先生があなたに伝えたいこと / 【岸本 勇二】その痛みは適切な治療で劇的に改善するかもしれません。まずは一人で悩まず、お近くの整形外科を受診してみてください。

先生があなたに伝えたいこと

【岸本 勇二】その痛みは適切な治療で劇的に改善するかもしれません。まずは一人で悩まず、お近くの整形外科を受診してみてください。

鳥取赤十字病院 岸本 勇二先生

鳥取赤十字病院
きしもと ゆうじ
岸本 勇二 先生
専門:股関節・リウマチ

岸本先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
洋楽をBGMに、サスペンス小説を読むことにはまっています。東野圭吾から横溝正史、アガサ・クリスティまで、犯人捜しというより、もっぱら頭を空っぽにして筋書きを眺めている感じです。あとは、ビールが苦手でお酒は弱いと思っていたんですが、最近になって日本酒なら人並み以上に飲めることを知りました!地元で評判の日本酒をじっくり飲み比べてみたいと思っています。

2.最近気になることは何ですか?
当院は3年前に鳥取県内では初となるリウマチセンターを開設しました。センターとしての役割を果たすべく、看護師や薬剤師、理学・作業療法士、ソーシャルワーカーなど、専門スタッフと連携してチーム医療の強化を進めており、最近、チーム医療が軌道に乗ってきていることを実感しています。また、医師として正しい情報を市民の方にお伝えするために、市民公開講座や患者教室などの活動も積極的に続けていきたいと思います。

先生からのメッセージ

その痛みは適切な治療で劇的に改善するかもしれません。まずは一人で悩まず、お近くの整形外科を受診してみてください。

鳥取赤十字病院 岸本 勇二先生Q. 始めに、股関節はどのような構造になっているのでしょうか? それぞれの部位や働きについて教えてください。

A. 股関節は接合面が球状になっている球関節(きゅうかんせつ)で、いろいろな方向に動き、両脚に加わった体重を骨盤から体幹に伝える荷重関節(かじゅうかんせつ)としての役割を担っています。大腿骨の上端にあたる大腿骨頭(だいたいこっとう)を、骨盤側にあるお椀型の骨のくぼみである寛骨臼(かんこつきゅう)で受け止め、伸ばす、曲げる、広げる、閉じる、ひねるといった多彩な運動を行います。この多彩な運動を支えるため、股関節は頑丈な関節包(かんせつほう)や靭帯で補強される構造となっています。日常生活の何げない動作で股関節には体重の2倍から5倍くらいの負荷がかかっており、さらにはジャンプや強く踏み込んだときなどは10倍以上の負荷がかかるとされます。

股関節の構造

Q. 股関節の疾患でお悩みの方には、どのような疾患が多いのでしょうか?

A. 一番多いのは変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。寛骨臼や大腿骨頭は関節軟骨で覆われており、これがクッションの役目を果たし、股関節に加わる衝撃を吸収して痛みが出ない構造になっていますが、加齢によって軟骨が変性したり、すり減ったりして痛みを生じることがあります。これが変形性股関節症であり、最近は高齢化に伴い、患者さんも増加傾向にあります。
寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)といって、寛骨臼が生まれつき浅い方が多いことが日本人に多いということが知られています。重度の形成不全の場合、30歳くらいで痛みが生じ、放置すれば40歳くらいで末期の変形性股関節症に進行することもあります。
そのほかの股関節痛の原因に、あちこちの関節に炎症(関節炎)を起こす関節リウマチがあります。リウマチが進行すると関節が破壊され、立てない、歩けないといった深刻な機能障害が起こります。幅広い年齢層で起こる病気ですが、最近では高齢になって発症する関節リウマチも増えています。

変形性股関節症

Q. 治療法について教えてください。

A. 変形性股関節症であれば、患者さんの病状にもよりますが、一般的には、股関節まわりの筋力を強化する運動療法や、杖や歩行器を使って股関節の負担を減らす生活指導、痛み止めの薬で痛みを和らげる薬物療法などの保存療法がまず行われます。
保存療法で十分な症状の改善が得られない場合、若い患者さんであれば、寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)などの骨切り術によって股関節を温存しつつ、痛みを和らげる手術が行われています。ご高齢の方、あるいは若くても骨切り術では改善が見込めない方の場合、人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)という、股関節を人工関節に置き換える手術が行われます。
また股関節痛の原因が関節リウマチであれば、抗リウマチ薬という薬が処方されます。近年、この薬が飛躍的に進歩し、薬物療法で症状を抑え、長年にわたり問題なく過ごされている方が増えています。ただし抗リウマチ薬による治療にもかかわらず股関節がリウマチによって壊されてしまった場合には、人工股関節置換術が行われます。

寛骨臼回転骨切り術

Q. 人工股関節にはいろいろな種類があるのでしょうか?

A. 骨頭部分だけを人工物に換える人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)(BHA)と、骨頭と寛骨臼の両方を人工物に置き換える人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)(THA)があり、高齢者に多い大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ:脚の付け根の骨折)ではBHAが行われることが多いです。
THAは、人工物を骨に固定するために骨セメントと呼ばれる人工材料を使うセメントTHAと、骨セメントを用いないセメントレスTHAに大別することができます。セメントTHAは患者さんの骨の形や質に影響されることなく、すべての方に対応できる利点がありますが、その取り扱いにやや技量を要します。日本ではセメントレスTHAが8割以上を占めますが、当院ではセメント、セメントレス、この二つを組み合わせたハイブリッドタイプを患者さんの状況に応じて使い分けています。

人工股関節置換術

人工頭骨置換術

鳥取赤十字病院 岸本 勇二先生Q. 人工股関節そのものは以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 近年の大きな進歩としては、摺動面(しゅうどうめん)の改善があげられます。摺動面とは、寛骨臼側と大腿骨側の人工関節のこすれ合う面です。ここにはポリエチレンでできた寛骨臼に設置するライナーと呼ばれる部品と、金属でできた大腿骨頭が用いられてきましたが、人工股関節手術後、時間の経過とともにポリエチレンの摩耗粉を生じ、これが人工股関節の耐用年数を短くしてしまうことが問題でした。しかし近年は摩耗しにくいライナーが登場してきました。なかでも日本で開発された、「Aquala(アクアラ)」という表面処理技術は、摩耗しにくいライナーに、さらに摩耗しにくい表面処理を行うもので、より一層の良好な長期成績が期待できます。また、骨頭側も金属だけでなく、より摩耗を生じにくいセラミックを用いることで、摺動面の問題は劇的に改善したと考えています。

Q. 人工股関節の手技も以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 患者さんの術後の痛みの軽減、早期の筋力回復や歩行能力の再獲得、その結果としての早期の社会復帰が期待できる「低侵襲手術(MIS:エムアイエス)」が行われるようになってきました。MISは人工股関節手術時に筋肉の損傷をできるだけ減らす手術方法です。当院では大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)と中殿筋(ちゅうでんきん)の間から入る前側方アプローチ(侵入法)によって、筋肉の損傷を最小限に抑えています。術後の回復が早く、1-2週間程度での退院が見込めます。ただ、人工股関節置換術の第一の目標は20年、30年後も合併症なく人工股関節が機能することにあり、そのためには人工股関節の正確な設置が重要となります。低侵襲手術では筋肉の損傷が少なくて済む反面、手術中に視認できる範囲が従来のアプローチに劣るという欠点があります。そのため、当科では複雑な手術の場合には低侵襲にこだわらず、従来のアプローチを採用しています。

前方アプローチ

Q. 手術の合併症について教えてください。また、合併症を防ぐためにどのような対策をとられているのでしょうか?

A. 感染、血栓症、脱臼などのリスクがあるので、患者さんには必ず手術前に十分な説明をします。
感染は一般に0.2-3.8%程度の確率で起こるとされます。当科ではバイオクリーンルームや術者の全身をすっぽりと覆う手術専用着の使用、予防的抗菌薬投与に加えてポピドンヨード液洗浄や、必要に応じた抗菌薬入りセメントの使用などで予防に努めています。これらの有効性については異論もあるところではありますが、当科のここ3年の人工関節術後感染は0.4%に抑えられています。
深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)は、まれではありますが致死的な合併症となる肺塞栓症の誘因となり得るため、注意が必要です。当科では術前に患者さんのリスクを十分に評価し、理学療法、薬物療法で予防しています。翌日から積極的に離床をすすめることが重要と考えています。
脱臼は1-5%くらいで起こるとされています。当科では患者さん個々の生活スタイルや、立位・臥位の姿勢性変化、脊椎や下肢全長をふくむ全体的な評価を行い、手術アプローチやインプラントを使い分けることで脱臼の予防に努めています。当院のここ3年の人工股関節では、脱臼は生じていません。

Q. 先生が整形外科医として股関節とリウマチを専門に選んだきっかけを教えてください。

A. 人工股関節置換術によって痛みが劇的に改善した患者さんが、私の手を取って涙ながらに喜んでくれたとき、股関節外科専門医としてもっと追求したいと思いました。また私が医師になりたての頃にリウマチの新薬が増え、患者さんの症状が劇的に改善していくのを目の当たりにしてリウマチに興味を持ちました。リウマチを専門として良かったと思うのは、全身の関節に対応する力がつき、整形外科としての幅が広がるということです。

鳥取赤十字病院 岸本 勇二先生Q. 先生が治療するうえで心がけていることについて教えてください。

A. 同じ病気であっても、患者さんが求めている動作・活動や治療のゴールは異なります。患者さん個々のニーズに合った最適な治療を行うことを心がけています。

Q. 股関節の痛みでお悩みの方にアドバイスをお願いします。

A. いまはインターネットやテレビ、雑誌などに情報が溢れていて、かえって正しい情報を得るのが難しい時代です。しかしながら、どんな病気にも効く万能な治療などは存在せず、患者さんの病状や年齢、仕事や家庭環境など、さまざまな条件によって治療法は変わってきます。適切な治療を行えばその痛みは劇的に改善するかもしれません。まずは一人で悩まず、お近くの整形外科を受診してみてください。

「Aquala」は、京セラ株式会社の登録商標です。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

岸本 勇二 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.8.22

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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