先生があなたに伝えたいこと / 【山根 宏敏】骨粗鬆症性椎体骨折は、保存的加療が基本ですが、早期に手術をした方が良い場合があります。

先生があなたに伝えたいこと

【山根 宏敏】骨粗鬆症性椎体骨折は、保存的加療が基本ですが、早期に手術をした方が良い場合があります。

社会医療法人 陽明会 小波瀬病院 山根 宏敏先生

社会医療法人 陽明会 小波瀬病院
やまね ひろとし
山根 宏敏 先生
専門:脊椎脊髄外科

山根先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 子どもたちと触れ合う時間を大事にしたいです。ほかには、温泉医療に興味があり、骨粗鬆症の治療に活かせないかと気になっています。日本温泉気候物理医学会に時々参加はしているので、コロナが収まったら学会の懇親会に参加して交流を深めてみたいと思います。

2.休日には何をして過ごしますか?
 コロナ禍で新しい温泉施設が増えたので、家族と熊本、長崎、佐賀、大分まで遠征しています。

先生からのメッセージ

骨粗鬆症性椎体骨折は、保存的加療が基本ですが、早期に手術をした方が良い場合があります。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 今回は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と椎体骨折について詳しくお尋ねします。まず、骨粗鬆症とはどんな病気なのでしょうか?

A. 骨粗鬆症とは、骨代謝の異常によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気で、70代以上の女性に多くみられます。骨の中には「破骨(はこつ)細胞」と「骨芽(こつが)細胞」とがあり、破骨細胞が古くなった骨を溶かして「骨吸収」をする一方で、骨芽細胞が「骨形成」をしながら健康な骨を作っています。ところが、女性の場合、閉経後にホルモンの乱れによって骨吸収の割合が増え、骨密度が減って骨がもろくなってしまいます。このほか、糖尿病やリウマチといった疾患や喫煙習慣も骨代謝を悪化させる要因と考えられています。

Q. 骨粗鬆症の診断方法についてお教えください。

A. 診断は骨密度の検査とレントゲンで行われ、若い頃と比較して骨密度が70%以下となった場合に骨粗鬆症とみなされます。また、事故や転倒したわけでもないのに骨折してしまう場合、なかでも脆弱性骨折と呼ばれる腰椎の椎体骨折や大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)が起こった場合には、それだけで骨粗鬆症と診断されます。

社会医療法人 陽明会 小波瀬病院 山根 宏敏先生Q. 骨粗鬆症を防ぐにはどうすればよいですか?

A. まずは、食事や運動で骨が弱くならないようにすることです。食事はカルシウムとビタミンDを意識して摂るようにしてください。ビタミンDを補うには魚を摂り、日光が出ているときに運動することが効果的です。
運動は有酸素運動よりも、かかとを少し上げて体重をかけて落とす「かかと落とし」のようなものがお勧めです。隙間時間にできて、骨に刺激を与えることで骨が強くなっていきます。女性は閉経を迎える50代頃からだんだん骨が弱くなり、60代から骨粗鬆症になることが多いので、60歳になったら一度骨密度を測っておくとよいでしょう。

Q. 骨粗鬆症にはどのような治療が行われますか?

A. 骨吸収を抑え、骨が壊れるのを抑制する薬を使用することが多いですが、重症骨粗鬆症の場合には、骨形成を早める注射等に変更して治療を行います。いずれにしても、自分の判断で治療を中断しないことが一番大事です。

Q. 骨粗鬆症を放置していると、どのようなことが起こりますか?

A. 先ほど脆弱性骨折について触れましたが、腰椎の椎体骨折などの「いつの間にか骨折」が起こることが考えられます。

Q. 骨が折れていても気が付かないものなのですか? 骨折を放置しているとどうなるのでしょうか?

A. 「ぎっくり腰みたいだったけど、2~3日放置したらよくなった」と骨折に気付かずに病院に来ない方も多いのです。「いつの間にか骨折」の場合、痛みは感じませんが、1ヵ所骨折すると周囲に骨折が連鎖し、腰が曲がっていったり、さらに強い骨折が起こって手術が必要になったりすることもあります。
70代以上の方に多いのですが、痛みで動けなくなり、救急搬送されたときに何ヵ所も骨折していたことがわかることもあります。

椎体圧壊が起こりやすい部位

椎体骨折

Q. 椎体骨折の診断方法についてお教えください。

A. Xp(レントゲン写真)、CT、MRIで診断します。Xpでは座った状態と寝た状態とで撮影し、座ると椎体が潰れ、寝ると椎体が開くようであれば、椎体骨折が起きているとわかります。また、CTでは骨折の重症度を評価することができます。
MRIでは、Xpではわからない骨折も診断することができます。

Q. 椎体骨折を予防する方法はありますか?

A. 骨密度検査を早めに受け、骨粗鬆症にならないように骨密度を保つことが大切です。また、骨粗鬆症の診断をされた場合には、治療を開始し、継続することが大切です。

Q. すでに椎体骨折を起こして治療済みの方への再発防止策についても教えていただけますか?

A. 一度椎体骨折を起こした方は、骨密度が70%以下で、骨折の危険性が高い「重症骨粗鬆症」と診断されます。やはり骨粗鬆症の治療を早めに行い、治療と運動を継続することで再骨折を予防することが大切です。

Q. 最新の椎体骨折の治療方法について教えてください。

A. 椎体骨折の6割はコルセットで骨折した部分を固定することで、3ヵ月程度で骨が癒合します。ただ、骨折して4週間以上経過している場合は骨が癒合しにくくなるので、コルセットの効果はありません。その場合は、骨粗鬆症の治療に専念して様子を見ることになります。
当院ではCTを撮って椎体の後壁(後ろ側)が折れている、あるいは骨折して4週間以上経過している場合は、骨が変形して神経を圧迫する恐れがあるため、手術に踏み切ることが多いです。

コルセットの例

手術は、急性期の後壁損傷がある椎体骨折の場合には、骨折した部分を後ろからスクリューで固定する「固定術」を行い、一年後にスクリューを取り除きます。

固定術の例

4週間以上経過した椎体骨折の場合、当院では、主に潰れた椎体の中に風船を入れて膨らませ、骨セメントで充填して骨を固定させる「BKP(経皮的椎体形成術)」を行っています。BKPは体への負担が少なく痛みが治まる治療法として広く行われてきましたが、術後、5人の1人が隣接した骨が折れるという報告も寄せられています。そのため、当院では重度の椎体骨折の方には、風船を膨らませた後、さらにステントで広げて補強してから骨セメントを充填して骨を固定する「VBS(骨粗鬆症性骨折体ステント留置術)」を行っています。

BKP

Q. 椎体骨折には様々な治療法があるのですね。コルセットで治療する場合、通院での治療も可能ですか?

A. 可能ですが、痛みが強い方や高齢で独り暮らしの方は入院されるケースが多いです。

Q. 入院期間と手術後のリハビリについて教えてください。

A. 入院期間は1ヵ月程度で、リハビリは手術翌日から歩行訓練などを開始します。
後壁損傷がある椎体骨折で、手術せずに骨粗鬆症の治療に専念する場合、入院期間は2ヵ月程度です。この場合のリハビリは無理に体を動かさず、ベッド上で安静にしながら少しずつ可動域訓練を始めます。

Q. 椎体骨折は、手術した方が治りはよいのでしょうか?

A. 椎体骨折治療の基本は保存的加療ですが、椎体骨折に関しては解明されていないことも多く、医療施設によって治療に対する考え方は様々です。骨粗鬆症性椎体骨折の場合、保存的治療で様子を見る間に症状が悪化し、後弯変形(背中が曲がった変形)をしてしまったり、神経を圧迫して急に足が動かなったりすることがあります。私は、高齢の患者さんで、それまで歩けていた人がまったく歩けなくなってしまったケースを数多く見てきました。ですので、私自身は歩けなくなる方をゼロにしたいとの想いから、破壊の強い椎体骨折に対しては、積極的に手術を提案しています。

社会医療法人 陽明会 小波瀬病院 山根 宏敏先生Q. よくわかりました。それでは、退院後に注意することや、避けた方がよい動作があれば教えてください。

A. 手術後のリハビリで無理のない体の使い方を指導していますが、深く腰を曲げる動作はスクリューがゆるんでいく恐れがありますので注意していただきたいと思います。中腰くらいは問題ありませんが、術後1年間は、畑仕事や草むしりは控えてください。

Q. ありがとうございました。最後に先生が医師を志されたきっかけがありましたら教えてください。

A. 高校時代に周囲の医師を目指している友人たちから刺激を受けたことがきっかけです。救急など素早い判断が求められる科を希望していて、ご縁があったのが整形外科でした。

Q. 最後に患者様へのメッセージをお願いいたします。

山根 宏敏 先生からのメッセージ

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リモート取材日:2022.6.22

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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