱臼する率が1%というのと、制限がある中での1%というのとでは、患者さんの心理面で大きな違いがあると思います。

Q. 日常生活上の支障は、ほぼ1ヶ月でなくなるということでよろしいでしょうか?

白土先生:はい。日常生活もそうですし、様子を見ながらですが、かなりのスポーツもやっていただけると思います。ゴルフや水泳は当たり前ですし、テニスもレクリエーション程度ならOK、スキーをやっている人もいますよ。
老沼先生:患者さんからも「動作の制限はあるのですか?」とよく質問されます。ある程度の時間は仕方がないですが、その時間が経てば制限はほぼなくなりますよ、ということですね。

Q. DAAは多くの患者さんにとって福音なのですね。反面デメリットという面ではいかがですか?合併症のリスクはいかがでしょうか?

船橋整形外科病院 老沼 和弘 先生、船橋整形外科病院 白土 英明 先生白土先生:合併症のリスクもかなり抑えられるでしょう。皮膚を切開してから手術を終えて閉じるまでの時間が少ないですから、特に、合併症の中でもやっかいな感染症のリスクは小さいといえます。
老沼先生:短い手術時間なので、ばい菌の入る可能性の時間帯も短い、という感じでしょうか。
白土先生:それと、デメリットといえるかどうかわかりませんが、まだまだこれから広まっていく手術手技ですので、慣れていないドクターもおられることと思います。患者さんにはそのあたりの情報収集をしっかりしていただいて、実績のあるドクターにかかることをお勧めしたいと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

白土 英明 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

老沼 和弘 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2012.11.27

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

先生の一覧へ戻る

病院検索をする

ページトップへ戻る

先生があなたに伝えたいこと

股関節股関節

膝関節膝関節

肩関節肩関節

肘関節肘関節

足関節足関節

手の外科手の外科

脊椎脊椎

病院検索 あなたの街の病院を検索!

先生があなたに伝えたいこと 動画によるメッセージも配信中!