先生があなたに伝えたいこと / 【今井 浩】股関節の痛みに悩む患者さん一人ひとりに寄り添いながら、体に負担の少ない低侵襲手術で痛みをとることで、患者さんの生活の質を高めることを目指しています。

先生があなたに伝えたいこと

【今井 浩】股関節の痛みに悩む患者さん一人ひとりに寄り添いながら、体に負担の少ない低侵襲手術で痛みをとることで、患者さんの生活の質を高めることを目指しています。

愛媛大学医学部附属病院(現 いまいリウマチ・リハビリテーションクリニック) 今井 浩 先生

愛媛大学医学部附属病院(現 いまいリウマチ・リハビリテーションクリニック)
いまい ひろし
今井 浩 先生
専門:股関節

今井先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 家庭菜園でトマトやきゅうりを植えています。ほかには夏はロードバイク、冬はスキーを楽しんでいます。

2.最近気になることは何ですか?
 下の子が動物好きで、受験を控えた長男の癒しにもなればと秋田犬を飼い始めました。まだ5ヵ月と小さいですが、すごく頭がよくてかわいいんです。散歩をしながら子どもたちと色々話をするのが楽しみです。

先生からのメッセージ

股関節の痛みに悩む患者さん一人ひとりに寄り添いながら、体に負担の少ない低侵襲手術で痛みをとることで、患者さんの生活の質を高めることを目指しています。

Q. まず、股関節はどんな構造になっているのでしょうか?それぞれの部位や働きを簡単に教えてください。

A. 股関節は人体最大の関節で、大腿骨(だいたいこつ)の先端にあるボールの形をした骨頭が、骨盤側で受け皿となるお椀の形をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込む構造になっている「球関節(きゅうかんせつ)」です。球関節周辺には関節包(かんせつほう)や靭帯などがあり、股関節の機能をサポートしています。股関節は人体最大の関節ゆえに、ひとたび機能が失われて痛みが起こると、日常生活にも制限が出てしまいます。

股関節の構造

Q. 股関節の疾患について教えてください。

A. 日本人には、骨盤そのものの発育が生まれつき不十分で寛骨臼側のかぶりが浅くて股関節が不安定な状態にある、寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)による変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)が多いです。ほかには、関節リウマチ大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)や骨折などがあげられます。

変形性股関節症

愛媛大学医学部附属病院(現 いまいリウマチ・リハビリテーションクリニック) 今井 浩 先生Q. 年代としては中高年以降が多いのでしょうか?

A. 寛骨臼形成不全が原因で起こる股関節の痛みは、早い方では10代、20代でも起こります。生まれつき骨盤の発育が不十分だったところに、成長して体重が増え、スポーツなどで悪化して早く痛みが起こることもあれば、60代くらいになってから症状があらわれることもあります。寛骨臼形成不全の度合いやスポーツ歴、出産歴などで個人差があります。

Q. 変形性股関節症の治療法について教えてください。

A. まず、痛み止めや炎症を抑える薬などを併用しながら、股関節周辺の筋肉を鍛えて股関節の動きを安定させることを目指します。痛いときに体重をかけて運動するのは難しいので、プールでウォーキングをする、あるいは脚を開いて側面の筋肉を鍛えるなどのトレーニングを行っていただきます。一年近く続けても症状が改善せず、痛みがとれずに日常生活動作ができない、仕事もままならないようであれば手術も検討していきます。

トレーニング

Q. 手術にはどのような方法があるのでしょうか?

A. 変形が軽度で関節がそれほど傷んでいない場合には、関節周囲の骨を切り、残っている関節軟骨に広く体重がかかるように向きを矯正する寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)を行います。変形の度合いが激しく、骨切り術では対応しきれない場合には、傷んだ部分を人工股関節に置き換える人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)になります。

寛骨臼回転骨切り術

Q. こちらの病院は、骨切り術の症例数が大変多いと伺いました。

A. できる限り患者さんご自身の骨を生かして治したいと考えているため、50代くらいまでの方で、その適応となる患者さんにはできるだけ骨切り術を採用するようにしています。骨切り術には半世紀あまりの歴史があり、10代で骨切り術を行った方の約7割が60代くらいまで痛みなく過ごせているとの統計があります。

Q. 人工股関節にもいろいろな種類があるのでしょうか?

A. 人工股関節と骨の間にセメントを入れて固めるセメントタイプと、セメントを使用せず人工股関節の表面を骨と親和性の高い表面処理技術で加工して骨と癒合させるセメントレスタイプの2種類があります。高齢で骨が脆くなっている場合にはセメントタイプ、比較的骨がしっかりしている方にはセメントレスタイプを使います。当院では両方のタイプを症例に応じて使い分けていて、9割がセメントレスタイプです。
人工股関節の手術には、大腿骨と骨盤の両方を人工物に換える全人工股関節置換術と、大腿骨側だけを人工物に換える人工骨頭置換術とがあります。大腿骨側の骨折の治療には主に人工骨頭置換術が適用となります。

全人工股関節置換術の例

人工骨頭置換術の例

Q. 人工股関節の形状や加工は、以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 1960年代からおこなわれてきた人工関節手術の治療成績は、徐々に安定してきたものの、1990年代になってもなお人工股関節の「ゆるみ」という問題が残っていました。その後の調査研究により、人工股関節は軟骨の役目を果たすポリエチレンライナーと、骨頭ボール部分の摩擦で発生するポリエチレンの微細な摩耗粉(まもうふん)が、生体と反応して人工股関節周辺の骨を溶かしてしまうということがわかったのです。いまでは材質の改良が進み、摩耗粉の発生を抑えられるようになり、人工股関節の耐用年数が大幅に向上しました。

Q. 人工股関節の手技も以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. いまでは筋肉を切らずに、できるだけ小さい切開で行う低侵襲手術が一般的になっています。筋肉を切らず、傷口も小さいので術後の痛みが減り、術後の回復が飛躍的に早くなりました。ただ、術者にとっては小さい傷口で視野を確保しながら正確に人工股関節を設置するのは至難の業です。それを可能にしたのがコンピューターを使ったナビゲーションシステムです。当院では骨切り術人工股関節置換術において、早い時期からナビゲーションシステムを導入し、手術前に3次元でどういった角度に人工股関節を設置するかを検証し、術中に確実に目的の位置に設置するようにしています。

ナビゲーションを用いた人工股関節手術

フットポンプQ. 手術の合併症についても教えてください。また、合併症を防ぐためにどのような対策をとられているのでしょうか?

A. 人工股関節手術の合併症には、感染血栓脱臼などがあります。感染を防ぐために手術はバイオクリーンルームで行い、術後は手術箇所をしっかり洗浄することを徹底しています。また、血栓を防ぐために、早ければ手術当日から車いすに乗ったり、ベッドから立ちあがってもらったりして、できるだけ寝かせきりにしないようにしています。ほかにも、血液をさらさらにする薬を使ったり、フットポンプを装着して足の血流をよくしたりすることなどで対応しています。

コンピューターで3次元の計算のイメージ図Q. こちらの病院では、人工股関節の設置の角度の研究もされているとお伺いしました。

A. それは、人工股関節が脱臼してしまうリスクをできるだけ下げるためです。そのためには、カップとステムを適切な角度で設置することが重要です。年齢や性別なども加味した多くの臨床例を調査して、その最適な角度を求め、術前にコンピューターで3次元の計算をおこなっています。

Q. 人によって骨格や歩き方の癖など差がありそうですね。

A. その通りです。内股気味に歩く方など、とくに歩き方の癖は大きいと感じています。手術前に歩き方の動画を撮って、寝ているときの足の向きなども考慮したうえで手術を行い、手術後の歩き方も確認しています。

愛媛大学医学部附属病院(現 いまいリウマチ・リハビリテーションクリニック) 今井 浩 先生Q. そうした工夫によって脱臼は減っていますか?

A. 脱臼も減りましたし、カップとステムがぶつからなくなるので破損も起きにくくなりました。いかに正確に入れるかが大切だと再認識しています。

Q. 先生が治療にあたるうえで心がけていらっしゃることはありますか?

A. 股関節の手術は、患者さんにとって人生最大級のイベントです。それに対して、手術する我々も自分たちの持っている知識、技術を最大限提供したいと考えています。最新の知識、技術を身につけるためには日々の研鑽が不可欠です。

Q. 手術を受けた方からはどんな声がありますか?

A. 「スポーツやダンスがまたできるようになった」、「痛みを気にせず気軽に買い物に行けるようになった」という声をいただいています。患者さんの生活の質の向上に貢献できたのであれば、医師としてこんなにうれしいことはありません。

愛媛大学医学部附属病院(現 いまいリウマチ・リハビリテーションクリニック) 今井 浩 先生Q. 最後に、股関節の痛みでお悩みの方にメッセージをお願いします。

A. いまは人工股関節も手技も進歩し、安心・安全な手術を行えるようになっています。多くの方が術後に痛みなく仕事やスポーツを再開されています。股関節の痛みで悩まず、ぜひ専門医にご相談ください。

今井 浩 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2019.6.26

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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