先生があなたに伝えたいこと
【角谷 真】「診療が命」「ハイクオリティの手術」で患者一人ひとりの背景も知りながらオーダーメイドの治療を実践したいと考えています。
医療法人財団 立川中央病院 整形外科部長
すみや まこと
角谷 真 先生
専門:変形性膝関節症
角谷先生の一面
1.好きな言葉は何ですか?
好きな言葉といいますか座右の銘は、「順風満帆のときは良い、逆境におかれたとき、いかに考えどのような態度を取り、努力するかでその人の価値は決まる」。
2.特技・趣味は何ですか?
硬式テニスを小学校1年生からやっています。社会人チームにも入っていて、ドクター軍団でリーグ戦にも参戦しています。
Q. 人工膝関節の入院期間について教えて下さい。
A. 基本的には術後1週間~10日間前後で退院です。ただし、ご高齢の方や歩行がほとんど不能であった方は、3週間程度になる可能性もあります。
Q. なぜそこまで短期間の入院が実現出来るのでしょうか?
A. それは、
(1)傷口が小さい
(2)基本的に輸血しない
(3)痛みが少ない
(4)翌日歩行、翌日シャワー可能
(5)抜糸不要
という5つの理由からです。
入院期間の長さだけでなく、きちんと正座ができるような手術を目指して行います。また、手術前と手術後に写真を撮って比較できるようにしています。
Q. では、先生が人工膝関節手術に特に取り組まれていることについて教えていただけますか?
A. 他の施設でもやっておられるところはありますが、ひとつには、基本的に貧血の方以外には初めから輸血はしません。手術中に止血剤を関節の中に入れておくと、かなり出血量が抑えられますので自己血を採る必要もありません。もし出血しても、鉄剤(てつざい:血液中の鉄欠乏性貧血の治療に用いる薬)を服用する程度で十分です。出血する度に止血しますから、血が出ないように患部をぎゅっと縛る駆血帯(くけつたい:血流を止めるバンド)も一時的な使用にとどめています。
Q. 膝の手術では傷の大きさはどれくらいになるのでしょうか?
A. LIS(Less Invasive Surgery)の考え方で手術しています。これは「正確な手術が行える適切な大きさでできるだけ小さい切開をする」という意味です。手術の傷口を最も小さくできる状態の患者さんであればMIS(Minimally Invasive Surgery:最少侵襲術)と呼ばれる10cmほどの傷で手術する方法で行いますし、それが難しい患者さんは11cmぐらいです。患者さんの膝の状態によって傷口の大きさを変えています。
Q. 手術の方法も患者さんによっては変わるものなのですね。
A. はい。そのために、手術前にレントゲン写真やCTを撮って、患者さんがまっすぐに立てるための人工膝関節を設置する角度の検討を行って作図します。同時に手術方法についても綿密に計画しています。これらをそれぞれの患者さんの膝の状態や症状に合わせて毎回行っています。
たとえば、極度のO脚の方は内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)が縮んでしまっていますので、左右対称にするためにそれを曲げるのか、伸ばすのか、どう整えるか、そういったことも術前にシミュレーションしておきます。全人工膝関節置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)は、バランス調整の手術ともいえるのです。作図して正確な手術を行うことは、長く保つ良い家を建てるのと似ているかもしれません。
Q. わかりました。やはり手術後の痛みが心配な方も多いと思います。
A. そうでしょうね。痛みに関しては、当院では傷をふさぐ前に痛み止めの注射を打っています。術後すぐに、少ない痛みで膝が動かせるようになっています。本当に痛い期間である、手術直後からの3日間の痛みが少ないので、リハビリに積極的に取り組めますし、夜もよく寝られます。
Q. 痛そうな抜糸はないのですか?
A. 私は切開した表面を留めるのに糸やホッチキスは使いません。傷の内側を丁寧に縫って傷を閉じ、その上から医療用の接着剤でコーティングします。さらに傷口が直接見えないようフィルムと防水テープを当てています。最もクリーンな手術室でそれらの処置をすることで、消毒しなくてもばい菌が入るということはほぼありません。また、膝がパンパンに腫れることを防ぐために、手術後に膝から血を吸い出すためのドレーンという管も使いません。代わりに膝をしっかり冷やすことで腫れないようにしています。
Q. ありがとうございました。最後にぜひお聞かせいただきたいのが、患者さん同士の集いについて。先生独自の取り組みがおありになるそうですね。
A. はい、2週に1度、術後1週目、2週目の患者さんに集まっていただき、手術後の思いやリハビリなど最新情報を共有していただく機会の場を設けています。そこでは、2週目の方が1週目の方を励まされたり、アドバイスをされたりして横のつながりもできます。これはマラソンと同じだと思います。1人で走ると精神的にもつらいですが、仲間と一緒だと励まし合いながら走れますよね。いずれは、今まで手術をされた患者さんに呼びかけをして、ひとつの大きな集会を開きたいと思っています。人工膝関節手術を受けられた患者さん同士が仲間を作って、マラソンのように前向きに進んでいただきたいと心から願っています。
Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。
取材日:2014.9.11
*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。
先生からのメッセージ
「診療が命」「ハイクオリティの手術」で患者一人ひとりの背景も知りながらオーダーメイドの治療を実践したいと考えています。