先生があなたに伝えたいこと / 【藤原一夫】人工股関節手術のあと、涙を流して喜ばれた患者さんがいました。そのような患者さんを一人でも増やすため、手術の進歩に対応した高度なチームプレーを実践していきたいと思っています。

先生があなたに伝えたいこと

【藤原一夫】人工股関節手術のあと、涙を流して喜ばれた患者さんがいました。そのような患者さんを一人でも増やすため、手術の進歩に対応した高度なチームプレーを実践していきたいと思っています。

地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院 藤原 一夫

地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター
岡山市立市民病院

ふじわら かずお
藤原 一夫 先生
専門:股関節

藤原先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
おかやまマラソンに応募したら当選してしまい、フルマラソンに初挑戦することになりました。目下、一番気になるのはそれですね(笑)。これからも走り続けたいですから、体力をしっかり維持しなくてはいけません。

2.休日は何をして過ごしますか?
ジョギングをしています。大学では陸上部でしたが、中学・高校はサッカー部でしたので病院のフットサル(サッカーに似た球技)のクラブにも参加しています。

先生からのメッセージ

人工股関節手術のあと、涙を流して喜ばれた患者さんがいました。そのような患者さんを一人でも増やすため、手術の進歩に対応した高度なチームプレーを実践していきたいと思っています。

地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院 藤原一夫(ふじわらかずお)先生Q. こちらの病院に開設されている「人工関節センター」とは、従来の整形外科とどう違うのでしょうか?

A. 違うのは手術前の準備と手術後のケアです。入院時に、ドクターだけではなく専門知識を持った看護師、理学療法士および作業療法士がチームを組んで、患者さんにより質の高いケアやサポートを行います。また、技術や手術手技は日進月歩で進歩していきますので、それらを積極的に勉強していつでも対応できる体制を整えています。さらに人工関節センターのセンター長はリハビリセンター長が兼任しているので、スムーズなリハビリへの移行が行われます。

Q. 一連の流れで質の高いケアをしていただけるのは心強いですね。では、進行すると人工股関節手術の適応となる疾患には、どのようなものがあるのですか?

A. 主な疾患は変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)関節リウマチです。以前なら人工股関節の耐用年数の問題があり、痛みが強くてもかなり高齢になるまで我慢していただいていたのですが、近年は人工股関節が進歩して長もちするようになったおかげで、比較的若いうちから人工股関節手術をすることが可能になりました。特にリウマチの方は炎症のために、関節を温存する保存療法では疼痛(とうつう)の軽減を得られないケースも多いので、若くても人工股関節手術の適応となります。

変形性股関節症

Q. センターでは人工股関節手術以外の手術も行われるのですか?

A. 特に45歳以下の若い方には、骨を温存する骨切り術を積極的に行っています。たとえば、日本人の特に女性に多いのが、臼蓋が十分に成長しない臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)から変形性股関節症を発症するケースです。この場合、変形がまだ軽度ならば、寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ)を行っています。臼蓋の周りを球状にくり抜いて外側に回すことで、体重のかかる屋根を広くする手術です。変形が強い場合は、キアリ骨盤骨切り術(きありこつばんこつきりじゅつ)といって、臼蓋の少し上をまっすぐに切ってずらし、屋根を作るという手術を行うこともあります。

寛骨臼回転骨切り術

キアリ骨盤骨切り術

Q. 骨切り術にも種類があるのですね。そうした手術をすれば人工股関節には至らないのでしょうか?

A. 骨切り術で一生を過ごすことができる方もいますし、残念ながら人工股関節が必要となる方もいます。骨切り術の術後成績は、患者さんのライフスタイルに影響されるため個人差が大きく出ます。とはいっても、人工股関節手術をするまでの時間を大幅に延ばせるので、人工股関節の耐用年数を心配しなくてもよくなるというメリットがあります。

Q. 人工股関節が進歩して耐用年数が延びたとのことですが、現在ではどれくらいなのでしょうか?

A. 最新の人工股関節については、10年後、20年後にしかはっきりしたことはいえませんが、10年前の人工股関節で経過をみていても、不具合の出ている症例はほとんどありません。したがって、最新の人工股関節なら20~30年は期待できます。

地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院 藤原一夫(ふじわらかずお)先生Q. どのようなところが大きく改善したのでしょうか?

A. かつては軟骨の代替となっている人工股関節のポリエチレンが摩耗して、その摩耗粉による異物反応が骨溶解(こつようかい)を起こし、人工股関節がゆるんでしまうリスクがありました。今ではポリエチレンの性能が向上して摩耗しにくくなったので、そういったリスクはかなり低くなったのです。

Q. 股関節の状態には患者さんによって違いがあると思うのですが、人工股関節に種類はあるのでしょうか?

A. 大きくはセメントを使うタイプ(セメントタイプ)とセメントを使わないタイプ(セメントレスタイプ)があります。
髄腔(ずいくう)の広い方や関節リウマチなどで骨質の非常に悪い方に、セメントタイプを使う傾向にあります。
セメントレスタイプには、なるべく元の骨を削らないで設置できる形状をした骨温存(こつおんぞん)タイプ、大腿骨の近位(きんい:体の中心に近いほう)や遠位(えんい:体の中心から遠いほう)で固定するタイプなどいくつかあって、それぞれを骨の形や骨質によって使い分けます。また人工股関節の表面加工処理にもさまざまな種類があります。どのタイプを使うかは術前の計画で判断しています。

Q. その術前の計画について、先生の取り組みを教えてください。

A. 術前にはCT撮影を行い、その三次元画像を駆使して最も患者さんに合う人工股関節を選んで、最適な設置角度などをシミュレーションします。そして実際の手術では、モニター画面を見ながらリアルタイムに設置角度などが確認できるナビゲーションシステム、最近では手術ロボットも導入し、術前計画を精確に再現しています。人工股関節の改良や術前計画のコンピューター支援システム、ナビゲーションやロボットなどの手術支援システムの総合的な進歩が、長期成績向上に大きく貢献していると思います。

ナビゲーションシステムを用いた人口関節手術

Q. なるほど。手術手技も進歩しているのでしょうか?

A. 筋肉を切らずに進入する筋間アプローチが主流になってきました。一般にMIS(エムアイエス:最小侵襲手術)という手術手技では筋肉を温存することができ、早期回復や術後の人工股関節の脱臼にも強いというメリットがあります。しかし、股関節が大きく変形していたり、筋肉が硬縮(こうしゅく)していたり、左右の脚の長さの違いを矯正する必要がある場合では、手術を正確に行うことを優先して必要最小限に筋肉を切ることもあります。

Q. 合併症とその対策についても教えていただけますか?

A. 最も多い合併症で気をつけなければならないのは、エコノミー症候群と呼ばれる、長時間体を動かさないことで起こる深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)です。これに対しては、手術中から術後にかけては血栓を予防するフットポンプを装着したり、手術後は血液を固まりにくくする薬を投与したりしています。

フットポンプ

Q. リハビリには何か特徴がありますか?

A. 人工股関節だけでなく、股関節の疾患全般について専門的なリハビリを提供していますが、特に人工股関節の場合では術後早期の脱臼に気をつけないといけないので、いかに脱臼を起こしにくい生活を送るかということをテーマにリハビリをします。ほかには、それまでずっと機能障害の出ていた方が手術を受けられるケースが多いので、筋力トレーニングが中心になります。

Q. 入院期間はどれくらいですか?

A. 2週間から3週間です。早期退院を希望される方では10日間前後です。ただし手術後3ヵ月間はリハビリテーション期間と考えていただき、筋力アップや歩き方の練習を続けてください。そのため、当院では地域連携システムを構築し、お近くのリハビリテーションができる施設をご紹介しています。

地方独立行政法人 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院 藤原一夫(ふじわらかずお)先生Q. ありがとうございました。最後に、特に先生の印象に残っておられる患者さんはいらっしゃいますか?

A. 高齢であるために他の施設では手術ができないといわれて、当院へ来られた方がいました。合併症を多く持っている患者さんで、確かにリスクはあったのですが、内科や他科の先生方と協力することで手術が可能と判断し手術をしました。手術後その患者さんは、「とても楽に歩ける。新しい人生をもらいました。」と、涙を流して喜ばれました。患者さんの年齢や合併症に応じた手術方法がありますので、万全な評価をして可能性を探りながら、一人でも多くの方に新しい人生を贈ることができたらと思っています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

藤原 一夫 先生からのメッセージ

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取材日:2018.7.9

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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