先生があなたに伝えたいこと / 【前田 健】腰部脊柱管狭窄症や腰曲がりは合併するケースもあり、症状は多種多様です。患者さんごとに異なる症状に合わせ、将来を見据えた低侵襲な治療を行っています。

先生があなたに伝えたいこと

【前田 健】腰部脊柱管狭窄症や腰曲がりは合併するケースもあり、症状は多種多様です。患者さんごとに異なる症状に合わせ、将来を見据えた低侵襲な治療を行っています。

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター 前田 健 先生

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター
まえだ  たけし
前田 健 先生
専門:脊椎

前田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 下手の横好きでピアノを習って3年半ほどになるのですが、最近妻も習い始めたようです。しかも同じ先生に指導を受けているので、とても複雑な心境です(笑)。

2.休日には何をして過ごしますか?
 休日は必ずプールで泳ぐほか、妻と一緒にカレーを食べに行きます。妻も医師で、普段はともに多忙ですれ違いが多いので、休日は散歩も兼ねた外食で夫婦のコミュニケーションをはかっています。

先生からのメッセージ

腰部脊柱管狭窄症や腰曲がりは合併するケースもあり、症状は多種多様です。患者さんごとに異なる症状に合わせ、将来を見据えた低侵襲な治療を行っています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 腰椎の疾患で代表的なものを教えてください。

A. 最も多く手術が行われている腰椎の疾患は、足のしびれや神経痛を引き起こす腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)です。加齢によって神経の通り道である脊柱管(せきちゅうかん)がだんだん狭くなり、椎間板(ついかんばん)の突出などで神経が圧迫されます。
典型的な症状として、歩行に伴うしびれがあり、少し休憩するとまた歩けるという間欠性跛行(かんけつせいはこう)が見られます。お尻から脚の外側にかけて痛むことが多いですが、患者さんによって症状はさまざまです。足が脱力する方や、排尿障害を伴う方もおられます。

正常な脊椎の断面図 脊柱管狭窄症の断面図

また、最近では中高年の方の腰曲がりも手術の適応となるケースが増えてきました。腰曲がりには、横に曲がる側弯(そくわん)と前に曲がる後弯(こうわん)の2種類があります。加齢による腰曲がりは、これらが合併している場合が多いという点で、若年の側弯症(そくわんしょう)と異なり、さらに腰部脊柱管狭窄症を合併することもあります。腰痛を伴い、歩行中に姿勢が前へ曲がってきて歩きにくくなります。

腰曲がりの状態

Q. かかりやすい傾向はありますか?

A. 基本的に性別は関係ありませんが、比較すると腰部脊柱管狭窄症は男性に多いようです。また、先天的に脊柱管が狭い方はかかりやすい傾向があります。
一方、腰曲がりは女性にやや多く見られます。背筋が弱い、骨がもろくなって骨折して曲がりやすい、若年時に側弯症になりやすい傾向があるからかもしれません。長く農作業をされている方や、股関節を傷めている方にも多いです。

Q. 予防方法はありますか?

A. どちらの疾患も加齢がベースとなるため防ぎにくいのですが、体幹を鍛えることは有効です。ストレッチや筋トレ、有酸素運動、体重コントロールなど、一般的なアンチエイジングの方策は予防につながるでしょう。

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター 前田 健 先生Q. 運動は、治療にも取り入れられますよね?

A. 運動療法として、専門スタッフがリハビリを指導している病院も少なくありません。軽度の腰痛であれば、腹筋を鍛えることで痛みが取れる方もおられます。体重を管理しながら正しい運動をすることは、整形外科全般において基本の治療の一つとなります。

Q. ほかにはどんな治療法がありますか?

A. 根本的な治療となると手術になるため、まずは対症療法がメインとなります。腰部脊柱管狭窄症であれば、さまざまな痛み⽌め薬やブロック注射などを使い分けて症状を和らげます。脊柱管の物理的な狭窄によって血流が悪化してしびれや痛みを引き起こすので、血流を促すための薬を用いることもあります。
強い狭窄や腰曲がりがあっても症状が軽い場合もあり、対症療法を続けながら疾患と折り合いをつけている方もおられます。手術をするかどうかは、あくまでも患者さんの判断にゆだねています。

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター 前田 健 先生Q. どのような状態になると、患者さんは手術を望まれますか?

A. 腰部脊柱管狭窄症は、間欠性跛行が15分ぐらい、即ち15分くらいの歩行で休むようになると手術を望まれる方が多くなります。ゴルフをされる方だと30分ぐらい歩けても、ゴルフを楽しむために手術される方もおられます。
腰曲がりは、同じ曲がり方でも年齢によって判断は変わってきます。痛みだけではなく、見た目の問題もありますから。ただし腰曲がりの手術は、侵襲(しんしゅう:身体に対する負担)が大きいため、慎重に考えなければなりません。

Q. それはどのような手術なのですか?

A. 腰曲がりの程度が強い場合、骨盤から胸椎までの骨の変形を矯正し、固定する手術となります。症例によって固定の範囲ややり方は、ケースバイケースです。侵襲が大きいため、100%の治療を目指すよりも、一番問題のある箇所だけを処置することも少なくありません。

Q. 腰部脊柱管狭窄症のほうは、どのような手術ですか?

A. 脊椎の後ろにある椎弓(ついきゅう)を切除し、脊柱管を広げる手術です。1~3カ所、後方から骨を削って肥大した黄色靭帯などを切除します。それを基本に、椎骨(ついこつ)が前に滑っている腰椎すべり症を合併している場合などはその箇所を固定します。

椎弓切除術の例

椎弓切除術の例

固定術の例

患者さんによって症状は多種多様で、圧迫を解除するだけか、固定も必要かを見きわめて手術を行うため、同じ疾患でも手術時間や術後の経過は一様ではありません。さらに治療の仕方も、ドクターによって判断が異なることもあります。例えば固定術に関しては、腰椎すべり症があれば何でも固定すればよいという訳ではありません。というのは、固定するとその箇所は安定しますが、その周辺の脊椎に却って負担がかかる可能性があるからです。大切なのは、将来を見越して治療法を選択することです。患者さんが手術を迷われるときには、基本的にはより侵襲が少ない方を選ぶのがベターだと考えています。

Q. 脊椎の手術は、時代とともに進歩しているのですか?

A. 症例によっては内視鏡を用いるほか、腰曲がりの手術ではお腹を切開して椎間板にアプローチし、さらに後ろから切開して固定するという、2回に分けて施術するLLIF(側方椎体間固定術)などが取り入れられています。出血量がかなり抑えられ、侵襲が少ない手技なので当院でも取り入れています。

LLIF(側方椎体間固定術)

また当院では、最先端の手術支援装置である3D移動型術中イメージングシステムを導入し、固定術の精度と安全性を高めています。これはCT撮影ができるナビゲーションシステムで、九州でもまだ3~4台しかないようです。
人の背骨はそのときの体位によって並び方が微妙に異なり、CT撮影した時点の背骨と術中の背骨には誤差が生じてしまいます。しかしこの機材を使えば、術中にCT撮影ができるので、直接的にレジストレーション(CT画像との照合)ができ、精度がアップします。細くて狭い箇所を切除・固定する際も、ナビゲーションシステムで安全に誘導されるので、リスクの高い手術もよりスムーズにできます。

3D移動型術中イメージングシステム

Q. 術後はどのようなことに気をつければよいですか?

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター 前田 健 先生A. 腰部脊柱管狭窄症の場合、通常のコルセットを1~3カ月間装着します。比較的高齢者の腰曲がりで矯正手術を行った場合は、術後にまた曲がってくる可能性があるため、一定期間はコルセット(装具)での固定が必須です。当院では、最低でも半年間は装着していただいています。また、骨が癒合するまでは、しゃがんだりすると固定した箇所が元に戻ってしまいやすいので、和式ではなく洋式の生活を心がけていただいています。あとは、カルシウムなどをしっかり摂取して骨密度を高めること、骨粗しょう症の場合は治療をすることも重要になります。

コルセットの例

Q. 先生が治療において、心がけておられることを教えてください。

診察A. 手術の技術も大切ですが、手術をするべきか、するならどのような手術を選択するべきか、ということを見きわめることの方が大切だと考えています。患者さんが何を望まれているのかをしっかりとお聞きし、長期的に症状が抑えられ、かつできるだけ低侵襲な手術を選ぶことを心がけています。
加齢による腰曲がりも若い方の側弯症も、手術で背筋がまっすぐになれば、患者さんの表情も驚くほど明るいものに変わります。しかし、特に高齢者の場合は背骨が元に戻ろうとする力も大きいため、再手術の可能性もあります。さらに、足の爪を切ったり靴下を履いたりする動作がしにくくなる場合もあるといった面もご理解いただけるよう、丁寧に説明しています。

独立行政法人労働者健康安全機構 総合せき損センター 前田 健 先生Q. ありがとうございました。では最後に、足腰に痛みを抱える方へのメッセージをお願いします。

A. 私たち医師は、腰痛と神経痛を分けて捉えています。腰痛は原因が漠然としており、椎間板や椎間関節、筋肉に問題がある、あるいは変形による疲労や心因性の痛みなど、さまざまな可能性があり、慎重に見きわめなければなりません。一方、神経痛は因果関係がはっきりとわかりやすく、我慢できないレベルの痛みを伴うことがしばしばです。歯痛や少し歩くだけで足が痛むというケースは、こちらに当たります。腰痛と神経痛の両方が生じている場合もありますが、まずはどんな痛みなのか、ご自身なりに症状を把握されることをお勧めします。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

前田 健 先生からのメッセージ

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リモート取材日:2020.10.19

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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