先生があなたに伝えたいこと / 【山森 寛之】最適の治療、手術法を提示するために局所だけではなく、広く患者さんの症状や生活様式までを「診る」ことが重要です。【酒井 大輔】モットーは「患者さんを一生きちんと診る」ことです。そのためにも大病院と地域の病院との連携をさらに推進したいと考えています。

先生があなたに伝えたいこと

【山森 寛之】最適の治療、手術法を提示するために局所だけではなく、広く患者さんの症状や生活様式までを「診る」ことが重要です。【酒井 大輔】モットーは「患者さんを一生きちんと診る」ことです。そのためにも大病院と地域の病院との連携をさらに推進したいと考えています。

医療法人社団 医誠会 湘陽かしわ台病院 山森 寛之 先生

医療法人社団 医誠会 湘陽かしわ台病院
やまもり ひろゆき
山森 寛之 先生
専門:人工股関節人工膝関節

山森先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 小学生の娘がいるのですが、一人歩きさせるのが心配な世の中になりました。

2.休日には何をして過ごしますか?
 できるだけ娘と遊ぶようにしています。たまに趣味のゴルフもしています。

東海大学医学部付属病院 酒井 大輔 先生

東海大学医学部付属病院
さかい だいすけ
酒井 大輔 先生
専門:脊椎脊髄外科

酒井先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 病気の方のために活動するには自分が元気でなければと思うのですが、運動不足、睡眠不足になりがちなことですね。

2.休日には何をして過ごしますか?
 学会などが多くて、休みがあまりとれないのですが、さまざまなところへ出かけていろいろな人と出会うことが楽しいです。

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先生からのメッセージ

最適の治療、手術法を提示するために局所だけではなく、広く患者さんの症状や生活様式までを「診る」ことが重要です。(山森先生)
モットーは「患者さんを一生きちんと診る」ことです。そのためにも大病院と地域の病院との連携をさらに推進したいと考えています。(酒井先生)

Q. 今回はロコモティブシンドロームをテーマにお話を伺います。そのロコモについて詳しく教えてください。

山森先生:ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)は、2007年に日本整形外科学会が日本の超高齢社会を見据えて提唱した概念です。加齢に伴う筋力の低下、関節や背骨の病気あるいは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などにより、運動器の機能が衰えて寝たきりになってしまったり要介護になったりするリスクが高い状態を表します。
酒井先生:運動器が衰えることで転倒しやすくなり、寝たきりにつながってしまいます。また、健康上の問題がない状態で日常生活を送ることができる期間を「健康寿命」といいますが、日本人女性の健康寿命は実際の寿命よりも5年ほど短いといわれています。寝たきりにならないように、健康でイキイキと生きるための対策が必要なのです。
山森先生:ロコモのリスクを低減して、長く自立した生活を送っていただきたいのですが、実は、ロコモは高齢者だけの問題ではなくて若年層にも広がっています。若いころの過度なダイエットによる痩せすぎや食生活の乱れが、体を支える骨や筋肉を弱くしているのです。

Q.ロコモの予防法があれば教えてください。

山森先生:タンパク質やカルシウムは筋肉や骨格を形成する成分のひとつなので、積極的な摂取はとても重要です。もちろん運動をして体幹や下肢の筋力を維持することも重要です。私はスポーツ整形も専門ですが、ストレッチをして全身の柔軟性を保つこと、自分では気がつきにくい正しい姿勢や歩行の指導も、ロコモの予防として有効だと考えています。
酒井先生:推奨されているロコモ体操はぜひ生活に取り入れてほしいと思います。ほかにも、もし怪我や病気をしたときには、リハビリテーションや日常生活の見直しなど、医師による指導を必ず守って継続していただきたいと思います。
山森先生:それでも、加齢によって膝などの関節や頚椎(けいつい)、腰椎(ようつい)の変形がひどくなって日常生活に支障を及ぼす場合は、手術治療を行う場合もあります。その場合、局所だけを診るのではなく、全身のバランスを診て判断しています。

いろいろなロコモ体操

診断 イラストQ. 全身のバランスを診るとはどういうことでしょうか?

酒井先生:私たちは患者さんがドアを開けて入って来られた瞬間から、歩き方、立ち方、座り方、話し方などを注意深く観察しています。そして、たとえば膝の関節痛があるという場合では、その原因が関節の傷みによるものなのか、それとも別の原因の可能性があるのかということを調べます。痛みを軽くする対症的な治療だけで終わらず、真の原因を探りだして治すことが本当の治療なのです。ヒップ・スパイン・シンドローム(hip-spine syndrome)といって、腰椎や骨盤と下肢の関節が相互に影響して障害を起こすこともありますから、膝関節だけを診ていては治療できないのです。
山森先生:整形外科には、脊椎、股関節、膝関節などの専門分野がありますが、自分の専門だけを診て終わりではないのです。手術に関しても同じようなことがいえます。患者さんの全身状態や日常生活、職業、家庭の生活様式まで、あらゆることをよく考えた上で最適な治療を提示することが私たちの使命だと思っています。
酒井先生:その意味では病気を診ることはすなわち「人を診る」ということでしょうか。現在、特に慢性的な疼痛(とうつう)においては、その真の原因を探るために画像上の解剖学的な変化だけではなく、さまざまなアプローチが必要であると考えられています。腰痛の場合では、理学療法士、内科、心療内科などの先生と一緒に原因を探ることもあります。精神的に病気とまではいかなくても、少し落ち込んでいることが腰痛の遠因になることもあります。さりげなく「最近変わったことがありましたか?」と聞き出すことで原因がわかり、それを解決すると症状が良くなることもあります。そういうアプローチで臨まないと、不必要な手術や治療を行ってしまう可能性もあるのです。

Q. それならば、精神面もロコモ予防のキーポイントになるかもしれませんね。

酒井先生:はい。予防と心配は隣り合わせだと思います。予防ばかりを考えていると心配ばかり増えてしまいます。それがまた痛みの原因となってしまうこともあります。そういうところも「そこまでの心配はいりませんよ」とケアするのも私たちの仕事なのです。精神面についてはほかにも、たとえば手術後の状態が良い患者さんは、「とにかく治りたい」という意欲の強い方が多いような気がします。だから、ロコモの予防についても、「人生の中でやりたいことがある」という強い願望を持ってもらうことも重要な要素なのです。老いることを考えて若いうちから好きなこと、人生を通してやり続けたいことを見つけておくのも大事だといえるでしょう。そうまですることができなくても、日々の生活でどんな小さなことでも良いから"ハリ"を見つけてほしいと思います。

Q. ロコモのリスクが高くなる疾患には、主にどのようなものがありますか? その治療法についても教えてください。

山森先生:私の専門では膝関節の変形です。加齢によって半月板、そして軟骨がすり減り、進行すると痛みも変形も強くなっていきます。初期なら痛み止めの投与やヒアルロン酸の関節注射、運動療法などの保存治療を行います。半月板だけが傷んで疼痛のある場合は、半月板の修復や切除、軟骨移植など内視鏡での修復術を行います。また、日本人にはO脚が多いのですが、内側の軟骨だけが傷んでいて比較的若い方には、自分の骨を温存する高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)が選択肢のひとつになります。軟骨全体がすり減った高度な変形に対しては人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)を行いますが、膝関節の片側だけを置換する場合や全部を置換する場合など、人工膝関節にもいくつかのモデルがあります。

病態 手術治療(高位脛骨骨切り術)

  1. ※手術治療には下記の方法があります
    1. 1)片側の変形性膝関節症の場合 
      ●高位頸骨骨切り術 
      ●膝関節の片側だけを人工物に置換する方法
    2. 2)両側進行した変形性膝関節症の場合 
      ●膝関節の全部を人工物に置換する方法

膝関節の片側だけを人工物に置換する方法

膝関節の片側だけを人工物に置換する方法

膝関節の全部を人工物に置換する方法

膝関節の全部を人工物に置換する方法

Q. 人工膝関節置換術をされた患者さんの術後の感想はどのようなものですか?

山森先生:たとえば、最近手術した85歳の女性は、早速、お孫さんと一緒にハワイに行ってきたそうです。あきらめていたことが現実になったのでとても嬉しかった、という明るい声を聞いていると医者冥利に尽きます。

腰椎圧迫骨折Q. 脊椎の疾患として主なものは何でしょうか?

酒井先生:高齢者の三大骨折と呼ばれるものに、橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ:手首の骨折)と大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折(ようついあっぱくこっせつ)があります。中でも腰椎圧迫骨折になると姿勢が丸まってきて亀背(きはい)という状況になることがあります。そうなると内臓が圧迫されるため慢性疾患が起こりやすく、気分も鬱状態になることがあります。亀背が進むと寿命が短くなるというデータもありますので、高齢者には最も対策が必要です。

東海大学医学部付属病院 酒井 大輔Q. 腰椎圧迫骨折の治療にはどのような方法があるのですか?

酒井先生:やはり保存治療を第一選択とし、痛みなどの症状が取れない場合には手術になることもあります。手術は今ではセメントを注入する「椎体形成術(ついたいけいせいじゅつ)」が主流です。圧潰(あっかい)した骨を持ち上げて形成し、そこにセメントを入れて固めることで、骨の高さを元に戻します。大きく切開せずに注射のような方法で、X線を見ながらセメントを注入します。それでも改善が見込めないだろうという場合は、神経を圧迫している部分を切除し骨を移植してインプラントで固定する脊椎固定術(せきついこていじゅつ)という方法を採ります。この領域も近年著しく進歩し、今までできなかったような矯正ができたり、低侵襲での手術が可能になったりしています。前後左右に三次元で曲がってしまった脊椎を矯正することができる時代になりました。

圧迫骨折の手術治療

Q. すごい進歩ですね。

酒井先生:実は2、3ヵ月間、横になって安静にするだけでも症状が改善することもあります。しかし横になる期間が長くなると、やはりロコモにつながりますから、ある程度保存治療をしても効果がないときは、手術を選択するほうが患者さんの生活の質(QOL)を向上させます。また、手術を成功させるためにはさまざまな条件が必要なのですが、そのひとつに病院間の連携があげられます。
私自身は大学病院で手術をし、そのあとのリハビリや後療法(こうりょうほう)に関しては山森先生と協力体制を組んでいるのです。大学病院ではできない、よりきめ細かいケアを行うための連携が、手術の結果をより良くする重要な要素だと思います。患者さんを良くするのは、私たち手術を行う者が5割だとすれば、リハビリや後療法が5割です。特にリハビリなくしては、手術は完結しません。

手術 イラストQ. 手術においては合併症も心配です。主な合併症とその対策についてお聞かせください。

酒井先生:まず問題となるのは肺塞栓症、一般的にエコノミー症候群といわれるものです。重度の場合は命に関わるため、整形外科のガイドラインに沿って万全を期した上で、さまざまな工夫をしています。手術中には弾性ストッキングを用いて血流を良くし、手術後ベッドで安静にしている間は自動的に足をマッサージするフットポンプを着けていただきます。また術後2日目からは血をサラサラにする抗凝固剤を10日間から2週間程度使用します。患者さんによって潜在的なエコノミー症候群を持っている方もおられますので、手術前に下肢の静脈エコー検査を行うこともあります。また早期のリハビリも肺塞栓症予防には大変有効です。

Q. 合併症としてほかに考えられるものはありますか?

医療法人社団 医誠会 湘陽かしわ台病院 山森 寛之 先生山森先生:感染です。虫歯や水虫、糖尿病などはリスクが高くなるので、これらを術前にしっかり治療しておくことが大切です。人工関節手術ではクリーンルームを使い、宇宙服のような専用の手術着を着用して、抗生剤も投与します。できうる限りの予防策を講じています。
酒井先生:整形外科学会において合併症の対策はどんどん高い基準が設定されています。病院内で合併症対策の委員会や組織が設けられているかどうか、患者さん自身が調べられても良いと思います。患者さんの厳しい目が注がれることも合併症対策をさらに進める力になります。

Q. わかりました。では、手術した腰や膝をいつまでも良い状態に保つために、患者さんが心がけることはありますか?

山森先生:最初にお話しした、ロコモの予防を続けていただくことです。
酒井先生:そうですね。そこに帰結すると思います。
山森先生:しっかりと筋力をつけていただきたい。できるだけ若いうちからトレーニングをしておくのが最良です。
酒井先生:ほかには、いろいろな生活の変化や加齢に伴う変化に患者さん自らが柔軟に対応してほしいと思います。年齢を重ねるとどうしても固定観念に縛られ、生活習慣はなかなか変えられなくなります。しかし、状況に応じて考え方や心の持ちようを変えられるように、精神をコントロールできるようにしておくことも重要だと思います。

東海大学医学部付属病院 酒井 大輔、医療法人社団 医誠会 湘陽かしわ台病院 山森 寛之 先生Q. ありがとうございました。最後に治療にあたってのモットーをお聞かせいただきたいのですが、酒井先生はいかがですか?

酒井先生:「本当にその患者さんにこの治療が適切なのか、手術が必要なのか」を考えることです。
山森先生:見極める、ということですね。この方の病態にはこの治療法がベストだということを見極めるようにしています。私も常に広い視野で患者さんを診たいと思います。
酒井先生:われわれに共通していることは、手術した患者さんに対して「一生診る」という心意気です。腰椎でいえば椎体固定術は、1回の手術で終わらないこともありますから、長い目が必要です。一生きちんと診るためにも、やはり大病院と地域の病院、クリニックとの確かな連携が重要なのです。その体制を整えて、活用していくことが今後ますます求められるのではないでしょうか。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

山森 寛之 先生・酒井 大輔 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2017.4.21

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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