先生があなたに伝えたいこと / 【門野 夕峰】「普段の生活をあきらめない。」そのために人工肘関節手術という手段があることを、ぜひ、肘の痛みで悩んでおられる方々に知っていただきたい。

先生があなたに伝えたいこと

【門野 夕峰】「普段の生活をあきらめない。」そのために人工肘関節手術という手段があることを、ぜひ、肘の痛みで悩んでおられる方々に知っていただきたい。

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授)
かどの  ゆうほ
門野 夕峰 先生
専門:関節外科(肘関節)・リウマチ

門野先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 現在の医療制度です。その方向性が明確になっていないと思います。医療費を税金で賄う北欧型にするのか、自己責任で保険に加入するアメリカ型にするのか...。今後は人口も減少し、いずれは立ち行かなくなることが明白なので本当に心配しています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 学会だけでなく、学外の講演やメーカーの研修やアドバイザーなどもしているので、休日はほとんどありません。子どもの誕生日になんとか休める状態です。でも、ここは大学なので仕方がありません。それに、若い人たちと将来の夢などについて話をしているときは楽しいですね。

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先生からのメッセージ

「普段の生活をあきらめない。」そのために人工肘関節手術という手段があることを、ぜひ、肘の痛みで悩んでおられる方々に知っていただきたい。

Q. まず肘関節の構造と仕組みについて教えてください。

A. 肘関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と前腕の尺骨(しゃっこつ)、橈骨(とうこつ)といわれる骨から構成され、それぞれが靭帯でつながれています。手のひらを上にして親指が外側に向くようにすると、小指側が尺骨、親指側が橈骨です。肘関節の主な機能は曲げ伸ばしの動作ですが、尺骨と上腕骨を軸にして、橈骨がその周りをくるくる回ることで、ねじりの動作が可能になります。

肘関節の構造(右手)

肘の靭帯(右ひじの外側)

肘の痛み イラストQ. 肘が痛いと日常生活にどのような支障が出るのでしょうか?

A. 肘につながる手がどこまで届くかということは、生活していく上で非常に重要なことです。たとえば、肘が90度しか曲がらないと顔が洗えませんし、ご飯も食べられません。120度ほどでも曲がれば、手首を曲げたり顔を突き出したりして何とかなるでしょうが、それより曲がらないと、日常生活でさまざまな支障が出ます。また、ひねる動作ができないと鍵やドア、蛇口の開け閉めが大変になります。想像しにくいかもしれませんが、財布からコインを出したり入れたりすることも難しくなります。料理をするのも困難になるなど挙げればキリがありません。

Q. 無意識にできていたことができなくなるのですね。肘が痛くなる疾患にはどのようなものがありますか?

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生A. 肘を酷使することで筋肉の付着部に炎症が起きることが一番多いです。テニス肘、ゴルフ肘などと呼ばれているものです。その次は関節リウマチです。そして何らかの原因で軟骨がすり減り、関節が破壊される変形性肘関節症(へんけいせいひじかんせつしょう)があります。いずれも痛みを伴いますが、肘関節が固まってしまって動かせない、グラグラしてしまってうまく動かせないという機能障害もでます。

Q. 関節リウマチとは、どのような疾患で、その原因は何なのでしょうか?

A. 関節リウマチは自己免疫疾患といわれるもので、本来、細菌やウィルスから体を守るための免疫システムが異常を起こし、関節を守る組織や骨、軟骨を外敵とみなして攻撃してしまう疾患です。肘関節を包んでいる滑膜(かつまく)の炎症によって腫れや痛みが生じ、進行すると関節が変形して動かせなくなります。しかし、なぜ免疫システムが異常を起こすのか、まだはっきりとはわかっていません。体質に加えて、ストレス、細菌やウィルスの感染、喫煙、出産などの後天的な要素が引き金になるなど、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。

正常な関節 関節リウマチ

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生Q. 関節リウマチで肘の骨や軟骨が壊れてしまった場合、どのような治療が行われるのでしょうか?

A. 関節リウマチ治療のベースは、あくまで、異常を抑えるための薬物治療です。薬でも抑えることができなくて、機能的にも問題があるようなら装具療法を試み、それでも有効とはいえない状況で機能障害も大きいようなら、人工肘関節置換術(じんこうひじかんせつちかんじゅつ)となります。

Q. 人工肘関節置換術のほかに手術方法はありますか?

A. 関節リウマチの場合は、ほとんどの症例で人工肘関節置換術となります。以前は、腫れている滑膜を関節から取り除く滑膜切除術という方法も選択されていましたが、今は薬が良くなって、増殖した滑膜を退縮させることが可能となり、その症例は減っています。それに、関節を人工物に置き換えると細胞がなくなりますから、免疫システムから攻撃されにくくなります。つまり、敵視する対象がなくなるのです。人工肘関節置換術は痛みを取り、機能を改善させるとともに、リウマチをある程度抑え込めるというメリットもあります。

Q. 人工肘関節置換術について少し具体的に教えてください。

A. 当院で採用している人工肘関節は、「表面置換型」というタイプのものです。これは、傷んでいる骨の表面部分だけを人工物に置き換える、すなわち肘関節の骨をできるだけ残すことができるタイプです。手術の流れは、まずは肘関節の後ろ側から切開して、上腕骨と尺骨にそれぞれ人工物(上腕骨コンポーネントと尺骨コンポーネント)を挿入し、その2つの部品をはめ合わせます。機能回復の角度については、「曲げられる」ことを重視して口元に手が届く135度を目標にしています。手術の際は、1~2mm単位で骨を削って調整して、手術後に肘関節部分の見た目が違和感のないようにします。最後に縫合する前に、筋肉などの軟部組織の調整も行います。たとえば、前の筋肉がどれくらい伸びるかによって、後ろの筋肉を調整します。

通常の人工肘関節置換術

通常の人工肘関節置換術

表面置換型の人工肘関節置換術

表面置換型の人工肘関節置換術

Q. 大変緻密な作業が必要なのですね。人工肘関節の耐用年数はどれくらいなのですか?

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生A. ひとつ前のタイプですでに15年以上、入れ換えをしてないという実績が多く報告されています。性能が向上した最新のものなら、それ以上を期待できると思います。

Q. 人工肘関節が進歩しているということでしょうか?

A. はい。軟骨の役割をするポリエチレン部分が摩耗しにくくなったり、ステムの表面に特殊加工することで骨に固着しやすくなったり、さまざまな進歩があります。人工肘関節のタイプのバリエーションも増え、セメントで固定するタイプや上腕骨と尺骨側が一体化しているタイプもあり、患者さんやその症状に応じた使い分けの幅が広がっています。さらに、コンピュータデバイスの進歩で骨を削る際の精度も高くなりました。今後もさらなる進歩を期待していますが、手術数は膝関節や股関節に比べると少ないですし、人工肘関節置換術ができる整形外科医が少ないのが心配です。

Q. 人工肘関節自体のことをご存じない患者さんも多いのではないでしょうか?

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生A. たしかに、「人工肘関節にできるんだ」という情報が、患者さんにしっかり届いていないと思います。実は、内科の先生ですらご存じないということもあるのです。でも、私は取り戻せるはずの生活を患者さんに諦めてもらいたくはありません。人工肘関節置換術でもう一度、顔を洗いたい、料理をしたい、日常生活を思うように送りたいという、患者さんの切実な願いが叶えられるかもしれないのです。関節リウマチや変形性肘関節症で生活にご苦労されている方だけでなく、そのご家族、ご友人の方々にも人工肘関節のことを知っていただきたいと思います。

Q. 今回のお話はその良い機会となりそうですね。術後のリハビリに特徴はありますか?

A. 通常のリハビリは特に必要ではありません。手術のあとにシーネと呼ばれる添え木をしますが、1週間くらいで傷口がふさがって痛みが引いたら、テーブルの上などに腕を置いてゆっくり曲げ伸ばしの練習をして、またシーネをするということを繰り返していただくぐらいです。2週目になると筋肉もだいぶ戻りますので、シーネははずし、自分の力で曲げ伸ばしができるようになれば退院となります。おおよそ手術後2週間から3週間で退院される方が多いです。あとは、日常生活の中でやれることをやってもらうことがリハビリになります。ひとつずつできることが増えていき、何日かに一度は「こんなこともできるようになったんだ」という新しい発見が待っています。それを楽しみにしてリハビリを兼ねた生活をしてほしいと思います。

埼玉医科大学病院(埼玉医科大学 教授) 門野 夕峰 先生Q. 日常生活で気をつけなければならないことはないのでしょうか?

A. 第一に転ばないでほしいことです。第二には、感染症に注意することです。たとえば風邪を引いただけでも菌が体内をまわり、人工肘関節に菌が付着するかもしれません。実は、人工物は抵抗力のある生体ではないため、菌の格好の隠れ家になります。だから、早めに病院へ行くなど体のケアをお願いしたいです。リウマチの患者さんは感染への抵抗力も低くなっています。もし関節が赤く腫れたりしたら、すぐに病院に連絡することです。対処が早ければ抗生物質で対応できるのですが、手遅れになれば感染した隠れ家、すなわち人工肘関節を再手術で取り出さなければなりません。

Q. 最後に、人工肘関節について患者さんへメッセージをお願いします。

A. 今回のこのインタビューが、関節リウマチや変形性肘関節症の患者さんへの光明となれば幸いです。困っているなら、ためらわずに然るべき医師に相談をしてください。手術するかしないかはそれから決めれば良いのです。この機会に改めて、「諦める必要はありませんよ」と患者さんに申し上げたいです。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

門野 夕峰 先生からのメッセージ

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取材日:2017.12.19

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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