先生があなたに伝えたいこと / 【森田 充浩】股関節を手術する目標は、「ハンディキャップを感じない生活を送ることができる股関節にすること」なのです。

先生があなたに伝えたいこと

【森田 充浩】股関節を手術する目標は、「ハンディキャップを感じない生活を送ることができる股関節にすること」なのです。

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生

藤田保健衛生大学整形外科
もりた  みつひろ
森田 充浩 先生
専門:股関節

森田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 若手への継承ですね。手術におけるスキルだけでなく、患者さんを診るには医師の人間性がとても重要となりますので、若い医師がそれを高められるような指導を心がけていきたいと思っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 本を読んでのんびりと過ごしたり、子どもたちと遊んだりするのが良い息抜きになっています。小旅行も好きですね。市内や、知多半島、渥美半島などへ少し遠出をして、歴史の跡を辿りながら自然や食を楽しんでいます。

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先生からのメッセージ

股関節を手術する目標は、「ハンディキャップを感じない生活を送ることができる股関節にすること」なのです。

Q. こちらの施設では、股関節手術のうち9割以上が人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)とお聞きしています。まず、その手術の適応となる主な疾患について教えてください。

A. 主な疾患は変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)、それに大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)関節リウマチです。変形性股関節症は圧倒的に女性の割合が高く、特に寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)から起因することの多いのが日本人の特徴です。形成不全というのは骨頭を覆う部分が小さくて浅く、そのために軟骨が早く削れてしまいます。そのような方の発症年齢はおおむね40代です。なかには進行が早いために、若いうちに手術に至る方もいらっしゃいます。

変形性股関節症

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生Q. 若い方でも手術を受けられるケースがあるということは、それだけ長期成績が優れているということでしょうか?

A. どれくらいの期間大丈夫であるかということは、患者さんの状態や活動性によって左右されますが、感染などに気を付けて骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の影響などがなければ、人工股関節の性能が良くなっていることから20年から30年は大丈夫とご説明できるようになりました。また、低侵襲の手術が可能になったことも若い方への手術適応が広がった要因です。傷口が小さく筋肉を大きく傷めない低侵襲手術は、リハビリテーション期間の短縮と早期の社会復帰を可能にしました。

Q. 低侵襲の手術とはどういう手術なのですか?

A. これはアプローチ(皮膚を切開して股関節まで進入する経路のこと)のしかたによるもので、私は2009年から、前方進入法(DAA)を取り入れています。アプローチには大きくわけて、前方、側方、後方とあり、以前は後方からのアプローチが多く採用されていました。ところが後方からアプローチするには、中殿筋(ちゅうでんきん)や大殿筋(だいでんきん)など大きな筋肉があるために、それらを裂いて入らないと股関節に到達できないのです。また人間の体は、主に内側や後ろ側に神経や血管など大切な組織があるために、それを保護しながらのアプローチとなり、制約も多くあります。それに対して前方や側方は、筋膜という筋肉の表面を覆っている膜を切開すると、太い筋肉と筋肉の間に隙間ができます。その周囲は脂肪で覆われていますが、それをうまく指先で分けると股関節を包む関節包(かんせつほう)まで一気に入れるので、筋肉をほぼ痛めずに骨に到達することができます。そのため、術後の筋力低下が少ないという利点があります。

アプローチ法 拡大図

アプローチ法

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生Q. だからこそ早期社会復帰が可能なのですね。

A. はい、そうです。かつては手術のあと数日間休んでから歩く練習をするのが一般的でしたが、今では翌日からでも十分歩けます。米国(アメリカ)では、麻酔が覚めたらその日のうちに立たせるほどです。リハビリを早く始められるということは入院期間の短縮になり、患者さんにとっては精神的、経済的負担が低減します。

Q. 実際には入院期間はどれくらいなのですか?

A. 施設によって違いはありますが、当院では2週間程度です。但しこれには個人差があり、比較的若い男性なら1週間程度で退院が可能です。傷口が治癒し、生活するのに困らない人工股関節の可動域(かどういき:関節を動かすことができる角度)が獲得でき、かつ全身状態が良好な状態で退院していただくようにしています。

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生Q. では、人工股関節はどういう点が良くなったのでしょうか?

A. 何といっても摺動面(しゅうどうめん:人工関節のパーツ同士がこすれ合う面)です。人工股関節の耐久性は、大腿骨側の骨頭ボールと骨盤側のポリエチレンライナーの組み合わせのところで、どれだけ摩耗を減らすかが重要なポイントになります。歩くたびにこすれ合うところは、荷重のストレスが大きくなるためです。そこで、これまでさまざまな工夫がなされてきました。たとえば軟骨の代わりをするポリエチレンライナーは、以前は高分子量ポリエチレンが用いられていましたが、それが超高分子量ポリエチレンになって丈夫になりました。また、ポリエチレンの酸化を予防するためにビタミンEを添加したり、摺動面に特殊な表面処理をする技術が開発されたりしました。その表面処理技術は日本で開発されたものでアクアラ(Aquala)と名付けられています。これは魚の"ぬめり"のようなイメージで低摩耗の状態を作り出すものです。ポリエチレンが摩耗しにくい分、優れた長期成績が期待できるようになったのです。さらに、ポリエチレンが摩耗しにくくなったので、ライナー自体を薄くすることができるようになり、より大きい骨頭ボールを使うことができるようになりました。

人工股関節置換術の例

人工股関節置換術の例

Q. ライナーを薄くして大きな骨頭ボールを使うことでどのようなメリットがあるのでしょう?

A. 大きな骨頭ボールはライナーから外れにくいので、人工股関節の脱臼を起こしにくくすることができます。また、高齢になると筋力が衰えてくるので股関節をしっかり締めつけられなくなり、抱き上げたりベッドから移動させたりという介護を受ける時に脱臼を起こすリスクがあるのです。大きな骨頭ボールを使えば、こういった脱臼リスクを低減させることができるのです。

骨頭ボールが小さい場合 骨頭ボールが大きい場合

Q. 手術後のリハビリで取り組まれていることは何かありますか?

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生A. 独自の取り組みではありませんが、当院ではクリニカルパスといってリハビリテーションから退院までの流れをタイムスケジュール化しています。理学療法士や看護師、医師がそれぞれの患者さんの状況や情報を共有でき、効率的なリハビリを行うことができます。患者さんやご家族にとっても術後の計画を立てやすく、スタッフへの相談もしやすいなどのメリットがあります。また歩行解析を術前と術後だけではなく定期検診の際にも行って、歩容(ほよう:歩く姿)や筋力の状態を診断しています。

ウォーキング イラストQ. 退院後に心がけたほうが良いことはありますか?

A. 関節が悪くない方々と同じような生活をしていただくことを推奨しています。歩かないと筋力が落ち、心肺能力も弱くなって肺炎などを起こしやすくなりますので、日常生活の中で歩く力を維持していただきたいのです。たとえば1日1万歩あるくとか、週末の野外活動や旅行の計画を立てて、楽しみながら運動していただくのが良いと思います。ほかにテレビ体操やラジオ体操を日課にすることも推奨しています。それを続ければ体のこわばりが取れて、気力も上がります。また、体操していて体の動きが悪いことに気がつけば診察や定期検診でアドバイスもできます。また骨粗鬆症の治療を併行することも重要です。

Q. なるほど。日常生活に特に制限はないということですね。

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生A. はい。制限なく日常生活を送り、人生を楽しむことが体力や筋力を維持することになります。人工股関節手術は"歩く力を取り戻す手術"です。足が痛くて旅行に行けなかった、歩容が悪くて人前に出るのが嫌だった、という方が旅行に行けたり、「足が悪いなんて思えない」と友達にいわれたり、そうしたことが高い満足度や自信となり、前向きな気持ちが芽生えます。スポーツも水泳やテニス、バドミントン、卓球、ゴルフなど大抵のものは楽しんでいただけます。股関節を手術する目標は、「ハンディキャップを感じない生活を送ることができる股関節にすること」なのです。

Q. よくわかりました。先生は感染症もご専門にされていますが、関節感染症とはどのようなものなのでしょうか?

A. どんな手術であっても感染をゼロにするのは難しく、1,000例のうち2例程度は発生するといわれています。幸いにして当院では、人工股関節の低侵襲手術で感染は起こしていません。低侵襲手術は傷口や皮膚へのダメージも小さく、手術時間を短縮できるのでリスクの低減が図れるのです。人工股関節の感染は一度起こしてしまうと処置が大変です。表層の感染ならば創を処置して投薬による全身の抗菌療法を行いますが、深層感染すると骨髄炎という状態になり、人工関節の弛みにもつながります。そうすると抗菌療法だけでは効かないので、もう一度手術して洗浄します。場合によっては人工関節を一旦抜き取って、そこに抗菌セメントを詰めて、特殊な方法で体内を除菌してから再置換手術(さいちかんしゅじゅつ)を行います。当院では、地域の病院でそういう症例があったときに受け入れて処置を行うこともあります。重要なのは、普段は必要以上に強い抗菌薬は使わないことです。菌交代現象(きんこうたいげんしょう)が起こってしまい、本来ならば低毒性のものが変化してやっかいなものになってしまうからです。最初は通常の抗菌薬で十分です。強力な抗菌薬は、深層感染が起こってから使うのがポイントです。

藤田保健衛生大学整形外科 森田 充浩 先生Q. ありがとうございました。ところで、先生のご趣味が「仕事と出張」とお伺いしました。

A. 海外の国際学会に参加したり、カダバートレーニング(cadaver training:遺体を利用した手術トレーニング)の講師などで、年に数回の海外出張をしていて、スケジュールがとてもタイトなのです。海外出張は大変なのですが、それを逆手にとって趣味として実益にしようと考えたのです(笑)。海外での体験は刺激的であり、勉強になることも多いですから、知り得た知見を患者さんにも還元していきたいと考えています。

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

森田 充浩 先生からのメッセージ

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取材日:2017.8.29

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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