先生があなたに伝えたいこと / 【和田 誠】膝の疾患の治療はPRP療法などの新しい選択肢が増えています。

先生があなたに伝えたいこと

【和田 誠】膝の疾患の治療はPRP療法などの新しい選択肢が増えています。

医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック 和田 誠先生

医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック
わだ  まこと
和田 誠 先生
専門:膝関節(超音波ガイド下膝関節注射)・スポーツ整形(スポーツにおける筋損傷)

和田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 AI(人工知能)の進歩です。先日初めてChatGPTを使ってみましたが、情報源など怪しいところもありますが、あっという間に評論家顔負けの文章が出来たのには驚きました。オリジナルイラストもAIですぐに作れ、著作権もいらないようなので、学会の発表で活用できそうです。

2.休日には何をして過ごしますか?
 ゴルフをすることが多いです。前はよくジョギングもしていたのですが、最近サボり気味だったので時間があるときは走るようにしています。

先生からのメッセージ

膝の疾患の治療はPRP療法などの新しい選択肢が増えています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 多くの方が膝の痛みに悩まれていますが、この痛みはなぜ起こるのでしょうか? 膝関節の構造についても教えてください。

A. 膝関節は大腿骨(だいたいこつ)と脛(すね)の骨である脛骨(けいこつ)、膝のお皿の骨である膝蓋骨(しつがいこつ)から成り、大腿骨と脛骨の間にある半月板という組織がゴムパッキンのような役目を果たし、周囲の強靭な靭帯が関節の動きを安定させています。関節の周囲は軟骨というクッションのような組織で覆われ、なめらかに動くようになっています。
膝の痛みで来院される方は、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)の場合が多いです。ほかには、スポーツでジャンプの着地時に半月板を傷めたり、ラグビーのようなコンタクトスポーツの衝撃で前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)を切ったりして来院される方もいます。

膝関節の構造

変形性膝関節症

Q. 変形性膝関節症とはよく耳にしますが、どのような疾患なのでしょうか?

A. 変形性膝関節症は、主に加齢によって軟骨がすり減ることで関節が変形し、痛みが起こるようになる疾患です。軟骨がすり減ると、軟骨が摩耗してできるかけらによって滑膜(かつまく)が炎症を起こして膝に水が溜まったり、半月板に負荷がかかることで靭帯に痛みを感じたりするようになります。
日本人の生活様式も関係しているかと思いますが、和式トイレの使用や正座、布団での寝起きは洋式の生活に比べて膝を深く曲げ伸ばしすることになり、関節への負荷が増します。40代後半から症状があらわれ、変形が進んで50~70代で来院される方が多い印象です。女性に多くみられますが、これには遺伝子や女性ホルモンとの関連も指摘されています。

Q. 変形性膝関節症の治療法について教えてください。

A. 変形性膝関節症になる背景には、関節に負荷がかかる生活習慣や筋力の低下が考えられます。膝関節は歩行時に体重の影響を大きく受ける荷重関節ですから、体重管理も重要です。痛みを訴える患者さんには「マイナス3kgを目指しましょう。まずは毎日体重計に乗ってください」とお話ししています。そして、なぜ変形するに至ったか、原因を探ります。
私たちは股関節と膝関節、足関節(そくかんせつ:足首のあたりの関節)の3つの関節で重心のバランスを取っていますが、人によって脚の形や股関節の動きは異なり、足首や股関節が悪いために膝に負担がかかっていることがあります。そのため、当院では超音波(エコー)も使ってどの部位が原因で痛みが起こっているか、理学療法士と協力しながら時間をかけて評価します。そのうえで症状に応じて痛み止めも使いながら運動療法を併せた保存療法から始めます。
変形が軽度の方の場合、足底板(インソール)を使ってO脚を矯正し、関節内にヒアルロン酸を注射することもあります。ひざを保護する成分であるヒアルロン酸の注射で初期の変形性膝関節症の痛みを和らげることが期待できます。ほかには、「PRP療法」(ぴー・あーる・ぴーりょうほう)という再生医療もあります。

足底板

Q. PRP療法について詳しく教えてください。

A. 患者さんご自身の血液から組織の修復を促す成長因子を放出している血小板成分を遠心分離機で抽出し、濃縮して得られる「PRP(Platelet Rich Plasma):多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)」を関節や靭帯に投与することで、痛みを和らげ、炎症を鎮めることが期待できる治療法です。変形性膝関節症は関節内に、肉離れや靭帯損傷の場合は関節外に投与します。変形性膝関節症の方は加齢で治癒力が落ちていることが多いので、PRPの投与で治癒力を高める効果も期待できます。

PRP療法イメージ図

PRP療法イメージ図

Q. 最初からPRP療法を求められる患者さんもいますか? PRP療法にも種類があるのでしょうか?

A. まずは保存療法から始めますが、ヒアルロン酸注射と同時にPRP療法を行うこともありますし、いまはご自身でインターネットなどから知識を得て最初からPRP療法を希望される方もおられます。PRP療法には抽出の仕方で白血球の少ない「LP-PRP」と多い「LR-PRP」があり、当院では患者さんの病態に合わせて配合を決めています。

Q. PRP療法はどのくらいの頻度で行うべきでしょうか? PRP療法のメリット、デメリットについても教えてください。

医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック 和田 誠先生A. まずは一回行って様子をみます。軟骨の再生力を上げ、炎症を抑えることが期待できますが、効果がどれくらい持続するかは個人差があり、数ヵ月後に再投与すべき場合もあります。人工膝関節になる前の時間稼ぎとして痛みを抑えて快適に日常生活を過ごすことができるようになるメリットは大きいです。
デメリットとしては、自費診療(保険適用外)となるため、治療に費用がかかることでしょうか。効果には個人差があり、変形が進む前に行う方が成績はよいとされていますが、あまり効果がみられない方もおられます。また、一度変形した関節が元に戻るということではありません。

Q. 手術に頼らない治療も進歩しているのですね。今後、再生医療はさらに進歩していくのでしょうか?

A. PRP療法は近年症例が増え、さまざまなデータが蓄積されつつありますし、ほかにも患者さんご自身の脂肪細胞から幹細胞を取り出して患部に注射する「脂肪幹細胞治療」の研究なども進められています。再生医療を行う医療機関はまだ少なく、治療費が高額になるのがネックですが、今後ニーズが増えれば費用が安くなることも考えられます。再生医療の研究は発展途上で、今後さらに進歩し、選択肢も増えていくでしょう。

Q. 先生が日々の診療で心がけておられることがあれば教えてください。

A. 膝の痛みは半月板近くの滑膜や靭帯、筋肉、神経の癒着などさまざまな原因が考えられます。超音波(エコー)を使って筋肉や血流を評価し、何がその患者さんの膝の痛みを引き起こしているのかをピンポイントで見極め、治療と再発防止に努めていきたいと考えています。

医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック 和田 誠先生Q. 先生が医師を目指されたきっかけについて教えてください。

A. 高校時代に十二指腸潰瘍になり、そのときにお世話になった消化器内科の先生がわかりやすく丁寧に説明してくれたことがきっかけで身体の仕組みに興味を持つようになりました。自分もそういう存在になりたいと医師を志しました。

Q. ありがとうございました。膝の痛みに悩んでいる方にメッセージをお願いします。

A. 膝の痛みには、姿勢の悪さや普段の動作、筋力の低下などさまざまな原因があります。痛みの原因を突き止め、再発を防ぐためにも、気になることがあれば専門医を受診してください。
医師任せではなく、体重管理や日常生活の動作など、患者さんご自身の意識改革も必要です。私も皆さんの症状に応じたリハビリ内容を提案し、モチベーションアップにつながるようなアドバイスを行っていきますので、いつまでも健康で元気に歩くために、一緒に治療していきましょう。

Q. 最後に患者様へのメッセージをお願いいたします。

和田 誠 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

リモート取材日:2023.3.31

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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