先生があなたに伝えたいこと / 【徳永 邦彦】人工股関節を、術前計画通り正確な位置に入れることが重要です。そのためにナビゲーションシステムを活用しています。

先生があなたに伝えたいこと

【徳永 邦彦】人工股関節を、術前計画通り正確な位置に入れることが重要です。そのためにナビゲーションシステムを活用しています。

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生

亀田第一病院・新潟股関節センター
とくなが くにひこ
徳永 邦彦 先生
専門:人工股関節

徳永先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 大阪の橋下市長でしょうか。2011年には予想外の異変も起こってしまいましたが、世の中が大きく変わろうとしている、リーダーシップをとって導ける人はいないのかなと思っていたので、注視しています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 小学校5年のときからサッカーをやっていて、今も社会人チーム、病院のチーム、フットサルのチームに入って休日はサッカー三昧です。指導者資格を持っていますので、長年、小学生のチームのコーチもしていました。そのときコーチングの方法をいろいろ研究しましたから、今でも密かに、2時間あればチームを変える自信があります(笑)。

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先生からのメッセージ

人工股関節を、術前計画通り正確な位置に入れることが重要です。そのためにナビゲーションシステムを活用しています。

Q. 先生のご専門である人工股関節の手術についてお伺いしたいと思います。まず、最近よく耳にするMISとはどのような手術なのでしょうか。

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. MISは、日本語に訳すと最小侵襲手術といいますが、実はその定義は大変曖昧で、侵襲を小さくするとは何を意味するのか、考え方によって変わります。当初のMISは、皮膚の切開を最小に抑える手術として行われました。しかし筋肉への侵襲が大きければ意味がないということで、最近は、股関節を動かす筋肉への侵襲をいかに抑えるかという、できる限り筋肉を温存する手術を指すようになってきました。これにより術後、早期のリハビリテーションや退院が見込めるようになりました。一方で、中に入れる人工関節の形や大きさはそのままですから、骨を削る量が変わらないということで、侵襲を減らしていることにはならないという意見もあります。
ただし、データに基づきはっきりしているのは、二週目、三週目といった比較的早い時期の回復度合が、MISを受けた患者さんとそうでない患者さんとでは明らかに違うということです。たとえば、杖なしで歩けるまでの時間、退院して日常生活に復帰したり、社会復帰や職場復帰ができるようになるまでの時間は、圧倒的にMISをやった人のほうが早いですし、傷の痛みも軽いのです。

Q. なるほど。患者さんの早期回復が見込めるのですね。先生ご自身がMISを採用されているのもそのためですか?

A. ええ。やはり余計なところはできるだけ切らないほうがいいですし、患者さんがなるべく早く社会復帰できる環境を整えるには、MISはやるべきだと思っています。 けれども私の手術の最終的な目標は、「正確な位置に人工関節を入れる」こと。もしMISが、正確な位置に入れようとする手術の邪魔になるようなら、すなわち、そこの筋肉を切らないためにうまく関節の中が見えない、人工関節が最適の位置に置けないという場面に遭遇したら、躊躇(ちゅうちょ)なく筋肉を切除します。なぜかといえば、実際に人工関節を入れる時、骨の形や位置など、骨盤の全体像を見るのは非常に難しいんですね。骨盤に筋肉がかぶっていて脂肪があって、さらに皮膚がありますから。特に筋肉を温存するMISでは、骨盤のほんの一部分しか見えません。そのために、場合によっては正確に入れることができないことがあるのです。
私にとって、手術の優先事項のトップはMISではなく、「正確に入れる」ことです。人工股関節が正確に入れられない状況ならば、ただちにMISから離れます。そして、その正確さを追求するためにコンピュータを用いたナビゲーションシステムを活用しています。

Q. 正確な位置に入れるとは具体的にはどういうことなのでしょう。

A. 事前に計画した、人工関節の設置位置についての誤差を最小限に抑えるということです。人間わざでは、骨盤と人工股関節との間に、どうしても10度位の角度の誤差が出てしまいます。これによって、はずれやすい人工股関節になってしまうこともあるんです。

Q. ナビゲーションシステムを活用すると、設置角度の誤差はどの程度、抑えられるのですか?

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. 約350例についてデータを出したところ、誤差は3度程度でした。ナビゲーションなしの手術では5度の枠内に収めるのも容易ではありませんが、私の手術では85%位は達成していますので、これは驚異的な数字だと思いますよ。また、手術中にどうしても骨盤が動きますが、ナビゲーションを使えば、相手がどんなに動こうとも正確な位置へ誘導してくれます。カーナビのようなものですね。

Q. 大変有効な手段なのですね。手術前の計画について、もう少し詳しく教えてください。

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. 手術前の計画にあたっては、あらかじめ患者さんの患部のCTを撮ることから始まります。そのCT画像をナビゲーションシステムに取り込みますと、術前計画ソフトというのがあって、その画面上で人工関節手術をすることができます。すなわち、コンピュータを使って、「最適のサイズの人工関節を最適な位置に入れる」ことがシミュレートできるわけです。これを実際の手術で再現するんです。
ただ、簡単な症例ですと30分くらいで計画が立てられますが、たとえば非常に骨が変形していたり、再置換の場合で、反対側の足に人工関節が入っていて、CT画像がゆがんでしまうことがあります。このような難しい症例では、1症例に3時間かけて計画を立てることもあります。特に、当センターには新潟だけではなくて隣県からもたくさん患者さんが来られ、中には難しい症例の患者さんも少なくありませんから、その場合はああでもない、こうでもないと時間をかけて計画を立てます。詳細に、慎重に計画を立てることにより、実際の手術を非常にスムーズに行うことができます。なぜなら、1回見たことのある光景で手術をしますので、やりやすいですし、間違わないで予定通りのことができるから・・・これはすごく大事なことです。

CTスキャナー 術前計画ソフト

Q. では、実際の手術では、ナビゲーションシステムはどのように使われるのでしょう。

ナビゲーションシステムイメージA. 先ほどカーナビといいましたが、この場合、ナビゲーションシステムが衛星、骨盤が地球、手術道具がクルマに置き換えられます。まず、骨盤や大腿骨と手術道具すべてにアンテナを立てます。アンテナには赤外線を反射するボールがついていて、ナビゲーションシステムから発せられた赤外線を反射して、カメラがキャッチし、コンピュータに情報が送られ、骨と手術器具の距離や角度が、画像と数字で画面上に正確に表示されます。あらかじめコンピュータに読み込まれた患者さんの骨盤モデルを基に、器具がその骨盤に対して何度傾いているかなどを教えてくれ、骨盤側の受け口(寛骨臼:かんこつきゅう)に人工股関節を固定するためのカップと人工関節を正しい位置に入れることができるのです。寛骨臼を削る深さも、足りなければマイナス表示で"あと何mm削りなさい"と教えれてくれます。

ナビゲーション操作

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

Q. よいことばかりのようですが、デメリットもあるのでしょうか。

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. 手術の際、位置合わせに余計な時間がかかること。コンピュータの中の骨のモデルと患者さんそのものの骨の位置、またコンピュータ内のツールと本物のツールとをぴったり合わせなければ正確な作業はできませんから。位置合わせには骨盤側と大腿骨側でそれぞれ10分程度が必要ですが、私は20分であれば臨床上問題ないと思っています。現に出血量も感染率もきわめて低く問題ない程度です。20分を失ってでもナビゲーションシステムを使って、3度の誤差を選びたいのです。
あとはアンテナを立てるために余計な傷が必要になること。骨盤に2本、大腿骨に2本、直径4mmのピンをさします。皮膚を5~7mm切り、骨の中にこれを埋めますが、私が今まで900関節以上行ってきた中で、痛みなどのトラブルが出たのは初期の頃に1例のみです。それ以来、ピンの位置を変えることでトラブルは発生していませんし、技術的に問題なければピンが悪さをすることはないに等しいと思っています。
このような観点から、私は2004年以降、ほぼ全例にナビゲーションを使っています。

Q. どんな場合でも、ナビゲーションを使った方がよいということですか?

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. もちろん、ナビゲーションを使わなくてもよいような軽い症例もあります。しかし私がほぼ全例で使うのには、大きく3つの理由があるんです。ひとつは、日頃から活用しナビゲーションの深いところまで理解しておかないと、「本当に必要なときに使いこなせない」ということです。これまで、ほぼ全例やってきてピットホール(落とし穴)が全部読めるので、新しいミスはしなくなってきました。ふたつに、「高い技術と経験が必要な骨切り術に応用するため」です。これは当初から考えていたことですが、ナビゲーションを使えば、初めて骨切り術をする先生も上手に手術をすることが可能になるのではないかということです。幸いにも最近、骨切り術に使えるナビゲーションが出てきましたので、当センターでも使い始めています。実際に骨切り術で使うとき、人工関節手術で日頃から使いこなせていれば、精度の高い操作ができるということです。最後に、ナビゲーションを使いこなすと、「ナビゲーションがない時も、とても正確な手術ができる」ということです。つまり、骨盤の位置、体の位置を見ただけで、人工関節をどこに入れなければならないのかが感覚でわかるようになります。これは、教育ツールとしても優れているということですね。これから人工関節をやっていく若い先生たちに、感覚的に覚えてもらう。ですから、「まず何も見ないでやってみなさい」と指導します。自分であらゆる方法を使って正しいと思う位置に入れてみて、正確な位置を体で覚えさせるのです。これは私にもあてはまって、感覚的に正確だと思う位置が、時にはコンピュータとぴったり合うこともありますよ。

Q. 骨切り術というお話が出ましたが、それはどのような患者さんに適用されるのですか?

A. 骨切り術はご本人の骨と軟骨を残す手術ですので、まず「骨の変形が少ないこと」が第一条件です。また、軟骨が削れてしまうとすぐに人工関節になりますので、そうならないよう「軟骨の程度がいいこと」、そして、骨切り術は骨の向きを変えることで足の動きが多少悪くなりますから、手術前の「足の動きがいいこと」の3つの条件が必要になります。ただし現在では、人工股関節の術後の動き、回復の程度、患者さんの満足度などがかなり高いですから、私は、絶対に成功するという患者さんに対してのみ、骨切り術を行うようにしています。

Q. ありがとうございました。先生のお話から、ナビゲーションシステムを使う手術は、患者さんにとって大きなメリットのあることがわかりました。

亀田第一病院・新潟股関節センター 徳永 邦彦 先生A. はい、私はそのように確信しています。一方でナビゲーションシステムは、先ほど申しました、プラスアルファの作業が必要になってきます。そこに縛られたくないと考えられる先生も、もちろんおられるでしょう。けれども私は、「自分自身は縛り、患者さんをフリーに」という信念を持っています。ナビゲーションシステムを活用し正確に人工股関節が入れば、術後、正座もできますし和式トイレも使えます。一部を除いてポーツも可能。あれはだめ、これはだめと患者さんを縛りたくない、また縛らなくてもいいための手術。それこそがナビゲーションを使った手術ということを、ぜひ知っていただきたいと思います。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

徳永 邦彦 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

インタビューを終えて

「自分を縛っても患者さんをフリーに」。その熱い思いがひしひしと伝わってくるインタビューでした。プライベートで子ども達にサッカーを教えていたときは、膨大な情報を収集し、まとめ、ご自分なりの指導法を考案されていたという先生。それは、正確な手術を追求し続ける、整形外科医としての先生の姿とも重なります。

取材日:2012.2.15

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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