先生があなたに伝えたいこと / 【樋口 直彦】肩関節の構造はとても複雑です。肩の症状がなかなか改善されないでお困りの方は、肩関節の専門医に診てもらいましょう。

先生があなたに伝えたいこと

【樋口 直彦】肩関節の構造はとても複雑です。肩の症状がなかなか改善されないでお困りの方は、肩関節の専門医に診てもらいましょう。

医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院スポーツ&リハビリテーションクリニック、医療法人藍整会 なか整形外科 京都北野本院 樋口 直彦 先生

医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院スポーツ&リハビリテーションクリニック
医療法人藍整会 なか整形外科 京都北野本院

ひぐち なおひこ
樋口 直彦 先生
専門:肩関節,肘関節

樋口先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
この病院を患者さんに信頼していただける良い病院に発展させていくことです。小規模だからこそ、手術やMRI検査でお待たせすることなく、その人に合ったオーダーメイドの治療ができますので、よりよくしていきたいと考えています。

2.休日には何をして過ごしますか?
昔からスノーボードやサーフィンなど、大自然の中で楽しむスポーツが好きなのですが、最近は特にマウンテンバイクにハマっています。気分転換というより、アドレナリンが出て気分爽快なんです。

先生からのメッセージ

肩関節の構造はとても複雑です。肩の症状がなかなか改善されないでお困りの方は、肩関節の専門医に診てもらいましょう。

Q. 肩関節はどんな構造、仕組みになっているのですか?

A. 腱板(けんばん)と総称される4つの筋腱から成っています。それぞれを肩甲下筋(けんこうかきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん)といい、インナーマッスルと表現されます。これらの外側に大きな三角筋があり、それらが関連しあって、肩をあらゆる角度に動かす仕組みになっています。
膝関節の場合は前後に、股関節の場合は球状に、しっかりと骨がかみ合って安定しています。それに比べて、肩関節は親指の腹ぐらいの大きさの肩甲骨の受け皿に、その3倍ほどのサイズの上腕骨頭(じょうわんこっとう)が乗っかっているような不安定な構造になっています。そのため、筋肉や腱が張り巡らされて支えられています。かなり複雑な構造なので、肩関節を専門とする医師でなければ、明確な診断がしにくい面があります。

肩関節の構造

症状Q. 患者さんはどういった症状で来院されますか?

A. 「肩が痛い」、「腕が上がらない」という方が多いです。症状が進んでいる方は、「痛みで夜眠れない」とか「着替えや洗髪ができない」、「包丁で硬いものが切れない」などと訴えられます。「あちこちのクリニックを受診したけれどよくならない」という患者さんも少なくありません。肩関節の専門医が少ないため、適切な治療を受けられていない患者さんが多い気がします。そもそも肩関節というのは、膝や股関節とは違って、体重を支えない関節なので軟骨がすり減って痛むということはほとんどありません。筋や腱の傷みから生じるものが主になり、診断の際はどの部分にどんな損傷があるかを見きわめることが重要になります。

Q. どのように診断されるのですか?

A. 肩関節の場合は、レントゲンから得られる情報が少ないため、身体所見を重視します。痛みの誘発テストを行い、その出方を確かめてから腱板がどこまで機能しているかをMRIやエコーで確認します。

Q. よくある疾患について教えてください。

A. 多いのは、俗に四十肩、五十肩などといわれる肩関節周囲炎、腱板断裂、スポーツをする方に多い肩関節反復性脱臼(かたかんせつはんぷくせいだっきゅう)です。
肩関節周囲炎は、大半が明らかな原因がなく、痛みが出てきて動きが悪くなり、自然に落ち着くという周期性がある疾患です。腱板断裂も広義では肩関節周囲炎になるのですが、腱板が切れていても治療を要しないケースが多くある中で、治療しなければならないレベルを指します。腱板が切れる原因は、外傷によるものが全体の2割程度で、多くは経年によってゴムが劣化するかのように、いつの間にか切れているということが少なくありません。
肩関節反復性脱臼は、最初はスポーツなどによって脱臼し、そこから抜ける癖ができてしまう疾患です。肩関節は靭帯で支えられていないので、一度抜けると筋腱や関節包(かんせつほう)が損傷して抜ける通り道ができてしまいます。そのせいで、寝返りするだけで抜けるなど、頻繁に脱臼を起こしてしまいます。

医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院スポーツ&リハビリテーションクリニック、医療法人藍整会 なか整形外科 京都北野本院 樋口 直彦 先生Q. それらはどういった治療法になりますか?

A. 肩関節周囲炎と腱板断裂は、8割以上の患者さんがリハビリテーションで痛みが軽減し、動かせるようになります。肩関節は、筋肉と腱のはたらきに頼っている関節なので、それらをしっかり鍛えていくのです。それぞれの患者さんの関節の状態に合った肩の動かし方をトレーニングしていくと、骨の引っ掛かりも次第に和らぎ、思い通りの動きができるようになることが多いです。たとえ腱板が傷んでいて機能していなくても、その機能を補えるように筋肉をコンディショニングしていけば、肩を動かせるようになる人もいます。

Q. 痛みがある場合もリハビリを行うのですか?

A. 炎症が強くて関節の中が腫れている場合は、ステロイド注射などで痛みを和らげ、様子を見ながらリハビリを行います。痛みの状態によって、注射または内服薬、リハビリを組み合わせて治療していきます。それを2~3ヵ月続けても痛みが取れず、動かせない場合は手術を検討します。

医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院スポーツ&リハビリテーションクリニック、医療法人藍整会 なか整形外科 京都北野本院 樋口 直彦 先生Q. 手術は最終手段なのですね。どんな手術になりますか?

A. 関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)になります。肩関節に5ヵ所ぐらい小さな穴をあけて、5ミリ径のカメラを関節のすき間に入れて中を確認します。これにより複雑で把握しづらい肩関節の中を詳細に観察することができ、損傷のある箇所を確かめて修復することができます。腱板断裂や肩関節反復性脱臼に適応となります。
人工肩関節置換術(じんこうかたかんせつちかんじゅつ)は、これまで効果がある症例の範囲が限られていたため、あまり行っていませんでした。しかし、5年前から新しいタイプの人工肩関節が日本で認可されたことで、腱板の機能が修復できないケースにも適応できるようになりました。これはリバース型人工関節と呼ばれるもので、当院でも取り入れています。

Q. リバース型人工関節とは、どのようなものなのですか?

A. 肩甲骨側を球状(骨頭)にし、上腕骨を受け皿(ソケット)にするという、もともとの肩関節の構造を反転させた形状になっています。腱板の力がなくても、三角筋の力で肩を動かすことができる仕組みになっています。国内ではまだこの手術ができる医師が少なく、現在は学会で認定された専門医のみが、厳しいガイドラインに則って施術にあたっています。これから症例が増えていき、今後、大きく発展していくと思われます。

リバース型人工関節

リバース型人工関節

Q. 手術入院をしたら、どれぐらいで退院できますか?

A. 症例によって異なりますが、関節鏡視下手術の場合は4~5日、人工肩関節置換術の場合は1~2週間ぐらいです。腱板断裂や脱臼整復の場合は、術後3週間程度は腕を固定し続けながら、通院でリハビリを続けます。手術を受けられた患者さんの多くは、それまで痛くて動かせなかった肩や腕が動かせるようになるので喜ばれています。

医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院スポーツ&リハビリテーションクリニック、医療法人藍整会 なか整形外科 京都北野本院 樋口 直彦 先生Q. 先生が治療において心がけていることは何ですか?

A. 肩関節の疾患は、基本的にはほとんどがリハビリで改善されます。だからこそ、不必要な手術をしないように、細心の注意を払っています。MRIやエコーでの確認だけで単純に判断するのではなく、身体所見でどういう動きをするとどこがどう痛むのかをしっかり見きわめることが何よりも大切だと考えています。

Q. 先生が医師になられた経緯を教えてください。

A. 若い頃、ボランティアで貧困者の支援活動をしているときに、道で倒れている人を見たことがきっかけで、医者になろうと思いました。実はその当時は文系の大学に通っていたのですが、医学部を目指して勉強しなおしました。医学部に入って整形外科を選んだのは、ずっとラグビーをしていてケガが多かった経験からです。整形外科の中では、骨折などのケガはベテランでなくてもできる治療と軽視されがちですが、適切な治療をしなければ、スポーツや仕事に復帰できません。よくあるケガだからとセオリー通りに処置するのではなく、できるだけ元通りに近い、きちんとした治療を提供したい。そういう思いで取り組んでいるうちに、特に治療が難しい肩関節に行き着きました。
整形外科は命に直結する分野ではありませんが、それだけに患者さん一人ひとりのライフスタイルを尊重することが重要だと思います。仕事が多忙な人は、休みをとらなくても治療できるように、また、修学旅行前や部活の引退前にケガをしてしまう若い人たちに、残念な思いをさせないように、患者さんに寄り添った治療計画を考えるようにしています。

樋口 直彦 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2019.6.26

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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