先生があなたに伝えたいこと / 【丸山 善弘】人工膝関節と上手につき合えば、趣味など生活を楽しむことは十分に可能です。

先生があなたに伝えたいこと

【丸山 善弘】人工膝関節と上手につき合えば、趣味など生活を楽しむことは十分に可能です。

大久保病院 丸山 善弘 先生

大久保病院
まるやま よしひろ
丸山 善弘 先生
専門:人工膝関節人工股関節

丸山先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 近頃の政治情勢ですね。政局と健康保険制度は密接に関係していますから、患者さんの負担のことを思えば、やはりすごく気になります。

2.休日には何をして過ごしますか?
 食べることが大好きなので、食べ歩きを。神戸はもちろん大阪も京都もおいしいものが多くて幸せです(笑)。

先生からのメッセージ

人工膝関節と上手につき合えば、趣味など生活を楽しむことは十分に可能です。

Q. 今回は、人工膝(ひざ)関節置換術について、患者さんの素朴な質問に答えていただきたいと思います。実は、「半年ほど前から膝が痛く趣味の社交ダンスができなくなり、最近は痛みで夜も眠れない」というご相談をいただいています。

A. なるほど、それはお辛いですね。膝の痛みの場合、まず、軟骨や半月板の損傷が考えられます。ご相談者は半年も我慢されたようですが、本来は膝に違和感を覚えたら早めに受診していただくことをお奨めします。早期ですと治療の選択肢を広げることもできます。

Q. 患者さんのお友だちの中に人工膝関節を入れた方がおられ、その方から手術をすすめられているそうです。

A. そうですか。今では人工関節置換術は一般的な手術として認知されており、満足度も非常に高いですからね。ですが、選択肢と申しましたように、すべての患者さんに手術が必要ということではないんです。

Q. 手術以外で、どのような治療方法があるのですか?

大久保病院 丸山 善弘 先生A. たとえば変形性膝関節症ですが、これは、膝関節においてクッションの役割をしている軟骨が磨り減ることで、骨と骨との隙間が狭くなり、摩擦が起こって痛みが生じます。この場合、レントゲン写真や他の診察所見を総合し、その状態があまり進行していないときには、飲み薬、貼り薬など、患者さんの希望に沿いながら、患者さんにとって身体への負担の少ないものから取り組んでいきます。それでも、痛みが引かない場合は、ヒアルロン酸の注射を行います。ただレントゲン写真でも変形が進行していたり、痛みがコントロールできない場合、人工膝関節置換術がひとつの大変有効な手段になります。

Q. 人工膝関節置換術は、実際にはどれくらいの症例があるのでしょうか。

A. 日本では、2010年で年間7万の症例があり、ここ10年ほどで倍以上になっています。特に変形性膝関節症は老化も大きな原因ですので、高齢化とともに確実に増えてきました。また、人工関節の耐用年数が飛躍的に延び、比較的若い方でも手術を受けていただきやすくなったこと、手術テクニックの確立などが増加の理由として挙げられます。

Q. 現在、人工膝関節の耐用年数はどれくらいなのですか?

A. 20年以上は保つと言われています。人工膝関節のインサートが改良されたことが、耐用年数の伸びにつながっているんです。

Q. インサートとは?

A. 関節面の働きをする部分のことです。人工膝関節は金属やセラミックスでできた大腿骨と脛骨のコンポーネント、そして、その間の関節面はポリエチレン製のインサートで構成されています。私は患者さんにインサートについて「10年使っても1mm磨り減るかどうか」だと説明しています。手術の際は、私の場合、骨を何mmずつ切ればどれくらいの厚さのインサートが入れられるか、誤差も考えながら術前計画を立てます。インサートイラスト

Q. なるほど。では、人工膝関節置換術について、もう少し具体的に教えてください。

大久保病院 丸山 善弘 先生A. 傷んでいる膝の軟骨を切って取り除き、その部分を人工関節と置き換える手術です。簡単に説明しますと、膝の前面の皮膚を12~13cm切開し、お皿の内側から関節を開きます。膝の場合、後ろに大事な神経や血管が集まっていますので、それらを傷つけないように保護する道具を使いながら骨切りを行い、人工関節を装着します。

Q. 合併症についてはいかがでしょうか。

A. 何ごとにも100%ということはありませんから、ごく低い確率ですが、合併症のリスクはないことはありません。細菌の感染は、0.5%~2%と報告されています。それから何千人に一人と、ごく稀に足にできた血栓(血のかたまり)が肺に飛ぶということもあります。しかしながら、手術後もなんとなくすっきりしないという方を含めても、私の感触では95%以上は良くなっておられます。

Q. 成績は極めてよいのですね。

大久保病院 丸山 善弘 先生A. ええ。私も多くの患者さんを通してそのことを実感しています。そして何より、手術をすれば痛みはずいぶん緩和されます。とはいえ手術は、強制するものではありませんし、かなり高齢の方ですとそのまま保存的治療で良いということもあります。けれども、一般的にQOL(生活の質)のことを思えば、できれば手術を受けていただきたいですから、患者さんへはリスクも含めて誠心誠意、説明するようにしています。

Q. 今回のご相談者のように、身近に手術経験者がおられたら、その生の声を聞くのも後押しになりそうですね。

A. その通りですね。お話を聞くとか、以前は痛がって歩けなかった人が普通に歩いているとか、そういうことを通して、「私も!」と思っていただける例は多いです。
インターネットも発達していますし、ご自分なりに情報集めもやっていただけたらと思います。

Q. ところで最近、MIS(Minimally Invasive Surgery)という言葉をよく聞きますが、どのようなものなのでしょうか?

大久保病院 丸山 善弘 先生A. 最小侵襲手術の略語です。皮膚切開をできるだけ小さくするというやり方なのですが、私は患者さんの体格などに応じて11cm~15cm切開します。できるだけ小さくしようと努力していますが、いわゆるMISを積極的に採用しようとは考えていません。なぜならば、特に膝の場合ですと、傷を小さくすることで手術操作がしづらくなる場合があるんです。それに、術後の痛みをコントロールするということであれば、硬膜外麻酔だったり関節内のカクテル注射(※)などで十分に対処できます。また手術直後からの早期の筋力回復は、確かにMISが優れていますが、半年ほどが経ちますと、筋力や可動域に差がないことがわかっています。術後すぐの筋力が大事なのではなく、今後の日常生活における快適さが大事なのですから、私個人としては、MISにこだわるということはありません。

※カクテル注射:早期の痛みをコントロールする注射

Q. 大変よくわかりました。ところでリハビリ期間を含めて、どれくらいで退院できるのでしょうか。

A. 3週間~4週間、目安としては1本杖歩行が安定すると退院ですね。最近では、早期退院で、リハビリは通院してということも多いようですが、患者さんにとってリハビリに通うのが負担になるケースもありますから、当院では、入院中にしっかりリハビリしていただきたいと思っています。ご希望により日常生活動作の指導も行っています。

Q. ほかに、リハビリにおいて大切にされていることはありますか?

A. 本格的なリハビリは当院の場合、手術の翌々日から始まりますが、"理学療法士のいるリハビリの時間だけがリハビリではない"ということでしょうか。1日の中でその時間は限られていますから、それ以外の自主的なリハビリをサポートすることが大事。たとえば大腿四頭筋に力を入れる運動だとか、膝の曲げ伸ばしなどですね。

Q. ご相談者が手術を受けられた場合、社交ダンスを再開することはできますか?

大久保病院 丸山 善弘 先生A. 激しい動きを避け、膝に負担のかからない程度になら可能でしょう。「これは絶対やめてください」ということははっきり申しますが、それ以外のことなら、趣味というのは患者さんの生きがいや日々の充実につながりますし、せっかく手術をして痛みも緩和されたのだから、可能なことはチャレンジしていただければと思います。負担の少ない運動、たとえばゲートボール、グランドゴルフなどはやっておられる方も多いですし、水泳は問題ありません。ご自身で膝と相談し、工夫しながら楽しんでいただけたらと思います。

Q. ありがとうございました。最後に定期検診の大切さについてお聞かせください。

大久保病院 丸山 善弘 先生A. 当院では、最初の1年間は3ヵ月に1回、その後も年に2回来ていただけたらと思っています。十数年経って膝の不具合が起こることも皆無ではありませんし、定期的に生活ぶりもお聞きし、アドバイスさせていただくこともできますから。
人工関節置換術というのは、病気や怪我の場合と少し違い、患者さんの痛みに対して医師が判断し、患者さんに納得していただいて行うものです。だからこそ、患者さんの膝とは一生のお付き合い。そういう気持ちがとても大切だと考えています。こちらから「もう来なくていいですよ」とは言ったことがありませんし、これからも言うつもりはありません。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

丸山 善弘 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2012.9.11

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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