先生があなたに伝えたいこと / 【北中 重行】首や腰の手術は、顕微鏡や術中神経モニタリングを使用することによって、安全性が向上しています。

先生があなたに伝えたいこと

【北中 重行】首や腰の手術は、顕微鏡や術中神経モニタリングを使用することによって、安全性が向上しています。

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院
きたなか しげゆき
北中 重行 先生
専門:脊髄脊椎外科

北中先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 夏休みなどの長期に休みが取れるとき、子どもとどこへ行こうかと。休めるときはしっかり家族とリフレッシュする、それがより良い仕事にもつながると思っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 普段の休みは家でゆっくり過ごすことが多いです。

先生からのメッセージ

首や腰の手術は、顕微鏡や術中神経モニタリングを使用することによって、安全性が向上しています。

Q. 本日は高齢者の「首」と「腰」の痛みについてお伺いします。まずは首に関して頸椎(けいつい)、腰に関して腰椎(ようつい)の構造を教えてください。

脊椎の構造(部分)A. 頸椎、腰椎は脊椎(せきつい)の一部です。脊椎は頸椎7個、胸椎(きょうつい)12個、腰椎5個の骨からなります。それぞれ、椎骨と軟骨である椎間板(ついかんばん)が交互に組み合わさる構造になっています。腰椎より下には仙椎(せんつい)5個、さらにその下に尾椎(びつい)3~4個があります。これらの骨の集合体が脊柱(せきちゅう)です。骨の真ん中には神経の通り道、脊柱管(せきちゅうかん)が存在し、その中に脊髄神経(せきずいしんけい)、馬尾神経(ばびしんけい)が通っています。骨と骨の間には小さな穴(椎間孔)があって、ここからは脊髄神経、馬尾神経から分かれた神経根(しんけいこん)といわれる細い神経が出ています。脊柱は体を支え、神経を保護する役割を担っているわけです。

Q. それでは「頸椎」(首)からお話をお聞きします。痛みの主な原因とは何でしょうか?

A. 高齢者では、加齢性変化による「頸椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」という疾患が多くなります。難しい病名ですが、わかりやすくいえば神経の通り道が狭くなって、いろいろな症状を引き起こしてしまうことです。

正常な脊柱管 圧迫された脊柱管

Q. なぜ脊柱管が狭くなるのでしょうか? またどのような症状が出るのでしょうか?

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生A. 加齢に伴って椎間板が膨隆したり骨のとげができたり、あるいは周囲の靭帯が分厚くなってしまって脊柱管が狭くなり、脊髄が圧迫されることで脊柱管が狭くなるのです。その症状としてまずあげられるのは手足のしびれです。本当はその時点で受診していただきたいのですが、「年のせいだから」と多くの方は様子をみられてしまうのです。しかし放っておくと進行してしまい、歩きづらい、ちょっとした段差でつまずく、服のボタンや箸を持つなどの動作がしづらくなっていきます。

Q. 頸椎の疾患なのに首に症状は出ないのでしょうか?

A. 実は出ないことが多いです。神経根が圧迫されると強い首の痛みや腕の痛みが出ますが、「頸椎症性脊髄症」では基本的に、首の痛みは出ないことが多いです。

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生Q. 不思議ですね。では、治療法はどのようなものなのでしょうか?

A. 手足のしびれの段階なら、手術ではなく保存療法となります。薬でしびれや痛みの進行を抑え、生活指導などで経過をみます。生活指導としては、洗濯物を干す、うがい、空を見るなど首を極端に後屈する姿勢を避けることが重要です。頸椎カラーという装具を装着していただく場合もあります。それでも日常生活に支障がでて、進行性に悪化する場合は、できるだけ早期に手術を検討します。そうしないと、筋力低下や膀胱直腸障害など強い神経症状が出現する可能性があります。

Q. 手術のタイミングも早いほうが良いということでしょうか?

A. 最適のタイミングで、ということになります。手術は悪くなった神経を新しく取り替えるのではありません。神経の圧迫をとるだけですので神経が8割傷んでいるよりも2割のほうが術後の改善がはかられます。

Q. どのような手術が行われるのでしょうか?

A. 神経の圧迫をとる手術です。当院で一般的に行っているのは「椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ)」という除圧術です。まず棘突起(きょくとっき)を縦に割って、筋肉を損傷しないよう付着部である骨を左右に分けて開き、骨や靭帯など脊髄への圧迫の原因となっているものを取り除くのです。頸椎に後弯(こうわん)や不安定性があれば、除圧術とスクリューなどで留める固定術を併用することもあります。

脊椎手術方式

脊椎の後弯

頸椎カラーQ. 術後に気をつけることはあるのでしょうか?

A. 除圧術であれば基本的に頸椎カラーは必要ありませんし、固定術であれば、固定性にもよりますが、約1ヵ月ほど頸椎カラーを装着して安静にします。

Q. よくわかりました。では次に「腰椎」について主な疾患から教えてください。

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生A. 主な疾患は、やはり神経の通り道が狭くなってしまう、加齢性の「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう」です。症状として典型的なものは、「間欠跛行(かんけつはこう)」です。首とは違って歩き出しはスムーズですが、しばらく歩くと下肢のしびれ、痛み、だるさなどで歩けなくなってしまいます。しかし、しばらく休むと回復し、また歩けるといったことを繰り返すのです。ご家族と暮らしておられても、家の中では不自由なく歩かれるので、非常に気づきにくいです。そのため、500mほど歩ければ「まぁ、いいや」と安心され放置される方が多くおられるのです。しかし進行するにつれて、一度に歩ける距離が100m、50mとだんだん短くなっていき、そこでようやく病院に来られるというパターンが非常に多いのです。ですから、下肢のしびれや、「間欠跛行」の症状に気付いたら狭窄症(きょうさくしょう)を疑ってほしいと思います。

Q. では治療法について教えてください。

A. 初期治療の原則は保存療法です。痛み止めの服用や神経ブロック注射、腹筋、背筋などのリハビリなどで月に1回程度の経過観察をして、生活に支障が出たり、歩ける距離が徐々にでも短くなったりするようであれば、早めの手術を勧めます。首と同様に神経症状が強い場合は、筋力低下や膀胱直腸障害などが現れ、その際はすぐに手術となります。手術法についても「頸椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」とほぼ同じと考えていただいて良いでしょう。基本は除圧術、大きなズレや不安定性があれば除圧術プラス固定術です。

Q. 首や腰、しかも神経と聞けば、手術に不安を持つ方も多いように思います。

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生A. 確かに、ご高齢であればあるほど不安がられます。しかしここで、この手術が今では安全性の高いものになっていることをぜひお伝えしたいと思います。実際の手術では専用の顕微鏡を使って手術をしています。これを用いれば、小さな皮切(ひせつ:切開)でも患部を360度立体視できるので、細かなところまでしっかり確認しながら手術が可能です。また、同じ画面を手術室内の複数の医師、スタッフと共有することができます。さらに除圧術でも固定術でも神経モニタリング装置を用いることで、神経損傷のリスクを極限まで下げられるように対応しています。

脊椎疾患用コルセットQ. 術後の注意点も頸椎と同じですか?

A. 腰椎の場合、除圧術では疼痛に応じてサポーターを装着し、固定術では3ヵ月間はコルセット装着をお願いしています。その間は重労働を避けていただきます。その後も、できるだけ重い物は持たない、長時間同じ姿勢や、中腰の姿勢はなるべくとらないようにしてください。

社会福祉法人 京都社会事業財団 西陣病院 北中 重行 先生Q. 手術になったとしても、整った設備としっかりした術後の指導があれば恐れることはなさそうですね。話が変わりますが、先生が医師を目指されたきっかけというものがあったのでしょうか?

A. 中学生のときに一時体調が悪いときがあって、書店で調べたら、その症状は悪い病気だという記述があったので心配で心配で近くの病院を受診しました。そしたらひと言、「大丈夫ですよ」といってもらえたのです。すると不思議なことに、そのひと言で不安が一気に解消されて楽になったのです。病気を治療することはもちろんですが、たったひと言で人を安心させられる医者ってすごいなあと、そう思ったのがきっかけだったように思います。

Q. 最後に、先生が治療される上で大切にされていることは何ですか?

A. 診察の際、こちらからできるだけ詳しく痛みなどの症状を聞き出すのですが、自分の症状をうまく伝えられない方が多くいらっしゃいます。そんな時は、できる限り時間をとってじっくりお話を聞くことにしています。言葉が薬になることもあるという考え方を大切にしています。中学生の頃の私がそうであったように。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

北中 重行 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2018.2.5

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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