先生があなたに伝えたいこと / 【阿部 雅志】高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)は大変良い手術です。だからこそ、その方にとって人工膝関節手術とどちらがより適しているのかを見極めることが、とても大切だと思います。

先生があなたに伝えたいこと

【阿部 雅志】高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)は大変良い手術です。だからこそ、その方にとって人工膝関節手術とどちらがより適しているのかを見極めることが、とても大切だと思います。

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生

藤枝市立総合病院
あべ  まさし
阿部 雅志 先生
専門:膝関節

阿部先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 静岡にはプロサッカーチームがJ1~J3まで1チームずつあります。J1はJ1で降格するかしないか、J2はJ2で上に上がれるかどうか、J3はJ3で自分が診ているチームなので一番応援していますが、3チームのチーム状況がいつも気になっています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 シーズン中は、基本、試合が土・日なのでチームに帯同していますが、ホームでの試合のときは土曜日が時々空きますから、そんなときは子どもとサッカーをして遊んでいます。

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先生からのメッセージ

高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)は大変良い手術です。だからこそ、その方にとって人工膝関節手術とどちらがより適しているのかを見極めることが、とても大切だと思います。

膝の疾患と治療法~サッカー選手の場合と一般の方の場合~

右膝の靭帯の名称Q. まず膝関節の構造から教えてください。

A. 膝関節は大腿骨と脛骨、お皿の部分の膝蓋骨(しつがいこつ)から成っていて、軟骨と軟骨の間にクッションの役割をする半月板が内側と外側にあります。また、膝関節の左右には側副靭帯(そくふくじんたい)、内部にはクロスするように前、後ろの十字靭帯(じゅうじじんたい)があります。靭帯は膝を安定させたり動きを制御したりします。

Q. 変形性膝関節症は患者さんの数がとても多いそうですが、どの部分がどのようになって引き起こされるのですか?

A. 軟骨の部分がすり減って、骨と骨が直接ぶつかり合うことで起こります。たとえばO脚の方ですと膝の内側に荷重が集中することで軟骨が損傷したりすり減ったりして、年齢とともに徐々に変形をきたすということが多いですね。

O脚の図

Q. わかりました。変形性膝関節症については後ほど詳しくお伺いしたいと思います。ところで先生はサッカーのチームドクターをされているそうですね。

A. はい。J3(Jリーグの3部リーグ)の藤枝MYFCのチームドクターをしています。今年からプロになったのですが、地域リーグの時からずっと診させてもらっています。

Q. サッカー選手には膝の疾患が多いのでしょうか? また一般の方の場合と傾向に違いはありますか?

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生A. プロの現役選手は若い世代になりますから、靭帯、半月板、軟骨の損傷といった膝の疾患が多いです。レベルの高い選手の中には、そのような損傷を何度か繰り返して、若くてもやや変形してしまっているケースがあります。

Q. それはプロだからこそ、と言えるのでしょうか?

A. そうですね。一般的には初回にそのような損傷を起こしても、膝関節が変形するということはありません。プロの場合、試合に出られるようなら出るという選択がなされるので、いつ、どこまで治療するのかを決めるのが難しいケースがあります。また、手術で半月板の傷んでいる部分を切除すると、練習や試合でストレスをかけたときに軟骨への刺激が増え、軟骨損傷やその後の変形につながるということもあります。ほかにも、半月板が縫える状態でも、取ったほうが復帰が早くなりそうなときは取ってしまうという選択をすることもあります。しかし、そうすると将来的に変形することが考えられます。一般の方の場合は、半月板を温存できるのであれば温存して、必要なところを縫合するのが通常の治療方法になります。

Q. 一般の私たちが、普通の生活でそのような損傷を起こすことはあるのでしょうか?

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生A. それは少ないんじゃないかと思います。やはり運動ですとか仕事で関節にかかるストレスの多い人や、交通事故などが原因になると思います。けれども半月板損傷については、なかにはもともと外側の半月板の大きい方がおられます。20人に1人くらいの割合でいるといわれていますが、大きい分、ねじったりしなくても摩擦が大きくて、いずれ切れてしまいます。大きいなりにうまく適合していると、高齢になるまで症状の出ないこともありますが、早ければ10代以下の年齢で切れることもあります。

Q. 外側の半月板が大きい方で、半月板が切れてしまったケースでは、どのような治療になるのですか?

A. 通常は、大きい半月板を本来の大きさに削り、他の半月板損傷と同じように切れているところを縫うのですが、半月板には縫えない部分もあります。その時は半月板を多めに除去します。この場合はどうしても、関節を使っているうちにだんだん変形してきて、外側だけ傷んでしまうこともあります。

靭帯再建手術Q. 半月板損傷の場合は「縫合か、縫合困難な場所ならばそこを切除する」ということなのですね。靭帯損傷の場合はどうなのでしょう?

A. 靭帯損傷は、4本の靭帯のうちどの靭帯が切れたかによります。内側側副靭帯、外側側副靭帯は保存療法が基本です。関節をギプスやサポーター、テーピングなどで固定したり、ストレスのかかる動きをしないよう安静にしてもらったりすることで自然に癒着します。1ヵ月ほどで痛みも治まり、生活に大きな支障はありません。
後十字靭帯は切れたままでも運動ができることが多く、保存加療することが多いです。
前十字靭帯の場合は、私は再建手術をされるのが良いと思います。前十字靭帯も、運動選手などを除けば日常生活に与える影響は大きいものではありません。けれども、この靭帯は関節内の靭帯で、ちょうど吊り橋のように浮いています。吊り橋は一度切れると自然にはつながりませんよね。それと同じで切れたままで放置すると、不安定性が残り、膝くずれを繰り返しているうちに、ゆくゆく関節が変形する要因になりかねません。患者さんと相談しながらになりますが、ちゃんと手術で再建しておくのが良いと思います。

Q. では、軟骨損傷の場合は?

A. 程度や損傷のしかたによるのですが、軟骨だけが削れて欠損してしまっているときには、その範囲が大きい場合は軟骨移植ですね。膝関節内のあまり使わない部分から円柱状に骨軟骨柱を持ってきて移植します。軟骨細胞培養移植というのも臨床的に始まっています。これですと軟骨を少し取るだけで、専門のところで培養してもらえますから大きい損傷に向いています。ただし、軟骨細胞培養移植は施設基準の制限があって、どこの病院でも行えるものではありません。また、損傷した部分に小さな穴を空けてわざと出血させると、そこに患者さんの細胞がくっついて、軟骨に似たような成分で自然に埋まるので、そのような手術をすることもあります。

変形性膝関節症の治療法

Q. それでは変形性膝関節症について詳しくお聞きします。先ほどスポーツ選手の場合は、損傷が原因となることもあるとのことでしたが、一般の方の場合、最も多い原因は何なのでしょうか?

A. これは脚のアライメント、つまり姿形ですね。日本人の場合は関節の外側の変形に比べて内側の変形がずっと多いのですけど、これはO脚の方が多いからなんです。O脚は膝の内側に荷重がかかってしまいます。そのため普通に生活をしているだけでも、そちらにばかりストレスがかかって徐々に軟骨が傷み、少しずつ変形していきます。ですから60歳代とか70歳代とか、比較的高齢になって発症することが多くなります。

Q. 変形性膝関節症と診断されればすぐに手術をしたほうが良いのでしょうか?

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生A. 基本的には軽度のものに関しては、ヒアルロン酸の注射、脚の筋力のトレーニングなどの保存療法で痛みが改善すれば、手術を回避することができます。ただ変形そのものが良くなるわけではありません。痛みが改善しても、そのまま生活していると関節は変化していきます。それでなくてもO脚というのは関節が変形しているんです。少しでも軟骨の傷んでいる方は、その変形を直してあげることが良いと思います。これは私の個人的な考えなんですけど、なるべくなら「人工関節にする人を減らしたい」と思っています。つまり、人工関節を使わずに、ご自身の骨の変形を直すことで治療したいと考えているのです。

Q. その方法とは?

A. 高位脛骨骨切り術という方法があります。膝関節の近くで脛骨を切って、脚の形を正常に近づけます。O脚の方をX脚気味に矯正して真っ直ぐにします。そうすることで荷重も分散しますね。軟骨が少し傷んでいる、それくらい早い時期に手術をすると、そのまま軽い状態で保ってくれます。

右脚の正面図

具体的には、ある程度変形の進んだO脚の方に対して、まずは関節内の傷んだ部分である半月板などを掃除します。次に、軟骨がなくなっているところに穴を空けて軟骨に似た組織がくっつくような手術をします。あるいは軟骨移植もしたりします。でもそれだけでは同じところに体重がかかってまたすぐ軟骨が削れますから、次に骨切りの手術もします。
軟骨も再生できて、骨切りしたことで荷重が分散して内側の傷んだ部分が良くなり、ご自分の膝をずっと使っていくことができます。骨切り術をすることで、もとにかなり近い状態に戻すことができるのです。

Q. そうすれば人工関節手術を回避できるのでしょうか?

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生A. なかにはそれでも関節の変形が進んでしまい、最終的に人工関節手術ということもありますが、実際にはそういう方はあまりいらっしゃいません。万一そうなったとしても骨切り術のあとに人工関節手術は問題なくできます。しかし、最初の手術が人工関節の場合は、その人工関節がゆるんだりすると次の手立てはもう一度入れ直すしかありません。この人工関節の再置換術(さいちかんじゅつ)というのは技術的にも難しく、患者さんへの負担も大きくなります。ですから、早い対処で「できれば人工関節にはしない、人工関節手術をしても1回」ということを実現したいと思っています。

Q. 高位脛骨骨切り術は、どの年齢の方も受けることができますか?

A. 一般的には40歳くらいから70歳くらいまでが適応といわれていますが、今は手術自体が進歩していますし、ご高齢といってもお元気な方なら80歳でも骨切り術をされる方もあります。ただし、手術を行う条件として、膝関節の内側しか傷んでいないことがあります。

Q. それでは整理しますと、高位脛骨骨切り術と人工膝関節手術のメリット、デメリットはどういうことになりますか?

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生A. まず、人工膝関節手術は、重度の変形にも対応できる適応の幅が広い手術です。そして手術後は、なんといっても痛みが大幅に軽減し楽な生活を送れることがメリットです。神経のない人工物同士が当たるわけですから、その点では荷重による痛みはありません。人工関節と軟部組織の接触するところで少し痛みを感じられる方はありますけれども、それは少数です。耐用年数も20年かそれ以上になってきていますから、昔に比べれば適応の年齢も若くなっています。ただ、実際の骨に似せた形状の人工物ですから、しゃがむのが難しくなるとか、正座は避けたほうが良いとか、そういう動きの制限が出てきます。骨切り術では切った骨がくっついてさえくれれば、負荷に制限はありません。可動域(かどういき:関節が動く角度)も、ほぼもとに戻りますし、関節の中を掃除したりアライメントを調整したりもしますので、逆に以前より調子のよくなる方もいらっしゃいます。

Q. だからこそ「できる方には骨切り術」というのが先生のお考えなのですね。

A. できるならご自分の関節で一生過ごせるのが一番良いですよね。とはいえ、当院でも、変形性膝関節症では6割が人工膝関節手術です。私の気持ちとしては半数以上を骨切り術にしたいのですけど、やむをえない部分がありますね。ただ、私が問題だと思うのは、それほど変形は進んでいないのに、選択肢として人工膝関節手術しか一般的には示されていないことです。誰が診ても人工膝関節が良いだろうという場合はもちろんそれで良いのですが、骨切り術という選択肢のほうがその方には適しているだろうという場合もあります。たとえば高齢の方でも、どうしても農作業をしたいとおっしゃる場合、しゃがめないと困りますから、私は人工関節よりは骨切り術をお勧めするということがあります。

防護服Q. よくわかりました。では、合併症についてはいかがでしょうか?

A. 感染ということにつきましては、手術中には宇宙服のような装備(人工関節手術の場合のみ)でバイオクリーンルーム内で、清潔な環境を実現しています。また、抗菌剤の適切な投与などもして万全を期しています。当院では骨切り術では感染の発生は今のところなく、人工膝関節でも1%を切っています。血栓では、骨切り術でも人工膝関節手術でも、血栓をできにくくするお薬を予防的に投与しています。体を動かすので、早期のリハビリも血栓を防ぐために有効ですね。

Q. 話は変わりますが、どうして先生は整形外科医になることを選ばれたのですか?

A. 私自身もサッカーをやっていましたから、もともと運動器に興味がありました。また学生時代に肩の手術を受けたこともあってこの道を選びました。なかでも膝を選んだのは、スポーツ外傷の中で一番多い部位だからです。今は足と肩の関節も専門としてやっています。

藤枝市立総合病院 阿部 雅志 先生Q. 特に思い出に残っている症例や患者さんはおられますか?

A. サッカーのエスパルスの熱烈なファンの方が、ホームスタジアムの階段がかなり急で痛くて昇り降りができないということで、手術を受けたいといってこられました。変形がかなり進んでいましてね、骨切り術はギリギリの線かなと思ったのですが、座ったりしゃがんだり、応援しているからつい跳ねたりされることがあるので、ご相談の上で骨切り術にしましょうということになりました。それで手術後、以前と変わりなく存分に応援ができているというので大変喜んでいただけたことがあります。
あと、片方の膝を人工関節、片方を骨切り術にした方がいます。片方は変形が強くて人工関節にしました。もう片方もかなり悪かったのですが、なんとか外側の軟骨が残っていましたので骨切り術をしました。50歳代後半の方でしたけれども、骨切り術にしたほうの膝も条件としては良くなかったので、人工関節のほうが具合が良いのでないかと予想していたのですが、ご本人は「骨切りしたほうが調子が良い」とおっしゃられました。骨切り術のほうが膝がよく曲がりますからね。そういう事例があったものですから、やはり骨切り術も良い手術だと、特に最近になり強く意識するようになりました。

Q. ありがとうございました。この機会に、人工膝関節手術と骨切り術という選択肢があり、どちらにも優れた良い点があることを知っていただきたいですね。

A. ええ、本当にそう思います。骨切り術というのは実は昔からある手術なんです。ただ、今は内側を三角形に開いて固定するのが一般的ですが、かつては外側の骨を抜いて閉じるという方法で、骨の付きが悪かったり麻痺が出たりなどの合併症が報告されていました。現在はそれも改善して、良い成績が得られる手術です。人工膝関節とともにそういう手術があることを、まずは知っていただくことが大切だろうと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

阿部 雅志 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2014.10.28

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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