先生があなたに伝えたいこと / 【和田山 文一郎】関節リウマチの治療は劇的に進歩しています。早期の対処で悪化を食い止めましょう。

先生があなたに伝えたいこと

【和田山 文一郎】関節リウマチの治療は劇的に進歩しています。早期の対処で悪化を食い止めましょう。

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生

兵庫県立尼崎総合医療センター
わだやま  ぶんいちろう
和田山 文一郎 先生
専門:関節リウマチ・人工関節・脊椎

和田山先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 視力が低下しないように気をつけています。治療に支障が出ては大変ですから。

2.休日には何をして過ごしますか?
 お天気が良い日には近くに登山に行きます。生駒山や信貴山、金剛山など、大阪と奈良の県境の山へよく行きます。

先生からのメッセージ

関節リウマチの治療は劇的に進歩しています。早期の対処で悪化を食い止めましょう。

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生Q. 関節が痛む疾患の中でも、関節リウマチは特に女性にとっては大変気になる病気です。そこで改めて、関節リウマチがどういう病気なのか、まず基本的なことから教えていただきたいと思います。

A. 関節リウマチの説明は、まずは滑膜(かつまく)がポイントとなります。滑膜は関節を包んでいる膜で、関節をスムーズに動かすための関節液を分泌しています。関節リウマチでは、この滑膜が増殖して炎症を起こし、破骨細胞(はこつさいぼう)がタンパク質を壊す酵素を分泌して、関節の周囲の骨や軟骨を溶かしてしまうんです。そしてやがて関節が破壊されてしまいます。

正常な関節 関節リウマチ

Q. そもそもなぜ、滑膜が増殖してしまうのでしょうか?

A. 関節リウマチは自己免疫疾患といいますね。本来、滑膜は自分自身の組織である関節に対しては異物反応や拒絶反応は起こしません。しかし、理由ははっきり分かっていないのですが、関節を自分自身の組織であると認識できなくなってしまい、増殖して攻撃してしまうんです。

Q. 原因ははっきりしないのですね。現在、関節リウマチの患者さんの数はどれくらいなのですか?

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生A. 国内だけで患者さんは60万人から70万人といわれていて、8割方は女性です。40代以降70代くらいまでで発症されることが多いです。原因については、遺伝的なことも関係しているといわれていますが、大部分は環境的な因子や体質的なことで発症するということまではわかっています。

Q. まだまだ解明すべき点があるわけですね。

A. 最近は遺伝子レベルで自己免疫疾患を起こすプロセスの解明が進んではいますが、まだまだこれからです。この解明が進むと、関節リウマチになりやすい方を事前に見つけることができるようになるかもしれません。そうすると症状が出る前、あるいは関節が破壊される前に有効な対処が可能になるでしょうね。

手の関節Q. 今は早期発見が何より大事なわけですね。自覚症状としてはどのようなことがありますか?

A. 初発症状としては、腫れて痛みがでます。初期では指の第二関節と付け根の関節、手首。それと対になる足の関節が腫れやすく、炎症を起こしているため患部は熱も持ちます。ポイントは、それらがひとつの関節ではなく複数の関節に起こることと、手でも足でも左右対称に起こるということです。それから、朝のこわばりも特徴的です。

Q. 診断はどのようにされるのですか?

A. 早期診断としては、血液検査でリウマチ因子や抗CCP抗体(※)の陽性反応を調べ、レントゲンやMRIで骨の状態を確認して、総合的に判断します。

※抗シトルリン化ペプチド抗体のこと。この抗体の有無でリウマチの診断を行う。

Q. わかりました。次に治療についてですが、どのような方法があるのでしょうか?

A. 柱となるのは、薬物療法リハビリテーション、そして、関節の破壊が進んでしまった場合の手術です。特に薬物療法はここ10年で劇的に進歩し、リウマチ関節治療の中心的な柱となっています。

Q. その薬物療法について、少し詳しく教えてください。

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生A. キードラッグはメトトレキサートと呼ばれる抗リウマチ薬です。この薬は免疫異常に関わるいくつかの酵素の分泌を抑えるもので、20年ほど前から日本でも使えるようになり、治療効果が格段に上がりました。さらに、10年ほど前に生物学的製剤が出てきたことにより、治療は劇的に進歩しました。まず、診断がついたらなるべく早い段階で、メトトレキサートの使用を開始し、有効であれば継続します。3ヵ月ほどを目安に効果を判定し、もし効果が不十分であれば、生物学的製剤を考慮するという段階的な治療を行います。

Q. 薬物治療は早いほど良いのですね。

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生A. はい、その通りです。昔は、早期の段階では関節破壊はあまり進行しないと考えられていたのですが、実は早期にこそ進行しやすいということがわかってきました。だからできるだけ早く薬を使って関節破壊を食い止めることが大事なのです。

Q. メトトレキサートで効果が見込める患者さんの割合は? また薬物療法では副作用も少し心配です。

A. 3分の2の患者さんはメトトレキサートで効果が見込めると思います。ただ、おっしゃるように副作用が出て使えない患者さんもいます。たとえば、骨髄抑制という副作用があります。血液の成分の産生が抑制されることで、貧血や、白血球が少なくなって、抵抗力がなくなったり、血小板が少なくなれば出血が止まりにくかったりします。また、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)を起こしたり、腎臓機能が阻害されたりすることも稀にあります。

Q. 生物学的製剤ではそのような副作用はあまり心配ないのでしょうか?

A. 骨髄抑制や腎機能障害は基本的には心配いりません。ただひとつ、生物学的製剤は自己免疫を抑制し関節破壊を食い止めるのですが、同時に感染に対する抵抗力が弱くなる可能性があります。ですから、感染しやすい体質になることを認識してもらって、風邪や虫歯の治療を早期に行うなどを心がけてもらうことが大事になります。
この生物学的製剤は、当初1種類だけでしたが、今は7種類、8種類と増えてきて、効果や副作用に応じて変更することが可能になっています。これも関節リウマチの患者さんには福音ですね。メトトレキサートと生物学的製剤、この2つのお薬によって関節リウマチはかなりの確率で進行を抑えることが可能になりました。

Q. なるほど。薬物治療は本当に進歩しているのですね。薬は一生飲み続ける必要があるのでしょうか?

A. 寛解(かんかい)といいますが、症状が落ち着くと薬を減らしたり、完全にやめることができる患者さんもいらっしゃいますよ。

太らないようにする イラストQ. では、リハビリテーションについて解説をお願いします。

A. 日常生活に気をつけることが、すなわちリハビリテーションです。たとえば、腹八分目に栄養のバランスを考えた食事をする、太らないようにする、無理のない範囲で散歩や運動を取り入れるなどです。そして、冷えると痛みや腫れを助長するので、関節を冷やさないことも大切です。ほかにも、サポーターなどの装具を使ったり、こちらで指導をする筋力トレーニングを継続したりすることで、日常生活への支障の軽減を図ります。

Q. 関節の破壊が進んでしまった場合の手術について、手術の種類の選択肢はあるのでしょうか?

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生A. はい。増殖した関節の滑膜を除去したり、関節を固定したりと、さまざまな方法があります。しかし、関節の破壊が進んで拘縮(こうしゅく)という状態になってしまった場合は、人工関節全置換術が適応となるでしょう。薬が良くなって、手術を受けるほど悪化される患者さんは激減していますが、その中でも下肢(かし)、特に膝関節の人工関節手術は今でも比較的多く行われています。関節リウマチの患者さんは、X脚気味になることが多いのですが、人工膝関節にすると脚はまっすぐになり、痛みもずいぶん改善され、歩くという日常的なことがほぼ支障なくできるようになります。

Q. 薬のように人工関節も進歩しているのでしょうか?

A. 人工膝関節や人工股関節は、骨との固着力が上がったことにより、長期的にその機能が維持できるようになりました。また、ポリエチレンなどの素材の進歩により、摩耗によって人工関節がゆるむというリスクも大幅に低減しています。今ではうまくいけば30年以上は大丈夫なのではないかと期待されますね。

兵庫県立尼崎総合医療センター 和田山 文一郎 先生Q. 先生のお話から、いかに治療法が進歩したのか、そしていかに早期発見が大事なのかがよくわかりました。

A. 本当にその通りで、私は医師になって30年以上になりますが、当時に比べると、驚くほどの進歩ですよ。生物学的製剤は高価という問題点はありますが、バイオシミラーも出てきていますし、薬価は少しずつ下がってもっと使いやすくなると思います。もちろん人工関節も大いに進歩しました。そういうことを経験談として患者さんにお話することで、患者さんが前向きになってくれたなら、積み重ねてきたキャリアも無駄ではないなと思います(笑)。手術が必要な患者さんも減り、早期に発見できれば、大多数の方は生活にあまり支障なく過ごすことが可能です。関節リウマチについては、悲観的になる必要はありませんから、早めに専門医をお訪ねください。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

和田山 文一郎 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2016.3.14

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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