先生があなたに伝えたいこと / 【吉村 誠】腰部脊柱管狭窄症は、体力さえあればいくつになっても手術できます。治療後に「こうなりたい」という目標を立てて、一緒に治療法を考えていきましょう。

先生があなたに伝えたいこと

【吉村 誠】腰部脊柱管狭窄症は、体力さえあればいくつになっても手術できます。治療後に「こうなりたい」という目標を立てて、一緒に治療法を考えていきましょう。

医療法人社団亮正会 総合高津中央病院 副院長 吉村 誠 先生

医療法人社団亮正会 総合高津中央病院 副院長
よしむら まこと
吉村 誠 先生
専門:膝関節脊椎

※膝関節について、お話しされているページがあります。こちらをご覧ください。

吉村先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
機械いじりです。新しいスマートフォンを見るとすぐほしくなってしまい、いまや家に8台もあるんです(笑)。パソコンもパーツを買ってきて自作して、あれこれ手を加えて楽しんでいます。

2.最近気になることは何ですか?
各国が保護政策をとるようになると、今後、世界経済がどうなるのか気がかりです。

先生からのメッセージ

腰部脊柱管狭窄症は、体力さえあればいくつになっても手術できます。治療後に「こうなりたい」という目標を立てて、一緒に治療法を考えていきましょう。

Q. 最近よく耳にするようになった、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、どのような病気なのでしょうか? ヘルニアとはどのような違いがありますか?

A. 腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の後ろ側の神経が通るトンネルである脊柱管(せきちゅうかん)が、周辺の椎間板や骨、靭帯といった組織に圧迫されて狭くなったり損傷したりすることで起こる病気の総称です。椎間板(ついかんばん)ヘルニアは、神経根(しんけいこん)と呼ばれる脊柱管から出ている部分にぶつかって神経根症状を起こすもので、重症化すれば脊柱管狭窄症になることはありますが、限定的な症状といえます。

脊椎の断面図

Q. 腰部脊柱管狭窄症では、どのような症状があらわれるのでしょうか?

A. 神経を圧迫されるとその神経の支配領域、たとえば腰であればお尻から足にかけて痛みが出ます。腰部脊柱管狭窄症には、腰椎でいくつかの神経に分岐して馬のしっぽのように見える馬尾神経 (ばびしんけい)が圧迫されることで起こる馬尾型、神経根が圧迫されて起こる神経根型、混合型の3種類があります。馬尾型ではしびれや麻痺、神経根型では、足がだるくなって歩き続けられなくなる間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状があらわれることが多いです。

Q. 背骨を傷めることで足が痛くなるというのは何だか不思議です...。

A. たとえば、机に片方の肘をついてみてください。ずっとついていると手がしびれてきませんか? それは肘を通っている神経を圧迫しているからです。簡単にいうと、脳が発電所とすれば、脊髄(せきずい)は送電線で、そこから腰や手足に電気を送っていると思ってください。電線を痛めたら停電が起こるのと同じ原理です。痛めた箇所によって腰が痛くなったり、足が痛くなったりするのです。
神経は馬尾神経のように束になっているところもあれば、神経が通る経路が二通りある箇所もあるなど複雑に絡み合っているので、MRIを使ってどの部分が原因になっているのかを診断します。

内臓脂肪が脊柱管を圧迫しているケースQ. どのような原因が考えられますか?

A. 体を酷使する方は椎間板がつぶれやすくなり、そうなると骨が出っ張り、体の安定性を保つために靭帯も厚くなっていきます。脊柱管というのは決まった面積しかないので、骨が出っ張ってくれば圧迫の原因になります。生まれつき脊柱管が狭い方もいますが、ほかの組織とバランスが取れていれば問題ありません。
米国では、巨漢の男性で内臓脂肪が脊柱管を圧迫しているケースがよくみられます。MRIを撮ると内臓脂肪がたっぷりついていることがわかるのです。最近では、日本でも食生活が欧米化した影響で増えています。減量すれば症状が軽くなるのは確実ですが、そこまで太っている方でうまく減量できる方はいません。また、そういう方の場合、たいていは脂肪肝や糖尿病などの生活習慣病にかかっていることも多いので、内科の医師とも連携して治療にあたります。

Q. かかりやすい年齢というのはあるのでしょうか?

A. まず、先天性の脊柱管狭窄症を除いて子どもには見られません。おおむね40代以降で発症し、60、70代の男性が特に多くなります。それ以上の年齢になって活動性が下がると歩行距離も短くなるので、日常生活で困ることは少なくなります。

医療法人社団亮正会 総合高津中央病院 副院長 吉村 誠 先生Q. 男性がなりやすいのには理由がありますか?

A. 男性のほうが、重いものを持つなど肉体労働に従事することが多いのも一因でしょう。男性は女性の1.5倍の筋肉量があるとされていますが、近年では建築現場などで力仕事に従事する若い女性も増えています。男性に比べて筋肉量の少ない女性が同じように肉体労働を続けた場合、20、30年後にどうなるのか、整形外科医として気になるところです。

Q. 予防法はありますか?

A. まず腹筋、背筋で体幹を鍛えて筋力、柔軟性をつけ、減量して負荷を減らすことです。

Q. どのような症状がでたら受診すればよいですか?

A. しびれや脱力感、なんとなく足が使いづらいなどの症状が出た場合には、受診していただければいいと思います。症状が軽いうちに治療を始めればそれだけ早く回復できるでしょう。

Q. 腰部脊柱管狭窄症と診断された場合には、どのような治療を行うのでしょうか?

A. 第一段階では肥満の方は減量とリハビリを開始し、動き過ぎていた方は力仕事を控えてもらうようにしていただきます。馬尾型の場合は脊柱管が全体的に圧迫されているので神経を回復させる治療を、神経根型の場合は神経根が圧迫されて起こる痛みを取る治療をメインに行います。具体的には、馬尾型には血管拡張剤やビタミンB12など神経の栄養剤を使って血の巡りをよくし、神経根型には神経障害性疼痛薬やブロック注射を使います。投薬治療で改善される方も多いです。

Q. それでも改善しない場合は手術になるのでしょうか?

A. そうです。脊椎の後ろ側にある椎弓(ついきゅう)の一部を削って神経の通り道を広げる除圧術(じょあつじゅつ)と、脊椎を固定することで安定性を高める固定術(こていじゅつ)という方法があります。

固定術の例

Q. 高齢の場合、手術に危険はないのでしょうか? いくつぐらいまで手術は可能ですか?

A. 骨を削るので出血しますが、それに耐えられる体力があれば、いくつになっても手術はできます。もちろん術前の検査もしっかりと行います。高齢の方の場合、元々活動性が低いので、よほどひどい症状でなければ手術はしませんが、過去には93歳で手術を受けられて「痛くて長く歩けなかったのが、散歩ができるまでになった」と感謝されたこともあります。
ただ、手術をすれば歩きやすくなることは確実ですが、腰部脊柱管狭窄症は神経が圧迫されて変性していく病気なので、手術で圧迫を取っても神経が回復しなければ症状は改善しません。「手術してもしびれは取れないかもしれません」とはお伝えしています。あくまで、医師として、患者さんの「こうなりたい」というニーズに合わせて様々な方法を提案し、ご本人に選んでもらいながら、治療法を一緒に考えていきます。

医療法人社団亮正会 総合高津中央病院 副院長 吉村 誠 先生Q. 低侵襲(ていしんしゅう)手術という言葉を耳にする機会も増えてきましたが、そもそも低侵襲手術とはどういった手術なのでしょうか?

A. 体に害を与えるものはすべて侵襲と呼ばれますが、切開する範囲を狭くすること、すなわち小皮切(しょうひせつ)が低侵襲になるとは限りません。たとえば、麻酔の時間が長くなれば、それだけ身体へのダメージ、つまり侵襲が大きくなります。全身麻酔で2時間以上うつ伏せの状態が続けば合併症が増えるという報告があります。私はあくまで手術時間を短くして組織に負担かけないことが低侵襲だと考えています。そういう意味で、当院では小皮切の手術は行っていません。当院の平均的手術時間は、除圧術は30分前後、固定術は1時間30分前後です。

Q. 手術後のリハビリについて教えてください。

A. 手術翌日から歩行訓練を開始し、1ヵ月間はコルセットを着けていただきます。その後、3ヵ月程度は負担がかかるときだけ着けてもらいます。

Q. 手術後に、日常生活で気をつけることはありますか?

A. 重いものを持つときは膝を曲げて持ち、腰に負担がかかる中腰の姿勢は長くとらないようにしてください。水泳、サイクリングといった全身運動はお勧めですが、腰をねじるゴルフや重いものを背負う登山などはできれば避けていただきたいと思います。禁止はしませんが、痛くなっても恨まないでください(笑)。

医療法人社団亮正会 総合高津中央病院 副院長 吉村 誠 先生Q. 痛みでお悩みの方にアドバイスをお願いします。

A. 脚がだるい、腰が痛いといった症状は、実はどこの科の疾患か、整形外科医でも判断するのが難しいことがあります。腰も悪く、脚の血流も悪いなど、複合的な要因で症状があらわれている方もいます。原因を見つけ出すのが私たちの仕事ですので、痛みを感じるようなことがあれば、気軽に相談してほしいと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

吉村 誠先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2019.1.15

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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