先生があなたに伝えたいこと / 【金村卓】歩けなくなる不自由さは相当なものです。だからこそ普段から一生涯自分の足で歩くことができるよう準備をしてください。

先生があなたに伝えたいこと

【金村卓】歩けなくなる不自由さは相当なものです。だからこそ普段から一生涯自分の足で歩くことができるよう準備をしてください。

千春会病院 金村 卓先生

千春会病院
かなむら まさし
金村 卓 先生
専門:関節外科・外傷(骨折治療)・骨粗鬆症

金村先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
地震、豪雨、台風など自然災害が頻発していること。誰の身にもふりかかってくることとして考え準備する必要を痛感していますし、私たちとしては災害医療への備えもより重視していかなくてはいけないと思っています。もちろんさらなる環境対策も必要なのでしょうね。

2.休日は何をして過ごしますか?
できるだけ体を動かすようにしています。近くの川や公園でウォーキングやランニング、サイクリングをしたり、軽い筋トレも行うようにしたりしています。

先生からのメッセージ

歩けなくなる不自由さは相当なものです。だからこそ普段から一生涯自分の足で歩くことができるよう準備をしてください。

千春会病院 金村 卓先生Q. 今回は骨折治療がご専門の先生に、大腿骨(だいたいこつ)の頸部骨折(けいぶこっせつ)についてお話しを伺いたいと思います。まず、大腿骨頸部とはどの部分ですか?

A. 大腿骨頸部とは、大腿骨のうち股関節に近い部分(大腿骨近位部)にあります。詳しくご説明すると、大腿骨の頭を大腿骨頭(だいたいこっとう)といいますが、その下の部分で骨折するのを大腿骨頸部骨折、さらにその下の大転子(だいてんし)と小転子(しょうてんし)のある部分で骨折するのを転子部骨折(てんしぶこっせつ)、小転子から下で骨折するのを転子下骨折(てんしかこっせつ)といいます。このなかで大腿骨頸部骨折と転子部骨折を合わせた「大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)」の数が年々増加していて、2019年では約19万例、2020年では約24万例になるといわれています。これは、寿命が長くなったことが原因ですので、今後さらに増加すると考えられます。

Q. 大腿骨は太くて丈夫そうですが、骨折の患者さん数はとても多いのですね。

A. 大腿骨近位部には、ちょうど体重がかかる部分です。また、大転子や小転子は飛び出しているために、転倒や交通事故などの際に、大きな力がその一点にかかってしまって骨折に至りやすいのです。

Q. 大腿骨頸部骨折や大腿骨転子部骨折を起こしやすい方の傾向はありますか?

A. やはり骨密度や骨質ともに低下している方が多いと思います。骨の状態が正常ならば転んだくらいで骨折は起こしませんが、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の方は軽微な力でも骨折に至ってしまいます。そして骨粗鬆症は、特に女性に注意が必要です。もともと骨の量が男性より少ない上に閉経後に骨密度がぐっと下がるので、男性に比べて骨の減少のスピードが早くなります。ただし、70歳を過ぎると男性も女性も関係なく、大腿骨近位部骨折を起こす方が急激に多くなるので、やはり骨を強くすること、転倒しないことが重要です。
また、転倒は外出先ではなく自宅など屋内が多いという傾向があります。住み慣れた場所だからといって油断せずに、つまづきやすい所の改修やなどを行うことも転倒防止の対策になります。

Q. 身近なところに骨折の危険があるのですね。では次に治療について教えてください。やはり手術が必要なのでしょうか?

A. 手術が望ましいと考えます。骨折によって座れない、立てない、歩けないという状態になれば筋力低下が進行するだけでなく、そのまま寝たきり状態となってしまうリスクがあるからです。手術をすれば早ければ翌日からリハビリによる歩行練習が可能となり、経過がよければ骨折する前の状態にほぼ近いレベルまで改善される患者さんも多くいらっしゃいます。しかし、手術治療の難しい状態の患者さんもいます。たとえば心臓の機能が非常に低下している方などの場合では手術はできません。手術をしない保存療法の場合は、骨折部の癒合を待つ間はベッドで安静にし、その後、痛みに応じて車椅子移動などで経過をみることになります。

Q. 手術は、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

A. まず「大腿骨転子部骨折」の場合は、CHS(コンプレッション・ヒップ・スクリュー)というプレートやγ(ガンマ)ネイルという髄内釘(ずいないてい)を挿入して固定する手術が一般的です。大腿骨転子部は血流がよく、骨癒合も良好なことがほとんどです。
「大腿骨頸部骨折」の場合は、骨折部に大きなズレ(転位)がなければ、その患部をCCHS(キャニュレイテッド・キャンセラス・ヒップ・スクリュー)というスクリューとプレートで固定する方法をとります。但し、大腿骨頸部は関節内ということで血流が悪く骨膜がありませんので、骨癒合不全、骨頭壊死、それらに伴う遅発性の骨頭圧潰などの合併症の可能性が1割から2割程度あり、定期検診や違和感を覚えたらすぐ来院していただくなど、慎重に経過観察を行う必要があります。骨折で転位のある場合や、固定術で合併症を起こしてしまった場合には人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)が選択肢となります。

Q. 手術後にどのようなリハビリを行うのでしょうか。またリハビリの期間はどれくらいですか?

A. スクリューやプレートによる固定術でも人工骨頭置換術でも、手術翌日からベッドでの座位や車椅子移乗などの練習をし、固定が良好なら立位や歩く練習も開始し、およそ2~3週間で退院となります。固定性や患者さんの骨質が弱いときには徐々に部分荷重を行いながらリハビリをしていただく場合もあります。その場合は、期間は1ヵ月から1ヵ月半となります。

Q. 手術では合併症も心配ですが。

A. 手術治療の合併症は感染症、深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)が主なものです。感染症は、体内に入るスクリューやプレートなどが異物であるために、細菌が繁殖してしまうことがあるのです。それを防ぐために、手術前と手術後に抗生剤を使ったり、手術時間をできるだけ短くしたり、術後の創部を衛生的に保ったりするなどしています。しかし、それでも感染症がおきてしまうと再手術が必要となる場合があります。感染症をおこしやすい患者さんの状態として、糖尿病、ステロイドや免疫抑制剤を使用している場合が考えられます。深部静脈血栓症は、いわゆるエコノミー症候群と呼ばれるものです。たとえば下肢の血流が滞って血の塊(血栓)ができて、その塊が肺に運ばれて肺塞栓症という命に関わる合併症になることがあります。当院では、手術中から手術後もフットポンプを使う、手術後の弾性ストッキングの着用する、早期離床、抗凝固薬の使用などを駆使して予防に当たっています。

Q. 先ほど、大腿骨頸部骨折の原因に骨粗鬆症があるとご説明していただきましたが、そもそもどうして骨粗鬆症になるのでしょう?

A. 私たちの骨は「骨代謝(こつたいしゃ)」といって、骨を壊して、その部分に新しい骨を作るという作業を繰り返しているんです。高齢になるとこの骨代謝のバランスが崩れ、新しい骨を作る作業が追いつかなくなり、骨量が減ってしまいます。さらに女性の場合は、閉経に伴いエストロゲンというホルモン分泌が低下することにより、同様に骨量が減ってしまうといわれています。

Q. 有効な予防法や治療法は?

A. 骨を強くする、骨密度を減らさないようにすることが予防ですから、まずは3食バランスよく食べることが大切です。骨の量は二十歳頃がピークでそこでしっかり保っておきたいので、若いころの過激なダイエットは避けましょう。運動は有酸素運動、背筋強化、筋力やバランス訓練が有効です。時間に余裕のない方も多いと思いますが、難しく考えず、できるだけ歩く、エスカレーターではなく階段を使う、テレビを見ながら背筋をするなど、日常生活の中で少し意識して続けていただくことが大事だと思います。
治療は、骨密度の数値、血液検査、骨折の既往歴などを総合的に判断しながら、主に薬物療法での治療となります。

Q. 自分の足で歩ける"ことが骨や体を丈夫に保つ基本といえますね。

A. その通りです。整形外科外来で日常診療していると、自分の足で歩く大切さを本当に痛感します。腰や膝が痛いというのも歩行しづらくなる原因ですが、大腿骨近位部骨折は歩行自体ができなくなるので、ぜひとも気をつけていただきたいと思います。歩けなくなる不自由さは相当なものです。だからこそ普段から一生涯自分の足で歩くことができるよう準備をしてください。

Q. 最後に、先生が整形外科医を志された理由を教えてください。

A. 学生時代、ラグビーやアメリカンフットボールなど怪我と隣り合わせのスポーツをしていましたので、骨折や外傷などでスポーツにも関われる診療科に興味がありました。整形外科には高齢の患者さんから、小さなお子さんまで受診されます。幅広い世代に対して診療が可能な科ということでとてもやり甲斐を感じています。

取材日:2018.7.23

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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