先生があなたに伝えたいこと / 【金 潤澤】 患者さんそれぞれの"適応"を考え、将来に向けて負担の少ない手術を

先生があなたに伝えたいこと

【金 潤澤】 患者さんそれぞれの"適応"を考え、将来に向けて負担の少ない手術を

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生

埼玉医科大学病院
きん じゅんたく
金 潤澤 先生
専門:股関節・骨切り術・人工股関節・関節リウマチ

金先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 目とかいろいろなところが衰えてきたこと。めがねを何種類も使い分けていますし、気にせざるを得ないです(笑)。

2.休日には何をして過ごしますか?
 趣味と健康管理を兼ねて、家内とよく散歩に出かけます。山手線を2、3駅歩いたり、明治神宮や代々木公園にもよく行きますね。

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先生からのメッセージ

患者さんそれぞれの"適応"を考え、将来に向けて負担の少ない手術を。

Q.「患者さんの年齢や状態に合った変形性股関節症の手術」ということですが、まず手術に際してどのような選択肢があるのかを教えてください。

A.大きくは、関節温存手術と申しまして人工関節を入れない手術と人工股関節置換術に分かれます。関節温存手術はいわゆる「骨切り術」といわれる手術で、患者さん方はよく「自骨を使う手術」と呼んでいらっしゃいます。また人工股関節置換術も、股関節全部を取り換える「人工股関節全置換術」と大腿骨の頭の部分を換える「人工骨頭置換術」に分けられます。

Q.骨切り術と人工股関節置換術は、それぞれどのような患者さんを対象にされているのですか?

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.骨切り術は、比較的年齢の若い方に行います。当院では原則的に55歳以下の方を対象にし、ケースバイケースで検討しております。これは、人工関節の耐用年数と関係があり、ひと昔前までは約10年といわれていましたが、今は20、30年ともつようなり、ご高齢の方では、おそらく一生に一度の手術で済むでしょうということで、人工股関節置換術をお勧めしています。
変形性股関節症の手術は、まずは年齢を基準に考えることが多いので、別の病院や施設で、「若いから一度こちらで相談してみてはどうか」と言われて来られる方も多いようです。
ほかに重要な基準として、治療期間、つまり入院やリハビリテーションに要する期間を考慮する必要があります。関節温存手術の場合は、人工股関節置換術に比べて、約2倍の時間がかかります。最近は技術と人工関節の質が以前より改善されて、当院では手術後2、3日で歩行訓練を始めますが、骨切り術では、少なくとも4~6週間は歩行訓練ができません。ですから人工股関節置換術は、1日でも早く歩きたい、働きたいという方には適していると思います。

Q.ケースバイケースではあっても、一般的には、骨切り術は若い方に適していると...。

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.はい。と申しますのも、人工股関節置換術は20、30代という若い方に行いますと、活動性が高いために、10~15年で再置換術を行わなければならないことがあります。緩んできた人工関節を入れ換える手術ですね。学会などでは一般に、若年者に対しては約15年のスパンで2度目、3度目...と再置換術を行わなければいけないと言われています。再置換術は手術自体も困難で、1度目の人工股関節置換術よりも成績が下がり、リハビリテーションの期間も長くなります。したがって、人工股関節置換術は一生のうち一度で済ませたい。そこで、まず骨切り術を行って、できればそれで一生、少なくとも60歳近くまで対応できれば、人工股関節置換術が一生のうち一度で済むという計算になります。以上のような理由から、若い方には、骨切り術を基本的にはお勧めしています。

Q.一方で、治療期間が長いことから、若い患者さんでも骨切り術を選択できないケースもあるのでしょうか?

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.もちろんそういうこともあります。治療期間の違いを含めて、必ず両方の手術のお話をし、ご本人に選択していただきます。特に働き盛りの男性や、小さなお子さんをお持ちのお母さん、自宅で介護をされている方などは人工股関節置換術を選択される場合がありますね。ですから、患者さんの"社会的状況による適応""疾患による適応""病期による適応"、そういうことを総合的に判断して、その患者さんにとって何がベストなのかを共に考え、最終的にはご自身に選択していただくことが大切だと考えています。

Q.骨切り術にも種類があると思いますが、その代表的なものを教えてください。

A.変形性股関節症の場合、ごく軽い前期、少し軟骨がすり減った初期、さらに軟骨がすり減った進行期、軟骨のなくなった末期に分けられ、前期と初期に対しては、私は「寛骨臼回転骨切り術」を選択することが多いです。進行期や末期の場合は、「大腿骨外反骨切り術」「大腿骨内反骨切り術」「キアリ骨盤切り術」を選択しています。

Q.前期、初期に行われる「寛骨臼回転骨切り術」とはどのようなものですか?

A.股関節は、骨盤側の受けと大腿骨の動く部分とで構成されています。東洋人の場合、その骨盤側の骨、我々はよく"屋根"といいますが、その屋根の浅い方が多いんですね。浅いところをくりぬいて回転させ、正常に近い深い屋根を作り、骨頭の大きさと合うようにします。日本の中でも当院は、この手術をたいへん多く行っています。

寛骨臼回転骨切り術

Q.では、進行期、末期に行われる骨切り術はどのような手術なのでしょうか。

A.「大腿骨外反骨切り術」(*1)と「大腿骨内反骨切り術」(*2)は、簡単に言いますと大腿骨頭を内側におじぎせさたり、外側に反らせるということですね。大腿骨頭の下の部分をくさび状に切り、そこを金属プレートで固定させて骨を傾けるわけです。このプレートは、1年ないしは2年、骨が付いた時点で抜きます。「キアリ骨盤切り術」(*3)は骨盤の方を直線的に切って外へずらし、やはり正常に近い屋根を作ります。この手術は当院では、かなり進行して、軟骨のなくなった末期の方に行うことが多いです。

(*1)大腿骨外反骨切り術 (*2)大腿骨内反骨切り術 (*3)キアリ骨盤切り術

Q.「寛骨臼回転骨切り術」と進行期、末期で行う手術とでは目的そのものも違うのでしょうか。

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.「寛骨臼回転骨切り術」はほぼ正常な股関節を作る手術ですので、手術後、跛行(はこう)と申しますが、歩いても体が揺れることはなく、健常時とほぼ変わらない状態にすることができます。他の骨切り術は痛みをとることが最大の目的で、術後も、歩くと体が揺れたり、脚の長さが左右で異なる、片脚の筋力が弱いなどの症状は残りますね。靴底の高さで調整される方もおられますし、あまり気にならない方はそのままにしておられます。股関節痛の解消が一番大きなことなのです。

Q.次に人工股関節置換術の場合ですが、「人工股関節全置換術」と「人工骨頭置換術」の割合はどのようなものですか?

A.我々のところではほとんどが人工股関節全置換術です。と言いますのは、人工骨頭置換術は、10年~15年で2度目の手術を要することが多くなるとわかってきたためです。長く持たせるために、最初から人工股関節全置換術を選択することがほとんどです。

Q.変形性股関節症の患者さんには、人工股関節置換術の中でも人工股関節全置換術が適しているということなのでしょうか。

A.ええ。理由としてはほかにもあります。骨頭だけを置換すると、骨と金属とが直接触れ合って動くわけで、硬い金属と柔らかい軟骨ないし骨とが摩擦することになります。すると骨が徐々にすり減って骨が欠損し、もし再置換術を行う場合に大変な手術になるという可能性があるため、最初から骨盤側と大腿骨側の双方を取り換えるほうが良いと考えています。また人工股関節全置換術の場合、一部の部品がすり減ったとしても、そこだけ取り替えることも可能なので、当院では人工股関節置換術を行う場合には、ほとんど人工股関節全置換術を選択しているわけです。

股関節のしくみ

Q.ところで、変形股関節変形症の患者さんには女性、年齢は60歳から70歳前後の方が多いと聞いています。ほかに何か特徴はありますか。

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.日本においては、先天性股関節脱臼が原因である患者さんが多いということでしょうか。当院へ来られる患者さんの場合、ほとんどが先天性股関節脱臼によるものです。赤ちゃんのときに治療を受けた方と見逃されてしまった方とがおられますが、成長するにしたがって痛みが出てきます。10年単位で進行することが多いのですが、軽い人ですと、中高年になってから痛みが出てくることもあります。しかし最近は、乳幼児検診技術と治療技術の向上で、先天性股関節脱臼による変形股関節変形症の患者さんは昔ほど多くはおられません。
後天的なものとしては、股関節が細菌に感染して起こる化膿性股関節炎や、骨折で骨は付いたが関節の噛み合わせが悪くて痛みが出るケース、関節リウマチが原因であるケースなどいろいろあります。関節リウマチに限っては、年齢が若くても残念ながら骨切り術の対象にならず、人工股関節全置換術を選ぶことになりますが、最近は生物学的製剤など良い薬も開発されて、手術が必要となる患者さんは少しずつ減ってきています。代わりに、お酒の飲み過ぎやステロイドの投与などで引き起こされる、大腿骨頭壊死症に起因するものが増えている傾向があります。

Q.患者さんに合った手術と一言で言っても、発症の原因も違いますし、みるべきポイントはたくさんあるわけですね。

A.患者さんの年齢や疾患はいうもでもなく、職業、病期、症状、治療にかけることのできる時間もポイントになりますね。それらを総合的に判断の上、こちらの見解や情報をお伝えし、患者さんご自身に最終的に選択していただくのが当院のやり方です。

Q.患者さんに合った手術ということを、強く意識されるには何か理由があるのでしょうか。

埼玉医科大学病院 金 潤澤 先生A.日本では、骨切り術を第一選択にするのがいいのではないかという意見が多くありますし、特に当院は、40年程前からいち早く骨切り術を行い、手術数も多い部類に入ります。そういう中で研鑽を積み、教育を受けたことが大きいと思いますね。患者さんの負担を考えれば、一生のうちに手術の回数は少ないほうがいいと常に思ってきましたし、今もそれは変わりません。また、変形性股関節症の前期や初期で寛骨臼回転骨切り術を行い、不幸にも進行してしまった場合、他の骨切り術を行うことも可能です。そのつど年齢や状態に応じた治療法を選択できるわけです。もちろん、一度の骨切り術で一生不都合が出ないことも多くあります。さまざまなケースを考慮し、患者さんの負担が少しでも軽くて済む手術を、我々は患者さんと共に考えていきたいと思っています。

Q.最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

金 潤澤 先生からのメッセージ

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取材日:2010.3.29

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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