先生があなたに伝えたいこと / 【浦辺 千晶】変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷による膝の痛みは、PRP療法など再生医療の進歩で手術に頼らない治療の選択肢も増えています。

先生があなたに伝えたいこと

【浦辺 千晶】変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷による膝の痛みは、PRP療法など再生医療の進歩で手術に頼らない治療の選択肢も増えています。

医療法人 育生会 高島病院 浦辺 千晶先生

医療法人 育生会 高島病院
うらべ ちあき
浦辺 千晶 先生
専門:膝関節

浦辺先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 いま医療現場はコロナの感染対策で疲弊しています。早くコロナが落ち着いて、普通の風邪と同じくらいの位置付けになってほしいと思います。

2.休日には何をして過ごしますか?
 還暦になって山登りを始めて南アルプスにも挑戦し、今年は富士山に2回登りました。最近は大学生になった娘も登山に付き合ってくれています。親孝行のつもりなのでしょうか(笑)。このページの関節のイラストも娘が描いてくれました。そのうち親子でキリマンジャロにも挑戦してみたいです。

先生からのメッセージ

変形性膝関節症や半月板損傷、靭帯損傷による膝の痛みは、PRP療法など再生医療の進歩で手術に頼らない治療の選択肢も増えています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

膝関節の構造Q. 膝関節の痛みに悩んでいらっしゃる方は多いと思いますが、そもそも膝の痛みはなぜ起こるのでしょうか?

A. 膝関節は関節の周囲にある様々な筋肉や腱、靭帯によって曲げ伸ばしがスムーズにできるようになっていますが、加齢と共に下肢の筋力が落ちて膝の安定性が低下し、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)になることが一因と考えられます。

Q. 変形性膝関節症とはどんな疾患ですか?

A. 主に加齢や、半月板、靭帯の損傷、骨折などの外傷などによって、膝関節でクッションの役割を果たす軟骨にストレスがかかり、痛みを感じるようになる疾患です。若くても半月板損傷や靭帯損傷で膝が変形していったり、骨折などで変形が加速したりすることもあります。

正常膝関節 変形性膝関節症

Q. 変形性膝関節症の患者さんの特徴はありますか?

A. 若い方には変形性膝関節症は少なく、60代以上の女性に多いです。女性は、閉経に伴って女性ホルモンが減少し、筋肉が弱ることに加え、若い頃より体重が増えて軟骨への負荷が増すことで変形性膝関節症になりやすいと考えられます。また、男性に比べてスポーツをしない方が多く、正座をする機会が多いことも一因とされています。

医療法人 育生会 高島病院 浦辺 千晶先生Q. 変形性膝関節症の治療法について教えてください。

A. まずは痛み止めの服用や湿布といった薬物療法と筋力トレーニングを併せた保存療法で症状の改善をはかります。自宅で筋力トレーニングが難しい方は通院で行っていただきます。膝に水が溜まって急に膝が曲がりにくくなったり、痛みが増したりした場合には、膝に溜まった水を抜いてステロイドを投与します。
長期にわたって痛みが続く場合、あるいは高齢で運動するのが難しい場合には、軟骨の表面を保護し、関節内で潤滑油のような働きをするヒアルロン酸を注射して様子をみます。ヒアルロン酸自体に痛みを取る効果はありませんが、週に一度4回程度投与し、併せて筋力強化をはかることで関節内の環境がよくなって痛みが治まる方も多いです。
一定期間ヒアルロン酸投与を行っても症状が改善しない場合には、PRP(ピー・アール・ピー)療法という再生医療もあります。

Q. そのPRP療法について詳しく教えてください。

A. 多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)(Platelet Rich Plasma)療法といって、患者さん自身の血液から組織の修復を促す成長因子を放出している血小板成分を抽出して、関節内や靭帯に投与して痛みを和らげ、炎症を抑制することが期待できる治療法です。
PRPは腱や靭帯、軟骨などの運動組織の再生にも重要な役割を果たしていることが知られ、スポーツ選手で早期に競技に復帰するためにPRP療法を行うことも多いです。
PRP療法は自分の血液を使うのでアレルギー反応や感染症が起こりにくく、副作用もほとんどありません。治療にかかる時間も血液を採取して30分程度で済みます。
ただし、PRP療法は自由診療なので高額になります。また、すべての人に効果が認められるわけではなく、PRP療法で症状が改善するのは全体の5割から6割程度です。70代前半くらいまでの方にはある程度効果がみられますが、それ以上高齢になると効果が薄い印象です。また、一度変形してしまった膝は元に戻らないので、PRP療法でも痛みが治まらず、変形が進むようであれば、傷んだ箇所を人工物に置き換える人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)も検討すべきでしょう。

PRP療法イメージ図

PRP療法イメージ図

Q. PRPには種類があるのですか?

A. PRPには白血球を含む量に応じて「PRP-LP」と「PRP-LR」の2種類があり、私は主に白血球が多い「PRP-LR」を採用しています。一般的には白血球が多いと炎症を起こしやすいとされていますが、「PRP-LR」には成長因子が多く含まれ、組織修復作用や炎症を抑える効果が強いとされています。

Q. はじめからPRP療法を希望される患者さんもいますか? また、PRP療法を導入されたきっかけは何でしょうか?

A. 患者さんのなかには色々調べて最初からPRP療法を望まれる方もいらっしゃいますが、私はまずはヒアルロン酸投与を提案しています。また、膝の痛みを取るには筋トレが重要ですから、PRP療法を始めるには、最低3ヵ月は運動療法を行っていただくことが条件です。
私がPRP療法に出合ったのは、登山で膝を痛めた3年ほど前に、知人から評判を聞いて東京の医療機関で自ら試してみたことがきっかけです。私の場合ですが、投与後しばらくは注射の痛みが残りながらも、1週間ほど経つと効果を感じられたので導入することにしました。

Q. 手術に頼らない治療も進歩しているのですね。今後、再生医療はどんどん進歩していくのでしょうか?

A. 最近、整形外科では超音波を使って筋肉の損傷や靭帯の損傷を評価し、ピンポイントでPRP療法を行ったり、海外ではプロロセラピーと呼ばれる高濃度のブドウ糖を注射して炎症を抑えたりする治療も始まっています。今後は超音波を活用して局所を狙い撃ちする治療がどんどん進歩していくのでしょう。
PRP療法は、保険治療が認められればもっと普及していくはずです。高齢になって膝の痛みに悩まれる方は多いですが、PRP療法で痛みを抑えて筋トレに励み、筋肉と平衡感覚を維持して、心も体も元気な高齢者が増えればいいと思っています。

医療法人 育生会 高島病院 浦辺 千晶先生Q. 先生が医師を志されたきっかけがありましたら教えてください。

A. 技術や資格が必要な仕事に就きたいと考えていて、縁あって地元の医学部に進学することができました。はじめから崇高な志があったわけではありませんが、長年、日々現場で診察にあたるうちに、病気を治したい、少しでも患者さんを楽にしてあげたいという気持ちや倫理観はどんどん強くなってきたと感じています。

Q. 最後に患者様へのメッセージをお願いいたします。

浦辺 千晶 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

リモート取材日:2022.9.2

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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