先生があなたに伝えたいこと / 【山下 彰久】気付かないうちに起こりうる圧迫骨折は、放置するとさまざまな悪影響を及ぼすため、背中や腰に異変を感じたら早めの受診をお勧めします。

先生があなたに伝えたいこと

【山下 彰久】気付かないうちに起こりうる圧迫骨折は、放置するとさまざまな悪影響を及ぼすため、背中や腰に異変を感じたら早めの受診をお勧めします。

地方独立行政法人 下関市立市民病院 山下 彰久 先生

地方独立行政法人 下関市立市民病院
やました あきひさ
山下 彰久 先生
専門:脊椎脊髄

山下先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 SDGs(持続可能な開発目標)に興味を持っていて、地球の自然環境を守るために少しでも役に立ちたいと思い、海でプラスチックごみを回収する活動に参加しています。自分のできる範囲で身近なことから取り組もうと心がけています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 海や山などの自然の景色を見るのが好きで、コロナ禍の中、今は控えていますが観光地を巡ったり、ドライブやウォーキングを楽しんだりしています。自然に触れるとリフレッシュできます。

先生からのメッセージ

気付かないうちに起こりうる圧迫骨折は、放置するとさまざまな悪影響を及ぼすため、背中や腰に異変を感じたら早めの受診をお勧めします。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 圧迫骨折とは、どのようなものですか?

A. 骨粗しょう症によって骨の強度が低下して起こる脊椎の骨折で、正式名称は骨粗鬆症性椎体骨折(こつそしょうしょうせいついたいこっせつ)といいます。脊椎は横から見ると頚椎(けいつい)という首の骨から始まり、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)と連なり、S字曲線を描いています。中でも、上下からの荷重ストレスが集中する箇所、つまり弯曲する脊椎の中心部にあたる胸腰椎移行部と呼ばれる部分に骨折が多く起こります。

脊椎の構造

地方独立行政法人 下関市立市民病院 山下 彰久 先生Q. どのように骨折するのですか?

A. 骨折のきっかけは転倒や尻もちが多いですが、咳やくしゃみ、物を抱える動作などによる身体の弾みのほか、特に原因がないまま日常動作の中で気付かないうちに起こることもあります。圧迫骨折の患者さんの約半数は、知らないうちに徐々に背骨が潰れています。腰が曲がり、身長が低くなったり、背中や腰が痛み始めたりして、医療機関を受診されてからわかる方も少なくありません。

Q. どの骨が潰れるのですか?

A. 脊椎は、前方(腹部側)にある椎体(ついたい)、後方(背部側)にある神経が通る脊柱管(せきちゅうかん)や椎間関節(ついかんかんせつ)、棘突起(きょくとっき)などから成り立っています。スポンジ状の海綿骨でできている椎体が約70%の荷重を支えているのですが、骨粗しょう症になるとそこの強度が低下してもろくなります。骨折のきっかけにもよりますが、圧迫骨折の多くはこの椎体が先に潰れてしまうのです。

圧迫骨折

Q. 圧迫骨折の患者さんは増えてきていますか?

A. 骨粗しょう症になりやすい60代以降で発生し、年齢とともに指数関数的に増加することが疫学調査でわかっています。現在、その発生数は年間100万人といわれ、高齢社会に伴って増えています。男女を問わずに起こる可能性がありますが、特に女性に多いのが特徴です。
骨粗しょう症による骨折は、脊椎以外にも太ももの付け根の大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)や手首、腕の付け根などにも起こりますが、脊椎の骨折が最も発生率が高くなっています。

Q. 患者さんはどのようなタイミングで受診されているのですか?

A. 転倒や尻もちをついた後に腰が痛む際に来院されたり、痛くて起き上がれない場合は救急車を呼んだりされています。また、最近なんとなく腰が痛い、あるいは腰が重いということで整形外科を受診するパターンも少なくありません。圧迫骨折を放置していると偽関節(ぎかんせつ)という状態になることがあり、神経障害を引き起こして手術が必要になることもあるので、早めに受診することが大切です。

Q. 偽関節とはどのような状態なのですか?

A. 通常、圧迫骨折自体は3~6カ月ぐらいで自然に骨が固まってくるのですが、1年以上経過しても骨が固まらず、寝起きの動作のたびに骨がパカパカと動くような状態を偽関節といいます。椎体の後ろにある脊柱管には神経が通っており、背骨が不安定な状態だと神経に悪影響を及ぼしてマヒが起こって脚がしびれる、または力が入らなくなることもあります。
偽関節のほかにも、椎体が潰れて著しく変形すると背骨全体の後弯(こうわん)変形を招き、慢性的な痛みのほか、呼吸器や消化器などの内臓障害、逆流性食道炎を引き起こすこともあります。また、痛みや変形による身体的苦痛により活動性が低下し、やがて介護が必要になって健康寿命を縮めてしまう恐れもあります。

後弯変形の例

地方独立行政法人 下関市立市民病院 山下 彰久 先生Q. 圧迫骨折はどのように診断されるのですか?

A. 最初に背骨のレントゲン撮影を行います。前、横からのほか、寝た状態と座った状態、あるいは身体を反らしたり曲げたりした状態で撮影し、骨折の診断を行います。骨折の有無だけでなく、どのような骨折なのかを見極めるために、CTやMRIなどの精密検査を追加して総合的に診断します。それによって、椎体だけでなく神経にも損傷が及ぶ不安定な骨折を起こしていないかということを早期に見極めます。
また、MRI 検査を行うと、例えば癌の転移や細菌の付着など、画像所見は圧迫骨折と似ているものの全く異なる病気があり、そうした疾患の判別ができます、さらに最近では、MRIで圧迫骨折がどのような経過をたどるかということを予測することも可能になったので、骨折の初期段階から適切な治療ができるメリットがあります。

Q. 圧迫骨折の治療方法を教えてください。

A. コルセットを装着して少しずつ日常生活に復帰するためのリハビリ治療を行い、症状によって痛み止めの薬を併用することが基本となります。多くの場合、こうした保存治療によって症状が落ち着いてきますが、骨折後2カ月ほど経過しても寝起きの動作で痛みがある場合や、1年ほど経過しても骨がくっつかず偽関節の状態で痛みやしびれがある、あるいは骨折によって神経を圧迫して脚が痛む、脚に力が入らないなどのマヒ症状が出現した場合は、手術を検討することもあります。

コルセットの例

Q. どのような手術ですか?

A. 潰れた骨の中にセメントを詰め込むBKP(Balloon Kypoplasty:経皮的椎体形成術)というもので、ご高齢の方でも安心して受けられる体への負担が少ない手術法の1つです。適切な時期に手術をすれば、高い除痛効果が期待できます。
先端に風船がついた金属の棒を小さな皮膚切開部から椎体に挿入し、風船を膨らませて潰れた椎体の形を戻し、中にセメントを詰め込む手術です。これにより痛みを早期に和らげ、神経症状や背骨の変形を最小限に抑えることができます。ただし、椎体の壁がしっかり残っているような状態でなければ、セメントを詰めることができません。骨折の状態によっては、ボルトで背骨を固定する固定術や、ひどく破壊された椎体を切除して金属で置換する術式を選択せざるを得ないケースもあります。

BKP

固定術の例

Q. 治療期間はどれくらいかかりますか?

A. 圧迫骨折は必ずしも入院の必要はないので、外来診療を続けることも可能です。痛みが強くて動けない場合や、一人暮らしなどの諸事情で入院治療を希望される場合は、医師にご相談ください。手術を行う場合は入院が必須となり、BKPなら1週間から10日間程度、固定術などの手術の場合は1~3カ月程度の入院が必要となります。
BKPの場合は、術後の翌日以降には痛みが和らぐため、早速日常生活を想定したリハビリ、歩行訓練や転倒しにくい生活指導を行います。術後しばらくはセメントを入れた周辺が骨折しやすくなるため、約3カ月間はコルセットを装着していただき、定期的な検査を続けていきます。

Q. 圧迫骨折を予防する方法を教えてください。

A. 予防の鍵は3つあります。1つ目は圧迫骨折の原因となる骨粗しょう症の予防と治療です。60歳以降は定期的に骨密度検査を受け、骨の状態をチェックするとともに、食事に気を配ることが大切です。骨の基礎となるタンパク質やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどが含まれた、骨に良い食品をバランス良く摂取してください。また、糖尿病や高血圧といった生活習慣病や、アルコールの過剰摂取も骨粗しょう症を助長するため、持病のある方は治療や生活指導を受けて骨を大切に維持しましょう。また、すでに骨粗しょう症の治療を受けておられる方も、薬の変更や追加などについて積極的に医師に相談することも必要です。
2つ目は転倒しにくい、または転倒しても骨折を起こしにくい体作りです。日本整形外科学会では、年齢を重ねることで移動機能が低下するロコモティブシンドロームを予防するための対策トレーニング(ロコトレ)を勧めています。こちらを参考に、定期的な運動習慣による筋力の向上、生活習慣病の予防、バランス力の強化をはかりましょう。もちろん、心臓などに持病のある方は激しい運動は避けましょう。自宅でできるハーフスクワットのような軽い運動を毎日コンスタントに続けることが大切です。
3つ目は生活環境の見直しや整備です。ご高齢の方は転倒予防のために杖を持つ、あるいは履きなれた靴を履く、重いものを抱えない、起き上がる時に勢いをつけないなど、圧迫骨折を起こさない生活動作を心がけてください。さらに、ベッドの導入やトイレ・浴室の手すりの設置のほか、生活環境をバリアフリー化する住宅改修も検討してみましょう。

地方独立行政法人 下関市立市民病院 山下 彰久 先生Q. ありがとうございます。では最後に、先生が治療において心がけておられることを教えてください。

A. レントゲンやMRIなどの画像診断だけに頼ることなく、一人ひとりの患者さんをしっかりと診ることを意識しています。患者さんが何に困っていらっしゃるのか、痛みの原因は本当にその骨折にあるのかということを慎重に見極め、患者さんのお困りごとをきちんと解決できる医師であろうと、いつも自身に言い聞かせています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

山下 彰久 先生からのメッセージ

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リモート取材日:2021.2.22

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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