先生があなたに伝えたいこと / 【田中 伸明】関節が痛いというのはとてもつらいものです。痛みを取ることができれば、歩ける、スポーツができる、旅行もできる。日常生活や人生そのものを前向きに楽しんでほしいと思っています。

先生があなたに伝えたいこと

【田中 伸明】関節が痛いというのはとてもつらいものです。痛みを取ることができれば、歩ける、スポーツができる、旅行もできる。日常生活や人生そのものを前向きに楽しんでほしいと思っています。

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生

医療法人 豊仁会 三井病院
たなか のぶあき
田中 伸明 先生
専門:人工股関節人工膝関節

田中先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 アメリカ大統領もトランプに決まりましたし、今は今後の世界情勢が気になります。

2.休日には何をして過ごしますか?
 妻と旅行したり、飼っているチワワと遊んだりするのが楽しみです。あと、やはり体が資本なので、定期的にジムでトレーニングをしています。

先生からのメッセージ

関節が痛いというのはとてもつらいものです。痛みを取ることができれば、歩ける、スポーツができる、旅行もできる。日常生活や人生そのものを前向きに楽しんでほしいと思っています。

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生Q. 人工関節センターの特長とは何でしょうか?

A. 人工関節を専門としている医師やスタッフを集めて、安全に最新の治療を提供できるようにするのが人工関節センターです。当院では私を含め、大学で約1,000例の手術を経験した医師が在籍して治療に当たっています。人工関節センターといっても基本的には整形外科ですから、患者さんの痛みに対しては関節以外の原因も視野に入れて幅広く診察することも怠りません。
また、医療はチームで行うものですから、ここには看護師やリハビリスタッフなど、専門知識が豊富なメディカルスタッフが集まっています。診察から手術、リハビリや生活指導までを一貫してスムーズに行うことができるのが人工関節センターの特長です。

Q. 次に、先生のご専門である股関節、膝関節の主な疾患について教えてください。

A. まず股関節で最も多いのは変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。股関節は毎日動くところなので、年齢とともに徐々に軟骨が摩耗して変形していきます。次に多いのは大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)です。大腿骨頭という、太ももの付け根にある球状の骨が腐って壊れてしまう病気です。ステロイドという薬が原因になることが多く、膠原病(こうげんびょう)やリウマチなどステロイドを大量に使う病気の方によく見られます。また、お酒、アルコールの過剰摂取が原因になることもあります。
膝についても、年齢を重ねるごとに軟骨が摩耗して変形していく変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)が最も多いです。

変形性股関節症

大腿骨頭壊死症

変形性膝関節症

水中歩行 イラストQ. そういった疾患で関節が痛む場合、やはり手術が必要なのでしょうか?

A. いいえ、基本的には手術を考える前に保存治療を行います。保存治療とは、薬(内服薬、外用薬、注射)や運動などで痛みを和らげる治療のことです。基本的に膝関節でも股関節でも同じことを行いますが、注射は膝関節と股関節で内容が少し変わります。膝関節の場合、痛み止め、炎症止め、ヒアルロン酸を混ぜたものを関節内に直接投与します。ヒアルロン酸には潤滑作用があり、膝の動きをスムーズにしてくれるほか、軟骨や骨の摩耗を軽減してくれます。一方、股関節では関節内にヒアルロン酸を入れるのは難しく、痛み止めと炎症止めのみになることがほとんどです。炎症止めはステロイドなので、大腿骨頭壊死症の患者さんには使いません。
薬で痛みを取ることはできても、根本的な原因を取り除くことはできません。関節の変形が進むのを防ぐには、筋力を鍛え体軸のバランスを整えることが必要です。したがって、水中歩行などの筋肉トレーニングやストレッチなどの運動がとても大切なんです。体重を減らすことも関節への負担を減らすことになるので、運動は積極的に行ってほしいです。

Q. では、どのような場合に手術が必要になるのでしょうか? また、手術には人工関節以外の方法もあるのでしょうか?

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生A. 保存治療を行っても痛みが取れない、変形が進むといった場合には手術を考えます。ただし、悪くなっているからすぐ手術というわけではなく、レントゲン画像や患者さんの年齢、生活スタイルなどによって慎重に考えます。痛みがひどくて歩けない、眠れないなど日常生活に支障を来している場合は積極的に手術を勧めます。
変形や破壊の程度や年齢によって、手術方法には選択肢があります。人工関節以外だと、摩耗して毛羽立った状態の軟骨を滑らかにする関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)、膝の骨を切って関節の向きを調整する高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)などがあります。
人工関節でも股関節の場合、人工骨頭手術(じんこうこっとうしゅじゅつ)など、関節内の一部分だけを人工のものに置き換える場合があります。

高位脛骨骨切り術(HTO)

Q. 人工骨頭手術というのはどのような手術ですか?

A. 人工骨頭手術は、主に大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)の場合に行う治療法です。70代以上の高齢の方に多いのですが、転倒などの際に股関節内の骨が折れてしまうことがあります。股関節内は血流が少なく栄養が行き渡らないため、他の骨のようにネジやプレートで固定しても自然治癒する可能性が低くなります。そこで、折れた部分と骨頭を取り除き、人工のものと置き換えるという方法です。

人工骨頭置換術

人工骨頭置換術

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生Q. 骨頭を取り換えるということは、骨頭部が壊れてしまう大腿骨頭壊死症にもできる手術でしょうか?

A. そうですね。骨頭だけが壊れているのであれば適用できます。しかし、大腿骨頭壊死症の場合、変形が骨頭の受け皿である臼蓋(きゅうがい)にまで及ぶことがあります。そうなると骨頭だけを変えても意味がないので、人工股関節に置き換えることになります。

Q. よくわかりました。次に、こちらで行われている人工股関節手術の特徴についてお聞かせください。

A. 人工関節の手術には、後ろ側から行う後方アプローチと、前側から行う前方アプローチとがあります。従来は後方アプローチが主流でしたが、後方からだと大臀筋(だいでんきん)などの大きな筋肉や腱を切る必要があり、手術後に後ろ側に脱臼しやすくなるという問題がありました。また、切る部分が多いことで傷の回復が遅くなり、入院期間も長くなります。そこで当院では、体の前側から筋肉を切らずに手術する方法(前方アプローチ)を採用しています。もちろん、ケースによっては後方から行うこともあり、どちらにも対応可能です。
また、なるべく傷を小さくするMIS(最小侵襲手術)を採用し、なるべく患者さんの負担を軽減するように努めています。

筋肉をよけて股関節に到達する前側方アプローチ(OCM)

筋肉をよけて股関節に到達する前側方アプローチ(OCM)

Q. 傷が小さいということは、感染症のリスクも軽減されるのでは?

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生A. そのとおりです。人工関節手術による合併症で、私が一番怖いと考えているのが感染症です。感染症を起こすと入院期間も長くなりますし、最悪の場合、脚を切断しなくてはならないこともあります。感染症を防ぐには、なるべく組織を傷めないために傷を小さくすることが大切です。そして手術時間を短くすることも重要です。外気に触れる時間が長いほど感染のリスクは高まりますから。傷を最小限に抑え、最短時間で手術を行うために、しっかりと術前計画を立てています。

Q. 入念な術前計画が大切なのですね。ちなみに、感染症を起こしやすいのはどんな方ですか?

A. 糖尿病の方はリスクが高いので、術前、術後のコントロールが非常に重要です。あと、理由ははっきりしていないのですが、2回目の手術を受けられる方も感染症リスクが高いという統計結果があります。

体重 イラストQ. 術前コントロールといえば、体重も手術に影響しますか?

A. やはり脂肪が多いと手術しづらいので、なるべく減量してほしいと思います。しかし、痛くて歩けないような方に「運動しろ」ということはできませんし、動けないことで代謝が落ちているので食事制限もあまり効果がありません。まずは手術で痛みを取り、徐々に運動できるようになれば良いのではと思います。

医療法人 豊仁会 三井病院 田中 伸明 先生Q. ありがとうございました。最後に、先生が整形外科医を目指されたきっかけをお聞かせください。

A. 私が高校生のとき、母が人工股関節の手術を受けました。それまで痛みで歩くのもやっとだった母が歩けるようになり、運動も旅行もできるようになるのを目の当たりにし、「私も人の痛みを取り除けるようになりたい」と医師を目指しました。手術を受けて歩けるようになった患者さんを見るたびに、心からうれしいと感じています。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

田中 伸明 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2016.8.25

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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