先生があなたに伝えたいこと / 【中山 政憲】手、肘、肩が痛くて日常生活に困っている方には、人工関節手術も視野に、生活習慣を考慮した長期的なサポートを行います。

先生があなたに伝えたいこと

【中山 政憲】手、肘、肩が痛くて日常生活に困っている方には、人工関節手術も視野に、生活習慣を考慮した長期的なサポートを行います。

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲

国際医療福祉大学医学部整形外科学
国際医療福祉大学市川病院
なかやま まさのり
中山 政憲 先生
専門:手の外科・肘関節・肩関節・リウマチ

中山先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
高齢化が急速に進むなか、日本の医療制度の将来が心配です。医師としては、決められた枠組みの中で患者さんに最大限満足していただける治療を行いたいですが、同時に医療費を上げない工夫もしていかなければならないとも思っています。

2.休日は何をして過ごしますか?
学会や研究会等でつぶれることも多いですが、近所に買い物に出かけたり、外で食事をしたりして、できるだけ家族と過ごすようにしています。

先生からのメッセージ

手、肘、肩が痛くて日常生活に困っている方には、人工関節手術も視野に、生活習慣を考慮した長期的なサポートを行います。

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲Q. 肘関節、肩関節および手の関節の構造と仕組みについて、それぞれ教えてください。

A. 肘関節は「上腕骨(じょうわんこつ)」と「橈骨(とうこつ:親指側の骨)」「尺骨(しゃっこつ:小指側の骨)」と呼ばれる前腕の2本の骨から構成されていて、非常に細かい構造をしています。肘の曲げ伸ばしは上腕骨と尺骨の間にある腕尺(わんしゃく)関節という関節が担い、前腕をひねる(回す)動作は腕橈(わんとう)関節が担っています。肘を治療するにはこの二つの関節への理解が大切です。

肘関節の構造

肩関節には「上腕骨(じょうわんこつ)」「肩甲骨(けんこうこつ)」「鎖骨(さこつ)」の三つの骨があり、上腕骨と肩甲骨で作られる関節を狭い意味で肩関節と呼んでいますが、鎖骨と上腕骨の間には、通称第2肩関節といって、もう一つ動きに関与するスペースがあり、この二つが共同して肩の動きを担っています。
肩の骨の構造は、上腕骨の頭を受け止める肩甲骨の部位がお皿のように平面で、この結果骨と骨がしっかり噛みあっておらず、よく動く一方で非常に不安定な形をしています。そのぶん、周囲の筋肉や、関節包(かんせつほう)という関節の膜、腱板(けんばん)が肩の安定性を担ううえで重要な役目を果たしています。

肩関節の名称、肩の筋肉の名称

 手関節は、肘と共通の「橈骨(とうこつ)」「尺骨(しゃっこつ)」に加え、「手根骨(しゅこんこつ)」という小さい骨が8個あり、さらに指になると、「中手骨(ちゅうしゅこつ)」「基節骨(きせつこつ)」「末節骨(まっせつこつ)」といった細かい骨が組み合わさっていて、骨の連結部分すべてが動く仕組みになっています。手の病気の場合には、どの部分が生きていて、どの部分が破綻しているのか細かく診断する必要があります。

【手関節のイラスト】

手関節のイラスト

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲Q. 手、肘、肩の痛みでお困りの方はたくさんいらっしゃると思いますが、どのような疾患がありますか?

A. 肩で最も多いのは俗に四十肩、五十肩とよばれる肩関節周囲炎、肘では比較的若い方に多いのが上腕骨外側上顆炎、いわゆるテニス肘です。上肢の関節は荷重関節(体重がかかる関節)ではないため、変形する頻度は高くありませんが、近年の高齢化に伴い変形性肘関節症を外来で見る機会も多くなっています。手は母指の付け根の関節(CM関節)や、人差し指から小指のいわゆる第一関節(DIP関節)の変形性関節症や、腱鞘炎、手の末梢神経の障害に伴う痛みやしびれの頻度が高いです。
骨折を含めた外傷も外来で見る機会が多いです。とくに高齢者の方では、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に伴って肘や手に脱臼を伴う粉砕した骨折が多いです。何かの拍子でよろけて手をついたときに衝撃が加わり、骨折してしまうのです。かばうときの手のつき方で骨折の箇所が異なります。患者さんが大したことないと思っていても、レントゲンで調べてみると骨折していたということもあります。 また、手や肘、ときに肩が左右ともに痛く、年齢のせいだと放置していたところ、検査をした結果関節リウマチであったというケースもあります。

Q. リウマチとはどのような病気ですか?

A. はっきりとした原因はわかっていませんが、体内に元々備わった免疫システムに異常が起こり、全身の関節が左右対称性に腫れたり、痛んだりして変形する病気です。全身すべての関節が痛むことが多く、とくに頻度が高いのが手や肘です。本来は比較的若い女性に高頻度で見られる疾患ですが、近年では高齢発症の関節リウマチが増えてきており、私は高齢だからリウマチのはずがないという思い込みは患者さんも、もちろんわれわれも避けなければなりません。高齢発症のリウマチは症状が非典型的なことがあるため、これまでの経験を生かして正確に診断できるよう心がけています。

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲Q. 手・肘・肩の症状によって日常生活ではどのような不自由があるのでしょうか?

A. 肩関節周囲炎などにより肩が痛くて、あるいはかたくて上がらない、肘の痛みにより重いものがもてない、雑巾を絞る動作やペットボトルのふたを開ける動作が痛くてできない、手の変形性関節症により細かい動作ができない、痛いなどの症状が出ます。リウマチの場合は手がこわばったり手指・肘の関節が痛んだりして、人によっては食事をするのも大変になる場合があります。

肩が上がらないイラスト

Q. 手、肘、肩、それぞれの治療法について教えてください。

A. 手の変形性関節症については、症状が発生してからどれくらい経っているかをまず考慮します。比較的日が浅ければ安静、抗炎症剤の投薬、テーピングなどを行います。いわゆる慢性期の症状で、かつレントゲン写真で変形が明らかな場合は装具の作成を検討します。これらの治療をおおよそ3ヶ月から半年行って改善しない場合、手術を検討します。肘の外傷に対しては腕尺関節(わんしゃくかんせつ:上腕骨と尺骨の間の関節)、腕橈関節(わんとうかんせつ:上腕骨と橈骨の間の関節)の状態をよく診察し、保存的な治療が困難な場合は機能を再建するための手術を行います。上腕骨外側上顆炎については安静、投薬、ストレッチなどをまず行い、バンドや装具による固定を検討して、それでも症状が取れない場合は内視鏡を用いた手術を行います。
肩のいわゆる四十肩、五十肩については、やはり症状が発生してからの期間が重要で、2から3週間以内のいわゆる急性期であれば安静と抗炎症剤の投薬をメインとして経過をみます。それ以降の時期で、とくに肩関節の動きが悪い場合は動かす練習(可動域訓練)を指導し、動かすことをメインとして経過をみます。症状が続く場合や、不規則な症状が見られる場合、腱板部の損傷の可能性を考え精査を行うこともあります。
手・肘・肩の骨折に対しては共通ですが、まず手術をしないで治癒が可能かよく診断、検討し、手術が必要な場合は骨折部のずれを治し、整復してからネジや針金、プレートなどを使って骨を固定する観血的整復固定術(かんけつてきせいふくこていじゅつ)を行います。骨粗鬆症が原因の骨折や複雑な骨折の場合でも砕けた骨のかけらをジグゾーパズルのように一つずつ元の位置に戻していき、固定させます。地道で根気がいりますが、大変重要な処置です。
関節リウマチの手・肘・肩の手術は近年の薬物治療の進歩により以前と傾向が変わってきています。すなわち変形が強い場合でも可能な限り関節を温存する手術をまずは検討し、それが困難な場合は人工関節置換術を行います。

Q. 手術方法は進歩しているのでしょうか?

A. たとえば骨折に対する観血的整復固定術で使うプレートの構造はこの10~15年で劇的に進歩し、骨に対する固定度が増したことにより、術後ギプスで固定する日数が大幅に減り、術後の成績が格段によくなりました。上肢の人工関節も少しずつ器械が進歩し、以前よりも長期の耐久性が期待できるようになってきています。

Q. 人工肘関節の手術について教えてください。

A. 人工肘関節置換術(じんこうひじかんせつちかんじゅつ)は、関節リウマチによる高度な肘の変形に適応になりますし、他にはとくに高齢者の肘の骨折で、粉砕がひどく観血的整復固定術を行っても良い成績が期待できない場合に人工肘関節置換術を行う場合もあります。手術では肘関節の痛んだ部分の骨を削って人工物に置き換えて肘関節を再建します。ただ、肘関節は上腕骨、尺骨とも下肢の骨に比べ細く小さく、結果として金属を安定した形で挿入することが比較的難しいため、股関節や膝関節の人工関節と比べ、手術後の長期的な安定性は少々劣ります。

【人工肘関節置換術の例】

人工肘関節置換術の例

Q. 日常生活で酷使することで人工関節がゆるんでしまうということですか?

A. そういう可能性があります。重いものはできるだけ持たないようにしてほしいですが、とくにリウマチの方は下肢も背中も痛めている人が多いので、立ちあがるときに手を付いたり、杖を使ったりしてどうしても肘に負荷がかかってしまいます。年々人工肘関節の器械が進歩し成績は良くなっていますが、それでも構造上、10年から15年程度経つと入れ換えが必要になる可能性が高くなります。

Q. 人工指関節置換術についても教えてください。

A. リウマチなどで関節が変形している場合、人工指関節置換術(じんこうゆびかんせつちかんじゅつ)を行います。痛みが取れ、機能が回復することが期待できます。一方で膝のような大きな関節よりも細かな手術になり、また指は細かい動作を行う場所であることから人工関節の耐用年数は短くなります。手をよく使う人ほど壊れやすく、数年で入れ替えが必要になることもあります。金属やシリコンなど複数の素材があり、金属の方が耐久性は高いものの入れ替えるのが困難であることから、とくに指を酷使する人にはあえて入れ替えを見越してシリコン素材のものを選ぶなど、患者さんの生活習慣も考慮して素材を使い分けます。

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲Q. 入院期間はどれくらいですか? また、手術後のリハビリはどのようなことをするのでしょうか?

A. 一般に手・肘・肩の手術は翌日から歩行でき食事もとれるため、入院期間は短く通常数日から2週間程度です。部位や内容によっては日帰り手術や1泊2日も可能です。リハビリは、単純な骨折であれば手術直後から行いますが、粉砕骨折では一定期間の安静が必要な場合もあり、また患者さんの社会背景を最大限考慮してリハビリのプログラムを考えています。
手や肘の手術後、不安だという理由で何ヶ月も三角巾で固定して外来に来る方もたまにいらっしゃいますが、むくみがひどくなり手指が固くなる拘縮(こうしゅく)の状態になりやすいので、私は必要以上に三角巾を使わないように指導しています。手術がうまくいっても関節が拘縮してしまっては意味がありませんので、リハビリ療法士と協力して可能な限り早いタイミングから動かす練習や筋肉をつける練習を始めます。

Q. 手術によって劇的に回復した例を教えていただけますか?

A. 長年関節リウマチで手指の変形が強く手を隠すようにしていた女性が、人工指関節置換術で指がまっすぐになって機能も改善され、マニキュアなどのおしゃれを楽しむようになったり、人工肘関節置換術を行い職人やピア二ストの方が仕事に復帰できるようになったりしています。

マニキュアのイラスト

Q. 人工関節手術のデメリットはありますか?

A. 関節を人工関節に置き換えると、壊れたりゆるんでしまったりしたときに再手術が必要となります。まれですが転倒などにより人工関節周囲の骨折を起こした場合、治療が難しいケースもあります。また、術後感染の合併症のリスクもありますが、手や肘は一般に血流がよいため、下肢の関節に比べて感染の心配は少なくてすみます。

国際医療福祉大学市川病院 中山 政憲Q. 先生が診療で心がけていらっしゃることは何ですか?

A. 一人ひとりの患者さんの生活習慣や症状を考慮して治療を選択します。手術の場合は患者さんの社会背景や手術後のリハビリまで考慮した上で術前計画を綿密に立て、実際の手術の際は短時間に確実に手術を行うよう心がけています。たとえば手指の人工関節を複数行う必要がある場合、一気にすべてを人工関節にしたほうがよい場合もあれば、術後リハビリのやりやすさを考え複数回に分けて行った方がよい場合もあります。
上肢は、野球のピッチャーでたとえるとわかりやすいかと思いますが、肩、肘、手のすべてが連携していないとスムーズに動かすことができません。手が痛むという患者さんに対しても、肘、肩も診て、どこまで治せば不自由なく過ごせるようになるかを考えて診察にあたっています。関節リウマチのような全身疾患に対しては、適宜内科医と連携しながら投薬も自分で行い経過をみていき、適切なタイミングで必要な手術を行えるように心がけています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

中山 政憲 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.7.4

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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