先生があなたに伝えたいこと / 【紺野 拓也】人工股関節置換術は、手技も確立されている比較的安全な手術ですので、毎日を快適に過ごすための選択肢の一つとして捉えていただければと思います。

先生があなたに伝えたいこと

【紺野 拓也】人工股関節置換術は、手技も確立されている比較的安全な手術ですので、毎日を快適に過ごすための選択肢の一つとして捉えていただければと思います。

国立病院機構 北海道医療センター 紺野 拓也先生

国立病院機構 北海道医療センター
こんのたくや
紺野 拓也 先生
専門:股関節

紺野先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
大学時代に硬式テニス部に所属していて、現在もテニススクールに通って汗を流しています。長男もテニスを始めたので一緒に楽しむこともあります。冬は子どもたちとスキーを楽しんでいます。

2.最近気になることは何ですか?
子どもたちの成長が気になりますね。

先生からのメッセージ

人工股関節置換術は、手技も確立されている比較的安全な手術ですので、毎日を快適に過ごすための選択肢の一つとして捉えていただければと思います。

Q. 股関節はどんな構造になっているのでしょうか?それぞれの部位や働きを簡単に教えてください。

A. 股関節は人体で最も大きな負荷を担う荷重関節で、骨盤側にある臼状の寛骨臼(かんこつきゅう)に大腿骨側にある球状の大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり込むボール&ソケットの構造をしています。骨の表面は関節軟骨に覆われ、寛骨臼の周辺を関節唇(かんせつしん)がゴムパッキンのように取り囲み、関節包(かんせつほう)や周囲の筋肉が動きを制御しています。

Q. 股関節の代表的な疾患について教えてください。

A. 慢性の病態で最も多いのは変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。発育過程で股関節の被りが成長してこない寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)が原因のものが81%を占めます。被りが浅いと一点に負担が集中して軟骨がすり減り、関節唇が痛んで股関節周辺に痛みが出ます。40代以降で股関節痛を自覚するようになり、徐々に進行し、動きが悪くなって痛みに耐えきれず60~70代で受診されるケースが多いです。そのほか、外傷性疾患で多いのは大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)と大腿骨転子部骨折(だいたいこつてんしぶこっせつ)です。

Q. 地域柄、転倒などによる骨折も多いと思います。特に高齢者が転倒した際の骨折について、何か特徴はありますか?

A. 骨は本来簡単に折れるものではないのですが、特に高齢の女性の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で段々骨が脆くなってきたときに、日常動作のちょっとしたつまずきで骨折に至ることがあります。冬場に多少は多くなりますが、骨が脆くなっている年代の方はあまり外出しませんから、室内での転倒によって骨折するケースが圧倒的に多いです。

Q. なるほど。大腿骨の頸部骨折と転子部骨折の違いについても教えてください。

A. 転んだときにどこに負荷がかかったかで折れる場所が変わります。股関節のくびれている部分、関節の中で折れるのが頸部骨折、関節の外側で折れるのが転子部骨折になります。転子部骨折の方が、骨表面が骨膜に覆われていて血流が豊富なので骨はつきやすいです。直接ぶつけて折れることが多いのが転子部、捻りなどの負荷がかかって折れるのが頸部という傾向があります。

Q. 股関節の疾患の治療法についても教えてください。

A. 一度損傷された関節軟骨は再生せず、変形性股関節症は悪化することはあっても改善させることは難しい疾患です。それでも、股関節周囲の筋力強化や体幹トレーニング、貧乏ゆすりなどの運動や鎮痛薬を使った薬物治療で股関節にかかる負荷を減らし、痛みを軽減することはできます。
構造的に問題がある寛骨臼形成不全については、保存治療はなかなか難しいので、40代くらいまでの方で関節軟骨が残っていれば、骨盤の骨を切って大腿骨頭部分の被覆を改善する寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)という治療法もあります。侵襲が大きく、術後の筋力回復にも時間がかかりますが、痛みは軽くなり、将来的に人工股関節になる可能性を減らすことができます。これらの保存治療でも痛みが改善されず、歩行や日常生活全般に支障が出るようであれば、人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)を受けられた方がよいでしょう。

Q. 初期であれば筋力トレーニングや貧乏ゆすりでも改善できるということですね。ところで、貧乏ゆすりに効果があるのはなぜでしょうか?

A. 貧乏ゆすりは、英語ではジグリングと呼んでいますが、小刻みに揺らすことによって股関節の血流をよくし、痛みや機能が改善されるといわれています。

Q. 人工股関節置換術を決断する目安はありますか?

A. 手術の適応については、レントゲン写真による評価だけでは決められません。実は、末期の変形性股関節症でも痛みがない人もいます。人工股関節置換術は、がんの手術とは違って命にかかわるわけではありませんから、患者さんが痛みから解放されたいと思って行われるべきです。「歩くのがつらい」、「立ち上がるたびに痛みが走る」、「階段の上り下りがつらい」、「寝返りを打つたびに痛い」...など、痛みの程度と、日常生活でどれだけ困っているかが決定の尺度となります。医師は患者さんの痛みや日常生活の障害を知ることは難しいので、手術をするかしないかの決定は、あくまで患者さん主導になります。

Q. 人工股関節そのものは以前に比べて進歩しているのでしょうか?

A. 様々な形状の大腿骨側人工物や、骨との固着性を高めた臼蓋骨側人工物が開発され、軟骨代わりとなるポリエチレンもより摩耗しにくい素材になり、人工股関節の耐久性は大幅に向上しています。ひと昔前で15年~20年といわれていた耐用年数が今では25年以上もつとの報告も散見されます。術後の合併症の一つに人工股関節が外れてしまう脱臼がありますが、薄いポリエチレンライナーを使用することで骨頭ボールを大きくすることができて脱臼も予防できるようになり、もともとあった自分の骨を最大限生かせるように形も進歩しています。人工股関節の表面に抗菌物質をコーティングすることで感染予防を期待できる人工股関節※が登場したことも大きな進歩です。

Q. 人工股関節手術の手技も進歩しているのでしょうか?

A. 術後の合併症の一つである脱臼の頻度を減らすために、様々なアプローチが研究され、脱臼を防ぐだけでなく、傷つける筋肉をできるだけ減らす、あるいは筋肉をまったく切らずに関節の袋も極力残す低侵襲(ていしんしゅう)手術がメインとなり、術後の回復も早くなっています。ただ、低侵襲手術は高い技術が必要になりますし、あくまで患者さんの骨の質や症状も考慮して最適な手術方法を選択する必要があります。

Q. 手術の合併症についても教えてください。合併症を防ぐためにどのような対策をとられているのでしょうか?

A. 当院では滅菌したバイオクリーンルームで手術を行い、手術中の洗浄や術後の抗生剤の使用で感染予防を徹底しています。人工股関節の構造上、脱臼の確率は少なからずありますが、外れると痛みが出て歩くことが難しくなり、頻繁に起これば日常生活に支障が出ますので、股関節の安定性を損なわないように、脱臼の危険性をできる限り0%に近づけるよう努力しています。また、骨が脆いと考えられる症例には骨に負荷をかけるような手術方法を避け、人工物の固定に骨セメントという接着剤を使用するなどして骨折しないように注意しています。
また、術中・術後に下肢を動かさないでいると血流が悪くなって血栓ができ、むくみや痛みを生じたり、場合によっては呼吸困難や心臓に負担がかかったりすることもあるので、術後の早期離床を心がけ、弾性ストッキングやフットポンプの着用、血栓予防薬の使用で対応しています。

Q. 手術後のリハビリは、実際にはどのようなことをするのでしょうか?

A. 当院ではだいたい手術翌日から歩行訓練を始めますが、人工股関節置換術の場合、特別なリハビリは必要ありません。脱臼の可能性があると感じられた場合に、脱臼しやすくなる動作を避けていただくよう指導することもありますが、通常2~3週間程度で退院していただけます。ご自宅で日常生活を送るだけでも十分なリハビリになります。

Q. 手術した患者さんからはどういった声がありますか? これまでに治療された患者さんで印象に残っていることがありましたら教えてください。

A. 「痛みがとれた」、「歩き方がよくなった」とおっしゃられる方が多いです。手術前は痛くて我慢していた卓球やスキーなどのスポーツを再開したという話を聞くと、人工股関節が入っていることを全く忘れて毎日過ごされていることが理想的な術後の状態だと感じます。一人でも多くの患者さまの喜びの声を聴くために日々治療を頑張っていきたいと思っています。

Q. 股関節の痛みで悩んでいらっしゃる方へ、メッセージをお願いします。

A. 人工股関節置換術の手術件数は年間7万件近くに達し、手技も確立され、比較的安全になっていますので、治療の選択肢の一つとして捉えていただければと思います。関節が痛いと日常生活がつらくなります。毎日を快適に過ごすために、痛みを我慢せずに、まずは一度専門医を受診されることをおすすめします。

※京セラと長崎大学が開発した技術「AG-PROTEX®」を応用した人工股関節

金山 康秀 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2019.2.18

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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