先生があなたに伝えたいこと / 【中尾 祐介】成人脊柱変形は、医療技術や機器の進歩で、高齢で骨が脆くなった方にも安全に手術できるようになっています。年だからと痛みをあきらめず、専門医にご相談ください。

先生があなたに伝えたいこと

【中尾 祐介】成人脊柱変形は、医療技術や機器の進歩で、高齢で骨が脆くなった方にも安全に手術できるようになっています。年だからと痛みをあきらめず、専門医にご相談ください。

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 中尾 祐介先生

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院
なかお ゆうすけ
中尾 祐介 先生
専門:脊椎脊髄

中尾先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 ようやくコロナも落ち着いてきたようです。私たち医療従事者はさすがにマスク無しという訳にはいきませんが、早く日常生活がマスクなしで過ごせるようになってほしいと思います。

2.休日には何をして過ごしますか?
 体力に自信がないので、日頃の疲れを取ることに専念しています。ポメラニアンとチワワのミックス犬を飼っているので、朝晩散歩させたり、コーヒーを飲んだりして過ごしています。コーヒーは気に入ったポーションタイプのフレーバーを揃え、その日の気分で楽しんでいます。ワインも好きなので、休日は昼からワインも嗜んでいます(笑)。

先生からのメッセージ

成人脊柱変形は、医療技術や機器の進歩で、高齢で骨が脆くなった方にも安全に手術できるようになっています。年だからと痛みをあきらめず、専門医にご相談ください。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 脊椎疾患に悩む多くの患者さんが来院されると思いますが、どのような症状の患者さんが多いでしょうか?

A. 腰痛を訴える患者さんが最も多いです。また重心が前に倒れて腰が曲がり、立っていられない、歩けないという特徴的な症状が見られます。

Q. 何が原因なのでしょうか?

A. 子どもの頃から背骨が左右に曲がる側弯症(そくわんしょう)の兆候がある方が、若い頃はそれほど曲がっていなくても、加齢とともに変形が進み、横に曲がる(側弯:そくわん)だけでなく、前にも曲がる(後弯:こうわん)症状も出てくることがあります。いまは側弯症の兆候がみられた場合、子どものうちに手術をしますが、高齢の方は子どもの頃に診断を受けていないことが多いのです。
ほかには、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で骨折したり、手術で背骨を固定したことで他の骨に負担がかかったりすることが考えられます。老化によって、それまで側弯症でなかった方が、骨粗鬆症をベースにした骨折で背骨の前の部分が潰れ、身体が前に曲がってしまう腰曲がりの状態になることもあります。

側弯症

「腰曲がり」の状態

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 中尾 祐介先生Q. 先生は多くの脊椎疾患の治療経験をお持ちですが、今回は成人脊柱変形についてお聞きしたいと思います。成人脊柱変形とはどのような病気なのでしょうか?

A. 側弯症や後弯症など、成人の背骨の変形を伴う病態の総称です。小児は20度左右に曲がっていれば側弯症と定義されますが、成人の場合、どれだけ曲がっていれば脊柱変形という明確な定義はとくにありません。側弯症は女性が男性の10倍くらい多く発症し、骨粗鬆症も女性に多いため、患者さんは60代後半以降の女性が多いです。
18歳から50歳くらいまでの方は、子どもの頃の側弯症がベースにある人がほとんどです。60~70代になると、骨折や老化現象を伴った変形が増え、背骨の神経の通り道が狭くなる腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)を伴っているケースも多くみられます。

Q. 成人脊柱変形を放置しておくと、どんな影響があるでしょうか? 治療すべき目安はありますか?

A. 腰痛がつらいと日常生活にも支障が出ます。後弯が進めば背中が「く」の字に曲がり、そうなると胃や腸が圧迫され、食事も満足に取れなくなり、逆流性食道炎になる恐れもあります。また、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)を伴えば、脚の神経が圧迫され、脚やお尻の痛み、痺れも起こります。
痛みは患者さんご自身にしかわかりませんから、つらいと感じたら医療機関を受診すべきでしょう。

Q. どのような治療を行うのでしょうか? 日常生活で工夫できることはありますか?

A. 成人脊柱変形は曲がったまま生活していくか、手術で変形を治すかしかありません。
骨粗鬆症を伴っている場合には、内服薬や注射で骨粗鬆症の治療をしながら、腹筋や背筋など体幹を鍛える運動療法を行います。
筋肉がつけば体を起こせるようになり、30分程度歩ける方なら、外出時はカートを使うとさらに長く歩けるようになるでしょう。
一方、5分も立っていられないようなら手術も検討すべきです。
中には、脊柱変形で食欲が落ち、3ヵ月で体重が5~7kgも減ってしまう方がいます。医師としてはそうなる前に、体力があるうちに手術することを勧めます。

Q. 手術はどのようなものになりますか?

A. 背骨にスクリューを入れ、矯正して固定する手術になります。いまは医療機器の進歩で身体に負担の少ない低侵襲(ていしんしゅう)手術が普及し、安全に行えるようになっています。また、スクリューやケージも固定性の良いものが開発され、高齢で骨が弱くても十分な固定が得られるようになり、術後の成績は向上しています。
高齢の方の場合には、症状に応じて、手術を2~3回に分けて負担をかけないように行うことがあります。

Q. 手術のメリットとデメリットについて教えてください。術後はどれくらいで退院できるのでしょうか?

A. 姿勢が良くなり、立って歩ける時間が長くなります。一方、背中を切ることになるわけですから、腰の重だるさが残ることがあります。また、背骨を矯正して腰の動く部分を固定するので、背骨の柔軟性が損なわれ、ものを拾い上げる、足の爪を切るといった動作が難しくなります。

脊椎矯正固定術の例

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 中尾 祐介先生Q. 手術後のリハビリと退院までのスケジュールについて教えてください。

A. 術後のリハビリは足腰の筋肉を鍛えることが中心になります。また術後の新しい姿勢のもとで退院後の日常生活に必要な動作を行う訓練を行います。特に股関節の可動域訓練は重要です。
1回の手術であれば、早い方だと2週間程度で退院できますが、手術を数回に分けて行う場合、退院までに2ヵ月程度かかることがあります。

Q. 成人脊柱変形の手術で、先生が大事にされているポイントは何ですか?

A. なによりも安全に行うことです。対象が高齢の方が多いのですが、大がかりな手術が必要になることが多いため、一度で手術を終わらせることにはこだわらないようにしています。患者さんの体力を考慮して、手術を数回に分けて行います。手術を分けることで1回あたりの手術時間、出血量が少なくなるため患者さんにとって負担が少なくなります。また2回目の手術まで2週程度間隔をあけてリハビリを行うので、その間に患者さんの体力が回復し、良い状態で2回目の手術に挑めます。当科ではこれまでに400人程度の患者さんに手術を複数回に分けて行ってきましたが、それ以前の1回で手術を行っていた時期と比較して、術後の合併症が大きく減少しました。

Q. 実際に手術された方の反応はいかがですか?

A. 立って歩くこともできなかった方が歩けるようになるので、患者さんの満足度は非常に高いです。

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 中尾 祐介先生Q. 脊柱変形で悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。

A. 大がかりな手術になると聞き、高齢の方の中には治療をあきらめてしまう方もいらっしゃるようですが、心臓や内臓に悪いところがなく、この病気を治したいという強い気持ちがあれば、いくつになっても手術はできます。当院では最近、87歳の方の手術を複数回に分けて行ったばかりです。
脊柱変形で痛みに悩んでいらっしゃるようなら、早めに専門医にご相談ください。

Q. 最後に患者様へのメッセージをお願いいたします。

中尾 祐介 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

リモート取材日:2023.4.4

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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