先生があなたに伝えたいこと / 【小倉 卓】脊椎圧迫骨折に対する保存療法では改善が難しいという患者さんには、負担が軽くて早期の改善が見込める最新の手術で、痛みから早く解放し、助けてあげたいと考えています。

先生があなたに伝えたいこと

【小倉 卓】脊椎圧迫骨折に対する保存療法では改善が難しいという患者さんには、負担が軽くて早期の改善が見込める最新の手術で、痛みから早く解放し、助けてあげたいと考えています。

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生

京都中部総合医療センター
おぐら たく
小倉 卓 先生
専門:脊椎外科

小倉先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 子どもが医者を目指していることもあって、将来、医療の現場がどんな風に変っていくのか気になります。ますます高齢化が進むことで急性期よりもリハビリ中心、あるいは在宅医療が中心になっているかもしれませんね。

2.休日には何をして過ごしますか?
 愛犬のトイプードルと遊びます。私に一番なついているんです。かわいいですよ(笑)。

先生からのメッセージ

脊椎圧迫骨折に対する保存療法では改善が難しいという患者さんには、負担が軽くて早期の改善が見込める最新の手術で、痛みから早く解放し、助けてあげたいと考えています。

Q. 今回は、特に女性には気になる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について伺います。そもそも骨粗鬆症とはいかなる病気なのでしょうか?

A. 骨粗鬆症とは、骨がもろくなった状態から引き起こされる疾患のすべてを指します。骨量が減少して骨がスカスカになることがよく知られていますが、骨質も関係していることがわかってきました。目安としては、20代から40代で骨密度が75%を切れば大まかに骨粗鬆症という診断となります。

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生Q. なぜ女性に多いのでしょうか?

A. 骨の新陳代謝には女性ホルモン(エストロゲン)が深く関わっていて、女性は閉経後にそれが急激に減少することで骨がもろくなると考えられています。男性は急に減少するということがないので、患者さんの数としては女性が圧倒的に多くなります。

Q. なかでも骨粗鬆症になりやすい方というのはあるのでしょうか?

A. 若い頃に無理なダイエットをしたことがある方はリスクが高くなります。それは、若い頃のダイエットによって骨量がかなり低くなっているところに、閉経後の急激な減少が追い打ちをかけるからです。将来のことを考えれば体型や体重を過剰に気にするのは、あまり良いことではありませんね。

Q. ダイエットのやり過ぎは要注意なのですね。ほかに骨粗鬆症の予防法はありますか?

A. 骨密度が低下するのは女性ホルモンの関係でしかたないのですが、まずは自分の骨密度を知ることが、ひいては予防につながります。骨粗鬆症と診断されなくても、「どうも骨密度が下がり気味」というところから、主治医と相談して薬の服用を始めるのも良いかもしれません。また、運動するとか本を読むにしても天気の良い日には公園など屋外で日に当たること、カルシウムの吸収を阻害する食べ物をあまり摂らないようにすること、骨質をよくするためにコラーゲンを意識したバランスの良い食事を心がけることなども効果的です。

Q. まだ若いからといって油断せず、早めに検診を受けるのが良さそうですね。

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生A. その通りです。足が痛い、腰が痛いということで来院されるケースが多いのですが、実は骨粗鬆症の初期は自覚症状が出ないために油断は禁物なのです。骨粗鬆症と気づかぬうちに尻餅をついたり、ひどい方は寝返りを打ったりするだけでも圧迫骨折を引き起こすこともあります。今では多くの開業医でも測定してもらえますので、まずはご自身の骨密度を知っていただき、主治医から指導やアドバイスを受けられることをお勧めします。

Q. わかりました。では、診断方法について教えてください。

A. 大きくはDEXA(デキサ)法とMD法があります。DEXA法は背骨、大腿骨の付け根、前腕部、MD法は手のひらの中指骨にX線を当てて、どれだけ透過性があるかなどを測定します。骨の密度が高ければX線は通りにくくなります。精度としてはDEXA法が優れていますが、簡便なMD法でも十分に診断可能だと思います。

Q. 骨粗鬆症の治療ですが、段階に応じて選択肢があるのでしょうか?

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生A. 骨粗鬆症となる手前なら生活指導、すなわち食事療法、運動療法を併行しながらの投薬治療で推移をみます。最近は良い薬が出てきていますが、投薬治療は一定期間薬を飲めば良いというものではなく、定期的に検診に来てもらって薬の効果などを見極めながら進めていくことになります。薬をきちんと飲み続けて、一生上手につきあっていくということですね。

Q. 生活を改善し、かつ長い目でみていく必要があるのですね。

A. はい。骨密度は軽微に少しずつ上がるもので、上がったり下がったりという周期性もあります。その時々の生活環境を聞きながら指導する必要もあり、定期検診を継続することが大切です。

Q. お薬には何種類かあるのですか?

A. はい、患者さんに応じて使い分けします。メインとなるのは「ビスフォスフォネート製剤(BP製剤:破骨細胞の活動を阻害して骨の吸収を防ぐ薬剤)」と「サーム(SERM:閉経によって減少する女性ホルモンのエストロゲンの代替作用を有する薬剤)」です。骨密度の非常に低い患者さんには、「テリパラチド製剤(副甲状腺ホルモン(PTH)製剤:骨を作る骨芽細胞に働きかけて骨形成を促す薬剤)」をご自宅で注射していただくという方法も出てきました。

Q. それぞれの薬にはどのような効果が期待できるのですか?

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生A. 先ほど「骨の新陳代謝」と申し上げたように、骨には古い骨を吸収してそこに新しい骨ができるという吸収と形成のサイクルがあって、毎日それが行われることで質の高い骨ができます。しかし、骨を食べる細胞が活性化してしまうと、骨の形成が追いつかず、骨粗鬆症になってしまいます。「ビスフォスフォネート製剤」はこの骨の吸収を抑制する効果があります。
「サーム」は女性ホルモンと似た作用があって骨密度を増加させます。「テリパラチド製剤」は骨を形成する薬で、骨を作ってくれる細胞を活性化させます。また、背骨に効く、太ももに効くなどいろいろ分類がありますので、たとえば背骨が痛くて来られたら、背骨に効くものの中から最適と思う薬を選びます。

Q. 細かく分類されているのですね。

A. 種類だけではなくて、薬を飲む間隔もいろいろなんですよ。半年に1回で良いというものもあります。病院に来ていただくのも半年に1回だと患者さんは楽で良いのですが、錠剤が大きくて高齢の方には飲みにくく、副作用として逆流性食道炎の危険性もあります。何より飲み忘れの心配や、患者さんの今の状況をこちらが把握できないのも心配ですから、実際には1ヵ月に1回の薬をお出しすることが多くなります。ちなみに注射も週に1回とか毎日とか、打つ間隔に違いがあります。
投薬治療では、患者さんに最適と思われるものを選び、効果の現われ方次第でお薬を変えて骨密度の改善を図ります。

脊椎圧迫骨折Q. 骨粗鬆症から引き起こされる合併症としては、やはり骨折が多いのですか?

A. はい、多いですね。特に脊椎、大腿骨頸部、手首の骨折が多く、そのなかでも脊椎圧迫骨折が高い割合を占めます。背骨の前のほうが潰れるように折れてしまうんです。

Q. 脊椎圧迫骨折の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?

A. 第一選択は保存的治療です。ギブスや硬めのコルセットで固定して、病院の方針によっては入院し、3~4週間安静にします。ほとんどはこれで治りますが、痛みが取れなかった場合や手足のしびれがある場合は次のステージ、外科的治療(手術)が必要になります。

Q. 外科的治療の方法とは?

A. 実は、手術方法についてはすごく進歩しています。手術には2つの方法があります。ひとつは、圧迫骨折した部位に、HAブロックといわれる人工骨や骨ペースト、骨セメントなどを注入して早期に固定することで痛みを取る手術法です(椎体形成術)。これらの材質は、いずれも12時間ほどで硬化し、最大の強度に達します。もうひとつの方法は、背骨に金具を入れて、折れたところを中心に上下の骨を、ネジを使って金具に固定し、新たな背骨を作る方法です。後弯した背骨を持ち上げるようにしてきれいな形に再生します(脊椎固定術)。

椎体形成術

椎体形成術

Q. 脊椎固定術の進歩とは、具体的にどういうことでしょうか?

A. まず、手術侵襲がかなり小さくなりました。金具は、昔は筋肉を大きくはがさないと正しく入れられなかったのですが、今は皮膚の上から入れることが可能になりました。皮膚を少しだけ切除して、神経モニタリングシステムで神経を傷つけていないか確認しながら進めていきます。手術時間もかつては5~6時間かかっていましたが、今では1~2時間で終わります。また、金具で背骨をまっすぐきれいな状態にすることにより、骨に隙間ができてしまう場合には、そこを満たすように骨ペーストを注入するというように2つの方法を併行することもあります。この方法では、万一手術中に違和感が出た場合は金具を抜くことで対応できます。手術時間が短くなりますので出血量も少なくなりました。

従来の手術法

皮膚の切開が小さい現在の手術法

Q. リハビリはいつから開始するのですか? また入院期間はどれくらいですか?

A. どちらの手術でも翌日から歩行のリハビリを始めます。入院期間は「椎体形成術」なら1~2週間、「脊椎固定術」でも2~3週間で歩いて帰れるようになります。ただ椎体形成した部分の骨がくっつくのは6ヵ月ほどかかりますので、ある程度の生活制限は必要です。

Q. 日常生活に戻られたあと、患者さんが気をつけるべきことはありますか?

問診 イラストA. 保存治療でも同じですが、「背骨に衝撃が加わるような運動は避ける」ことです。また脊椎は、特に胸椎と腰椎の間が折れやすく、その後発性の骨折を防ぐために、できるだけ「前かがみの体勢はとらない」ようにすることが大切です。そうはいってもやはり女性は家事のことを気にされます。たとえば、拭き掃除とかお風呂掃除、庭の草取りなどはできるだけご家族の方に手伝ってもらったり、料理をするときには立たずに椅子に座ったりするなどの工夫も必要でしょう。治って痛みが取れたとしても、「自分の骨は弱い状態」であることを常に頭の片隅に入れて生活していただきたいと思います。そして必ず定期検診に来てください。もちろん、何か違和感があれば早期に来院してください。万一、重篤なことが起きてしまったとしても、どれだけ早く対処できるかによってその後の容態に関わります。

京都中部総合医療センター 小倉 卓 先生Q. 骨粗鬆症、そして脊椎圧迫骨折の治療が進歩していることがよくわかりました。最後に、治療に対する先生のモットーをお聞かせください。

A. 最新の治療を積極的に取り入れたいと思っています。脊椎外科は新しい方法が次々と考案、改良されてきています。保存療法では改善が難しいという患者さんには、負担が軽くて早期の改善が見込める最新の手術で、痛みから早く解放して、助けてあげたいと考えています。すでに現在の手術は、低侵襲で輸血も必要なく翌日から歩けるようになるまで進歩しましたが、今後も日進月歩で進んでいくことが期待されますから、常に勉強は怠れません。
私が整形外科医を志した理由のひとつも、手術をして患者さんを良くしたいということでした。痛みが取れて良くなるということと、生活の質がよくなることの両方ですね。困っている患者さんに対してそれらを叶えるためのより良い方法を、これからも追及していきたいと思っています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

小倉 卓 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2016.6.30

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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