先生があなたに伝えたいこと / 【上野 正喜】ひとつの治療法や手技にこだわらず、できるだけたくさんの選択肢を用意し、患者さんごとにベストな治療法を提示します。

先生があなたに伝えたいこと

【上野 正喜】ひとつの治療法や手技にこだわらず、できるだけたくさんの選択肢を用意し、患者さんごとにベストな治療法を提示します。

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院
うえの  まさき
上野 正喜 先生
専門:脊椎脊髄

上野先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 やはり世界情勢が気になります。

2.休日には何をして過ごしますか?
 子どもとテレビゲームをして遊んでいます。私が好きなんです(笑)。

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先生からのメッセージ

ひとつの治療法や手技にこだわらず、できるだけたくさんの選択肢を用意し、患者さんごとにベストな治療法を提示します。

Q. 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)についてお伺いします。まず、この2つの疾患にはどのような関連があるのでしょうか?

脊椎圧迫骨折A. 脊椎圧迫骨折の主な原因が骨粗鬆症です。骨粗鬆症で骨がもろくなっていると、体重を支えきれずに椎体(ついたい)が折れたり潰れたりしてしまい、これを脊椎圧迫骨折と呼んでいます。自然に折れることもあれば、尻もちや寝返り、くしゃみなど何気ないことで折れてしまうこともあります。日本では現在、4人に1人が高齢者です。高齢者の身体にはさまざまな問題が生じますが、骨粗鬆症もそのひとつです。たとえば80歳代の女性では、検査をしなくても半数以上が骨粗鬆症だろうといわれています。そのうち実際に治療が行われているのはわずか2割から3割ですので、高齢者の脊椎圧迫骨折のリスクは高いといえます。閉経後の50歳代からそのリスクが高まることがわかっています。

Q. 自然に折れたりごく弱い衝撃で折れることもあるとのことですが、折れた瞬間に痛みを感じるのでしょうか?

A. 実は、6割程度の人は痛みを感じないのです。だから「いつの間にか骨折」ともいわれます。痛みはないけれども背中が曲がってきたというので病院に来られ、レントゲンを撮って脊椎圧迫骨折だと判明することもあります。

Q. リスクを下げるためにも骨粗鬆症の予防、治療はきちんと受けたいものですね。では、脊椎圧迫骨折の治療について教えてださい。

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生A. 基本となるのは保存療法で、2週間程度の安静、痛み止めの服用、コルセットの装着が治療の三本柱となります。長期に安静にしていれば骨がしっかり固まり、それ以上潰れないようになるのですが、高齢者はあまり長く寝ていると足腰が弱くなってしまうので注意が必要です。2週間程度の安静で、ある程度痛みが治まったところで起きてもらうしかないのです。起きればやはり少し脊骨は潰れてしまいますが、ある程度のところで潰れが止まってくれれば、痛みのない状態になります。このとき潰れた背骨は元通りにならず、後弯(こうわん:背骨が前かがみに曲がること)は残ってしまうことがありますが、9割ほどの患者さんは、このように痛みの治まった状態にできます。しかし、およそ1割ほどの方は、数か月待っても骨が固まらない、遷延癒合(せんえんゆごう)や癒合偽関節(ぎかんせつ)と呼ばれる状態となります。この場合、骨折部がずっと動いていることで、椎体後壁(ついたいこうへき)の損傷が加わると、神経の通り道に骨が飛び出て神経を圧迫することで起こる麻痺、遅発性神経麻痺(ちはつせいしんけいまひ)へと進展してしまう恐れがあります。この状態になると、除圧固定術(じょあつこていじゅつ)という高齢者の身体に負担の大きな手術が必要になってしまうので、それを防ぐためにケースに応じてBKP(Balloon Kyphoplasty:バルーン・カイフォプラスティ)による介入が望ましいと考えます。BKPなら侵襲の少ない方法で、痛みをとったり、圧潰の進行を予防することも可能です。

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生Q. BKPの介入が望ましいケースとは?

A. 保存療法を行っても強い痛みが続いて長期の安静が必要となりそうなケースや、痛みがそれほど強くなくても急速に骨が潰れてくるようなケースです。折れて間もない段階でもMRIで診断すれば、保存療法で痛みを取ることができそうかどうか、ある程度は判断ができますので、保存療法で効果がなさそうな方にはBKPをお勧めします。手術ということで尻込みされてしまうことも少なくありませんが、進行してより負担の大きい除圧固定術の適応とならないためにも、BKPで済むタイミングを逃さないようにしていただきたいと思います。また、保存療法で痛みが軽くなっても、潰れが進行してくると背中が曲がってくることになります。気にされる場合にはBKPをお勧めすることもあります。背骨をできるだけ変形させないで治すことは、次の新しい骨折を予防することにもなるのです。

Q. BKPについてもっと詳しく教えてください。

A. BKPは欧米では1990年代から行われていましたが、日本では2005年に治験が始まり、2011年から保険適用となった新しい手術法です。近年、急速に広がったとはいえ、特別なライセンスを持つ医師しか手術ができないので、この手術を受けられる病院はまだそんなに多くありません。ちなみに当院では年間100例近く行っています。この方法は全身麻酔が必要ですが、切開が5mm程度と非常に低侵襲です。背中側に左右1ヵ所ずつ切開し、太い針のような筒形の器具を骨の中に挿入します。その筒を通して先端にバルーン(風船)を付けた管状の器具(バルーンカテーテル)を刺し入れて、骨の中でその風船を膨らませます。風船の膨らむ力によって潰れている骨の形をある程度もどすことができます。風船を抜いたあとにできた空洞にペースト状の骨セメントを注入し、15分程度でセメントが固まったら手術は終了です。

BKP

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生Q. 15分で固まるとは早いですね。

A. 手術自体も30分程度です。傷もテープで留めるだけです。術後の痛みもほぼありませんし、麻酔が覚めて3時間もすれば普通に起きられます。そして翌日には退院ですから2泊3日の手術です。

Q. 身体への負担が本当に少ないのですね。複数ヵ所骨折している場合でもBKPが可能なのでしょうか?

A. 可能ですが、日本では保険適用の範囲では1手術1椎体までと決められていますので、数日あけて複数回の手術を繰り返していただくことになります。

脊椎疾患用コルセットQ. 退院後はすぐに普通の生活に戻れますか?

A. 大丈夫です。ただし、コルセットを3ヵ月は装着していただきます。手術した所はセメントで固まっているのでもう骨折する心配はないのですが、他の骨に新しい骨折を起こす可能性があるためです。続発性骨折といいます。発生率は20%ほどと言われています。もともと手術をしなかった場合でも1ヵ所の圧迫骨折を経験した方は、その後1年以内に新しい骨折を起こす確率は15%ほどあり、2ヵ所の場合は21%、3ヵ所では24%以上と上がっていきます。つまり、BKPによって骨折が治っても、骨粗鬆症によって骨が折れやすいという状態は治っているわけではないということです。そのため、手術後はコルセットで固定して骨折しやすい体勢を取らないようにし、同時に骨粗鬆症の治療をしていく必要があります。当院では強力な骨粗鬆症の薬であるPTH製剤を使っています。3ヵ月というのはこのPTH製剤が効いてくる最短の期間なのです。

Q. 患者さんご自身が、続発性骨折を防ぐために心がけたほうが良いことはあるのでしょうか?

A. 最近の当院の研究で、理学療法士によるリハビリの指導が続発性骨折の確率を引き下げることがわかってきました。当院では、まずベッドや布団からの起床動作を指導します。正面から腹筋を使って起きるのではなくて、布団から外に手を出して、横から手の力で起きるのです。それから背筋を鍛える運動を指導します。これを家でも継続していただくことで、今では当院における続発性骨折の確率は2%にまで下がりました。

除圧固定術の例Q. 次に、除圧固定術とはどのような手術なのでしょうか?

A. 脊椎圧迫骨折後の遅発性神経麻痺では従来から行われているオーソドックスな手術法です。後壁を損傷すると骨が神経の通り道に飛び出し、神経を圧迫しますので、背中側の骨を削って圧迫を取り除き、その骨の上下2ヵ所にチタン合金製のスクリュー(ネジ)を挿入し、スクリュー間にロッドを渡して固定し、周囲に自家骨(削った自分の骨)を移植します。もし、保存療法で経過を見ているうちに遅発性神経麻痺が発生した場合は、速やかに除圧固定術を行わないと、立位が不能になったり、膀胱直腸障害が残ったりするケースも少なくありません。

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生Q. BKPに比べると負担が大きいとのことでしたが、具体的にはどの程度大きいのでしょうか?

A. 手術時間は3時間ほどになり、出血も400ccほどになります。しかし、器械や薬の進歩などで手術成績は以前に比べてずいぶん良くなりました。手術成績はスクリューのゆるみに大きく左右されるのですが、当院ではスクリューの留め方を工夫してゆるみを防止することや、術前からPTH製剤を使用して骨の強度を上げることで、スクリューをゆるみにくくしています。今では90歳、100歳の方でも手術を受けられるようになってきました。

医療法人社団 慶泉会 町田慶泉病院 上野 正喜 先生Q. 治療後も骨粗鬆症の治療は必要なのですね。

A. PTH製剤によって骨密度を正常値まで持っていくことさえも可能となってきました。そうするともう骨粗鬆症ではなくなります。しかし、その後も弱いお薬で様子を見ながら、運動や食事に気をつけて、BKPにおける続発性の骨折や除圧固定術におけるスクリューのゆるみのリスクに備えてほしいと思います。

Q. ありがとうございました。最後に治療にあたっての先生のモットーをお聞かせください。

A. ひとつの治療法や手技にこだわらず、できるだけたくさんの選択肢を用意し、患者さんごとにベストな治療法を提示することです。

取材日:2017.5.23

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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