先生があなたに伝えたいこと / 【後藤 公志】老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。

先生があなたに伝えたいこと

【後藤 公志】老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生

京都大学医学部附属病院
ごとう こうじ
後藤 公志 先生
専門:股関節

後藤先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 体を動かすのが好きなのでゴルフやテニスをよくします。できるだけ子どもとの時間も大切にしたいので、テニスをしたりバドミントンをしたり。冬には家族でスキーにも行きます。

2.最近気になることは何ですか?
 少子化による日本の人口の減少です。政策的に何とかならないかと思いますが、社会的にも若者に政治への参加を呼び掛ける仕掛けが必要なんだろうと思います。彼らが政治に参加することで若者の声、子育て世代の声が重要視されるので、将来に向けての効果的な手立てが講じられることにつながるのではないでしょうか。

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先生からのメッセージ

老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。

手術治療のタイミング

Q. 最近、変形性股関節症人工股関節全置換術を受けられる患者さんが増えているそうですね。

A. とても増えていて、10年前には年間2万件台だったのが、今では4万件を超えるまでに増加しています。

Q. まさに急増ですが、何か大きな理由があるのでしょうか?

A. 増加の背景として挙げられるのは早いペースで高齢化が進んでいることと、ここ20年~30年で手術成績が非常に向上し安定してきたことが考えられます。それも単に高齢社会だからというよりは、核家族化が進んで高齢者にも自立が求められる時代になったことが大きいと思います。つまり、高齢者だけでいると、日常生活上、ご自分で動かざるを得なくなるからです。また、離れて住んでいるお子さんが、なかなかお世話できないものですから、「そんなに大変なら手術を受けたら」と背中を押されることも多いようです。

Q. たしかに股関節が痛いと日常生活に支障が出ますよね。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. 特に股関節は体の中心に位置し大きな力を受ける荷重関節ですから、変形が進むとその痛みは他の関節と比較にならないくらい強くて、睡眠も阻害されますし、気持ちも沈みがちになってしまいます。

Q. なるほど。では、変形性股関節症が発症する年齢はどれくらいですか? また、どのような状態になれば人工股関節置換術の適応となるのでしょうか?

A. まず、日本人の場合、人工股関節手術を受けられる方の8割が、発達性の臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん:大腿骨の骨頭部分が入る骨盤のお皿の部分の形成が不完全な状態)に起因していて、発症年齢は50歳~60歳代が中心です。もちろん個人差があって、70歳を超えてから発症される方や自覚症状のないままの方もおられます。
手術をする決め手は、レントゲンで診て変形が進行しているということも重要な条件になりますが、その患者さんがどれくらい痛みを訴えているのか、どれくらい日常生活が大変なのかという個々の状況がとても重要です。また、ものすごく痛いのだけど、ご両親の介護をしておられるとか仕事を休めないとか、手術ができないいろいろな背景がありますよね。そういうときには痛み止めの薬で痛みをコントロールしたり、可能な方には運動をしてもらったり減量してもらったりと、手術ができる環境が整うまでの最適な治療プランを提示しています。

Q. 手術には患者さんごとにタイミングがあるわけですね。

正常 臼蓋形成不全A. そうなんです。たとえば、人工股関節手術ではありませんが、外科的治療が必要な症例である臼蓋形成不全や股関節唇(こかんせつしん:臼蓋部分を覆う軟骨の一種)損傷で痛みを訴えられるケースがあり、これは20~40代が中心です。この世代は、まだ結婚・出産を控えていたり、子育てや仕事に追われていたりする方が大多数です。この場合、家族構成や子どもの面倒を見てくれる方がいるか、この先に出産を考えているかなどを考慮に入れて、手術方法や手術時期を決める必要があります。

Q. みなさん、それぞれに事情や取り巻く環境は違いますものね。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. みなさん周囲との関わり合いの中で生活をしているわけですから、痛みさえコントロールできれば、社会生活を犠牲にしてまでも「何がなんでも今すぐ手術」というやり方はよくないと思っています。逆に仕事も満足にできない、買い物にも行けないということで家に閉じこもりがちになったり、鬱のような状態になってしまったりしている方には、できる限り早めの手術を強くお勧めします。
痛くて足を開いたり、前に出したりすることができないという状態や、膝も痛くなった、腰も曲がってきたなど他の関節に影響の出ている場合にも同様に強くお勧めしています。つまり、"患者さんそれぞれに手術の最適なタイミングがあるのです。

骨切り術と関節鏡手術について

Q. 臼蓋形成不全や股関節唇損傷で痛みが生じている場合は、どのような手術が行われるのですか?

寛骨臼回転骨切り術(RAO)A. 臼蓋形成不全の場合は、股関節周囲の筋力強化、体重コントロールと正しい歩き方を指導しています。関節の不安定性が改善すれば痛みも軽減、もしくは消失するケースがいくらでもありますから。
中程度以上の臼蓋形成不全で痛みが持続する場合は、臼蓋の屋根になる部分をつけ加える臼蓋形成術や、臼蓋を回転させることで関節とのかみ合わせをよくする寛骨臼(かんこつきゅう)回転骨切り術(RAO)を行います。通常の筋肉を切る方法では3ヶ月から半年は杖をついて歩いてもらうことになりますが、この方法では2ヶ月、3ヶ月で杖は必要なくなりますね。ただそれでも、先ほどもいったように家庭や仕事の都合で手術を受けるのが困難な患者さんには、保存的治療で疼痛(とうつう)をうまくコントロールして、50歳代、60歳代になってから人工股関節にするというのも1つの選択肢だと思います。股関唇損傷では筋力トレーニング等では疼痛が改善しないことも多く、滑膜(かつまく:関節を包んでいる膜の内側の部分)切除手術や関節唇縫合などの手術を行っています。

Q. ところで、近頃、FAI(股関節インピンジメント)という言葉もよく耳にします。これはどのような疾患なのですか?

FAIA. 股関節の辺縁部で骨盤と大腿骨がぶつかって痛みを生じる疾患です。主に先ほど申しました股関節の関節唇が傷みます。ヨガやダンス、バレーボールなど股関節を大きく開く動きをするスポーツなどで多く見受けられますが、もともとの骨の形態がぶつかりやすい状態の人もおられます。臼蓋形成不全とは逆に屋根がかぶり過ぎていたり、大腿骨の骨頭の下のくびれがなかったりということが要因です。ぶつかることで股関節が変形することがあり、その場合は関節鏡視下手術でぶつかっている部分の骨を切除し、傷んでいる関節唇を修復します。骨の形態異常がさらに大きいときには関節鏡は用いずに、開創(かいそう:切開)してじかに骨を削ることもあります。しかし必ず手術というのではなく、ぶつかる方向への動きを制限すれば症状が改善することが多いので、治療は日常生活指導を中心に行っています。

人工股関節置換術の進歩

Q. 人工股関節全置換術は長期成績が非常に向上したとのことですが、手術手技や人工股関節自体が進化したということでしょうか?

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. そうです。手術手技が進歩して、インプラント(人工股関節)の材質も改良され、非常に良い成績が見込めるようになったということです。手術手技では、当院では前側方からのアプローチ(切開方法)を採用していますが、股関節周囲の筋肉をほとんど切ることのない手術が可能になっています。筋肉が手術前と同じように動くので術後の回復が早く、術後の脱臼率は大幅に低下しています。出血量も少なくなり、昔に比べて皮膚切開も半分以下で感染のリスクも低減しました。
インプラントについては、1999年頃から人工股関節の受け皿(ライナー)の部分に使われるポリエチレンが、材質を改良することにより摩耗しづらくなったことが何より大きな進歩です。それまでは摩耗粉(まもうふん:摩耗時に発生する細かな粉)が人工股関節のゆるみの主な原因となっていました。さらに、ライナーの表面に特殊な加工をして水の膜のようなものを作り出すことで、動きを良くして摩擦を抑えるAquala(アクアラ)という技術も出てきています。このような材質の進歩でゆるみが原因となる再置換は減少しています。10年以内にゆるむということは、ほぼなくなったといっていいでしょう。また手術手技に加えて、以前よりも大きな骨頭が製品化されるようになったり、人工関節自体の形状が進化したりしたことなどで、さらに脱臼のリスクは減りました。

人工股関節置換術

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

Q. 現時点での人工股関節の耐用年数はどれくらいですか?

A. 今から20年ほど前に手術を受けられた方のおよそ9割は、現在まで問題なく過ごしておられます。今では25年、30年は大丈夫だろうという予測ができます。たとえば70歳で手術を受けられれば、一生保つ可能性が高いといえます。

Q. 手術を受けられた方へのアドバイスもお願いします。

A. 日々の生活の中で、重たい物の持ち運びはしない、無理に股関節を曲げたりひねったりしない、風邪や虫歯は早めに治療するなど、ご自身で脱臼や感染を防ぐ努力をしたり、体重管理などのケアをしていただくことが重要です。そういうことに留意していただくことで、痛みのない健康な生活を長く送っていただくことができます。

Q. 人工股関節手術の進歩は素晴らしいですね。さらに先生は次世代へ向けて、「生体活性骨セメント」の開発にも携わってこられました。この新しい技術について、少し教えてください。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. もともと京大病院では、セメントを使って固定するセメントタイプの人工股関節置換術を中心に行っています。生体活性骨セメントというのは、セメントに骨とくっつくような素材を入れたものです。本来セメントは骨とくっつく素材ではないので、かつてはポリエチレンの摩耗粉が骨とセメントの間に入ってしまうことで骨が溶け、人工股関節がゆるんでしまうという問題がありました。最近はポリエチレンが改良されて摩耗粉ができにくくなったので、生体活性骨セメントが臨床成績を確実に上げるかどうか微妙な時代になってきましたが、セメントを使う手術のニーズは減ることはないと思っています。
その理由として、セメント固定の人工股関節手術は患者さんの満足度が極めて高いんです。私はセメントを使わない手術もやりますし、セメントとセメントを使わないインプラントを組み合わせたようなハイブリッドというやり方でもたくさん行っていますが、経験上、セメントのほうが手術後数ヶ月の痛みが明らかに少ないです。また、長期成績も良く、もしゆるんだとしても入れ換えの手術(再置換)が比較的容易というメリットがあります。今はセメントを使わないセメントレスタイプの人工股関節手術が、若い世代の医師の主流になっています。これはセメントタイプの手術手技の難しさや理解不足が原因で、こういったメリットを考えると残念なことだと思います。
私は、彼ら若い世代にもセメントを使う手術を引き継いでいかなければならないと思っています。その上で、もしセメントに骨とくっつく機能を持たせることができ、一生、ゆるまないインプラントが実現すれば、さらに素晴らしい進歩だと思います。

Q. セメントを使う手術の患者さんの満足度の高さについて、もう少し詳しくご説明ください。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. セメントレスタイプのインプラントには、臼蓋側のカップに金属の覆いの部分があります。この金属の厚みがあってその中にポリエチレンのライナーが入りますから、その分、ポリエチレンが薄くなってしまいます。大きなカップが入れられれば中のポリエチレンの厚みもある程度確保されますが、日本人の女性は特に臼蓋の屋根の小さい人が多いので、カップも小さくなります。
個人的には、インプラントは骨の中にきちんと収まるように設置するのが自然だと考えます。インプラントがはみ出していると、そこが筋肉に当たってしまうこともあります。それを防ぐために、小さな臼蓋に合う小さなインプラントを使えば、最初にいったようにポリエチレンのライナーは薄いものになってしまいます。薄いということは破損のリスクが高く長期成績に影響します。ある程度の臼蓋の大きさがあれば、セメントレスカップでも優れた長期成績が期待できますが、小さな臼蓋の場合、セメントカップならポリエチレンライナーの厚みを確保しながら、カップに大きめの骨頭を入れられるので、脱臼のリスク低減とともに、優れた長期成績が期待できるのです。
また、セメントレスタイプのステムについては、大腿骨の形状とマッチしていないと骨のどこかに荷重が集中して痛みの原因となります。1、2年経てばこの症状は治まる人が多いのですが、初期にはなかなか痛みが取れないこともあります。セメントタイプのステムですと、荷重がセメントを介在して均等に分散するので痛みが出ません。ですから、骨がしっかりしていてステムが骨の形にぴったり合う場合はセメントレスタイプでも問題ないですが、形に合わない、股関節の変形が強い患者さんにはセメントタイプを使う手術が最適だと考えます。

Q. 入れ換えが比較的やりやすいというのは?

A. 将来、何らかの理由でインプラントを入れ換える必要がある時、セメントレスタイプステムですと、ステム本体の構造に骨が入り込み強固に結合しているので、骨を割らないとインプラントが抜けません。それがセメントタイプステムですとセメントを割るだけでインプラントが抜けますから入れ換え時の手術が容易なのです。

Q. よくわかりました。ありがとうございました。最後に、股関節疾患の治療に対する先生の思いをお聞かせください。

京都大学医学部附属病院 後藤 公志 先生A. 老後まできれいな姿勢で、健康的に歩いてほしいと願って治療にあたっています。昔のインプラントには摩耗の問題があったため、なるべく荷重のかからない無理な姿勢を強いられたり、日常生活上も多くの動作制限がありました。今では、摩耗の問題もかなり解決されましたので、自然な美しい姿勢で生活することが可能になっています。きれいな姿勢で健康的に歩くということは、心身ともに大切なことだと思います。
また、いろんな条件で今すぐ手術をすることが困難な方には、それならば今、どうすればベストな治療を提供することができるのかという、その方の将来を見据えて考えることに最善を尽くしたいと考えます。「常に長期的な視点」に立って、股関節の痛みに悩む患者さんに適切な治療とアドバイスを行えることが当院の強みであり、私自身が最も大切にしていることです。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

後藤 公志先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2014.6.12

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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