先生があなたに伝えたいこと / 【米津 浩】人工股関節は患者さんにとって生涯を共にするもの。そのことを第一に考え、手術に臨んでいます。

先生があなたに伝えたいこと

【米津 浩】人工股関節は患者さんにとって生涯を共にするもの。そのことを第一に考え、手術に臨んでいます。

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生

徳島厚生連 吉野川医療センター
よねづ ひろし
米津 浩 先生
専門:股関節・骨粗鬆症

米津先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 東日本大震災以降、各地で地震や火山の噴火が増加しています。徳島県は南海トラフ巨大地震が発生したら、その影響を受ける可能性がありますから心配です。

2.休日には何をして過ごしますか?
 最近、体力の衰えを感じていますので、ジムに通って汗を流しています。また普段は家に帰るのが遅いので、休日はできるだけ家族と過ごすようにしています。

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先生からのメッセージ

人工股関節は患者さんにとって生涯を共にするもの。そのことを第一に考え、手術に臨んでいます。

Q. 今回は股関節疾患と、その治療法についてお伺いします。まず主な疾患とその原因、症状などについて教えてください。

股関節の構造(正面図)A. 股関節痛をきたす疾患の代表的なものは、変形性股関節症です。ほかに慢性関節リウマチ大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)などがあります。変形性股関節症は、関節への負担が原因で軟骨がすり減り、骨が変形することにより痛みや関節機能障害を起こす疾患です。慢性関節リウマチは、免疫の異常により関節包(かんせつほう)の内側にある滑膜(かつまく)で炎症が生じ、進行すると周囲の骨や軟骨を破壊してしまいます。一般的には手や足が変形すると思われがちですが、全身の関節が侵される可能性があり、股関節にも病変が起こります。大腿骨頭壊死症は、股関節の大腿骨の頭の部分に、何らかの理由で血液が通わなくなり、組織が死んでしまう病気です。ほかの病気の治療でステロイドの大量投与を受けた方や、アルコールをたくさん摂取する人に発症することがありますが、はっきりとした原因がわからないことが多いです。壊死がごく小さい場合を除いて、一度死んでしまった組織の再生は困難で、体重がかかることにより、ある時、一気に陥没して強い痛みを生じます。

変形性股関節症

大腿骨頭壊死症

Q. 代表的な疾患である変形性股関節症では、患者数はどれくらいなのですか? 性別や年齢など患者さんの傾向というのはあるのでしょうか?

A. まず患者数は100万人以上と推定されています。女性に多く、加齢とともに患者数は増加します。原因としては、日本人の場合、幼児期からの股関節の発育不良である、寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)に伴う二次性の変形性股関節症が多いとされてきました。股関節は寛骨臼に大腿骨頭がはまり込む構造をしていますので、寛骨臼が発育不良の場合、骨頭を十分に覆うことができずに接触面が狭くなって、そこに荷重が集中し、軟骨が傷んでしまうんですね。この原因が多いのは現在も変わりませんが、臨床の現場で診ていますと、最近は老化に伴う骨や軟骨の脆弱化(ぜいじゃくか)と、姿勢異常が原因のケースが 増加しているように感じます。

正常 先天性臼蓋形成不全

骨盤の後傾イメージ(大腿骨頭前方の接触面の被りが浅くなる)Q. 老化による姿勢異常とは具体的にどういうことですか?

A. 骨盤を支えている筋肉などが弱って、骨盤が後傾(こうけい:後ろ側に傾くこと)することがあるんです。そうなると、大腿骨頭の前方の接触面が減少して、そこに余分な負担がかかるわけです。

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生Q. なるほど。高齢化が進み、変形性股関節症の患者さんは更に増えていきそうですね。

A. 間違いなくそうでしょう。人工股関節全置換術(じんこうこかんせつぜんちかんじゅつ)の手術件数は毎年増加していて、現在では国内で1年間に5万人以上が手術を受けておられます。ちなみにアメリカでは人口1万人あたりの手術件数が日本の2.7倍ですが、今後は日本での手術数が増加して、その差は縮まるかもしれません。

Q. 変形性股関節症の治療は手術しかないのですか?

A. いいえ、基本的にまずは保存療法です。たとえば股関節への負担を軽減するために肥満傾向の方には減量をおすすめします。体重が1kg増えれば股関節への負荷は3kg~5kg増えるといわれています。また杖の使用、一度に長い距離を歩かない、重い物を持たないなど日常生活の工夫を説明しています。リハビリでは筋力強化や、ストレッチによる股関節の安定化、関節周囲の筋肉の硬縮(こうしゅく)や血行の改善を図ります。ただし、当院のように急性期病院の場合は、現在の医療制度では外来でリハビリを行うことは難しく、近くの病院をご紹介することになります。

Q. 自宅でのリハビリではなく、通院の必要があるということでしょうか。

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生A. 慣れてくると、ご自宅で継続されても良いのですが、もし誤った方法で運動してしまうと、効果がないばかりか逆に下肢(かし)や腰を痛めることになりかねません。ですから医師や理学療法士の指導のもとで、リハビリをするのがベストだと思います。ポイントとしては、股関節に負担がかからない状態で股関節周囲を鍛えることです。たとえば、温水プールでの歩行を取り入れるのもおすすめしています。さらに症状に応じて薬物治療を併行して、炎症や痛みの軽減を試みます。

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生Q. 痛みが取れれば続けなくて良いのですか?

A. 日常生活の工夫は、股関節痛が消失した場合も、手術を行ったとしても継続していただく必要があります。筋力トレーニングも続けていただければより良いと思います。

Q. それでは手術を行う時期とは?

A. 保存療法で効果が現われず、痛くて日常生活に支障が出てきたら、手術が優先的な選択肢になります。大きくは人工股関節全置換術と、若くて活動性が高く、変形がさほど進んでいない場合に有効な、各種の骨切り術があります。股関節の状態、年齢、仕事、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の有無などで手術方法が決まります。

Q. 人工股関節手術を行う、形態上の判断基準はどのようなものなのでしょうか?

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生A. まずは変形が高度であること。レントゲンやCTで変形の程度を確認し、患者さんの症状、日常生活や仕事がどういう状態なのか、年齢などを考慮し、最終的には患者さんの希望に沿って決めています。ただし、高齢の患者さんの場合、痛みのために股関節に荷重をかけて動けない状態が長期間になると、股関節周囲の骨が脆くなったり筋力が著しく低下したりします。そのような状態でも手術はできますが、人工股関節を強固に固定するのが困難だったり、リハビリに時間がかかったりします。ですから、日常生活に支障が生じているような高齢の患者さんには、「ある程度動けるうちに手術を受けるほうが早く社会復帰できますよ」とアドバイスしています。実際、80歳以上で人工股関節手術を受けた患者さんの中には、「こんなに楽に動けるようになるなら、もっと早く手術を受けておけば良かった」とおっしゃる方も多いのです。

Q. 人工股関節には形状や機能で種類があるようですね。

A. 人工関節を骨に固定する方法として、セメントタイプとセメントを使わないセメントレスタイプがあります。私が医師になった昭和63年頃はセメントタイプが主流でした。研修医の頃は、セメント固定の技術を厳しく指導されたものです。しかし、今は、私はセメントレスタイプを主に使っています。それでも、骨の脆い方だとか、患者さんの状態を考慮してセメントタイプを使うこともあります。また大腿骨に挿入するステムは、長さの長短や断面の形状など様々なタイプがあり、患者さんに合わせて使い分けができるようになりました。

セメントレス人工股関節

セメントレス人工股関節

Q. 現在、人工股関節の耐用年数はどれくらいなのですか?

A. 人工股関節が進化して耐久性が良くなり、20年以上が期待されています。かつては10年から15年とされていました。その当時は、再手術のことを考えて60歳以下の患者さんには人工股関手術を積極的にすすめることができませんでした。保存療法で人工股関節手術までの時間稼ぎをするしかなかったんです。それが今では50歳代でも、変形が強ければ、人工股関節手術をおすすめできるようになりました。

Q. 人工股関節は具体的にどこがどう進歩したのでしょうか?

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生A. 人工股関節の摺動面(しゅうどうめん:可動部分)には、多くの場合、寛骨臼側でポリエチレン製のライナー、大腿骨頭側に金属やセラミックのヘッド(骨頭ボール)が使われています。以前は、ポリエチレンが摩耗することで、摩耗粉(まもうふん)が人工股関節と骨の間に進入して破骨細胞(はこつさいぼう)を刺激することにより、骨が融解してゆるみが生じるという問題がありました。この問題を解決するために、さまざまな材質改善が行われて、今では摩耗が大幅に低減しています。最近では、摺動面に、細胞膜と同じ分子構造を持たせ、摩耗粉の産生を低減するAquala(アクアラ)という技術も開発されています。

Q. よくわかりました。手術後ですが、疼痛(とうつう)コントロールやリハビリで、独自の取り組みなどされていますか?

A. 痛みを強く感じるのは手術後の2日間くらいですが、当院では手術の際に脊椎の硬膜外(こうまくがい)にチューブを通し、持続的に痛み止めの薬を投与しています。また、患者さんが痛みを感じたときに、ボタンを押すと痛み止めが追加される方法も採用しています。術後早期の痛みを緩和することで、リハビリもやはりスムーズに進みます。また、何曜日に手術を行っても、早期のリハビリに支障がないように休日にもリハビリを行うようにしています。

徳島厚生連 吉野川医療センター 米津 浩 先生Q. それは安心です。では、人工股関節を長く使うために気をつけたほうが良いことはありますか?

A. 生活の工夫などは、生涯に渡って行っていただくよう患者さんに説明しています。でもいくら生活を工夫し、人工関節の耐久性が良くなったといっても、患者さんの骨が脆くなってしまっては、弛みや転倒による骨折の原因になってしまいます。とはいえ、加齢とともにどうしても骨は弱くなってしまうものです。そこで、骨粗鬆症の治療にも力を入れています。私は日本骨粗鬆症学会認定医で、術後検診に来られたときにレントゲンで骨粗鬆症が疑われる場合には、骨密度測定や骨代謝マーカーのチェックも行うようにしています。最近はさまざまな骨粗鬆症治療薬が出てきて、治療の選択肢も増えました。

定期検診 イラストQ. 手術後も、定期検診が本当に大事というわけですね。最後に、患者さんを治療する際に、先生が大切にされていることをお聞かせください。

A. 患者さんとのコミュニケーションです。患者さんにとって、人工股関節は一生のもの。そのような手術を私に託してくださるのですから、症状以外にもさまざまなことをお伺いし、患者さんのことを可能な限り理解して、手術を行うようにしています。手術を受けられた患者さんが、痛みも取れ、退院時や外来での診察時に笑顔を見せてくれると、こちらも元気になります。仕事への意欲がまた湧いてきますね。

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

米津 浩 先生からのメッセージ

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取材日:2016.3.10

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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