先生があなたに伝えたいこと / 【前 隆男】「足の裏に体重をかけて歩く」ことは、人間にとって、とても重要なことです。

先生があなたに伝えたいこと

【前 隆男】「足の裏に体重をかけて歩く」ことは、人間にとって、とても重要なことです。

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生

佐賀県医療センター好生館
まえ たかお
前 隆男 先生
専門:股関節

前先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 膝関節の内側が痛くなってきまして、靴に足底板を入れ体重も5㎏減らしました。患者さんには「僕も痛いよ」といっています。そうすると親近感を持っていただけるようです(笑)。

2.休日には何をして過ごしますか?
 妻に車の運転をお願いして日帰り温泉へ行き、食事とお酒を楽しんでいます。

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先生からのメッセージ

「足の裏に体重をかけて歩く」ことは、人間にとって、とても重要なことです。

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生Q. 最近、メディアなどで変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)が取り上げられることが増えていますが、それだけ患者さんが多いということでしょうか?

A. そうですね。明確な数字はわかりませんが、潜在的な患者さんを入れれば、おそらく数百万人になるでしょう。人工股関節手術を受けられる方も、年間でおよそ6万人といわれていますから、今では一般的な疾患といえます。

Q. 変形性股関節症とはどのような病気で、主な原因は何なのでしょうか?

A. 変形性股関節症は大腿骨頭(だいたいこっとう)といって、太ももの骨の上の丸い部分、そこに負荷がかかることで軟骨がすり減っていき、それとほぼ同時に臼蓋(きゅうがい)という大腿骨頭の受け皿のほうの軟骨も徐々にすり減っていきます。軟骨はクッションの役割をするものですから、すり減ると骨同士が直接こすれ合うことになって、関節が少しずつ変形し、進行するにつれ痛みを増して、あぐらをかけない、足をくずせない、長い距離を歩けない、階段昇降が困難になるというような可動域(かどういき:関節を動かすことができる角度)制限が出てきます。
原因として、長年の負担によって引き起こされる原発性のものもありますが、日本人の場合、最も多いのは臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)です。股関節は、大腿骨頭が臼蓋に覆われて体重を支えていますが、この臼蓋が十分に成長していないために荷重のかかる面積が小さくなり、負担が増します。このことで通常よりも軟骨が摩耗しやすくなるのです。この臼蓋形成不全は女性に多いということがわかっています。

正面図

変形性股関節症

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生Q. 人工股関節手術の症例数が多いということですが、変形性股関節症の治療は人工股関節手術以外の選択肢はないのでしょうか?

A. これは病院の機能にもよると思います。当院の場合は、初期ではなく、ある程度進んだ状態で、開業医さんなどの紹介によって手術を目的に来院される方がほとんどですので、症例数的に人工股関節手術が圧倒的に多くなります。しかし、通常はまず保存療法です。減量や投薬、股関節周囲の筋肉を鍛える筋力トレーニングで痛みの改善などを試みて、効果があればそれを継続し、改善がみられなければ手術を選択することになります。

Q. 手術にも種類はあるのですか?

A. 初期の臼蓋形成不全でしたら、骨切り術(こつきりじゅつ)という方法があります。これは、臼蓋の周囲をドーム状に切って寛骨臼を回転させ骨頭を覆うようにする寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)と呼ばれています。こういった方法で人工股関節にしなくて済むこともあります。また、人工股関節には寿命がありますので、入れ換えの手術を先に延ばすことができます。

寛骨臼回転骨切り術

Q. 人工股関節の寿命はどれくらいなのですか?

A. およそは20年といわれていますが、人工股関節も材質の改良などで進化していますので、今後は30年という可能性もあると思います。

Q. それは期待したいですね。次に、手術についてお聞きします。先生は、新しい手術方法を採用されているそうですが、詳しく教えてください。

A. はい。皮膚を切開して股関節に至る方法には、股関節の前方から入るアプローチと、後方から入るアプローチがあります。私が採用しているのは前方からのアプローチです。日常生活においては、股関節を伸ばすよりも曲げる動作のほうが多くなるので、後ろに壁がないと脱臼しやすくなってしまいます。後方からのアプローチはその壁を切開してしまいますので、しゃがみ込んだり深く座ったりした場合、まれですが、脱臼することがあります。これをどうにかして少なくしたいということで始めたのが、前方からのアプローチなんです。

前方からのアプローチ

前方からのアプローチ

後方からのアプローチ

後方からのアプローチ

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生Q. 前方からのアプローチの一番のメリットは、脱臼のリスクがかなり低減するということなのですね。

A. 他にもメリットがあります。前方アプローチでも筋肉を裂く方法と、私が取り組んでいる筋肉の間から入る方法があります。筋肉の間から入る方法は、筋肉を切らないので術後の痛みが少なくなります。

Q. 術後の痛みは心配ですが、それを聞くと少し安心できます。

A. 実際、後方からのアプローチをしていた頃に比べて、患者さんはずいぶん楽だと思います。もちろん手術直後は少し痛みますが、今は疼痛(とうつう)コントロールも進歩していて、内服や点滴で持続的に痛み止めを注入し、その量をコントロールするなどいろいろな緩和策が用意されています。

Q. 疼痛コントロールにも何かトピックはありますか?

A. 私が着目しているのはカクテル注射で、まさにこれから取り組もうと思っています。消炎鎮痛剤など複数の薬剤を混合して、筋肉に注入するという方法です。これは局所に効くものなので、かなりの効果が期待でき、全身の痛み止めと併用すればさらに強力な鎮痛が可能なのです。

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生Q. 痛みがリハビリに与える影響も大きいのでしょうね。

A. 術後早期の痛みがきつい方は、それをずっと訴えられる傾向があります。頭で覚えてしまうんでしょうね。そうするとリハビリも、痛いからとなかなか進みませんし、悪いほうに転んで、場合によっては良くなるはずのリハビリが痛みを増長することになったりします。そういうこともありますので、筋肉を切らないアプローチや痛みのコントロールは大切なんです。リハビリの効果がぐっと上がることが期待できます。

リハビリ イラストQ. リハビリ期間はどれくらいなのでしょうか?

A. 後方からのアプローチを行っていた際は3週間でしたが、今では平均して2週間くらいでしょう。脱臼のリスクが小さいということで、リハビリも安心感を伴って積極的に行えるようになります。常々、脱臼を意識しなくていいですから、看護師さんや理学療法士さんにしても精神的に楽になったようです。その意味で彼らと患者さんとの関係性も以前より和やかになったと感じられます。

Q. いろいろなことが好転したのですね。ところで先生は骨盤骨折の専門家でもいらっしゃいます。このことについてもぜひ教えてください。

A. 当院は救急にも力を入れていて、そのなかには骨盤骨折や寛骨臼骨折で運ばれてくる患者さんも多いんです。どちらも高所からの転落や交通事故などがほとんどです。寛骨臼骨折の場合は、将来的に変形性股関節症になるのを防ぐためにも、しっかりと正しい位置に固定します。骨盤骨折は骨盤がこなごなになって出血量も多いので、残念ながら亡くなられる方もおられます。しかし、そういう危機を乗り越えられた場合には、早期に手術をして固定し、リハビリも早期に行っていただきます。かつては骨が付くまで6週間くらいはベッドの上で天井ばかりを見る生活を余儀なくされていました。

Q. 骨盤骨折は大変厳しい外傷なのですね。

佐賀県医療センター好生館 前 隆男 先生A. ええ。それが最近、高齢者の骨盤骨折が増えているのが気にかかるんです。みなさんお元気ですから、普段から作業をされているんです。たとえば、最も多いものは脚立からの落下です。植木の剪定などをしていて足を踏み外して...。高齢者の場合は、早く手術をして離床しないと、寝たきりになって認知症の原因になることもあります。「足の裏に体重をかけて歩く」ことは、人間にとって、とても重要なことです。

Q. ありがとうございました。最後に、先生が治療をされる上で大切にされていることを聞かせてください。

A. 手術を含めた治療を選択する上で、「自分だったらどうするだろう」と常に考えることにしています。自分に置き換えて患者さんと話をし、一緒によりよい方法を選択して前向きに取り組んでいくことです。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

前 隆男 先生からのメッセージ

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取材日:2015.11.27

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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