先生があなたに伝えたいこと / 【藤井 賢吾】頚椎疾患は、正しく診断し、適切な治療を行えば、症状が改善する可能性があります。痛みが続くようであれば、放置せずに脊椎の専門医がいる医療機関を受診してください。

先生があなたに伝えたいこと

【藤井 賢吾】頚椎疾患は、正しく診断し、適切な治療を行えば、症状が改善する可能性があります。痛みが続くようであれば、放置せずに脊椎の専門医がいる医療機関を受診してください。

公立昭和病院 藤井 賢吾 先生

公立昭和病院
ふじい けんご
藤井 賢吾 先生
専門:脊椎

藤井先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 アフターコロナの世界です。コロナの期間中、いろいろな楽しいことが制限され、我慢を強いられてきました。ワクチン接種も進み、徐々にアフターコロナの世界に移行していくと思うのですが、コロナ前と全く同じ世界にはもう戻れないような気がしています。
たとえばこのインタビューのように、インターネット、オンラインでできることが増えたのは、コロナの功罪であり良いことだと思うのですが、一方で海外旅行など、生身でないと体験できないことがどの程度元どおりにできるようになるのかということが心配でもあります。

2.休日には何をして過ごしますか?
 子供と家族で出かけたり、公園で遊んだりしています。ときどき料理もします。
アウトドアが好きなので、キャンプや雪山にも行きます。
自分の健康と体力を維持するために、ランニングを定期的にしていますが、なかなか速くならないです。もっと努力が必要なのかもしれません(笑)。

先生からのメッセージ

頚椎疾患は、正しく診断し、適切な治療を行えば、症状が改善する可能性があります。痛みが続くようであれば、放置せずに脊椎の専門医がいる医療機関を受診してください。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. こちらの病院では多くの脊椎疾患に悩む患者さんの治療をされていると思いますが、先生が普段の診療で心掛けていらっしゃることを教えてください。

A. 患者さんが納得するまで説明することです。患者さんが納得できる選択肢を提示することです。患者さんの中には思い描いていた治療と違う選択を提示されて最初は不満に思われることもあると思うのですが、なぜその治療をおすすめするのかという理由をわかりやすく説明することを心がけています。最終的には自分の家族や自分自身だったらどうするかということを、今一度自分に問いかけてから、ベストと思われる選択肢を提示するようにしています。最終的にはそのような判断基準で治療方針を提示していることを説明すると患者さんやご家族も理解して納得してくださります。
また、これも当たり前のことかもしれませんが、当院のように地域の中核となる総合病院を受診される患者さんは、たとえ症状が軽微であっても正確な診断と説明を求めて来られていることが多いので、まずは患者さんが何を求めているのかを正しく把握することと、ただ経過観察で良いですよと伝えるだけでなく、診断が確定するまで精査を行なって患者さんのご希望に答えられるように心がけています。

Q. こちらの病院にいらっしゃる患者さんの特徴を教えてください。

A. 救急病院であること、地域の中核となる総合病院であるという特徴から、整形外科全体では外傷の患者さんの割合が非常に高いです。脊椎に関していうと、高齢者の椎体骨折、脊椎外傷、頚髄損傷が多いです。
救急診療科と連携して治療する脊椎外傷に関しては、できるだけ早期に緊急手術を行うようにしています。特に頚髄損傷・脊髄損傷に対しては基本的に受傷当日に緊急手術を行なっています。
骨粗鬆症性椎体骨折に関しては、保存的治療をまずは第一選択として行うようにしています。手術を要すると判断した時点で迅速に手術を選択するようにしています。最近は、受傷早期の急性期にも積極的に経皮的椎体形成術(BKP)を行うことが一般的になりつつあるので、患者さんやご家族とよく相談して決めるようにしています。

圧迫骨折(椎体骨折)

骨粗鬆症治療は、今後もさらに進む超高齢社会の重要なポイントになると考えており、クリニックなどの近隣医療機関と連携を取って骨粗鬆症治療が確実に行われるように気をつけています。

Q. 先生は、外国の方が来院された際、英会話で外来診療もされていらっしゃるそうですね。

A. はい。米国への留学経験を経て、決して流暢に話せるわけではないのですが、簡単な英会話であれば診療ができるようになったので、英語しかわからない患者さんが来院された時には積極的に私が対応するようにしています。英語で診療できますよと伝えた時に外国の患者さんが安心した表情をされるのを見ると、それだけで少し嬉しくなりますね。

公立昭和病院 藤井 賢吾 先生Q. 多くの脊椎疾患の治療経験を持つ先生ですが、その中で本日は頚椎の疾患について、お聞きしたいと思います。そもそも頚椎疾患は、なぜ起こるのでしょうか?

A. 脊椎は加齢によって変化しますが、椎間板が変性するとクッションの機能を失い、パンクしたような状態になります。椎間板の高さが低くなると次に椎体の端の変形が進み、骨棘という出っ張りが形成されるようになります。このような変化が進むことは加齢変性といって、病気ではありません。しかし、そのような変形により脊髄や神経根が圧迫されると、手足のしびれや痛み、麻痺が出てくる場合があります。これを頚椎症性脊髄症や頚椎症性神経根症と呼びます。

Q. そういった疾患にはどのような人がかかりやすいのですか?

A. 加齢変性が進むと全員にこれらの神経症状が出るわけではないのですが、日本人を含む東アジア人は骨格として脊柱管が他の人種と比較して狭い人の割合が高いことが知られています。そのため、頚椎症性脊髄症や頚椎症性神経根症に対する手術治療は日本で考案された術式が広く行われています。
骨性病変が頚椎の狭窄をきたす病気として頚椎後縦靭帯骨化症という病気もあります。糖尿病との関連性や遺伝傾向があることが知られていますが、原因ははっきりしておらず、難病に指定されています。これも日本人に多い疾患です。

脊椎と各部位の名称

加齢によって脊髄が圧迫されるようになる

後縦靱帯骨化症

後縦靱帯骨化症

公立昭和病院 藤井 賢吾 先生Q. 治療法について教えてください。

A. 片側の痛みやしびれだけの場合や、筋力低下があっても軽微である場合には、鎮痛剤を使って神経障害によって起きるしびれや痛みを和らげる保存的治療で経過をみます。片側の上肢のみの軽い症状の場合、数ヵ月程度で自然軽快することが多いです。姿勢を正し、下を向いて長時間作業を続けることを避けるだけで症状が改善する方もいらっしゃいます。

Q. 手術になるのはどういった場合ですか?

A. 数ヵ月程度保存的治療を行っても症状が改善しない場合や、脊髄症といって歩行障害が出ていたり、両手にしびれがあったり、文字を書く、箸をつかむといった動作が不自由になっている場合には手術をお勧めします。

Q. 手術にはどういったものがあるのでしょうか。

A. 手術で神経を圧迫している組織を取り除くことを除圧術と言い、頚椎の場合、除圧術には、大きく前方法と後方法の2通りのアプローチがあります。
日本人の場合には前に述べたのと同じ理由で頚椎の複数箇所の狭窄が生じることが多く、そのような場合には後方法の方が一般的に適していると言われています。
また、頚椎椎弓拡大形成術という手術も、日本で考案され、術式の改良が重ねられ、比較的安全に行えるため広く行われている方法です。
前方法は出血が少なく筋肉もほとんど切らずに椎体に達することができるというメリットがありますが、一方で気管や食道、神経などの重要な組織をよけてアプローチする必要があります。
アプローチの他にも、椎体どうしを固定する手術(固定術)を追加するか、そのまま椎体の可動性を温存するか、の選択肢がありますので、症例に合わせて術式を使い分けるようにしています。

前方アプローチの例

前方アプローチの例

後方アプローチの例

後方アプローチの例

Q. 先生が手術を行う上で気を付けていらっしゃることはありますか?

A. 当院では安全に手術を行うために、いくつか決めていることがあります。
まず、脊椎手術の全症例で、拡大鏡または顕微鏡を使用しています。術者と助手の両方が拡大視野で手術を行うことで、より小さな皮切で十分な視野を得て、細かい手術手技を安全かつ丁寧に行うことが可能になると考えています。
また、全例で術中神経モニタリングを併用しています。頭につけた電極から弱い電流を流し、手足の筋肉の上に貼ったシールから電流を検出することで術中神経障害が発生していないことを見張っておくための装置で、赴任直後に導入してもらいました。
さらに今年度、安全に脊椎にインプラントを設置するために、術中にCT画像(体内断面画像)を撮像できる透視装置を導入しました。より安全かつ確実に手術が行えると期待しています。

Q. 手術後はどういった治療を行うのでしょうか?

公立昭和病院 藤井 賢吾 先生A. 脊椎疾患は歩行障害が出ることが多いので、歩行訓練を中心とした理学療法と、上肢機能を改善するための作業療法を中心に行います。頚椎の疾患で嚥下機能に障害が出る場合には、言語療法も採り入れています。
また、術後は基本的にカラー(頚部を固定する装具)などの外固定装具が不要になるような手術を行なっています。患者さんから「頚椎の手術を行うと寝たきりになってしまうリスクがありませんか?」とよく聞かれますが、個人的にはそのような症例には遭遇したことは幸いないです。おそらく、昔はいろいろな苦労があったのではないかと思うのですが、改良や工夫によって、脊椎手術のレベルや安全性が進歩したのだと考えています。

Q. 脊椎の手術は年々進歩しているのですね?

A. はい。とくに2000年以降の進歩は目覚ましく、いまでは身体への負担の少ない低侵襲手術が一般的になっています。脊椎専門医間の情報交換も活発に行われており、私も積極的に情報を仕入れて日々の治療に活かしています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

藤井 賢吾 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

リモート取材日:2021.9.9

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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