先生があなたに伝えたいこと / 【森脇 崇】変形性脊椎症は、症状が強く出ているからといって、必ずしも⼿術を急ぐ必要はありません。⼿術はあくまでも選択肢の⼀つで、経過を観ながら、症状と画像上の病変が解剖学的に⼀致したうえでご提案しています。

先生があなたに伝えたいこと

【森脇 崇】変形性脊椎症は、症状が強く出ているからといって、必ずしも⼿術を急ぐ必要はありません。⼿術はあくまでも選択肢の⼀つで、経過を観ながら、症状と画像上の病変が解剖学的に⼀致したうえでご提案しています。

社会医療法人若弘会 若草第一病院 森脇 崇 先生

社会医療法人若弘会 若草第一病院
もりわき たかし
森脇 崇 先生
専門:脊椎脊髄

森脇先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 オンラインで活躍するユーチューバー(YouTuber)を目にする機会が増え、脳活動を利用して仮想空間で活動するブレイン・マシン・インターフェースに興味が湧いています。寝たきりの方もオンラインで活躍できる未来の世界にワクワクしています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 基本的には家族と自宅でゆったりと過ごして、心と頭をリセットしています。子どもを近所の公園へ連れて行くことも多く、次の世代の子どもたちがどんなことに興味を持っているのか見守っています。

先生からのメッセージ

変形性脊椎症は、症状が強く出ているからといって、必ずしも⼿術を急ぐ必要はありません。⼿術はあくまでも選択肢の⼀つで、経過を観ながら、症状と画像上の病変が解剖学的に⼀致したうえでご提案しています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 加齢とともに起こる変形性脊椎症(へんけいせいせきついしょう)について教えてください。

A. 変形性脊椎症による痛みには、2通りあります。一つは、脊椎を支える靭帯や関節、椎間板(ついかんばん)の加齢的変化で椎体骨(ついたいこつ)の並び方や骨そのものが変形して脊椎の中の脊柱管(せきちゅうかん)という中枢神経が圧迫され、痛みが生じる場合、もう一つは、靱帯や骨の変形の結果、脊椎に不安定な部分が生じて身体を動かすとその神経にあたり、痛みを感じる場合です。
それが首であれば変形性の頚椎症(けいついしょう)、腰なら変形性の腰椎症(ようついしょう)と呼ばれています。ほかの関節と違って脊椎の変形は、中に脊髄が通っているため神経を刺激する痛みが生じるのが特徴的です。

Q. 具体的にどのようになって痛みが出るのですか?

A. 椎骨と椎骨の間には、脊椎の支えであると同時に柔軟な動きをもたらす椎間板(ついかんばん)があり、これがすり減って変形することで椎骨と椎骨が直接ぶつかり合って痛みを感じます。骨がいびつになって動きが不安定になるのを止めようとして骨棘(こつきょく)という骨の棘ができてしまい、それが神経を圧迫する場合もあります。
このほか、骨同士のぶつかりではなく、背骨の動きに伴って脊髄が圧迫されることで痛みが出るケースもあり、痛みの要因には違いがあります。

正常な頚椎の断面図 頚椎症の頚椎の断面図

Q. どのような方が変形性脊椎症になりやすいのですか?

A. 基本的には加齢によりますが、日常生活背景も影響します。例えば、激しい身体のぶつかり合いを繰り返すスポーツ選手などは、30~40代でも脊椎の変形が見られます。また、無理のある姿勢で長時間作業を続ける職人の方などにも多いです。腰や首に日常的に負荷がかかると、変形性脊椎症にかかりやすくなります。あとは比較的稀ではありますが、糖尿病などの代謝異常が関わる場合もあります。

社会医療法人若弘会 若草第一病院 森脇 崇 先生Q. 痛み以外に、どのような症状がありますか?

A. 頚椎の場合は、箸がうまく使えない、指が思うように曲げられないなど、細かい手の動きがスムーズにできなくなります。さらに進行すると、中枢神経は身体の上部から下部を支配するため、足まで症状があらわれて歩きにくくなる場合もあります。腰椎は手に症状は出ませんが、途中で何度も休憩しないと歩けない間欠性跛行(かんけつせいはこう)が多くみられます。
また高齢者に多いのが、腰曲がりなどの変形、さらに骨粗しょう症などによって圧迫骨折を起こし、偽関節(ぎかんせつ:骨の癒合が不完全で、関節のように動いてしまう状態)になって痛み、動けなくなることもあります。
いずれにおいても、症状が強く出る時期と落ち着く時期が波のようにあることが一般的で、短期間でどんどん悪化していくものではありません。

Q. 診断方法を教えてください。

A. 骨の変形が起因するものは、レントゲンやCT、MRIなどで検査し、動きによって神経を圧迫しているものは、脊髄造影という検査を行います。脊髄に造影剤という薬液を入れて神経の通り道が一時的に見えるようにし、前屈や後屈の動きをしてレントゲンを撮影します。症状と画像上の疑わしい箇所が解剖学的に一致しているかどうかが、診断のうえで最も重要なポイントになります。

Q. 治療はどのような内容になりますか?

A. 痛み止めなどの薬物療法、身体の使い方や姿勢を正す理学療法、コルセットなどの装具療法など、保存的治療が基本になります。変形から生じる疾患は、一定期間を経ると症状が落ち着くこともありますので、待つことも大切です。手術はあくまでも選択肢の一つで、信号でいえば黄色から赤のレベルになってから考えていただければよいかと思います。

社会医療法人若弘会 若草第一病院 森脇 崇 先生Q. 手術を提案される目安を教えてください。

A. 保存的治療を続けても悪化していく、あるいは歩けないという場合は、検査で病変と疑われる画像と症状が一致すれば手術をご提案しています。ほかの要因で首や腰に痛みが出ている可能性もあるので、間違いなく一致していることが重要です。また、患者さんの年齢や生活スタイルによって求めるものに違いがあるので、それに応じて手術をするかどうかを検討していただきます。基本的には、排便排尿障害や脊髄症状になっている、あるいはなりかけている場合以外は、必ずしも手術を急ぐ必要はありません。

Q. 手術になった場合は、どのような手術になるのですか?

A. 大きく分けて、除圧術、固定術、除圧+固定術の3パターンがあります。骨が比較的安定している場合は、神経を圧迫している組織を取り除いてより良い環境にする除圧術、骨の変形や異常な動きを制御しなければ神経の圧迫や異常な骨の並びが解除できない場合は、人工の椎間板や椎骨などに入れ替え、スクリューを使って固定する固定術、さらにこれらの除圧と固定を両方行うケースがあります。
最初に切開する方法、すなわち進入方法は、前からと後ろからのアプローチがあり、それぞれに利点があって医師によって考え方はさまざまです。私はどちらかに偏ることなく、両方の視点で検討しています。例えば首の前に病変があれば前側から切開して進入するというように、症状と検査結果を踏まえて病変に直接、かつ安全にアプローチできる方法を選択しています。

除圧術の例 腰椎の断面図(上方から)

固定術の例

Q. これらの手術は、身体に大きな負担がかかりますか?

A. 数年前までの固定術は、大きく切開して直接患部を見ながら行っていました。しかし最近は、最小限の創で複数のスクリューを入れ、顕微鏡やモニタリング、ナビゲーションシステムなどを活用して立体的に把握しながら、スクリューをつなぐ経皮的固定術を行うのがスタンダードになっています。筋肉の損傷や骨を削る量が減るため、身体への負担が大幅に減ります。

椎体置換術(⼈⼯の椎間板や椎骨などに⼊れ替え、スクリューを使って固定する)

また、胸腰椎については、以前までは身体の後ろ側から進入する手術法が一般的でしたが、2014年頃からお腹と背中の間から椎間板に達するLLIF(側方椎体間固定術)が取り入れられています。前方と後方の2方向から手術することで従来よりも出血が抑えられ、身体にかかる負担が少なくなっています。

LLIF(側方椎体間固定術)

Q. 術後はどのようなことに気をつければよいですか?

A. 変形や不安定な状態を矯正して固定しているため、術後は身体の状態が変わっています。後ろから背骨を支えているスクリューは身体の動きに沿うわけではありませんから、器具で固定された状態での身体の使い方を習得しなければなりません。
万一、固定箇所の周辺で長期間にわたって強く曲がり過ぎてしまうと、5~10年先に脊椎に支障をきたす場合もあります。そのため、当院では数カ月から半年に1回程度、器具が患者さんの身体の一部になっているか、身体の使い方に問題がないか、長期的に確認しています。

Q. 術後のリハビリについても教えてください。

当院にはリハビリ専門病院があるため、術後に回復してから、身体に負担をかけない歩き方や姿勢、低下した筋力を高めるためのリハビリを行います。さらに、首や腰などにかかる負担を分散するため、股関節や膝関節の可動域を広げていきます。

社会医療法人若弘会 若草第一病院 森脇 崇 先生Q. よくわかりました。先生は脳神経外科医でいらっしゃいますが、脳神経外科と整形外科の関わりを教えてください。

A. 脳神経外科では、脊髄腫瘍や脊髄損傷などの脊髄の治療において、背骨の変形や外傷にも直面するため、脊椎を固定する手術なども行います。一方、整形外科では骨折や背骨の変形などの治療から、脊椎の神経を圧迫している場合は神経も診ます。要は、我々は神経という内側の診療から始まって、骨という外側に至りますが、整形外科では、そのプロセスが逆向きなのだというふうに思ってもらったらよいです。そして、それぞれの専門分野が重なり合う領域が脊椎脊髄だといえます。
この領域はとても広いため、整形外科専門医になってから脊椎脊髄専門医になる医師と、脳神経外科専門医になってから脊椎脊髄専門医になる医師がおられます。最近では専門性が高まり、東京、名古屋などの都市部では脊椎脊髄外科を掲げる病院が増えています。やはり脊椎脊髄の手術においては、普段からそれに関わっている脊椎脊髄専門医の方が脊椎脊髄の手術の経験が豊富であるので、幅広く患者さんを診られる地域の病院から専門医につないでいただくのが重要だと思います。

Q. 先生はなぜ、脳神経外科医を志されたのですか?

A. 高校3年生のときに両親が病院でお世話になったことから医療に興味が湧き、医学部に進みました。脳神経外科を専攻し、大学院では尊敬する先生が脊髄を専門とされていた影響で、脊髄損傷における神経再生をテーマに研究し、脊椎脊髄を専門とする脳神経外科医になりました。
日本脊椎・脊髄手術手技学会という、脊椎脊髄分野において、わが国を代表する学会があり、多くの脊椎・脊髄を専門とする脳神経外科医、整形外科医が参加します。その代表を務めておられる先生は、脳神経外科、整形外科は、それぞれの科の得意分野を活かして、新しい核となる脊椎脊髄の医療をより発展させることが大切だと述べられています。私はこれにシンパシー(共感)を感じ、今も勉強し続けています。

社会医療法人若弘会 若草第一病院 森脇 崇 先生Q. ありがとうございます。では最後に、先生が治療において心がけておられることを教えてください。

A. 変形性脊椎症は、症状が一番辛いときに手術を決める必要はありません。なるべく手術をせずに、症状が緩和できればそれがベストです。手術を急がなければならないケースを見きわめ、たとえ手術をする場合であっても手術をして終わりではなく、リハビリ治療やその後の生活スタイルも含めて患者さんと一緒に考えるよう心がけています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

森脇 崇 先生からのメッセージ

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リモート取材日:2020.12.1

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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