先生があなたに伝えたいこと / 【森尾 泰夫】治療で大切なことは、目先のことではなく「患者さんの将来を最優先にする」ことだと考えます。

先生があなたに伝えたいこと

【森尾 泰夫】治療で大切なことは、目先のことではなく「患者さんの将来を最優先にする」ことだと考えます。

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生

三朝温泉病院
もりお やすお
森尾 泰夫 先生
専門:股関節膝関節・脊椎

森尾先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 ラグビーが大好きで、大学のときはラグビー部でしたし、今でも時々プレーし、また医務活動もしています。2015年のワールドカップでは3勝もして注目されましたが、ラグビー人気が定着し、する人が増えたら良いなぁと思います。2019年の日本大会も盛り上がってほしいし、今後の強化も期待しています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 小さな畑で、妻と一緒に農業の真似事を。

携帯・スマートフォンサイトもチェック!

携帯電話・スマートフォン

バーコードリーダーで読み取ってください。携帯電話・スマートフォンからもご覧いただけます。
http://kansetsu-itai.com/m/interview/dr136.php

*携帯電話・スマートフォンからアクセスしていただく場合、パケット通信料は、お客様のご負担となりますので予めご了承ください。

QRコード

先生からのメッセージ

治療で大切なことは、目先のことではなく「患者さんの将来を最優先にする」ことだと考えます。

Q. 今回は変形性関節症とその治療法についてお伺いします。まずはその原因とどのような症状があるのかについて教えてください。

A. 変形性関節症というのは軟骨が傷んで、関節が徐々に変形してしまうのですが、なぜそうなるかにはいろいろな説があります。変形性膝関節症の場合は、老化によって軟骨の代謝が落ちてくることもありますが、一番は何らかの機械的な不具合です。多いのは半月板に傷がつくことです。半月板は膝を安定させスムーズな動きを助けますが、傷がつくことで関節はゆるくなりグラグラしてきます。この不安定化によって、関節の周りを包む滑膜(かつまく)に炎症が起き、たんぱく分解酵素などの色々な物質が出て、軟骨が徐々に溶けていく、というのが一般的なストーリーでしょう。傷がつくのは、ご自身でも気づかないような小さな負荷とか怪我の積み重ねだと思います。
さらに、グラグラし出すと自分の体がそれを治そうとして、骨棘(こつきょく)という棘(とげ)のようなものができます。ところが、関節を安定させるはずの骨棘が動きを制限してしまったり、炎症から出る物質によって骨髄の内圧が上がって神経を刺激したりして、痛みが発生すると考えられます。痛みの原因には諸説あるのですが、関節が安定してスムーズな動きをし始めると痛みがぐっと減るということは確かです。また、軟骨が摩耗してツルツルになる(象牙化)と、軟骨のクッションとしての役割がなくなるので、骨にもろに衝撃が加わって、それが痛みの原因になることもあります。

正常 変形性膝関節症

膝関節の骨棘

Q. 変形性股関節症についても解説をお願いします。

A. 股関節についても、何が原因かというのはなかなか難しいんです。小さいときに股関節がはずれてしまったり、先天性の股関節脱臼があったりした場合、これが治ったとしても、骨頭(大腿骨頭:だいたいこっとう)と受け皿(寛骨臼:かんこつきゅう)が、うまく発育しないので、早い段階で軟骨が摩耗して年齢とともに関節が変形するのです。もうひとつは膝関節と同じで、自分ではわからないような小さな外傷の積み重ねで、軟骨が傷んでくることがあります。もちろん骨折など大きな外傷があって、軟骨や骨がずれるようなことがあると、早く関節が傷む原因になります。

股関節各部の名称

正常 変形性股関節症

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生Q. よくわかりました。変形性膝関節症、変形性股関節症の治療としては、やはり手術が必要なのでしょうか?

A. まず大事なのは保存療法です。膝関節も股関節も荷重関節(かじゅうかんせつ:体重を支えている関節)ですから肥満はいけません。ですから、体重をコントロールしていただくことになります。それと、筋力が落ちると関節を守れませんので、関節周囲の筋肉トレーニングをしていただきます。こちらから指導するメニューを、日常的にご自身でやっていただくことが大切です。そして、杖をつくこともお勧めしています。これは、痛い足とは反対側の手で持って歩いていただくことで、かかる荷重が1/4程度減るからです。とにかく、「負荷を減らすこと」、「安定化させること」が目標で、それでも痛い方に対しては消炎鎮痛薬を併用します。痛みが改善されてそれが維持できれば、手術を回避することもできますよ。

Q. では手術を選択するタイミングとは?

A. 保存療法で効果がみられない、ということですが、消炎鎮痛剤もあまり長期間服用を続けると、胃潰瘍ができたり腎臓の働きが悪くなったりします。服用が1ヵ月ぐらい続くようになれば、「そろそろ手術のタイミングですよ」とアドバイスします。でも、決して急ぐ必要はなくて、ご本人やご家族のご事情で、良い時期、良いタイミングで手術をされたらどうでしょう、とお伝えしています。例外的に、急に関節が壊れるような疾患の場合は、すぐ手術になります。

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生Q. 最終的な手術の時期は患者さんに選択権があるわけですね。

A. 命に関わるものではありませんので、決めていただくのは患者さんです。また、手術を受けられるのは高齢の方が多いですから、内科の病気を抱えている方も多く、まずそれを治してからということもあります。たとえば、抗凝固剤を飲んでおられる場合などです。他科と連携して周到に準備する期間も必要で、これも手術のタイミングを決めるのに重要な要素のひとつです。

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生Q. 手術への準備をきちんと整えることが大切なのですね。

A. ええ、そうなんです。特に人工関節の場合は虫歯などもきちんと治しておいていただかないと、人工関節にばい菌が移動して感染を起こし、せっかく入れた人工関節を抜かなければならなくなるということもあるのです。患者さんの話をよくよく聞いて、かかりつけの先生がおられるなら、そこと連携をとって手術の準備をしていきます。手術後の満足度向上のためにも、このプロセスは大事なのです。

Q. 人工関節以外の手術もあるのでしょうか?

A. 若い方には、関節が温存できる骨切り術という選択肢もあります。たとえば、20代の方なら、人工関節が20年、30年保ったとしてもまだ40代、50代です。人工関節の耐用年数もありますので、もしかすると入れ変えの手術が必要になるかもしれません。

Q. 骨切り術とはどういった手術なのですか?

A. 膝関節で代表的なのは高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)といって、内側の軟骨だけが傷んでいる場合に、O脚をX脚に近づけるために骨を切る手術です。つまり、体重がかかるところをずらしてやるのです。骨を切って付け直すのですが、角度の小さな誤差で痛みが取れたり取れなかったりする繊細な手術で、痛みも半年から1年をかけて取れますので、この点、患者さんによく理解していただいておく必要があります。股関節なら、寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)といって、乳幼児期股関節脱臼などで寛骨臼が十分に発育しなかった場合、その周りを切って回転させ、骨頭を覆っている、体重を受ける面積を拡大する手術などがあります。
骨切り術は、可動域(かどういき:関節を動かすことができる角度)も含めてご自分の関節のように使えますし、満足度も高く、それによって人工関節にしなくても良いという例も多い。ただし、入院期間が2ヵ月から3ヵ月ほどかかりますので、それが無理な方は保存療法でコントロールしながら、時期をみて人工関節手術を選択される方も増えています。

O脚の図

拡大図 高位脛骨骨切り術

寛骨臼回転骨切り術

Q. 骨切り術は適応とともに入院期間の問題をクリアする必要があるのですね。ちなみに人工関節手術では、入院期間はどれくらいですか?

リハビリA. 病院によって違いますが、当院では術前2、3日前から入院していただき、病院に慣れてもらったり、評価、術後に備えての事前の訓練などを行います。術後は1ヵ月から1ヵ月半のリハビリ期間が一般的でしょうか。杖なし、あるいは杖1本で歩けて、自信を持って日常生活を送れるということが退院の目安です。

Q. 人工関節について、技術の進歩に伴い、人工関節も進歩しているんでしょうね。

A. はい。たとえば人工膝関節では、デザインが人間本来の形に近いナチュラルな形態になってきました。したがって、動きも自然なものになっています。あとは、骨と人工関節のくっつけ方が変わりました。人工膝関節には骨セメントで固定するタイプと、セメントを使わないタイプが開発されています。骨セメントで固定するタイプの場合、以前は骨セメントと骨との間にいろんな問題が起きていたのですが、骨セメント自体が改良されたことと、手術手技によるセメントの詰め方も改良されて、今ではその問題もほぼなくなりました。セメントを使わないタイプでは、人工膝関節と骨とをじかに接触させますが、インプラントの表面にギザギザをつけて食い込ませ、そこに骨を誘導させるものや、インプラントの表面に骨の成分をコーティングして骨と化学的に結合させるものが開発されました。それぞれに多少のメリットデメリットはありますが、固定力は間違いなく増しました。
人工股関節では、骨頭部分は金属やセラミック、受け皿部分にはポリエチレンが使われています。このポリエチレンが、かつては1年に0.1mmという単位で摩耗し、摩耗粉(まもうふん)が出て、それがもとで破骨細胞(はこつさいぼう)が活性化して、人工関節の土台になっている骨を溶かしてしまい、人工関節が弛んでしまうというのが大きな問題でした。そこで、いかに摩耗しない受け皿を作るかということで、ポリエチレンにガンマー線を照射して摩耗しにくくしたり、ポリエチレンにビタミンEを注入して、酸化や劣化を抑えるようにしたり、Aquala(アクアラ)という、ポリエチレンの摩耗をさらに軽減させることができる表面処理技術が開発されるなど、実にさまざまな工夫と進歩があって、摩耗のリスクは大幅に低減しています。

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生Q. 手術方法の進歩についてはいかがでしょうか?

A. 私は、患者さんが生涯に渡って人工関節との良い付き合いができるような、安心安全な手術を行うことに徹したいと思うのです。たとえば、皮膚切開や筋肉の切開をなるべく小さくするMIS(エムアイエス)という手技があります。傷が小さいので痛みも小さくて回復も早いのですが、それは術後早期のことです。切開が小さいために、人工関節をうまく入れるために、場合によっては無理に組織を引っ張ったり圧迫したりすることがあり、これが神経を痛めることにもつながります。いろいろな考えや意見がありますので、どれが正解ということはありませんが、私としては術後の1週間、10日間のことよりも、長期の優れた成績、患者さんの将来を最優先にした手術を行いたいと考えています。

三朝温泉病院 森尾 泰夫 先生Q. 先生のお考えが大変よくわかりました。ところで先生は脊椎のご専門でもあります。脊椎と膝関節、股関節とは何か関連があるのでしょうか?

A. 膝関節も股関節も、腰から出た神経がつながっていくところなんです。膝が痛いといわれても、実は第3腰椎神経が椎間板ヘルニアにより圧迫される場合もあります。だから、まずは診断において間違えないようにしないといけません。人工関節にしたけれども痛みが取れない、実は痛みの元は腰だったということもないわけではありません。また股関節が悪い人は、腰や膝に負担がかかります。だから膝関節だけ、股関節だけを診て治せば良いというものではないんですね。トータルに診ることが大切ですし、私もそのような方針で治療に当たっています。

Q. ありがとうございました。最後に、こちらの病院では、三朝温泉を利用したリハビリテーションをされているとお聞きしています。このことについても少しご紹介いただけますか。

A. はい。源泉かけ流しのプールがあります。体温とほぼ同じ湯温に保っておりまして、まず水中歩行や理学療法士とともに水中での運動をしてもらって、通常のリハビリというプログラムを組んでいます。温めることで靭帯や筋肉が柔軟になり、体に負担をかけないので、スムーズにリハビリを行う上でとても効果的だと思っています。足湯もあるんですよ(笑)。

プール

足湯

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

森尾 泰夫 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2015.11.18

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

先生の一覧へ戻る

病院検索をする

ページトップへ戻る

先生があなたに伝えたいこと

股関節股関節

膝関節膝関節

肩関節肩関節

肘関節肘関節

足関節足関節

手の外科手の外科

脊椎脊椎

病院検索 あなたの街の病院を検索!

先生があなたに伝えたいこと 動画によるメッセージも配信中!