先生があなたに伝えたいこと / 【柳本 繁】人工股関節の耐用年数が延び、手術のリスクも低減したことで、年齢による手術制限はなくなりつつあります。

先生があなたに伝えたいこと

【柳本 繁】人工股関節の耐用年数が延び、手術のリスクも低減したことで、年齢による手術制限はなくなりつつあります。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生

東京都済生会中央病院
やなぎもと しげる
柳本 繁 先生
専門:人工股関節

柳本先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 ペットのヨークシャテリアと一緒に過ごすことが楽しみです。また娘が舞台に出ていることもあって、舞台、特にミュージカルをよく観に行きますね。あと、最新のコンピュータ支援技術を国内外の学会で発表することも楽しみです。ドイツ、フランス、イタリアなどで開催される国際学会で、ナビゲーション技術の発表をしていますが、現地を訪れることと、様々な人のコメントを聞いてディスカッションすることを楽しんでいます。

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先生からのメッセージ

人工股関節の耐用年数が延び、手術のリスクも低減したことで、年齢による手術制限はなくなりつつあります。

Q. 今回は、人工股関節手術における、医療現場での最新状況のお話しをお伺いします。まず、人工股関節手術の成績は昔に比べて向上しているのでしょうか?

A. はい。明らかに人工股関節の成績は向上しています。また、そのよい成績が長期間続き、従来一番の問題であった人工股関節の耐用年数も向上しています。

Q. 「よい成績」とは具体的にはどういう状態でしょうか?

A. 痛みが確実に軽快すること。またリハビリを行うことで、上手に歩けるようになること。そして、それまで股関節の痛みにより生じていた日常生活の支障がなくなる、ことなどです。

Q. 人工股関節の成績が向上した要因は何でしょう。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. 医療の現場は日進月歩です。さまざまな工業技術の進歩によって人工股関節の技術的改良が進みましたし、コンピュータ技術も含めて工学的技術が向上し、手術手技も進歩しました。また医療技術の進歩もあります、麻酔や疼痛(とうつう)コントロールが発達したことなど。いろいろな進歩が人工股関節の成績をよくしてきました。

Q. 人工股関節は、具体的にどのような点が改良されてきたのでしょうか?

A. まず、人工股関節の骨盤側と大腿骨側が擦(こす)れる部位。そこでの摩擦の問題が改良されました。摩耗が非常に少ないクロスリンクポリエチレンと呼ばれる人工軟骨が開発され、摩耗が従来の半分以下になって、耐用年数は倍近くになっています。
さらに、人工股関節の形状にも改良が加えられています。デザインや表面の形の改良により、現在使われているものは設置した初期から安定がよく、術後早期に歩ける上に、人工股関節周辺に骨が侵入する機能を持っていて、安定性を長期に維持できるようになっています。

Q. 先生も人工股関節の改良に携わってこられたとか。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. ええ。実は私が使用している人工股関節は、私自身の研究結果を反映して開発されたものなんです。日本人の大腿骨の形をCTスキャンで詳細に分析して、日本人の骨の形態に合う形になっています。もう15年以上前から使用していますが、使用成績は非常によく、一旦設置されると安定性にほぼ問題を生じることなく、長期間よい状態を続けています。転倒などといったことがなければ、不具合が生じる可能性はほとんどないと思われます。

Q. 手術自体のリスクも低減されてきているのでしょうか?

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. はい。先ほども少し触れましたが、たとえば麻酔技術が進歩して、高齢者でも安全な麻酔が可能になりました。全身麻酔と局所麻酔の技術が大きく進歩しました。脊椎麻酔を併せてやると目覚めが早く、目覚めてからも意識がはっきりしています。全身麻酔が切れても脊椎麻酔が効いているのでほとんど痛みはなくて、「もう終わってるんですか?」という方もいらっしゃいます。痛みを軽減する技術の進歩もあり、最近の手術は体力の消耗が少なく、早期のリハビリ開始も可能です。また低侵襲で筋肉損傷を少なくする手術が一般化してきて、これも早期リハビリを可能にしている面も見逃せません。

Q. 合併症についてはいかがですか?

A. 手術に伴う合併症も減少していますよ。エコノミー症候群と同じように、術後に血の塊が血管に詰まる静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)も、早期リハビリ、下肢(かし)刺激装置、抗凝固(こうぎょうこ)療法により確実に減少して、安全に手術を受けられる態勢が整ってきていますね。さらに、コンピュータ技術も活用して正確な人工股関節の設置を行うことで、脱臼も起こりにくくなり、合併症はいっそう減少しています。

Q. 手術手技も本当に進歩しているのですね。手術が適用となる年齢層も広がってきているのではないですか?

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. はい。重複しますけれど、麻酔や痛みを取る技術の進歩、低侵襲な手術手技の工夫、早期リハビリなどにより、体力の消耗を最小にして、早期に体力や筋力を回復して退院を目指す医療が可能になってきています。したがって、現在では、年齢だけによる手術制限は撤廃されつつあるといっていいでしょう。股関節がよくなれば社会復帰ができる方で、呼吸器・循環器などの内科的合併症がない方なら、当院でも90歳を超えた患者さんの手術を行っています。ご長寿の方は、できるならば一生自分の足で歩いて、自分のことを自分でして、楽しみながら暮らしていただくと。そのための人工関節手術であり、手術をすれば、そのような生活がかなうようになってきたということですね。

Q. よくわかりました。ところで、先ほど人工股関節の正確な設置について触れられましたが、先生はかねてから、人工股関節を正確な位置に設置する重要性を強調されています。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. 人工股関節を正確に設置することは、早期にリハビリを行うことを可能にし、また疼痛の除去と関節の可動域を十分改善するためにも重要です。ただし、人工股関節を正確に設置するために様々なテクニックが開発されてきたとはいえ、術者の感覚を頼りにする方法のみでは不十分だと感じています。患者さんの体を横向きにして手術を行うため体の固定のことや、手術中にX線撮影を正確に行うことが難しいことなどにより、現状では、人工股関節の正確な設置には限界があるといえますね。

Q. それでナビゲーションシステムを採用されているのですね。

A. そうです。設置精度をさらに向上させるため、9年前よりコンピュータによる支援技術を活用したナビゲーションシステムを採用し、症例数はもうすでに300例を超えています。

Q. それはどのような手術なのですか? 簡単に教えてください。

ナビゲーションシステムイメージA. カーナビのイメージです。手術中に、人工関節の各パーツを設置する際、正しい位置、正しい角度に導いてくれるんですね。この方法は、手術前にCT撮影をして、個々の患者さんの股関節の形態を三次元化し、これを基に人工股関節の設置計画を立てます。手術では、患者さんの骨盤や手術器具などに目標となるアンテナを立て、コンピュータ画面で位置を確認しながら手術を進めていきます。このようなナビゲーションシステムを用いると、患部の変形のひどい方でも正確な設置が可能で、骨盤側の設置角度の誤差は平均でわずか3度です。私は、最新技術を駆使して、人工股関節をプラン通り高精度に設置できるこのシステムを、国内の学会のみならず多くの国際学会でも報告して、その優秀さをアピールしています。

Q. ナビゲーションシステムを使うことは、患者さんにもメリットが大きそうですね。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. 正確な設置は術後成績に直結し、脱臼などの合併症も減少しますから。それだけでなく、関節の動きの改善にも貢献し、当然最終的な耐用年数にも影響を与えます。患者さんによっては手術による傷の長短を気にする方もあるでしょうが、最も大事なことは精度よく人工股関節を設置して、よい結果を出し、それを継続させて長期耐用させることだと思います。

Q. 術後のリハビリテーションについて教えてくだい。

A. 当院の場合には、人工股関節(手術)の術後2日目から体重をかけての歩行練習を開始しています。何より大事なのは早期からのリハビリです。当然ですが、初めは疼痛もあり、つかまり立ちして歩くのがやっとです。そして患者さんの体力や他の部位にも痛みがあるかなどにより、リハビリの進行速度も異なります。ですから、それぞれの患者さんにあったプログラムを立てて、意欲を持ってリハビリが進められるように工夫しています。そして基本的には、外歩きや階段の昇り降りが可能になって、退院してもらっています。

Q. ありがとうございました。最後に、手術後の生活についてアドバイスをお願いします。

東京都済生会中央病院 柳本 繁 先生A. 人工股関節技術は、著しく進歩しています。昔は人工股関節手術後は大事に大事に使えということでしたが、今はリハビリにより呼吸器機能や筋力も強くして、またどんどん歩いて運動もして、さらに健康になっていただきたいと思います。主治医と相談しながら、できることはどんどんやって、楽しい暮らしを実現していただければうれしいです。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

柳本 繁 先生からのメッセージ

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取材日:2012.7.6

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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