先生があなたに伝えたいこと / 【山崎 琢磨】個々の患者さんに適した治療を行うために、股関節の変形の有無だけではなく痛みの生じている部位をつきとめることが大切だと思っています。

先生があなたに伝えたいこと

【山崎 琢磨】個々の患者さんに適した治療を行うために、股関節の変形の有無だけではなく痛みの生じている部位をつきとめることが大切だと思っています。

独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター 山崎 琢磨 先生

独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター
やまさき たくま
山崎 琢磨 先生
専門:股関節

山崎先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
広島東洋カープの調子でしょうか。連敗が続いたときは、どうしたものかと不安でした。昨年までチームドクターの一人としてサポートしていましたので、私のせい(?)と勝手に思い込んだりしました。試合に勝つとホッとして、負けると翌朝の通勤中にラジオを聴くのがツラいです(笑)。

2.休日には何をして過ごしますか?
少年野球をしている長男と一緒にキャッチボールをしたり、庭で家庭菜園をしたりしています。夏に向けてトマト、キュウリ、ピーマン、枝豆、とうもろこし、さつまいも等を植えたので、収穫できる日が楽しみです。時間が許せば魚釣りやBBQなどを楽しむこともあり、基本的にアウトドアが好きです。

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先生からのメッセージ

個々の患者さんに適した治療を行うために、股関節の変形の有無だけではなく痛みの生じている部位をつきとめることが大切だと思っています。

Q. まずは股関節の構造について教えてください。

A. 股関節は球関節といって、ボール状の骨頭(こっとう)と受け皿となる寛骨臼(かんこつきゅう)から成り立っています。あらゆる方向に動かすことができ、かつ体重をしっかりと受け止めることから、可動性と支持性を保つ役割を担っています。このどちらかが失われると関節に痛みが生じ、変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)といわれる疾患を引き起こします。

Q. 具体的に関節がどうなって、痛みが出てくるものなのですか?

A. 関節が動かせなくなるより先に痛みが出てきます。まずは、負荷のかかっている関節周囲の組織が傷んできて、股関節を安定させる力が弱まってきます。さらに、軟骨がすり減って関節内に遊びができてくると、骨は関節の適合性を維持しようと、その遊びを埋めるように骨(骨棘:こつきょく)が作られるようになります。このため、ボールの形状をした骨頭は変形して球形を失い、支えとしては代償できるようになっても、動かしにくくなります。支持性が失われたせいで、それを補うために骨が変形し、逆に可動性が犠牲になってしまうのです。
関節の痛みは、軟骨がすり減ることで起こると考えられがちですが、それは変形が起こる過程の現象の一つにしか過ぎません。軟骨に神経があるわけではないので、軟骨そのものは痛みを感じません。変形性股関節症が進むプロセスの中で、さまざまな場所から痛みが生じると考えられます。

Q. 変形性股関節症を引き起こす原因は何ですか?

A. 日本人の場合は、変形性股関節症を患っている人の8割が寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)に起因しているといわれています。これは骨頭を覆う屋根となる骨(寛骨臼)が浅い骨盤形態で、海外に比べて日本で圧倒的に多く、女性の方が男性よりも多いため、日本人女性は変形性股関節症を来しやすいといわれています。屋根のかぶりが浅いために十分に関節を支えきれず、その分まわりの組織、関節を包む袋(関節包)や靭帯、筋肉に負担がかかるとともに、軟骨や骨も次第に傷んできます。先ほどお話ししたように、関節の安定性が得られにくくなるため、なんとか安定させようと周りの筋肉なども大きな負荷を受け、股関節運動に関わる組織全体が傷んでいくのです。

独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター 山崎 琢磨 先生Q. ほかの2割の原因は何ですか?

A. 体重が多くて過剰に股関節に負担がかかること、または何らかの外傷が引き金になることもあります。ほかに、関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)や大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)など、股関節の支持性が悪化する疾患に続発して生じるケースもあります。

Q. 診断はどのようにされるのですか?

A. 患者さんは痛みを訴えて来院されるので、まずは、どういうときにどこがどう痛むのかをじっくりお聞きしています。そして、X線、CTやMRIなどで画像診断を行います。ただ、画像上で問題が見られる場所から痛みが出ていると単に決めつけてしまわず、ほかに痛みの原因がないか慎重に見極めたうえで、評価するようにしています。あきらかに関節の変形がひどい場合は、関節に問題があると判断しやすいですが、あまり変形の進んでいない段階で痛みが出ている場合は、関節の中以外にも腱や靭帯が傷んでいたり、関連する病態が見つかったりすることもあります。超音波(エコー)を使って、関節周囲の軟部組織にも痛みの原因がないかを確かめるなどして、総合的に診断するようにしています。

Q. 外来ではどんな治療になりますか?

A. 軟部組織などに問題がある場合は保存療法として、薬物療法運動療法が一般的です。薬物療法では、ステロイドや局所麻酔など、患者さんの症状に応じて薬剤を注射します。少量の麻酔を含めた生理食塩水を筋肉間に注射することで、筋肉の動きがスムーズになることもあります。注射を打つ際は、エコーで確認しながら関節の中や外など、部位を変えて薬剤を注入し、その効果を確かめながら治療する場合もあります。こうすることで、「診断画像では関節の中に損傷が確認できているのに、実際の痛みは関節外の筋肉から生じていることがわかった」ということもあります。
運動療法では、骨盤・股関節周囲のストレッチや筋力訓練を行います。股関節だけでなく広い範囲のリハビリを行うことが重要で、特に寛骨臼形成不全の患者さんは骨盤が後傾してくると、骨頭を覆う屋根がより浅くなるため、立位で骨盤をしっかりと起こせるように指導します。

Q. どういった状態になると、手術になるのですか?

A. 股関節内に病変があり、その病変が疼痛(とうつう)の原因と考えられ、かつ薬物療法運動療法だけで改善が見込まれにくい状態であれば手術治療を考慮します。関節唇損傷など関節内組織の治療としての関節鏡手術、寛骨臼形成不全股(かんこつきゅうけいせいふぜんこ)など骨盤の形態異常を有する場合には、寛骨臼や大腿骨の骨の向きを変える骨切り術(こつきりじゅつ)、軟骨が大幅にすり減り股関節の変形度合いが強い場合、関節そのものを置き換える人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)を考慮します。

Q. 人工関節の手術はどのように進められるのですか?

A. 当院ではナビゲーションシステムを使って、人工関節を設置する手術を行っています。理想的な角度で人工関節を設置できれば、人工関節を動かす際の安全域が広くとれます。設置角度を人の目で判断すると、どうしても症例ごとにばらつきが出てしまいますが、ナビゲーションシステムを使えば骨に対して人工関節がどの向きにあるかが正確に表示され、正しく安全に設置ができるのです。

Q. 人工関節というのは、どういったものなのですか?

A. 患者さんの骨の形状はさまざまなので、どんな形状の骨にも適合しやすい人工関節が理想だと私は考えています。当院では、くさびのように骨の中に打ち込んで固定するテーパーウェッジ型ステムを主に使用しています。以前は、骨と接する面積が大きくなるように太いステムが選ばれる時代もありましたが、現在は、大腿骨の近位部でしっかり噛みこませるもののほうが固定しやすく、いろいろな患者さんに適合しやすいといわれています。材質は丈夫で軽く、かつ骨に対する親和性が高くアレルギー反応が少ないという理由から、チタン合金がよく使われています。

独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター 山崎 琢磨 先生Q. 手術のやり方も以前と変わってきていますか?

A. はい。従来は股関節の後方から進入する後方アプローチが一般的でした。しかし、股関節の後ろ側の腱や関節包などを切らなければならないため、関節の動きを制動する力が弱まって脱臼の原因になります。そのため最近では、前方アプローチがとり入れられるようになりました。前方から進入すると、後ろ側にある関節包や筋肉、腱を温存することができるのです。ただし、症例によっては前方アプローチが難しい場合もあるため、患者さんの状態に合わせてアプローチを変えています。いずれの場合も、ナビゲーションシステムを使って正確に設置し、できる限り切離した関節包を修復するようにしています。

Q. 合併症の心配はありますか? どう予防されていますか?

A. 早期合併症として特に注意すべきものに、細菌感染、脱臼、深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)があります。まず細菌感染に対しては、空気清浄されたクリーンルームで、感染を予防するための特殊な術衣を着て手術を行うなど、徹底した対策を行っています。
脱臼は、先にお話ししたアプローチの工夫によって発生頻度を減らすことができます。脱臼は、人工関節間よりも先に骨盤-大腿骨骨間でインピンジメント(衝突)が生じることによって起こる場合が多いとわれています。人工関節間のインピンジメントはナビゲーションシステムを使うことによって、骨間のインピンジメントはアプローチの工夫や手術中の追加処置によって、できる限り回避させて脱臼を防いでいます。
深部静脈血栓症は、いわゆるエコノミークラス症候群と同様の病態で、術中や術後に脚を動かさないために血流が悪くなることで起こります。それを防ぐため、麻酔から覚めたらなるべく足首などを動かすようにしたり、弾性ストッキングを履いて血流を保ったりするほか、血栓予防薬を使って血液を固まりにくくすることもあります。

Q. 人工関節の手術において先生が心がけていらっしゃることを教えてください。

A. 形状やサイズの多い人工関節の中から、患者さんの骨にぴったり合うものを選び、正確に設置することを心がけています。まずは入念に術前計画を行い、ベストな手術アプローチを見極めるとともに、術中はナビゲーションシステムを使うことによって高い精度で人工関節の設置を行います。また、できる限り関節安定性に関わる軟部組織を温存あるいは修復するように努めています。

独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター中国がんセンター 山崎 琢磨 先生Q. では最後に、股関節に痛みを感じておられる方へ一言お願いします。

A. 人によって病状にかなり違いがあるため、さまざまな治療法の中からご自身に合った治療を受けることが重要です。そのためには、今お困りの痛みの原因をしっかりと考えてくれる、信頼のおける専門医を受診し、十分に納得された上で治療を受けられることが大切だと思います。

山崎 琢磨 先生からのメッセージ

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取材日:2019.5.29

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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