先生があなたに伝えたいこと / 【髙井 浩和】自分の関節痛は何が原因か、どういう状態なのかを正確に知ることが大事です。整形外科医は手術を勧めることが多いかもしれませんが、絶対ではありません。 自身の病状を知った上で、納得のいく、自分に合った治療法を選びましょう。痛みは本人しか分からず辛いものです。一人で悩まず、病院へ来て御相談ください。

先生があなたに伝えたいこと

【髙井 浩和】自分の関節痛は何が原因か、どういう状態なのかを正確に知ることが大事です。整形外科医は手術を勧めることが多いかもしれませんが、絶対ではありません。 自身の病状を知った上で、納得のいく、自分に合った治療法を選びましょう。痛みは本人しか分からず辛いものです。一人で悩まず、病院へ来て御相談ください。

医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 髙井 浩和 先生

医療法人社団 寿量会 熊本機能病院
たかい ひろかず
髙井 浩和 先生
専門:股関節,膝関節

髙井先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
ナビゲーション支援手術の普及は日本ではまだまだですが、海外では既に一般的です。日本でももっと当たり前に導入されて活躍する日が近いのではないでしょうか。今後はさらに進歩した「手術用ロボット」の活躍に期待しています。そのロボットには、患者さんのストレスだけではなく外科医のストレスも減らして欲しいですね。

2.休日には何をして過ごしますか?
普段はまだ小さい娘たちと一緒に遊んでいます。家に友人を招いてバーベキューをしたり、ワインやビールを楽しんだりすることも楽しみのひとつです。以前、家族とドイツの大学病院へ人工関節の勉強のために留学していたので、また休みを見つけて海外に行きたいですね。

先生からのメッセージ

自分の関節痛は何が原因か、どういう状態なのかを正確に知ることが大事です。整形外科医は手術を勧めることが多いかもしれませんが、絶対ではありません。
自身の病状を知った上で、納得のいく、自分に合った治療法を選びましょう。痛みは本人しか分からず辛いものです。一人で悩まず、病院へ来て御相談ください。

【股関節の仕組みと疾患】

股関節の構造と働きQ. 股関節の構造と働きについて教えてください。

A. 股関節は、寛骨臼(かんこつきゅう)とよばれる骨盤側のくぼみに、大腿骨の先端にある大腿骨頭(だいたいこっとう)と呼ばれる丸い部分がはまり込む構造をした関節です。その関節面は軟骨で覆われており、滑らかな動きをするとともに衝撃を吸収します。股関節の一番の働きは、体幹を支えることです。膝関節と同じように、体重が常にかかっている荷重関節の1つです。

Q. 股関節の代表的な疾患は何でしょうか?

A. 最も多い疾患は、軟骨が少しずつすり減って骨が変形する変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。 原因の多くが加齢によるものですが、遺伝的に骨盤の受け皿に対して大腿骨の被りが浅い寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)の人は若くても変形性股関節症になる可能性があります。初期のうちから痛みを感じる人もいれば、股関節に違和感や痛みを覚えながら徐々に動きにくくなる人もいます。 アジア人の女性に比較的多く、骨格や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が影響しているといわれています。

変形性股関節症

医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 髙井 浩和 先生Q. 変形性股関節症になると、どんな治療をするのでしょうか?

A. まずは痛みや炎症を抑える内服薬などによる治療で、一時的に症状が落ち着けば運動療法に移ります。「痛いから」と関節を動かさずにいると筋力や代謝が落ち、症状が悪化してしまうので、股関節の周りの筋肉を鍛え、関節の柔軟性を保つストレッチやダイエットを取り入れることが大切です。

Q. それでも痛みが引かない場合の処置は?

A. 内服薬や運動療法などの保存的治療をしても痛みの改善が見込めない場合は、外科的な処置が必要となります。変形性股関節症の前期・初期の処置としては、寛骨臼を切って回転させることで骨盤の被りを深くする寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)があります。長期的に関節の変形を防ぎ自分の骨を維持できる手術ですが、対象は比較的年齢が若くて関節面の軟骨変性の進行が軽度な人に限られます。
投薬や運動療法で回復が見込めずに骨切り術もできない場合、最終手段として人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)を検討します。これは関節自体を人工物に置き換えて、痛みを取り除いて関節の滑らかな動きを取り戻すことができる手術です。

人工股関節置換術の例

Q. 人工股関節そのものは以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. これまでは、寛骨臼側の金属部分と骨頭ボールの間にあるポリエチレンライナーと呼ばれる部分が摩耗してしまう問題がありました。ポリエチレンが摩耗して発生する摩耗粉(まもうふん)が原因となり、「骨溶解(こつようかい)」がおこることで徐々に人工股関節の固定性が損なわれ、弛みが生じてくるのです。 現在はそのポリエチレンが改良されて摩耗しにくくなり、耐久性が上がりました。さらに、摩耗しにくくなったことで、ライナーを薄くすることができるようになり、骨頭のボールを従来より直径で10mmほど大きくすることができるようになりました。骨頭ボールを大きくすることにより、関節の可動域が広がるだけでなく、人工股関節の脱臼のリスクも軽減します。

ポリエチレンライナー

ナビゲーションシステムQ. 人工股関節手術で特色あるシステムを利用しているとお聞きしました。

A. 整形外科では手術用のナビゲーションシステムを導入しています。このシステムは人工股関節をより正確に設置するためのコンピューターによる手術支援ツールです。術後の代表的な合併症である脱臼が起こる原因のひとつに、人工股関節の設置位置や設置角度の不良が考えられていますが、このシステムを導入することによって、最適な設置位置や設置角度が実現できるようになります。そうすることによって、脱臼のリスクを低減するだけでなく人工股関節にかかる力も最適化できるので、耐用年数を延ばすことが期待できます。具体的には、CT撮影データを用いて術前に人工股関節をモニター上で配置するというシミュレーションを行い、実際の手術の際にはモニターを確認しながらそれを再現するのです。以前は、その医師個人の経験や感覚だけで行われてきた手術を、客観的なデータを基に術者・助手が判断しながら、より安心・安全に行うことができます。

【膝関節の仕組みと疾患】

膝関節の構造Q. 次に膝関節について構造とそれぞれの部位や働きを教えてください。

A. 膝関節は、膝蓋骨(しつがいこつ)、大腿骨、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)からなり、関節の表面は軟骨が覆われています。軟骨と半月板で膝にかかる衝撃を吸収し、大きな4つの靭帯と、その周りの筋肉で膝の安定性を保っています。

Q. 膝関節の代表的な疾患について教えてください。

A. 代表的な疾患は、軟骨がすり減ることで骨同士が削り合い徐々に変形する、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。その徴候を持つ人の数は軽度なものを含めると国内で2,000万人以上、すなわち5人に1人が変形性膝関節症だといわれています。また、靭帯損傷や骨折、半月板損傷などの外傷からも、将来的に変形性膝関節症を患う可能性があります。

変形性膝関節症

Q. 変形性膝関節症の治療法について教えてください。

A. 股関節と同じように、まずは内服薬や運動療法による保存治療を施します。初期の場合は、必要に応じて負担が少なく応急処置をする膝関節鏡(ひざかんせつきょう)という内視鏡手術も行います。進行してくると、患者さんの年齢が若くО脚が強い場合は、高位脛骨骨切り術(こういけつこつこつきりじゅつ)で骨を矯正し傷んだ関節面の負担を減らす手術を行います。自分の膝関節を温存し、可動域も大きいというメリットがありますが、年齢的な制限や入院期間が長いというデメリットもあります。変形が高度で高齢な方には、人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)を行います。信頼できる医師と相談しながら、年齢や症状、骨質、体格、生活様式を考慮した上で、自分の病状に合った適切な治療法を選択しましょう。

人工膝関節置換術の例

Q. 人工膝関節置換術にもナビゲーションシステムを導入されているのでしょうか?

A. 膝関節の手術にもナビゲーションシステムを導入したことにより、手術時に骨を切る角度、切る量を細かくシミュレーションすることができるようになりました。人工膝関節置換術は骨を切るだけの手術ではなく、靭帯のバランスを調整し膝関節を安定させることが重要です。そのためにも正確な骨切りは必須となります。また、両膝の手術をされる方や、同じような変形の方は、ナビに残った過去のデータを参考にすることにより、より正確に手術を行うことができます。

Q. 「人工関節センター」と通常の整形外科との違いは何でしょうか?

A. 「人工関節センター」では整形外科医が主体となって人工関節に特化した治療と研究に励んでいます。患者数が多いので手術件数も多く、経験豊富な医師が多く在籍していることが一番の特長であり強みだと思います。例えば当院では、医師は整形外科専門医が15名、人工関節を専門の1つとする医師も6名おり、最新の年間手術実績は人工股関節250件、人工膝関節300件程まで増えています。日々のカンファレンスを通してそれぞれの知識を共有、継承することができるので、医師にとっても患者さんにとっても、より安心・安全な治療が行える環境として恵まれていると思います。
また、当院では、理学療法士、作業療法士が計130名ほど在籍しており、その他にも看護師やソーシャルワーカーなどのコ・メディカルスタッフ達も人工関節に対する広い知識を持っています。

写真右は人工関節を学び始めた時から指導していただいている高橋 知幹先生
*写真右は人工関節を学び始めた時から指導していただいている高橋 知幹先生

Q. 先生のこれまでのご経験の中で、印象に残っているエピソードを教えてください。

A. 遠方からWebサイトを見て、すがるような思いで来院された女性の患者さんです。彼女は関節リウマチによる重度のX脚を患っておられました。すり足でゆっくりでしか歩けない状態でしたが、両膝とも人工膝関節手術を行ったことで痛みが取れ、劇的に歩容(ほよう:歩くさま)が改善し、別人のようにすらすらと歩いて帰られた姿が印象的でした。これほど変わるものかと人工関節手術の素晴らしさを実感しました。

医療法人社団 寿量会 熊本機能病院 髙井 浩和 先生Q. ここ最近の取り組みについて教えてください。

A. 2016年の熊本地震によって、阿蘇では整形外科医も足りない状況に陥りました。医療過疎地でスタッフや機材も限られていますが、医療を必要としている人は多いのです。当院では、週に1度は交代で専門医が阿蘇の病院へ出張し、外来診療をサポートしています。手術が必要な時は当院に来院していただき、術後のリハビリや日々の外来診療は阿蘇の地元で対応することになります。いずれは他の県内の医療過疎地でも同じように医療を受けていただけるような体制づくりをしたいと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

髙井 浩和先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.12.7

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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