先生があなたに伝えたいこと / 【奥村 法昭】年齢・症状・生活様式などさまざまなことを総合的に考慮した上で、ご自身に合った適切な治療法を選択することが重要です。

先生があなたに伝えたいこと

【奥村 法昭】年齢・症状・生活様式などさまざまなことを総合的に考慮した上で、ご自身に合った適切な治療法を選択することが重要です。

社会医療法人 岡本病院(財団) 京都岡本記念病院 奥村 法昭 先生

社会医療法人 岡本病院(財団) 京都岡本記念病院
おくむら のりあき
奥村 法昭 先生
専門:股関節膝関節

奥村先生の一面

1.最近気になっていることは何ですか?
まだ6歳の娘が最近スキンシップを嫌がるようになってきました...

2.休日は何をして過ごしますか?
たまにある休みは子どもと一緒に過ごさないと、知らんおっちゃん(知らないおじさん)になってしまいそうで(笑)。近くの公園なんかで遊んでいます。

先生からのメッセージ

年齢・症状・生活様式などさまざまなことを総合的に考慮した上で、ご自身に合った適切な治療法を選択することが重要です。

Q. まず初めに、股関節はどんな構造になっているのでしょうか?

A. 股関節の骨盤には寛骨臼(かんこつきゅう)というくぼみがあり、そこにボール状の大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり込む構造をしています。寛骨臼の縁には関節唇(かんせつしん)という軟骨があって、これで大腿骨頭を安定させ、さらにこれらは関節包(かんせつほう)という袋で覆われ、3つの主要な靭帯(恥骨大腿靭帯、腸骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯)でしっかりと固定されています。

股関節の構造

Q. 主な疾患にはどのようなものがありますか?

A. 代表的なものは変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。寛骨臼と大腿骨頭の間でクッションの役割をする軟骨がすり減ることで発症します。

変形性股関節症

日本人では、この疾患の8割から9割が寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)によるものだといわれています。これは、先天的に寛骨臼のくぼみが浅いために十分に大腿骨頭を覆いきれず、体重を受け止める部分の面積が非常に狭くなる病態です。そのため軟骨の限られたところに大きな負担がかかって、その部分の軟骨がすり減って変形してしまうのです。経年性の要素が大きいので、高齢になって骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が合併すると、骨の脆弱さが進行を加速させることもあります。また、腰が曲がって骨盤が後ろに倒れる(骨盤後傾)ことで、やはり大腿骨頭を覆いきれなくなって進行することもあります。ほかにも、関節リウマチによる股関節障害もありますが、これは近年の内服治療の進歩により、ひどい変形を起こすことは少なくなっています。それでも長い期間患っておられて、すでに変形してしまっていたのがさらに進んでしまうというケースもあります。

寛骨臼形成不全

社会医療法人 岡本病院(財団) 京都岡本記念病院 奥村 法昭 先生Q. 治療としてはすぐに人工股関節手術が必要なのですか?

A. いいえ、そうではなく、痛みと変形の程度に合わせた治療を行います。生活に支障がない程度であれば痛み止めや湿布、運動療法などの保存療法で対処します。水中歩行や寝転がって脚を上げるという運動も有効です。一方で、薬は長く服用すると胃に負担がかかりますし、すり減った軟骨が復活することはありませんので、保存療法を続けている間に関節の動きが悪くなって筋力が低下したり、痛みが改善しなかったりということであれば、あまり長い間我慢するよりも早めに手術を決断されるほうがいいと考えます。

Q. 人工股関節手術は進歩しているのでしょうか?また、人工股関節の耐用年数はどれくらいですか?

A. 人工股関節のパーツのうち、寛骨臼に設置するカップには、軟骨の役割をするポリエチレンライナーをはめ込みますが、そのポリエチレンの性能がとてもよくなり、以前に比べてすり減りにくくなりました。こうしたことから、今では人工股関節は30年以上の耐用年数を期待できると思います。また、ポリエチレンがすり減りにくいのでライナーを薄くでき、薄くなった分、そこに挿入する骨頭ボールを大きくできます。骨頭が大きいと可動域が広がってジャンピングディスタンス(下図参照)も大きくなり、脱臼しにくくなります。

人工股関節置換術

人工股関節置換術

Q. 大きく進歩しているのですね。手術手技の進歩についてはいかがですか?

A. 股関節に至る切開方法(アプローチ)についてさまざまな手技が開発され、それに伴い使いやすい器具も開発されています。たとえば、以前は患者さんのお尻側からメスを入れる後方アプローチ法が主流でしたが、今は、健康な筋肉を傷つけず脱臼のリスクの少ない前方アプローチ法、筋肉を部分的に切除しますが術野がしっかり広く見えることが利点の前側方アプローチを取り入れるところが多くなっています。私自身は主に前側方アプローチを採用し、可能な場合は関節包や関節包靭帯を温存する手術を行っています。

股関節に至る切開方法

Q. 次に膝関節について教えてください。まず構造からお願いします。

A. 膝関節は膝蓋骨(しつがいこつ)いわゆるお皿の骨と、大腿骨、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)から成り、関節の表面は軟骨で覆われています。軟骨と半月板で膝にかかる衝撃を吸収し、大きな4つの靭帯とその周りの筋肉で膝の安定性を保っています。

膝関節の構造

Q. やはり変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)の患者さんが多いのでしょうか?

A. はい、とても多いです。軟骨が徐々にすり減るのですが、その兆候のある軽微なものも含めると国内で2,000万人以上、5人に1人が変形性膝関節症だといわれています。股関節に比べて確かな要因がなく老化で起こるものがほとんどですが、骨折、半月板損傷や靭帯損傷などから変形性膝関節症になることもあります。

変形性膝関節症

Q. 治療法について教えてください。

A. 股関節と同じように、まずは内服薬や運動療法、そして装具療法などを併行する保存治療を施します。初期の場合は、必要に応じて負担の少ない内視鏡手術も選択肢となります。たとえば半月板の一部がはがれていて、それが痛みの主な原因となっているなら、その部分を内視鏡手術で修復します。また、日本人にはO脚傾向の方が多く、膝の内側にばかり荷重がかかっている場合は、高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)という手術で骨を矯正し、荷重を均等にさせる方法もあります。この手術は患者さんの膝を温存でき可動域も大きいというメリットがありますが、年齢的な制限や入院期間が長いというデメリットもあります。変形が高度で高齢な方には、やはり人工膝関節手術が第一選択となるでしょう。
信頼できる医師と相談しながら、年齢・症状・骨質・体格・生活様式を総合的に考慮した上で、ご自身に合った適切な治療法を選択することが重要です。

O脚の図

Q. 人工膝関節手術に種類はありますか?

A. 膝関節のすべてを人工物に置き換える人工膝関節全置換術(じんこうひざかんせつぜんちかんじゅつ)と、内側もしくは外側の一方を置き換える人工膝関節単顆置換術(じんこうひざかんせつたんかちかんじゅつ)があります。膝関節をできるだけ温存することを前提に、変形の程度、患者さんの年齢や活動性などを考慮して、そのどちらにするか選択しています。

人工膝関節全置換術

人工膝関節単顆置換術

社会医療法人 岡本病院(財団) 京都岡本記念病院 奥村 法昭 先生Q. 合併症や術後の痛みの対策について教えてください。

A. 最も対策が必要なのは感染症です。手術前から糖尿病や脂質異常症、関節リウマチなど、感染症の要因となる病気の治療がしっかり行われていることが重要です。特に高齢者は何かしら合併症をお持ちですので、当院では他科との連携をしっかり図ることを重要視しています。また、手術時間が長くなればなるほど感染症のリスクが上がりますので、手術時間を極力短縮できるように、準備や無駄のない動作をするよう、手術スタッフ一丸となって努力しています。
ほかに、早期の合併症として静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群がありますが、通常の予防措置(弾性ストッキング、フットポンプ、血栓予防薬の使用)だけではなく、早期離床・早期リハビリを推進しながら、適宜、静脈エコー検査で血栓の有無を確認しています。人工股関節の脱臼については、先に述べた人工股関節や手術法の進歩でリスクは低減していますし、入院中に理学療法士から脱臼を予防する姿勢や動作などを指導しています。
痛みについては、手術後も神経ブロック注射や副作用が出ない範囲で痛み止めを適切に使うことで、痛みを低減させる工夫をしています。

Q. 人工関節手術のリハビリはどのようなことをするのですか?

A. リハビリは手術翌日から、理学療法士のもとで筋力トレーニングや歩行訓練を開始します。3週間から4週間で、ほとんどの方が日常生活で問題なく歩ける程度まで回復して退院されます。しかし、80歳以上の方や長い間歩けなかった方で、筋力の回復まで時間を要する場合は、当院のリハビリ病棟や他のリハビリ施設へ転院の上、リハビリを継続していただいています。また、膝関節の場合は屈曲角度(可動域)の回復も大切です。可動域回復訓練を手術前からおこなっていただくことで、人工膝関節手術後の改善がより多く見込めます。

社会医療法人 岡本病院(財団) 京都岡本記念病院 奥村 法昭 先生Q. 最後に、先生が整形外科医を志された理由を教えていただけますか?

A. 小さい頃、病弱だったことが医師を目指すきっかけだったように思いますが、中でも整形外科を選んだのは、高齢化が進み整形外科の社会的ニーズが高まっているのを実感したことです。整形外科医になった頃、痛みに苦しんでいた患者さんに手術をして、元気になって退院された時、とてもやりがいのあることだと思いました。整形外科医になってよかったと思います。

取材日:2019.8.6

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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