先生があなたに伝えたいこと / 【横山 徳一】「もし自分の家族だったら」を理念に、全スタッフの心を合わせたチーム医療を提供していきたい。

先生があなたに伝えたいこと

【横山 徳一】「もし自分の家族だったら」を理念に、全スタッフの心を合わせたチーム医療を提供していきたい。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック
よこやま のりかず
横山 徳一 先生
専門:膝関節股関節

※第1回インタビューについてはこちら

※第3回インタビューについてはこちら

横山先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 色々な刺激を自分の糧としたいので、旅行に行ければ嬉しいですね。様々な国、地方の方や、異業種交流にもどんどん参加して、いろんな価値観に触れられたらと思っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 学会や勉強会などで留守にしがちなので、何もなく家にいるときは4人の子供たちの為に、公園に連れて行ったり、買い物などに出かけています。牛乳10本が入った袋や、トイレットペーパーを山ほど抱えて歩いている人を見かけたら、私かもしれません(笑)。

先生からのメッセージ

「もし自分の家族だったら」を理念に、全スタッフの心を合わせたチーム医療を提供していきたい。

Q. 治療にあたって取り組まれていることについて教えてください。

A. 当院は、関節と脊椎脊髄を中心に慢性疾患を中心に扱っています。医師、看護師、また事務のスタッフに至るまで、専門的な知識、技術を持ったスタッフが一丸となって治療に取り組んでいることが大きな特長です。私は、「チーム医療」が大切だと考えています。スタッフ全員が一つの目的を持って仕事に取り組むことが、より良い医療の提供につながるというのが私の考えです。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生Q. 医療はチームで行うものであるということでしょうか?

A. はい。 治療というのは、医師が一人でできるものではありません。看護師や理学療法士はもちろん、受付や事務、清掃スタッフなど、全員が協力してはじめて成り立つものです。ただ、その中で誰かが指揮を執らなければなりません。それを担うのが医師だと考えています。船でいえば船長のようなもので、スタッフに目的地を示し、どの方向に舵を執るのか指示を出す役割です。
医師が考えたことをただトップダウンするだけでは、本当のチーム医療ではありません。スタッフの意見に耳を傾けることも大切です。たとえ船長の指示が的確であったとしても、現場のスタッフの心がバラバラでは航海を進めることはできません。私たちの目的は、患者さんが満足できる医療を提供することです。そのために、心を一つにして治療を行うことが何よりも大切なことだと思います。

Q. 患者さんにより良い治療を提供することを一番に掲げていらっしゃるのですね。

A. それが全てだと言っても過言ではないと思います。当院の理念は「If the patient is your father or mother, what should you do?」。もし患者さんが自分の家族だったらどうするのか。これは医療の基本だと思います。治療や手術について迷ったときは、その原点に立ち返って考えるようにしています。研修医時代に、私の子どもが頭蓋骨骨折で入院したことがありました。そのとき、患者さんやその家族がいかに不安な気持ちになるのかを痛感しました。独善的な医療を行ってはいけない、相手の立場に寄り添うことが重要であると考えるようになった大きなきっかけです。医療提供者と患者さんとのお互いの気持が通じていなければ、それは医療ではないというのが私のポリシーです。

Q. なるほど。具体的にはどのように取り組んでいらっしゃるのですか?

A. 当院では外来での診察の際、クラーク(医師の補佐をする事務員)が電子カルテの入力を行っています。それにより、私たち医師は患者さんに集中することができます。顔も体もしっかり向き合うマンツーマンが本来の診察だと考えています。パソコンに向かってキーボードを打ちながら診察していては、本当の意味でも患者さんに向き合っていないと思うのです。

Q. 医師がしっかりこちらを向いてくれると、安心感がありますね。

A. 病院で診察を受けること、まして手術を受けることは医師に体を預けることです。ちゃんと受け止めてくれる、納得できるように話をしてくれる、そういう医師でなければ信頼して任せようとは思えないでしょう。私たちが患者さんとしっかり向き合えるのは、クラークをはじめとしたスタッフのおかげです。彼らが同じ方向を向いて、それぞれが役割を果たすために努力してくれているからこそできることだと思います。
また、手術や入院に不安を持つ患者さんのために、ガイドブックを作りました。特に人工関節手術は、ある意味で旅行に似ていると思います。どんな病院でどのような手術を受けるのか、術前にすること、術後の過ごし方...そんな患者さんの不安を少しでも取り除きたい。そのために、それぞれの視点から意見を出してもらい、スタッフ全員で、治療中にお供にできるものとして完成させました。

Q. スタッフのことを本当に大切に考えていらっしゃるのが伝わります。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. どんなに良い手術をしても、それが医師一人の満足で終われば、患者さんにとって良い治療だとは言い切れないと思うのです。「患者さんの立場に立つ」と言葉にするのは簡単ですが、医師一人の視点など限られています。さまざまな立場にいる人の意見を聞き、共有していくことが大切なのではないでしょうか。視野を広くするという意味では、私は他施設の見学に行くときに、看護師、理学療法士をはじめ事務員などのスタッフにも同行してもらうようにしています。

Q. 事務員も一緒に見学に?

A. はい。私が手術の見学をしている間、スタッフにはそれぞれの部署を見学してもらいます。逆に、当院への見学も歓迎しています。来てもらうことでみながより自分達の仕事にプライドを持ってくれるのを実感しています。同じ顔ぶれで長く仕事することは、チーム医療という意味では大きなメリットです。しかし、刺激が少ないのも事実。他施設から見学にきてもらうことで、背筋が伸びるような刺激をもらっているのだと思います。

Q. 先生のチーム医療へのお考えがよくわかりました。次に、人工関節手術への取り組みについてお聞かせください。

A. 人工関節手術は「根本的に治すもの」ではありません。あくまでも傷んだ関節を人工のものに置き換える手術です。痛みを取ることが目的なので、患者さんが納得されるのであれば良い方法ですが、絶対的なものではないというのが前提になります。
骨折や盲腸等の場合、骨がくっつく、盲腸を取り除くことができれば治療は完了です。一方で、人工関節は一生ものです。現在の人工関節は、ほとんどの方は20年は大丈夫とも言われています。しかし、仮に99%の人が大丈夫だったとしても、1%の人には不具合が出てしまうかもしれません。私たちにとってはまれな事例であっても、ご本人にとってはそれが結果のすべてです。それを見逃してはいけない。痛みに泣く人が出ないように、最後までフォローアップすることが大切です。

Q. では、先生が行っている人工関節手術についてお聞かせください。

A. 2014年から、人工股関節置換術を前方アプローチという方法で行っています。筋肉を切らずに、筋肉の隙間から人工関節を設置する方法(筋間アプローチ)です。
筋肉を切らないことのメリットは、何よりも回復が早いこと。後で修復するとしても、一度傷ついた組織をまったく元通りに戻すことはできません。ですので、なるべく傷めないことが大切です。実際に前方アプローチで手術を行った患者さんは、従来法で手術した患者さんに比べて明らかに術後の回復が早くなったと実感しています。

Q. 筋肉を切らないことが患者さんの負担を軽くするのですね。

A. そうです。ただ、筋肉さえ切らなければ良いというわけではありません。筋肉はいくつかのグループに分かれていて、それぞれに運動を司る支配神経が通っています。同じ筋間アプローチでも、同じ神経が支配している筋肉を分けるのでは、神経を切ることになってしまいます。私はどの筋肉にどの神経が通っているのかを考えて手術するように心がけています。学生時代に解剖学の教授が「神経の流れや筋肉の動きには必ず意味がある。進化の過程で、理由があっていまの形になったのだ」と教えてくれました。この手術をするようになってからその言葉を思い出し、人体をリスペクトした手術が大切なのだと思い至ったのです。ただでさえ関節を人工のものに置き換えるわけですから、それ以上体の流れに逆らうことをしてはいけない、ということです。

Q. なるべく自然のままにしておくことが大切であると。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生A. たとえば、股関節は体重の何倍もの荷重がかかっているのに、簡単には外れません。そのくらい素晴らしい構造をしているのです。周囲の筋肉や靭帯がしっかりしているからこそ、関節が安定するのです。それをメスで切ってしまったら、脱臼などの合併症が出ても不思議ではない。また、術後何年も問題がなくても、加齢とともに筋肉が萎縮したり、姿勢が変わったりすることで脱臼を起こす症例があります。それを目の当たりにして、いかに元の筋肉や靭帯をそのまま残すことが重要なのかを痛感しています。

Q. 筋肉で支えているということは、術後もなるべく筋肉を衰えさせないようにすることが重要なのでしょうか?

A. リハビリは重要です。膝であれ股関節であれ、人工関節手術はてきめんに痛みが取れる方法です。特に股関節では、手術したことを忘れてしまう方もいます。それは手術が成功したということではありますが、大事なのはその後の患者さんのQOL(生活の質)がいかに向上するかです。スポーツができるようになった、旅行ができるようになったなど、活動性が上がらなければ手術した意味がありません。術後も筋力を維持していただいて、寿命を全うされるまで自分が手術した人工関節と生活してくれれば、医師冥利に尽きるなと思います。そのために、理学療法士との連携は非常に重要だと思います。

Q. ここでもやはりチーム医療の重要性がわかりますね。ところで、膝の方でも筋肉や靭帯の温存に注力されているのでしょうか?

A. もちろんです。少し前になりますが、MIS(最少侵襲手術)という皮膚切開を小さくする手術が注目されました。しかし、切開部位を小さくすることよりも、関節内の組織をなるべく温存させることの方が重要です。狭い切開部から人工関節を入れるために手術に時間がかかったり、筋肉を剥がしたりするようでは、かえって患者さんに負担がかかります。切開部の長さに関係なく、中の組織が守られていれば、術後の痛みや腫れが少なくなります。痛みや腫れは、組織を傷つけたことに対する体の反応です。それを気にかけながら手術を行うようになったことで、手術時間も入院期間も短くなりました。痛みが出にくくなったことで早めにリハビリに進めるようになったことも回復が早くなった要素だと思います。

Q. 手術の方法を変えることで、術後に違和感を訴える方も減りましたか?

A. はい。インプラント(人工関節)の形状や患者さんにもよりますが、早期からリハビリに取り組めることで馴染みやすくなったのではないかと思います。
なるべく違和感を残さない手術方法として、膝には単顆人工膝関節置換術(たんかじんこうひざかんせつちかんじゅつ:UKA)というものがあります。傷んでいる部分だけを人工物に置き換えて、靭帯などはそのまま残す方法です。膝の内側だけ軟骨がすり減っているなどの場合、自然な膝の動きを残したまま痛みを取ることができます。

Q. 痛みを我慢して他の部分まで悪くなってしまうよりは、早めに相談したほうが良さそうですね。

A. その通りです。たとえば膝の痛みをかばって股関節など他の部分に痛みが出ることもよくあります。逆にいえば、一番悪いところを治すことで、他の痛みも一緒に取れることも多いのです。問題になっている部分を早めに見つけ、負担が最小限になる方法で治療を行う。それがトータルで良い結果をもたらすことになります。

医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 横山 徳一 先生Q. 痛みは患者さんにとって一番つらいものですよね。

A. どんなに良い手術ができたとしても、そこに興味があるのは医師だけです。良い手術をする、良いインプラント(人工関節)を選ぶのは医師としてやるべき最低限こと。手術の腕を磨く努力は当然ですし、術前や術中の処置(痛み止めのカクテル注射など)、麻酔科医との連携も大切です。当院には専任の麻酔科医が常駐しています。私の手術にかかる時間、内容をきちんと理解してくれているので、最適な処置をしてくれます。患者さんの望みは痛みを取ることです。そのためにできることは全部やりたいと考えています。

Q. 先生は、手術において「型」が重要であるとお考えだと伺いました。

A. 剣道や柔道、華道と同じで、ひとつの型、動きをいつでも再現できるようになることは大切だと思っています。型をしっかり身につけることで、突発的なトラブルがあっても軌道修正ができるようになりますし、そのトラブルを技術向上に繋げていけると考えています。また、型ができていることで周囲のスタッフも仕事がしやすくなると思います。

Q. ありがとうございました。最後に、先生が目指す医療についてお聞かせください。

A. 繰り返すようですが、私たちが目指すのは、患者さんとの距離が近い医療です。医療現場は患者さんからの「ありがとう」をたくさんいただけるところ。患者さんがハッピーであることが、私たちをハッピーにしてくれる。それを忘れず、スタッフ全員がより良い医療を目指して成長していけるクリニックにしていきたいです。そして、担当した患者さんはずっと診続けていきたい。その思いが伝われば、患者さんは信頼して頂けると思います。術後、毎年レントゲンを撮り、「大丈夫だよ」のひとことをもらうためだけに遠方から来てくださる患者さんもいます。いつまでも信頼される医師であり続けるために、自分を磨き続けていきたいと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

横山 徳一 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.1.25

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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