先生があなたに伝えたいこと / 【市丸 宏三】関節に痛みがあると次第に筋力が低下し、身体全体に影響をもたらします。痛みの原因を探り、効果のある治療法を選択することが大切です。

先生があなたに伝えたいこと

【市丸 宏三】関節に痛みがあると次第に筋力が低下し、身体全体に影響をもたらします。痛みの原因を探り、効果のある治療法を選択することが大切です。

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生

いちまる整形外科クリニック
いちまる こうぞう
市丸 宏三 先生
専門:股関節膝関節PRP療法

股関節・膝関節についてはこちらもご覧ください。

市丸先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 もともと多趣味なのですが、最近は子どもと一緒に、魚や小鳥、イモリなどの生き物の飼育に熱中しています。子どもがさまざまな生き物に興味を持てるよう、同じ目線で飼育を楽しんでいます。

2.休日には何をして過ごしますか?
 どんなに多忙であっても、運動は欠かさないようにしています。フルマラソンの大会にいつも出場しているので、現役を貫けるよう日々トレーニングに励んでいます。運動をすると仕事にも生活にもハリが出ます!

先生からのメッセージ

関節に痛みがあると次第に筋力が低下し、身体全体に影響をもたらします。痛みの原因を探り、効果のある治療法を選択することが大切です。

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. 股関節や膝関節の痛みはどのようにして起こるのですか?

A. 長年、股関節や膝関節に負担がかかり続けると、関節の軟骨がすり減って骨同士がぶつかります。それによって痛みが起き、痛みが続くと徐々に力を入れられなくなります。次第に筋肉が痩せていって関節を支える力が弱まり、さらに軟骨に負担がかかるというような悪循環が起きます。そうした加齢によってもたらされる痛みもあれば、若くても運動不足の方、または筋力が乏しい肥満の方なども、関節の軟骨に負担がかかって痛みが出る場合もあります。
しかし、体重の重い方はそれを支える筋力が備わっていることが多く、そのせいで痛まないこともありますし、逆に体重の軽い方は筋肉量が少ないせいで、関節を支える力が弱く、痛みを感じる場合もあります。また、高齢の方の場合も、一般的に加齢による筋力低下で自然に痛みが出てきますが、活動量が減るので、かえって痛みが軽減することもあります。つまり、一概に関節の痛みの原因は、年齢や体重などによるとは言い切れず、活動量や筋肉量などとも関係していて、とても複雑なのです。

Q. 医療機関を受診すべきかどうか、判断する目安はありますか?

A. 痛みを感じたら、一度受診して検査されることをお勧めします。レントゲンを撮って、骨の形態に異常がないかということを確かめておくことが重要です。痛みが長く続くようであれば、骨だけではなく体内の状態を撮影できるMRIなどの検査も必要になります。

Q. どのように診断されるのですか?

A. 画像による診断を行います。膝関節の中でクッションの役割をする半月板が傷んでいる場合は半月板損傷、膝関節や股関節の軟骨がすり減って骨が変形している場合は、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)となります。ただし、これらはあくまでも診断名に過ぎず、一概に骨の損傷が痛みを引き起こしているとは言い切れません。筋肉が硬くなることが原因で、膝関節や股関節の痛みが生じている方も多くいらっしゃいます。

変形性膝関節症

変形性股関節症

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. 画像診断では、痛みの原因はわからないということですね?

A. レントゲン画像で骨と骨の間に本来あるべき隙間(軟骨)が見られず、明らかに骨が変形していれば、そこから痛みが出ているケースが多いです。しかし実際のレントゲン画像は、それほど単純なものではありません。そのため、どのあたりがどのように痛むのか、ということを患者さんにお聞きし、触診し、痛みが和らぐ方法を一緒に考えて、試行錯誤しながら痛みの元を探っていきます。そこが医師の腕の見せ所でもあると思います。

Q. どのような治療になりますか?

A. 一般的に最初の治療として、鎮痛薬を服用していただいたり、痛み止めの成分が含まれる湿布剤を患部に貼っていただきます。また、痛みは温めると和らぐことが多いので、温めて血行を促進し、軟部組織を柔らかくします。膝関節であれば、軟骨を保護する働きのあるヒアルロン酸を関節内に注射することもあります。
痛みが治まってきたら、運動も行います。痛みのせいで動かさないことによって筋力は落ちるので、筋力トレーニングを行います。筋トレをされたことのある方ならご存知かと思いますが、筋肉をつけるには栄養を摂取することが重要になります。特にご高齢の方は、食事が十分に足りていない方が多く、そうした状態でトレーニングをしても効果はありません。そのため当院では、食事を含めた運動指導を行っています。また、診断によって外科的な手術で改善が見込める場合は、ご本人の希望があれば手術の選択肢もご提案します。

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. どのような手術ですか?

A. 膝関節の半月板の損傷であれば、関節鏡視下手術(かんせつきょうしかしゅじゅつ)を行います。関節鏡というカメラで関節内を確認しながら、半月板の傷んだ部分を切除します。また、骨を切って関節の形態を正常に近づける骨切り術、人工の関節に入れ換える人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)などの手術もあります。人工関節は除痛効果が高く、術後のリハビリもしやすいので、満足度の高い治療だと思います。

Q. こちらの病院で取り入れられている、PRP療法について教えてください。

A. 切り傷などは出血してかさぶたができ、自然に治癒しますよね。それは、血液の中には血小板があり、それが組織の修復や抗炎症作用を促す成長因子を出しているからです。その成分を高濃度に凝縮し活性化させたものが、PRPと呼ばれる多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう:Platelet-Rich Plasma)です。
この治療法は、まずは患者さん自身の血液を採取し、それを遠心分離機で分離して血小板を濃縮し、患部に投与します。海外では以前から行われていた療法です。最近はPRP療法の器械が進歩し、日本の医療機関でも取り扱いやすくなったため、自由診療(保険適用外)として取り入れる施設が増えてきています。

PRP療法イメージ図

PRP療法イメージ図

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. この療法のメリットを教えてください。

A. 外科的な手術は身体の構造を変える治療ですが、PRP療法は患者さんご自身が持つ自然治癒力で痛みを和らげることが期待できる治療法です。特に高齢の患者さんは、手術となると体力面の不安をともない、術後のリハビリに時間がかかる場合もあります。PRP療法なら、身体にかかる負担が少ないうえ、ご自身の血液を使うので副作用が起きにくいと考えられており、複数回受けるケースもあります。
また、この療法であまり効果がみられなかった場合は手術を選択するという、二段構えで治療に臨むことができ、患者さんの選択肢が広がります。
ほかには、主に若い方で人工関節の手術を先延ばしにする目的でこの治療を受けられるケースもあります。痛みを我慢しながら時間を稼ぐのは身体に良くありませんが、PRP療法で痛みを軽減し、身体を動かしながら手術を先延ばしにするのは、症状が重度でなければ理想的だといえます。

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. 印象に残っている症例はありますか?

A. 人工膝関節の手術を検討していた患者さんが、PRP療法を受けられると痛みが落ち着かれ、手術を回避できたケースがありました。また、一度目の投与では若干痛みが和らぐ程度で、二度目に、より痛みが軽減されたと感じられる方も多いです。
痛みが落ち着くメカニズムは、血小板が放出する成長因子が治癒能力を引き出すことによるのですが、白血球による消炎効果など、別の要因も考えられるのではないかと思います。また早期に痛みがとれる方が多く、早く動けるようになるので筋力もついてきます。よい意味で理屈通りにならない治療法ですが、そもそも医療というのは理屈通りにはいかない面があり、患者さんに満足していただけることが何よりも大切だと思います。

診断 イラストQ. 関節の痛みに対する治療において、先生が心がけておられることを教えてください。

A. 痛みの原因を探るために、患者さんのお話をじっくりお聞きすることを心がけています。患者さんのお話には、痛みの原因のヒントが隠れていることもあり、それが正確な診断につながると考えています。患者さんにとっても、痛みの悩みをすべて吐き出したうえで治療に臨むほうが、納得していただけるのではないかと思います。

いちまる整形外科クリニック 市丸 宏三 先生Q. 痛みを抱える方に伝えたいことはありますか?

A. 人間は本来、動く動物なので、運動量が落ちると健康が維持しにくくなります。しかし、痛みがあると身体を動かすことができず、筋力が低下し、足腰は弱まります。体重も増えますし、痛みによって血圧が上がって心臓に負担がかかることもあります。そのため、まずは医療機関を受診して痛みを和らげることが大切です。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

市丸 宏三 先生からのメッセージ

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リモート取材日:2021.6.28

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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