先生があなたに伝えたいこと / 【金子 泰三】膝の痛みに悩んでいた方が日常生活でできることが増え、趣味や生きがいを楽しめるようサポートしていきたいと思っています。

先生があなたに伝えたいこと

【金子 泰三】膝の痛みに悩んでいた方が日常生活でできることが増え、趣味や生きがいを楽しめるようサポートしていきたいと思っています。

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 金子 泰三先生

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
かねこ たいぞう
金子 泰三 先生
専門:膝関節

※股関節についてはこちらをご覧ください。

金子先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 40歳を過ぎると体調管理が大事になってくることを痛感します。まずは食事をしっかり摂り、妻と仲良くして精神面を保つようにしています。妻と一緒に平日夜や週末に皇居周辺をランニングしていますが、最近は走る距離が伸びてきました。

2.休日には何をして過ごしますか?
 『ワインエキスパート』の資格を取ったこともありますが、休日は料理をよくするようになりました。料理中は色んなことを忘れて没頭できますし、調理器具の使い方と手術器具の使い方には通じるものがありますので、やっていて飽きません。ワインにあう料理のレパートリーを増やしていきたいです。

先生からのメッセージ

膝の痛みに悩んでいた方が日常生活でできることが増え、趣味や生きがいを楽しめるようサポートしていきたいと思っています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 膝の痛みにお悩みの方はたくさんいらっしゃいますが、この痛みはどうして起こるのでしょうか? 膝関節の構造についても教えてください。

A. 膝関節は、いわゆる蝶番(ちょうばん)関節といって、大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)、膝のお皿の膝蓋骨(しつがいこつ)から構成される関節になります。半月板や関節軟骨というクッションがあり、歩いたり立ったり、スムーズに膝の曲げ伸ばしができるようになっています。
膝に痛みが起こる原因は色々ありますが、加齢や体重が増えることで半月板や関節軟骨などのクッションがすり減り、骨同士がぶつかりあうようになって変形が進むことで起こります。
階段の昇り降りは膝関節に体重の5~6倍の負荷がかかるとされますから、適性体重を保つことは関節のために大切です。

膝関節の構造

変形性膝関節症

Q. 痛みを起こす病名にはどのようなものがあるのでしょうか?

A. 当院で圧倒的に多いのは、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。女性の患者さんが多いですが、スポーツ歴や外傷歴などさまざまな要素が相まって進行していく疾患と考えられます。東京大学が行った調査によれば、全国で2500万人程度が膝の変形を抱えていることがわかっています。年齢を重ねれば膝関節のクッションはすり減っていきますから、誰もが避けられない疾患といえるでしょう。

Q. 変形性膝関節症の治療法について教えてください。

A. 変形の程度が軽く、痛みが少ない場合には、手術をしない保存加療になります。痛み止めの内服や貼り薬、外用によって痛みを抑え、膝関節周りの筋肉が落ちないようにリハビリをしっかり行っていくことで症状の改善をはかります。杖を使ったり、靴の中に装具(足底板)を入れて重心を整えたり、日常生活を工夫することでも痛みをやわらげることが期待できます。

足底板

水中歩行・筋力をつけるトレーニング

Q. 膝が痛くなると動かすのがつらくなりそうですが、なるべく意識して動かした方がよいのですね?

A. はい。あくまで痛みの範囲内ですが、座った状態で膝を曲げ伸ばしするだけでもよいでしょう。可能であれば、関節に負担をかけずに膝関節周りの筋肉に負荷をかけて鍛えられる水中ウォーキングがお勧めです。こうした保存加療で症状が改善する方もいらっしゃいます。

Q. 保存加療で症状が改善しない場合、どのような治療が考えられますか?

A. 変形の程度によっては保存加療にも限界があります。変形が進行していて、ある程度保存加療を行って症状の改善がみられない方には手術を勧めています。当院を受診される患者さんは、すでに長期にわたって保存加療を行って変形が進行している方が多いので、患者さんの希望を伺いながら手術のタイミングを考えていくことが多いです。

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 金子 泰三先生Q. 手術に至るプロセスについて教えてください。

A. 積極的に手術を受けたいという方は基本的には少なく、皆さん不安を抱えていらっしゃいます。幸い、膝関節の疾患は生命に直結するものではないので、色々と考える時間は確保できます。患者さんが生活の何に困っているのか話を伺い、不安を一緒に共有しながら手術時期を考えていきます。

Q. 手術を行うメリットは何でしょうか?

A. 変形した部分を人工物で置き換える(人工膝関節置換術:じんこうひざかんせつちかんじゅつ)ので、強い痛みを抱えていた方は、痛みがやわらぐことが期待できます。痛みが治まればリハビリがはかどるので、早期の機能回復が可能です。ただ、手術時に出血や感染、下肢静脈血栓症などの合併症が起こる可能性はゼロではありません。

Q. 人工膝関節の手術で、以前に比べて進歩している面があれば教えてください。

A. 私が医師になった当時は太腿の筋肉である大腿四頭筋を大きく切りこむ手術方法が主流でしたが、いまでは大腿四頭筋を切る量が減り、手術後の痛みも軽く、回復も早くなっています。医療機関によって術式はさまざまですが、私自身は低侵襲手術である、大腿四頭筋を切らずに完全に温存するサブバスタスアプローチ(Subvastus Approach)という術式を採用しています。

Q. 「健康長寿医療センター」という名称ですが、やはり高齢の患者さんが多いのでしょうか?

A. 当院は高齢者医療に特化した病院であるため、人工関節手術を受ける患者さんの平均年齢は全国平均よりも高いことが特徴です。年齢が上がるにつれて内臓疾患も増えますし、手術と麻酔自体のリスクもあがります。手術になる場合には、より安全に行えるよう、採血検査や病歴の調査、飲み薬のチェック、歯科口腔内チェックなど、院内の各科と連携して術前検査を徹底しています。
また高齢になり、骨質が悪くなると、手術後に人工膝関節がゆるむなど長期成績に影響する恐れがありますので、手術前には必ず骨質をチェックし、必要があれば骨粗鬆症の治療を行っています。
術後の下肢静脈血栓症の対策として、手術中にターニケット(止血帯)を装着する時間をできるだけ短くすることで血栓が出来るリスクを予防しています。ターニケットは手術を行いやすくするために太腿に巻き付ける血圧計のようなもので、手術中使用する施設が多いのですが、私は術中にセメントを使う10分程度にとどめています。

Q. 手術後のリハビリはどのようなことをするのでしょうか?

A. 手術翌日から理学療法士の指導の下、膝の曲げ伸ばしや歩行訓練を始めます。最初は手押し車や平行棒、杖を使い、慣れてきたら階段の昇り降り、杖なしで歩行、と段階を踏んでいきます。退院後は、日常生活そのものがリハビリになります。

地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 金子 泰三先生Q. 手術を受けた患者さんからはどのような声が届いていますか?

A. 変形性膝関節症で手術になる方は変形が進んでO脚になっていることが多いのですが、手術後は脚がまっすぐになるので、「ズボンが履きやすくなった」と喜ばれる方が多いです。
86歳のゴルフ好きの男性など術後3ヵ月でゴルフに復帰して、飛距離が伸びたとうれしそうに報告してくださいました。手術した後、ホールインワンを2回取ったそうです(笑)。
手術後は、膝周辺の筋力が戻るまで半年程度はかかりますが、痛みが楽になるので、非常に満足度の高い手術と実感しています。膝の痛みに悩んでいた方が日常生活でできることが増え、趣味や生きがいが楽しめるように、これからも人工関節外科医としてサポートしていきたいと思っています。

リモート取材日:2024.4.2

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

先生の一覧へ戻る

病院検索をする

ページトップへ戻る

先生があなたに伝えたいこと

股関節股関節

膝関節膝関節

肩関節肩関節

肘関節肘関節

足関節足関節

手の外科手の外科

脊椎脊椎

病院検索 あなたの街の病院を検索!

先生があなたに伝えたいこと 動画によるメッセージも配信中!