先生があなたに伝えたいこと / 【小林 章郎・原口 圭司】 市民講座を通して伝えたいこと

先生があなたに伝えたいこと

【小林 章郎・原口 圭司】 市民講座を通して伝えたいこと

大阪府立急性期・総合医療センター(現 白庭病院) 小林 章郎 先生

大阪府立急性期・総合医療センター(現 白庭病院)
こばやし あきお
小林 章郎 先生
専門:人工膝関節

小林先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 やっぱり健康のこと。私、今年で50歳になるんですけど、最近、周りの同世代に体調の悪い人が増えていて...。無理をしないで、のんびりやろうと思っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 山登りが趣味。冬にはバックカントリースキー(山スキー)によく行きます。この年末は積雪があまりに多くて、雪の中で溺れそうになりました(笑)。もうあまり危ないことはしないでおこう、とお遊び程度にしています。

大阪府立急性期・総合医療センター(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長) 原口 圭司 先生

大阪府立急性期・総合医療センター
(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長)

はらぐち けいじ
原口 圭司 先生
専門:人工股関節

原口先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 政治のことも気になりますし、自分自身でいえばやはり健康が気になります。体力が落ちてきてるんですよね。長い手術があると、次の日、筋肉痛になることもあります(笑)。それで、体力作りのために自転車(スポーツバイク)を買うことを検討中です。

2.休日には何をして過ごしますか?
 月1回のゴルフと、ブルーベリーの栽培を。引っ越したときに人からもらって植えたのが始まりです。1年目は花がたくさん咲いたのですが、実はあまりなりませんでした。2年目からは調子が悪くなって枯れそうになったんです。どうしてだろう?というのがきっかけでした。あまり知られていませんが、ブルーベリーには品種が200以上あって、気候や土壌の影響を大きく受けるんです。今は育てやすくて大きな実がなる品種を中心に10種類ほど育てています。

先生からのメッセージ

患者さんと医師とは、一歩通行ではなく"双方向"でありたいと思っています。(小林先生)
何が正しいのか、どうすればいいのかを一緒に考えていきましょう。(原口先生)

Q.今回の市民講座(※平成22年2月23日開講)のタイトルに、「実践的講座」という言葉を使われています。その背景には、患者様に対して、関節治療が正しく伝わりにくいのではないかという先生方の思いがあるように感じられますが、いかがでしょうか。

大阪府立急性期・総合医療センター(現 白庭病院) 小林 章郎 先生小林先生:確かにそういった面はありますね。今はさまざまなメディアが発達して、患者さんが直接、多くの情報を得られるようになっています。そのなかには、ドクターが書き、きちんとした裏付けのあるものもあるのですが、コマーシャリズムに流されているようなもの(商売の宣伝)も非常に多いんです。そのすべてを整理するのは難しいですが、市民講座では、一人でも多くの方に、「実際はどうなのか」ということをきちんとお伝えしたいと思っています。単に、「うちは人工関節手術をやってます」というのではなく、もっと広い意味で、総括的に治療についてお知らせして、当院の特長もお話させていただきます。患者さんには納得され、興味を持たれた上で、治療、あるいは病院を選んでいただきたいと考えています。「実践的」という言葉にはそういう意味を込めました。

Q.間違った情報が出回り過ぎている、ということでしょうか。

小林先生:もちろん、そういうものばかりじゃありませんけど、患者さんの獲得のみを目的としたような、目を引くキャッチコピーや言葉遣いが目立つようにも感じます。患者さんは、情報を見極めたり本質を理解することは、当然、難しいですよね。ですから時に混乱し、一喜一憂してしまう。当院では、一昨年にも市民講座を開きました。また人工関節センターとしてホームページを作成し、いいこともそうでないことも、そのままをわかりやすく説明するようにしています。そういう取り組みを見て、来院される方も増えているように思います。

Q.原口先生はいかがですか?患者さんが情報に惑わされていると感じられることはありますか。

大阪府立急性期・総合医療センター(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長) 原口 圭司 先生原口先生:そうですね。最近はインターネットでいろいろな情報を検索できますので、情報が氾濫していて逆に迷ってしまうということが起きているように思います。私たちからすれば疑問と感じるような内容も含まれているのですが、患者さんには何が正しくて何が正しくないのか、といった判断は難しいと思います。遠方だけれども、検索して一番多く登場する病院で手術を受けることにした、ということもよく耳にします。そうではなくて、「何が患者さんにとって一番重要なのか」といことを、こういう市民講座などを通してお話できたらと思っています。新しくて、正しい情報をお伝えするということですね。

Q.情報を多く得られることのメリットについては、どのようにお考えですか?

小林先生:まず、自分の体について知っていただけること。股関節の患者さんは、インターネットを使いこなす年齢の方も多いんです。膝関節ですと、ご自分でというよりは子どもさんや周囲の方が検索して、アドバイスしてということが多いようです。それら情報は手術を受けるかどうかの根拠やきっかけとなりえますし、手術を受けることを決めて受けるまでの間に、病気や手術のことを知り、疑問を持ってもらうのは非常に大事です。間違って覚えていることもあるかもしれませんが、疑問を投げかけてもらい、われわれがそれにきっちりとお答えすることで、より理解を深め、不安を解消してもらうことはとても重要です。

Q.なるほど。知ることで生じた疑問を先生に質問し、自分の体についてより深く知ると...。

大阪府立急性期・総合医療センター 小林 章郎 先生(現 白庭病院) と 原口 圭司 先生(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長)小林先生:ええ。でもそうは言ってもね、これは日本人の特徴かな、と思うんですけど、「先生、任せますから」と。「説明はいらないです」と言う方も多いんですね。こちらが30分、1時間かけて説明をしても、途中から腰が浮いているような方もおられます(笑)。知識の有無にもよりますから、その辺はわれわれも加味して調整はしますが、基本的には自分の体のことを理解するために情報を得るのは有意義なことです。
原口先生:股関節でいえば、みなさんよく勉強され、病気に対する知識が深いな、と感じることがよくあります。ただ、知識はあってもどうすればいいのかわからない、手術をした方がよさそうだ、というのは理屈ではわかっているけど決断できない。そういうとき、誰かに背中を押してもらって決心する、ということも多いんですね。「手術しましょうか」ではなく、場合によっては「手術しないとだめなんですよ」とお伝えしないと、なかなか踏み出せないわけです。
小林先生:インフォームドコンセントの考え方として、あらゆる情報を伝えるということもありますが、そればかりではないんですね。やっぱり最後に、「手術したほうがええよ、ようなりますよ」と言ってあげないと、患者さんの気持ちが定まらないこともありますから。そしてそういうことは、いくらインターネットで検索してもわからないですし、ホームページでは伝えきれません。やはり医師と直接話をしていただきたいと思うんです。

Q.市民講座も、そのよい機会ですよね。ところで、今回、特にサプリメント、運動療法(リハビリ)、軟骨再生療法、人工関節手術について取り上げられるそうですが、この項目を選ばれた理由は?

大阪府立急性期・総合医療センター 小林 章郎 先生(現 白庭病院) と 原口 圭司 先生(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長)小林先生:ひとつには、人工関節を知ってはいても、その前に、「自分の骨で治りませんか?」「薬で軟骨の状態がよくなりませんか?」という質問も多く、関心が高いということがあります。ご存知のように、サプリメントの類はCMでもよく流れていますが、効果のあるものは、残念ながらまだまだ少ない。そういうことで悶々としているよりは、はっきりとした答えを見つけていただくほうがいいと思います。
原口先生:すがるような気持ちでサプリメントを飲まれている方も多いと思います。続けていれば効いてくるかもしれないと思われるかもしれませんが、効果がないときは他の治療を探す必要があります。治療のタイミングを逃すことがないように気をつけてほしいですね。

Q.わかりました。ところで、患者さんによって異なるとは思うのですが、手術をする、しないの境界線はあるのでしょうか。

大阪府立急性期・総合医療センター 小林 章郎 先生(現 白庭病院)小林先生:原則としては、手術をしないに越したことはないわけで、まずは保存治療を徹底します。ただ、当院へ来られたとき、レントゲン所見や臨床スコアなどから明らかに進行期、末期とわかる場合には、無駄に治療を続けることで逆に苦痛を与えることにもなりますので、手術をおすすめします。それでも、今まで一度も治療をしたことがない方には、まず保存治療をおすすめし、3ヶ月を目安に改善の様子がなければ、やはり手術ということになりますね。関節症は波のある病気です。数ヵ月単位でラクになったり、また痛くなったり。手術を告げるタイミングも大事なんですね。

Q.症状が落ち着いているときに言われても、踏み切れないかもしれませんね。

大阪府立急性期・総合医療センター(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長) 原口 圭司 先生原口先生:小林先生も触れられましたが、同じ関節痛でも、急激に悪くなるケース、慢性的にいい悪いを繰り返すケース、時間がたてば痛みが緩和されるケースなどいろいろです。患者さんは、今の状態や今までの経過に関しては理解されることが多いですが、将来のことに関しては実感がわきにくいようです。ですから、今の状態を見て、これからどのような経過をたどることが多いのかを説明します。手術後の生活のこともお話して、一緒に最善の治療法を考えていくわけです。手術のタイミングが後々の生活の質を決めてしまうこともありますので、今回は、どういう状態になったら手術をしないといけないかについてもお話しようと思っています。

Q.講座では、ほかにも、人工関節の最前線についてお話されるそうですが、具体的にどういったものがあげられるのでしょうか。

大阪府立急性期・総合医療センター 小林 章郎 先生(現 白庭病院) と 原口 圭司 先生(現 社会医療法人若弘会 若草第一病院 人工関節センター長)小林先生:最近、外科治療の場でよくMIS(エム・アイ・エス:最小侵襲手術)という言葉が使われます。MISは患者さんの負担が少なく、大変魅力的な言葉なのですが、実際は単に小さく切れば負担が少ないかといえば、そうではないんですね。特に人工関節の場合は、一生長持ちすることが重要ですから、そのために正確な手術が求められますが、MISによって不正確になると、本末転倒なわけです。特に股関節は比較的若い女性の患者さんが多いですから、傷が小さいといわれるMISに反応されますが、それが全てではないということです。アメリカでは最近、ラピットリカバリーといって、簡単に言いますと、傷の小ささばかりを誇示するのではなく、手術前のケアから手術後の薬の使い方やリハビリまでトータルに考えましょう、というのが一般的になっています。また、最新のIT技術を利用したナビゲーション手術にも関心が高まっていますが、当院ではこれらの最新技術を単独で考えるのではなく、総合的にとらえ、最終的に、その患者さんにとって最善のアウトカム(治療成果)を提供するということを考えています。患者さんが手術から1日でも早く回復し、日常生活を送れるようになり、受けた人工関節で一生楽しく過ごせる、それを目指したいという気持ちで、「最前線」と名付けたんです。MIS、ナビゲーションに関心を持っておられる方が多いと思いますし、手術の前に手術をしない治療にも新しいことがいろいろわかってきています。そのあたり、本当のところをちゃんとお伝えしたいです。

Q.ありがとうございます。先生方の市民講座は2回目ですが、講座開講の意義をどのように感じておられますか?

小林先生:多くの患者さんの受け止め方を知ることができる、貴重な機会だと捉えています。本当はリモコンなどを使って双方向で、患者さんと対話するような形をとりながら話を進めるのが面白いと思うのですが、実際には難しいそうで。けれどできるだけ、アンケートの内容を吟味し、質問コーナーの時間を長くするなど、一方通行にならないようにしたいと思います。これは、患者さんと医師が1対1の場合でも同じことがいえますね。

Q.最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

小林 章郎 先生と原口 圭司 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2010.1.21

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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