先生があなたに伝えたいこと / 【裵 漢成】膝の痛みは、体の使い方で改善されることがあります。それでも痛みが取れない場合には手術を考えますが、スポーツ復帰を目指す方などには骨切り術で自分の膝を残すという選択肢があります。

先生があなたに伝えたいこと

【裵 漢成】膝の痛みは、体の使い方で改善されることがあります。それでも痛みが取れない場合には手術を考えますが、スポーツ復帰を目指す方などには骨切り術で自分の膝を残すという選択肢があります。

豊川市民病院 裵 漢成 先生

豊川市民病院
はい ひろなり
裵 漢成 先生
専門:膝関節

裵先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 小学生の長女が一人部屋を望むようになったので、家を建てようと考えています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 最近は学会や講演などで多忙なのですが、休みがあれば小学生と幼稚園の息子たちを市のスポーツ教室などに連れていくようにしています。

携帯・スマートフォンサイトもチェック!

携帯電話・スマートフォン

バーコードリーダーで読み取ってください。携帯電話・スマートフォンからもご覧いただけます。
http://kansetsu-itai.com/m/interview/dr208.php

*携帯電話・スマートフォンからアクセスしていただく場合、パケット通信料は、お客様のご負担となりますので予めご了承ください。

QRコード

先生からのメッセージ

膝の痛みは、体の使い方で改善されることがあります。それでも痛みが取れない場合には手術を考えますが、スポーツ復帰を目指す方などには骨切り術で自分の膝を残すという選択肢があります。

Q. 膝関節の疾患についてお伺いします。まずは膝関節の構造を教えてください。

膝関節の構造A. 膝には大腿骨、脛骨、膝蓋骨(膝のお皿)という3つの骨があります。膝蓋骨は大腿骨と脛骨に筋肉の動きを伝達する働きをする骨です。
それらの骨を内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)、外側側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)、後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)という靭帯で支えています。靭帯はほかにもあるのですが、おおむねその4本で支えていると考えてください。

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. 肩などの他の関節と比べて、膝関節はどのような特徴を持っているのでしょうか?

A. 肩関節はお皿の上においたボールを、軟骨や筋肉で包んでいるようなイメージで、動きの自由度が高い構造です。また、股関節は大腿骨の骨頭(球状の骨)が骨盤の骨のくぼみに入っているので安定しています。
それに比べて膝関節は、脛骨の上に大腿骨が乗っているだけなので一見不安定ですが、靭帯で繋がれることで蝶番のような動きをします。それによって屈伸や回旋などの運動ができるのが特徴です。

Q. では、膝関節に多い疾患について教えてください。

A. 最も多いのは、膝の軟骨や半月板が傷むことで起きる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。内側から悪くなることが多く、ほとんどの方がO脚になります。まれに生まれつきのX脚や、外傷などが原因で外側から悪くなる方もいます。加齢に伴って起こることが多く、肥満の方や重労働に従事する方に特に多くみられます。いずれにせよ、軟骨が摩耗することにより引き起こされる疾患です。

変形性膝関節症(内側型)

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. 変形性膝関節症になった場合、やはり手術が必要なのでしょうか?

A. 手術をしてほしいと来院される方も多いのですが、基本的にはいきなり手術ということはありません。まずは正しい体の使い方を覚えてもらうためのリハビリから始めます。手術というのは、車でいえば車軸を変えるようなものです。乗り心地を良くするだけなら、運転技術を磨くとかタイヤの空気圧を変えるだけでも十分です。
実は、他院から「手術を」と紹介されて来られたような方でも、リハビリやアドバイスなどを行うことで3割程度の患者さんは手術をしなくて済んでいます。

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. 体の使い方を変えるだけで、膝関節の痛みが和らぐということですか?

A. そうです。年齢を重ねるうちに、長年のクセで体の使い方がわからなくなっていることがあります。たとえば、足を前に踏み込むようにすると、太ももの前側の筋肉が動きますが、膝の悪い人の中にはできない人が多いのです。したがって、まずは筋肉の動きを意識しながら踏み込む動きを覚えてもらいます。単に忘れているだけなので、トレーニングするだけで動くようになります。そうして正しい動きを取り戻すことで痛みが軽くなります。
関節にヒアルロン酸を注射して動きをサポートしたり薬で痛みを取ったりすることもできますが、あまり長期間はお勧めしません。自分の体の機能を回復させて、なるべく薬や手術を避けられるようにしたいと考えています。

Q. では、どのような場合に手術が必要だと考えられるのでしょうか?

A. レントゲンでの所見が悪くても、患者さんの年齢や状況によっては手術を選択しないことがあります。たとえば、靭帯の再建手術は80歳の方には必要ないのかもしれませんが、スポーツをされている比較的若い方には必要だと思います。その人が人生において何を大切にされているか、これから何をしたいのかによって選択肢は変わるのです。

Q. 手術にはどのような方法があるのでしょうか?

A. 膝の手術には大きくわけて2つの方法があります。ひとつは膝の組織を人工関節に変える「人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)」、もう一つは膝の角度を矯正する「AKO(膝周囲骨切り術)」という方法です。

O脚の図 高位脛骨骨切り術

術前術後AKOの写真

Q. 「AKO(膝周囲骨切り術)」について具体的に教えてください。

A. たとえばO脚の場合、膝の内側にかかっている負担を外側に分散させるために、脚の骨を切って角度を調整し、金属のプレートで固定します。術後、動きに制限が多くなる人工膝関節と比べ、自分の膝の組織を残すことができるので、動作制限がほとんどないことがメリットです。
一般的な骨切り術は、高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)といって、脛骨の上の方を切る方法を指しますが、最近は変形の場所や程度に応じて脛骨以外の骨を切る方法も確立されています。やや難易度の高い手術なので実施している病院は多くありませんが、治療の選択肢は増えています。
また、以前は骨切り術を行うと6〜8週間は体重をかけられませんでしたが、手術方法やリハビリの改良により術後3日目から体重をかけられるようになりました。

Q. 骨切り術はどのような患者さんに適用されますか?

A. 比較的若い患者さんに行われる手術ですが、最近では60〜70代くらいの方にも多く行われています。ある程度ご高齢でも活動性が高い方には骨切り術を行って、70〜80代になった頃に痛むようなら人工膝関節を考えても良いと思います。

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. 手術後の制限はないということですが、術後すぐにスポーツはできますか?

A. 切った骨がきちんとくっつくまで、3ヵ月くらいはかかるので、その間はスポーツは控えていただきます。創部(手術で切ったところ)が落ち着くまでの3〜4週間は入院期間です。退院後は外来で骨の癒合状態(ゆごうじょうたい)や痛み方を確認しながらスポーツ復帰の時期を考えます。
骨切り術後の痛みには段階があります。初めの3ヵ月は創部の痛み、次の3ヵ月は使っていなかった筋肉の痛み、その次の3ヵ月はお尻や太ももなど周囲が筋肉痛になります。その後は中に入っているプレートが気になり、1年経ってプレートを取り除いたところで「自分の脚に戻った」という感覚になります。
人工膝関節と比べると回復に時間はかかりますが、回復後の動作制限はほとんどなく、スポーツ復帰も十分に可能な手術方法です。

Q. 幾らか時間がかかるのですね。それでも骨切り術はメリットの大きな手術なのでしょうか?

A. 確かに、すぐに痛みが取れる人工膝関節に比べると、回復には時間がかかります。しかし、旧来のHTOと比較してAKOでは骨の向きが正常に、近似するので、将来的に人工膝関節になるとしても手術自体がやりやすくなります。
また、再生しないといわれていた軟骨も、荷重が分散されることで再生するという報告もあります。芝生でもみんなが踏むところは禿げますが、そこを立ち入り禁止にすれば新芽が生えてきますよね。今日の医療技術の進歩で軟骨や半月板の再生が可能になった時に、自分の膝が残っていれば人工関節もせずに済みます。そういった意味でも様々な可能性を含んでいる手術だといえます。

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. 軟骨の再生といえば、こちらでは「軟骨培養」も行っていると伺いました。

A. はい、当院は軟骨培養の認定施設です。軟骨培養とは、健常な部位からごく少量の軟骨を採取し、培養施設で軟骨のシートを作るものです。手術の際に軟骨が欠損している場所にそのシートを貼り付けて移植します。

Q. どのような疾患に適用されるのでしょうか?

A. 膝の外傷性の軟骨欠損にのみ適用されます。また、欠損が小さければ採取した軟骨をそのまま移植すれば良いので、欠損が一定の大きさを超える場合に限られます。軟骨を損傷しやすい状態のまま移植してもまた傷めてしまうので、骨切り術と併せて行うことが多いです。
現段階では膝のみですが、今後ほかの関節にも適用が広がっていくのではないかと思います。

Q. 最近、人工膝関節手術に「プレカット」という手技があると伺いました。どのような方法なのでしょうか?

A. 人工膝関節を設置する上で膝の伸展や屈曲の再現は大きな課題の一つです。そのために靭帯バランスが重要になります。従来、骨を切ってからそれに合わせて人工関節を入れ、靭帯バランスを整える方法と、軟部組織(靭帯・軟骨など)をある程度剥離してから骨を切っていく方法が取られてきました。「プレカット法」はその中間といえる方法で、専用の器具を使うことにより、あらかじめ骨も軟部組織も調整した上で人工膝関節を入れることができます。
当院でも積極的に導入し、屈伸のバランスがうまく獲得できている感触が得られています。結果として、和式の生活に支障の少ない可動域の良い膝が安定して再建できている印象です。自分の骨を切除してしまうのですから人工関節は究極の骨切り術とも言えますが、自分の膝を残せない見返りとして、痛みなくよく伸び、よく曲がる膝を再建することが理想です。骨切り術とどちらが優れているかどうかではなく、患者さんの術後に求めているニーズで決定すべきであり、無理に骨温存せず、人工関節置換術をすすめることも多いですよ。

人工膝関節置換術の例

人工膝関節置換術の例

豊川市民病院 裵 漢成 先生Q. ありがとうございました。最後に、先生が整形外科医を目指されたきっかけをお聞かせください。

A. 学生時代にラグビーをやっていて、腱を切ったり骨折したりと何度もケガをして手術を受けたのがきっかけです。その分、ケガをした人や入院・手術をされる人の気持ちもわかるつもりですし、スポーツに復帰したい人の気持ちもよくわかります。これからも患者さんに寄り添った治療を行っていきたいです。

取材日:2017.5.24

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

先生の一覧へ戻る

病院検索をする

ページトップへ戻る

先生があなたに伝えたいこと

股関節股関節

膝関節膝関節

肩関節肩関節

肘関節肘関節

足関節足関節

手の外科手の外科

脊椎脊椎

病院検索 あなたの街の病院を検索!

先生があなたに伝えたいこと 動画によるメッセージも配信中!