先生があなたに伝えたいこと / 【太田 悟司】患者さんが安心して人工関節手術を受けられるように丁寧な説明を心がけています。

先生があなたに伝えたいこと

【太田 悟司】患者さんが安心して人工関節手術を受けられるように丁寧な説明を心がけています。

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 太田 悟司 先生

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院
おおた さとし
太田 悟司 先生
専門:股関節膝関節

太田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 マラソン大会に出場したときによく足がつるので、その原因や対策を調べています。体幹の筋力を鍛える必要があるのかも...と試行錯誤しているところです。

2.休日には何をして過ごしますか?
 走ることが趣味なので、年に1~2回のペースでマラソン大会に出場しています。普段は1カ月で300kmを目安に走っています。ランニング中は頭の整理ができるので、リフレッシュする時間になっています。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

先生からのメッセージ

患者さんが安心して人工関節手術を受けられるように丁寧な説明を心がけています。

【股関節の仕組みと疾患】

Q. まずは、股関節の構造について教えてください。

A. 股関節は、骨盤の端のお椀状になっている臼蓋(きゅうがい)という部分に大腿骨(だいたいこつ)の先端にあるボール状の骨頭(こっとう)が組み合わさっている構造をしています。人体における大きな関節の一つで、歩行時には体重の約3倍の荷重を支える荷重関節です。また、周囲には多数の筋肉があり、それらが股関節の安定性と動きを支えています。

股関節の構造の図

Q. 股関節の代表的な疾患について教えてください。

A. 最も患者さんが多いのが、変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。次いで大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)が挙げられます。変形性股関節症とは、もともと滑らかに動いていた股関節が、ギシギシと油の切れたギアがすり減るかのように軟骨がすり減り、スムーズに動かなくなる疾患です。大腿骨頭壊死症は、骨頭が血流不全を起こし、骨が壊死して潰れていく疾患です。骨折に類するような状態になって痛みを起こし、日常生活にも支障が出ることがあります。ほかにも、高齢の方の転倒や交通事故などの外傷による大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)などもあります。

変形性股関節症の図

大腿骨頭壊死症の図

Q. 変形性股関節症になる原因は何ですか?

A. 股関節の構造上、大腿骨頭を覆う臼蓋に体重が大きくかかるのですが、この"被り"が浅い状態を臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)といいます。臼蓋形成不全がある方は、体重を受ける骨の面積が少ない分、加齢に伴って体重を受ける部分の軟骨が著しく減っていき、骨が変形しやすくなります。そこから変形性股関節症に移行することがあります。日本においては、臼蓋形成不全が変形性股関節症の主な原因です。

臼蓋形成不全の図

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 太田 悟司 先生Q. 大腿骨近位部骨折についても教えてください。

A. 大腿骨の近位(股関節に近い部分)で起こる骨折です。高齢の方が転倒などによって受傷することが多く、脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)ともいいます。脆弱性骨折とは、立っている高さから転ぶぐらいの軽微な外傷で起こる骨折のことをいいます。骨が弱くなっていて骨粗しょう症のある高齢女性によくみられる疾患です。
この大腿骨近位部骨折のほか、背骨に起こる脊椎骨折(せきついこっせつ)、肩の付け根で起こる上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)、手首で起こる橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)が4大骨折といわれています。大腿骨近位部骨折は他の3つと違って歩行が難しくなることが多く、一気に体力低下につながり、健康を大きく損ないかねません。日本で年間約20万例発生しているといわれ、予防や適切な治療の必要性が指摘されています。当院でも大腿骨近位部骨折に対して年間約200件の手術を行っています。

Q. どのような手術ですか?

A. 股関節の外側にある大転子(だいてんし)で骨折した場合には、骨接合術というスクリューで留める手術法が選択肢になります。一方、股関節の内側で骨折した場合は、基本的に股関節を人工物に置き換える人工股関節全置換術(じんこうこかんせつぜんちかんじゅつ)、または大腿骨頭のみを人工物にする人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)を選択することになります。
人工骨頭置換術は、人工股関節全置換術よりも手術時間が短いメリットはありますが、自分の臼蓋に骨頭ボールが接触することで、長期的にみると臼蓋側に摩耗や変形が生じやすく、再手術が必要になるケースもあります。そのため、短時間の手術でなければ体力的に難しい超高齢者の方の骨折などで、限定的に選択されることがあります。

人工股関節全置換術の例

人工股関節全置換術の図

人工骨頭置換術の例

人工骨頭置換術の図

Q. 骨折すると、すぐに手術になるのですか?

A. 大腿骨近位部骨折や大腿骨頭壊死症は、起こしてしまうと安静時でも強い痛みが続きます。特に骨折に関しては、できるだけ早期に手術を行うべきという報告が多くなっています。かつて日本では、骨折から1週間前後に手術するのが一般的でした。しかし、手術までの間に筋力が低下したり、肺炎などを起こしたりすることがあるため、できるだけ早期に手術するようになりました。現在は、骨折から48時間以内に手術することが推奨されています。さらに、術後はできるだけ早期にリハビリを行い、社会復帰を目指すことが重視されています。

Q. 変形性股関節症の場合は、どのような治療の流れになりますか?

A. 変形性股関節症の初期であれば、保存療法を試みることからスタートします。具体的には、外用剤や内服薬で痛みのコントール、体重管理、筋力訓練を組み合わせて症状の緩和を図り生活能力の維持を目指します。手術をするかどうかは、患者さんの社会的背景により異なります。どの程度の生活の質や運動能力を求めるかをお聞きし、相談して決めていくのが原則となります。日常生活の中では、家事をしたり、トイレに行ったりといろいろな動作が必要になるので、そこに支障が出る場合は手術をご提案します。最終的には患者さんに判断していただくという流れになります。
手術には、臼蓋形成不全や変形性股関節症の初期の場合は、骨を切って荷重のかかる面積を増やす骨切り術(こつきりじゅつ)の選択肢があります。当院では、基本的には40代以下の若い方には、人工股関節の耐用年数を鑑みて骨切り術を検討します。骨切り術は自分の骨を温存できるというメリットがある反面、経年とともに変形が進行したり、術後のリハビリに時間がかかったりというデメリットがあります。そのため、高齢の方にとっては、社会復帰がスムーズにできる人工股関節置換術のほうが、メリットが大きいと考えています。

骨切り術の一例

骨切り術の図

Q. 手術を選択する目安はありますか?

A. 私が重視しているのは、十分な睡眠が取れているかどうかです。変形性股関節症の患者さんは、運動時に痛みを感じる方が多いのですが、寝ているときにも痛みが出て、夜中に目が覚めるなど、安眠の妨げになっている場合は、手術を検討していただくようにお話しています。人工股関節置換術は、多くの方が「手術をしてよかった」と満足されていることが報告されており、我々の実感としても同様の印象があります。

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 太田 悟司 先生Q. 人工股関節には種類があるのですか?

A. 人工股関節を骨に固定する方法に違いがあります。具体的には、物理的に摩擦によって固定するタイプと骨セメントで貼り付けて固定するタイプがあります。また、骨頭ボールはセラミックス製や金属製などがあり、受け手となるカップもポリエチレン製や金属製などがあります。ライナーはポリエチレン製が主流です。以前は、製品によって成績に差がありましたが、現在はどれも性能が上がっていて大差がないと考えています。
特に性能が向上したのがライナーです。かつては経年とともにライナーの素材であるポリエチレンがすり減り、20年ぐらいの耐久性だといわれていました。しかし最近は、ポリエチレンがすり減りにくくなり、人工股関節のゆるみなどの問題が改善され、耐久性が向上してきています。

人工股関節の構造の図

【膝関節の仕組みと疾患】

Q. では次に、膝関節の構造についても教えてください。

A. 膝関節は大腿骨と脛骨(けいこつ)で成り立っており、お皿といわれる膝蓋骨(しつがいこつ)も含まれます。一見すると蝶番のように曲げ伸ばしするだけの動きにみえますが、実際に膝関節は非常に複雑な動きをしています。曲がるだけに見えて、実はロールバックという後ろにズレる動きや、ねじれる回旋の動きも加わります。このような微細な動きによって、スポーツなどでもスムーズかつ力強い動きが発揮できるようになっています。関節全体は関節包に包まれており、その内部は潤滑油の代わりをする関節液で満たされています。膝関節の安定性は、両側の靱帯(じんたい)と前後の十字靭帯の、4つの大きな靱帯によって支えられています。

膝関節の構造の図

Q. 膝関節にはどのような疾患が多いですか?

A. 代表的なのは、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。他には、特発性の骨壊死(こつえし)や外傷、靱帯や半月板の損傷などがあります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症の図

Q. 変形性膝関節症の患者は増えてきていますか?

A. 昔と比べると、変形性膝関節症の患者数は増えてきています。人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)の手術件数も増加傾向にあります。現在日本では、年間約10万人の方が人工膝関節置換術を受けているといわれています。もともと人工股関節が先に開発され、その後に人工膝関節が登場し、1970年代に普及しました。
変形性股関節症の場合は、臼蓋形成不全などの素因のある方がかかりやすいのですが、変形性膝関節症は誰でもかかる可能性があります。歩行するだけでも膝関節には負担がかかるうえ、日本の生活様式では正座をしたり、和式トイレにしゃがんだりなど、膝を深く曲げる場面があります。膝関節の軟骨にとっては大きな負担がかかる習慣です。加齢に伴って大半の方が何らかの膝の症状を引き起こすといっても過言ではないでしょう。

Q. 変形性膝関節症の治療方法についても教えてください。

A. 痛みのコントロールから行うのが一般的です。痛み止め薬のほか、ヒアルロン酸関節注射を用いることもあります。関節の中にヒアルロン酸を注入することで、関節液の粘り気を調整したり、関節自体の栄養分を補強したりといった働きがあります。それにより、痛みが落ち着く、あるいは腫れが引くといった症状の緩和が期待できます。
ほかにも、太ももの前側の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋力が弱まると痛みが強く出やすいことが指摘されているので、筋力をつけるための運動療法も大切です。身体を動かすことは体重コントールにもつながります。
こうした保存的な治療を続けても、生活の質が下がり、夜中に痛みで目が覚めるような状況になってくると手術をご提案しています。

Q. 手術はどのようなものですか?

A. 変形性膝関節症の初期であれば、関節鏡というカメラを使って、関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)を行う場合があります。関節の中にある炎症を起こした滑膜(かつまく)の切除や、傷んだ半月板の縫合などを行う手術です。変形が進行している場合は、人工膝関節置換術が選択されることもあります。変形性膝関節症は進行していくのが一般的なので、関節鏡視下手術を行っても進行が完全に止められるものではなく、あくまでも進行を遅らせるための処置になります。

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 太田 悟司 先生Q. 近年の人工膝関節置換術について教えてください。

A. 人工膝関節自体がかなり進歩しており、以前よりも安定した成績が出ています。人工股関節と同様、ポリエチレンライナーの素材が改良されて耐久性が向上しているうえ、膝の自然な動きを再現するインプラントが開発されています。人工膝関節置換術は、大腿骨と脛骨の傷んだ部分を切除して人工膝関節に置き換え、その間にポリエチレン製の人工軟骨(ポリエチレンライナー)を入れる手術です。自然な膝の動きに近づけるためには、自然なアライメント(形状とバランス)の調整を行うことが大切です。例えば日本人に多くみられるO脚は、膝関節のアライメントがズレているため、手術でできるだけ自然なまっすぐの形になるように調整を行いますが、やり過ぎると違和感が生じます。もともとの変形した形に合わせるのか、理想とする形に近づけるのか、専門家の中でも議論が続いています。
当院では、もともとアライメントに大きな問題のない方は、その方のアライメントを重視し、違和感を減らす方法を取るケースが基本です。しかし、大きく変形している方の場合は、それに合わせると人工膝関節に負担がかかりやすく、後に壊れる原因になるので、矯正が必要になる場合があります。そのため、患者さんにとって最良の手術が提供できるように、常に学会の動向やトレンドを掴みながら学ぶとともに、綿密に術前計画を立てて手術に当たっています。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術の図

Q. 手術後の流れについても教えてください。

A. 手術の翌日からリハビリを始める流れが一般的です。そのため、術後の疼痛管理がとても重要になります。当然、骨を切った痛みがありますが、当院では麻酔科による術後の疼痛管理を行い、しっかりと鎮痛することでできるだけ痛みを軽減してリハビリをスタートさせています。

地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 太田 悟司 先生Q. ありがとうございました。では最後に、先生が治療において大切にされていることを教えてください。

A. 人工股関節も人工膝関節も、基本的に患者さんが長期間使うものです。そのため壊れにくく、トラブルを起こさないようにすることを最も重要視しています。それでも万一、感染脱臼などの合併症が発生したときには適切に対処します。また、手術手技は日々進歩していますが、長期的な結果を慎重に見極める必要があるため、新しい技術や機械については長期の成績が判明するまでは患者さんに用いないことをポリシーとしています。また、術後の患者さんの経過などの情報を蓄積して、手術を検討している患者さんに丁寧にご説明し、患者さんの不安を解消することを大切にしています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

太田 悟司 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

リモート取材日:2025.11.5

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

先生の一覧へ戻る

病院検索をする

ページトップへ戻る

先生があなたに伝えたいこと

股関節股関節

膝関節膝関節

肩関節肩関節

肘関節肘関節

足関節足関節

手の外科手の外科

脊椎脊椎

病院検索 あなたの街の病院を検索!

先生があなたに伝えたいこと 動画によるメッセージも配信中!