先生があなたに伝えたいこと / 【岡上 裕介】人工股関節の正確な設置のためには、まず、患者さんそれぞれに違う人工関節の正しい設置角度を導き出すことです。

先生があなたに伝えたいこと

【岡上 裕介】人工股関節の正確な設置のためには、まず、患者さんそれぞれに違う人工関節の正しい設置角度を導き出すことです。

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生

高知大学医学部附属病院
おかのうえ ゆうすけ
岡上 裕介 先生
専門:股関節

岡上先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 できるだけ子どもと遊ぶようにしています。平日はあまり家にいられませんので、忘れられないように(笑)。あとはゴルフですね。

2.最近気になることは何ですか?
 スポーツが好きなので、野球でもサッカーでもゴルフでも、海外へ出て頑張っている日本人選手を応援しています。結果は必ずチェックしています。

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先生からのメッセージ

人工股関節の正確な設置のためには、まず、患者さんそれぞれに違う人工関節の正しい設置角度を導き出すことです。

Q. まず、股関節の疾患にはどのようなものがあり、その主な原因は何でしょうか?

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生A. 疾患のなかで一番多いのは変形性股関節症です。その原因として、日本人の場合は、先天性臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん:大腿骨上端の骨頭部分を覆う骨盤のお椀状の部分が不完全な形状の状態)や、それに伴う先天性股関節脱臼が全体のおよそ9割を占めています。臼蓋形成不全や股関節脱臼の既往のある方は、股関節の受け皿が小さく浅くなっているため、体重を受ける面積が少なかったり、股関節の不安定性が生じたりして、年月の経過とともに関節の軟骨が摩耗して骨が変形してしまうんですね。進行するにつれて痛みや動きの制限が強くなります。

正常 先天性臼蓋形成不全 先天性股関節脱臼

その他の疾患としては大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)関節リウマチ。前者は副腎皮質ホルモン剤の長期にわたる服用やアルコールの過剰摂取などにより、大腿骨の骨頭部分への血流が妨げられて壊死をきたし、痛みや壊死した骨頭が荷重に耐えきれず圧潰(あっかい:つぶれること)することがあります。関節リウマチでは関節滑膜(かつまく:関節を包んでいる組織の内側部分)の痛みが伴い、動きの制限が出てきます。また外傷での股関節損傷や、最近注目されている疾患としてFAI(エフエーアイ:Femoroacetabular Impingement)があります。

FAIQ. FAIとは聞き慣れない言葉ですがどのような疾患ですか?

A. 股関節の形態異常、たとえば大腿骨の頸部が膨らんでいたり臼蓋のエッジ部分が飛び出しているような場合、股関節の屈曲や内側、外側への回旋などの動作で臼蓋と衝突を起こし、股関節唇(こかんせつしん)と呼ばれる軟骨組織が挟まれて損傷を受けてしまう、という病気です。

骨棘Q. その股関節形態の異常は生まれつきのものなのですか?

A. 先天的な場合もありますし、形態異常の中には、繰り返し衝撃を与えることで大腿骨や臼蓋に骨棘(こつきょく)ができることがあり、その骨棘で関節唇や軟骨が損傷をきたします。

Q. なるほど。いろいろな疾患があるのですね。その中で、人工股関節の適応となる疾患とは?

A. いずれの場合も股関節の変形が進んでしまうと、人工股関節手術が有効だろうと思います。

Q. では、人工股関節やその手術方法にも種類があるのですか?

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生A. 手術に関しては、大腿骨側も臼蓋側も置換する人工股関節全置換術と、大腿骨側だけを置換する人工骨頭置換術があります。人工骨頭置換術は主に高齢者の大腿骨頸部骨折や、大腿骨頭壊死症で臼蓋側は傷んでいない場合などに行われますが、ただ、人工股関節の方が長期成績が優れていることもあり、現在では、全置換術が主流になってきています。
また骨への固定方法としてセメントタイプ(セメントを使用して骨と固着させるタイプ)とセメントレスタイプ(セメントを使用せずに骨と固着させるタイプ)に分かれ、それぞれに長所・短所があると思いますが、近年の技術革新によってセメントレスタイプでも安定した長期成績が残せるようになってきました。当院ではセメントレスタイプを使用し、骨の変形程度や骨質などによって近位(きんい:体の中心に近い部分)側で固定するタイプと遠位(えんい:体の中心から遠い部分)側で固定するタイプを使い分けています。ただし当院でも、セメントレスでは十分な固定が得られないと判断した場合は、セメントタイプを用いることがあります。

Q. 使い分けも大切なのですね。先生のおっしゃる「安定した長期成績」が可能になったのには、人工股関節の進化も大きいと思いますが、いかがでしょうか?

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生A. おっしゃる通り、さまざまな技術革新があります。固定性が増したということでは、人工股関節のステムの表面に、骨とよく似た成分をコーティングするという特殊加工が施されるようになりました。これによりステムと骨とがぴったりくっつくだけではなく、凹凸をもたせた加工により、骨がそこにいわば噛み込んでいって強固な固定が実現します。そして特に進化がみられるのは摺動面(しゅうどうめん:人工関節の可動部分のこすれ合う面)です。術後、短期で再置換(さいちかん:人工関節を入れ換えること)に至るのは脱臼感染によるものがほとんどですが、長期成績に大きく影響するのが摺動面の摩耗なんです。
人工股関節の摺動面にあたるのはポリエチレンライナーという部品ですが、問題は、ポリエチレンが摩耗することによって摩耗粉が骨の中に入り骨融解(こつゆうかい:骨が融けること)が進行し、人工股関節が緩んでしまって再置換が必要になるということです。近年は、このポリエチレンライナーにガンマ線を照射することにより、耐摩耗性を向上させています。最近ではさらに、Aquala(アクアラ)という技術が開発されました。これは、ポリエチレンライナーの摺動面に細胞膜と同じ分子構造を持つ「MPCポリマー」を特殊加工して、高い潤滑性で摩耗を抑制し、対応年数を延ばすことが期待できる技術です。これらのことにより、人工関節を正確な位置に正確な角度で設置することができれば、かなりの長期成績が期待できるようになりましたので、比較的若年で全置換術を受けざるを得ない患者さんには特に福音だろうと思います。ポリエチレンが摩耗しにくくなったので、ライナーを薄くすることができますから、その分、大き目の骨頭ボールを挿入でき、ジャンピングディスタンス(下図参照)を大きくすることで脱臼のリスクも大幅に低減させられるようになりました。

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

骨頭サイズの違いによるジャンピングディスタンスの差

骨頭が小さい場合 骨頭が大きい場合

Q. わかりました。ありがとうございます。それでは人工関節の「正確な設置」のために、注意されていること、取り組まれていることなどあればお聞かせください。

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生A. 大前提として、人工股関節の正しい設置角度は患者さんとその症例によってそれぞれ違うと考えています。ですので、術前に立った状態や座った状態、寝た状態などさまざまな姿勢でのレントゲン撮影を行い、骨盤の傾きを計算します。そして手術時には大腿骨側の処理から行い、ステムの設置角を測定します。近年、大腿骨側のステムの設置角と臼蓋側のカップの設置角の関係性が重要視されておりますが、当院では10年以上前から、ステムの設置角をカップの設置角を決定する一助にしています。そこへ、さらに術前に測定した骨盤の傾きを加味して、各々の症例に最適なカップの設置角を決定します。角度が決定したら、仮の臼蓋カップを固定してインピンジメント(ステムのネック部分がカップに当たって乗り上げてしまうこと。脱臼の原因となる。)が生じないかをよく観察します。これらのことをすべて行い、問題ないと判断されて、最終的に臼蓋カップの設置を行います。

人工股関節全置換術

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生Q. 正確な設置には、術前はもちろん術中にも設置角度の綿密な測定が必要なのですね。

A. はい。症例によって関節周囲の軟部組織の緊張度も可動域も異なりますので、机上の計算だけでは、最終的な設置角は決定できないんです。立っていても座っていてもどの状態でも、人工股関節の部品同士が当たったりしないよう、症例ごとにふさわしい設置角度を導き出すこと。このことが、摩耗による早期のゆるみや脱臼のリスクをさらに減らすことにつながります。

Q. なるほど。ところでMIS(エムアイエス:最小侵襲手術)という言葉もよく耳にしますが、手術法にも新しい方法が導入されているのでしょうか?

A. MISは、以前は皮膚切開が小さいことを指していましたが、最近では、真のMISということで、皮膚だけではなく筋肉などの軟部組織への侵襲(傷つけること)を少なくすることが重要とされています。そのための術式として導入されているのが、筋肉と筋肉の間を分けて股関節に侵入するDAA(前方侵入法)やALS(前側方侵入法)で、当院でも採用しています。筋肉を切らないことで、術後早期の筋肉の回復などに利点があります。
皮膚切開に関しては、正確な設置を最優先に、変形の度合いや患者さんの体格によって必要な分だけ大きくすることはあります。

DAA(前方侵入法)

DAA(前方侵入法)

ALS(前側方侵入法)

ALS(前側方侵入法)

Q. 先生は難しい症例の手術にも多く携わっておられますね。

A. 地方の大学病院という性格上、他院では治療が難しい症例も確かに多いですね。そういった症例には正確な診断とともに治療法の選択が重要です。

Q. 難しい症例には例えばどんなものがあるのですか? また、そのような症例に対する先生のお考えは?

高知大学医学部附属病院 岡上 裕介 先生A. 糖尿病の方や免疫を抑制するようなお薬を服用されている方に時々みられるのが、人工股関節の感染。感染しますと長期にわたる治療が必要になってきますが、その感染が止まらないという患者さんもおられます。そういう場合、化膿止めが効かないときには人工股関節をはずして、何ヵ月も化膿止めの治療をして効果があれば再手術ができますが、そうでなければさらに治療を継続して...ということを繰り返すことになります。
このような難しい症例では患者さんの負担も非常に大きく、その負担を少しでも軽減するために、他の先生方の学会発表や報告も参考にしながら、よりよい診断方法、手術を含めた治療法を考え、採用し、そして確立することが大切だと考えています。そのことにも最大限に力を尽くしていきたいと考えています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

岡上 裕介 先生からのメッセージ

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取材日:2014.2.19

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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