先生があなたに伝えたいこと / 【平井 志馬】自分の家族ならどうするかという気持ちをもって、患者さんの症状と真摯に向き合い、内視鏡手術など負担の小さい治療法を提案します。【吉田 祐一】椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、内視鏡手術で治療することができるので、「年のせい」とあきらめずに一度専門医へ相談してください。

先生があなたに伝えたいこと

【平井 志馬】自分の家族ならどうするかという気持ちをもって、患者さんの症状と真摯に向き合い、内視鏡手術など負担の小さい治療法を提案します。【吉田 祐一】椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、内視鏡手術で治療することができるので、「年のせい」とあきらめずに一度専門医へ相談してください。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 平井 志馬 先生

独立行政法人国立病院機構 相模原病院
ひらい しま
平井 志馬 先生
専門:脊椎脊髄

平井先生の一面

※脊椎の疾患について、詳しくお話しをされているページがございます。こちらをご覧ください。

1.最近気になることは何ですか?
 ウクライナを中心とした世界情勢が気がかりです。内視鏡のパーツなど医療器械の供給にも影響が出ています。早く平和な世の中になってほしいと思います。

2.休日には何をして過ごしますか?
 1歳の子どもを連れて車で海を見に行ったり、温泉に行ったりしています。ほかにはドラムが趣味で、医師仲間とバンドを組んでスタジオで練習することもあります。みんな脊椎が専門で、楽しみながら情報交換しています(笑)。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 吉田 祐一 先生

独立行政法人国立病院機構 相模原病院
よしだ ゆういち
吉田 祐一 先生
専門:脊椎脊髄

吉田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 子どもがどう成長していくかが気になります。子どものことばかり考えています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 3ヵ月になる子どもをあやして癒されています。子育てで平井先生に相談することもあります。

先生からのメッセージ

自分の家族ならどうするかという気持ちをもって、患者さんの症状と真摯に向き合い、内視鏡手術など負担の小さい治療法を提案します。(平井先生)
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、内視鏡手術で治療することができるので、「年のせい」とあきらめずに一度専門医へ相談してください。(吉田先生)

このインタビュー記事は、リモート取材で編集しています。

Q. 本日は脊椎疾患の内視鏡手術について詳しくお尋ねします。まずは、脊椎に多くみられる疾患について教えてください。

A. 平井先生:腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)腰椎すべり症(ようついすべりしょう)などがあります。黄色靭帯が分厚くなるのが腰部脊柱管狭窄症、脊椎のクッションの役割を果たす椎間板が飛び出すのが腰椎椎間板ヘルニアで、いずれも神経を圧迫して痛みや痺れが起こります。腰椎すべり症は脊椎がずれて不安定になることで脊柱管が狭くなり神経の症状が出現します。

Q. 従来の手術に比べて身体への負担が軽いとされる内視鏡手術ですが、適応となる脊椎疾患にはどのようなものがありますか?

A. 吉田先生:現在国内では、脊椎疾患に対して年間約2万件の内視鏡手術が行われています。適応となる疾患は主に椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症です。

脊椎の構造

脊椎の構造

椎間板ヘルニア

正常な脊椎の断面図 脊柱管狭窄症の断面図

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 平井 志馬 先生Q. それだけ内視鏡手術は普及しているのですね。逆に内視鏡手術の適応とならない脊椎の疾患はあるのでしょうか?

A. 平井先生:当院では椎間板ヘルニアは100%、腰部脊柱管狭窄症は90%を内視鏡手術で対応しています。ほとんどの腰椎疾患は内視鏡手術で治療可能ですが、神経の圧迫されている箇所によっては内視鏡ではなく固定術が必要となることや、他の病院ですでに脊椎の手術が行われてしまっている場合は内視鏡で対応ができないことがあります。

Q. 内視鏡手術は保険適用になりますか?

A. 平井先生:脊椎内視鏡手術は基本的にすべて保険適応になります。

Q. 手術はできれば避けたいという患者さんは多いと思いますが、そもそもどういう経緯で手術になるのでしょうか?

A. 平井先生:まず前提として、椎間板ヘルニアは数ヵ月以内に症状が治まることが多いですし、脊柱管狭窄症も痛みに波があることが多く、基本的には手術をしない治療(保存治療)の適応となります。個人的には、基本的に手術はしないほうが良いと考えているので、数カ月間の保存治療をしても症状が改善しない場合にはじめて手術の治療を提案します。
吉田先生:保存治療でも症状が改善しない場合や、仕事などで早期に痛みをなくし社会復帰をしたい方が手術の適応になります。当院に来院する患者さんは内服やリハビリで症状が改善せずに紹介で受診される方が多いので、当院での保存治療の基本はブロックの注射になります。ブロック注射で症状が改善し、手術を回避することができる方もたくさんいらっしゃいますが、注射の効果が1週間ももたないようであれば手術も検討すべきでしょう。また、神経の圧迫が高度で症状が強い場合には、手術をしても症状が改善しなくなってしまうこともあるので、早めに手術を勧めることもあります。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 吉田 祐一 先生Q. では、脊椎手術は積極的に行った方がよいでしょうか?

A. 吉田先生:病態的に積極的に手術を勧める必要があるのは、足に力が入らなくなってしまっている方や、尿や便が自分で出しにくくなっている方です。私たちができるの手術で神経の圧迫を取り除くことだけなので、神経そのものが長時間や強い圧迫によりダメージを受けてしまっていると、神経が回復しないで症状が改善しないことがあるので、手術について迷われている方は一度専門医へ受診をしてもらえればと思います。

Q. 内視鏡手術は具体的にはどういった手術になるのでしょうか?

A. 平井先生:皮膚を18mm切開し、そこに直径16mmの筒を挿入して内視鏡を設置して手術を行います。画像を見ながら、脊柱管狭窄症であれば分厚くなった黄色靭帯、椎間板ヘルニアなら飛び出したヘルニアを摘出する手術となります。内視鏡を用いていること以外は、従来の大きく開いて行う手術の内容と同じなので、今まで行っていた手技と同じことを小さい創で行う手術になります。

椎間板ヘルニアの内視鏡手術

Q. 内視鏡手術では患者さんの負担が少なそうですね。

A. 平井先生:従来の術式では皮膚を5~8cm切開して背骨から筋肉を大きく剥がしていました。これは手術をする術者の手を入れるためや、手術の視野を確保するためだったのですが、内視鏡では視野を確保するためや術者の指が入りにくいと言った理由で筋肉や骨などの正常な組織を損傷することはありません。
神経が傷んでいる部位に2cm程度切開をして、筋肉や骨など正常な組織をほとんど切らずに、本当に悪い部分だけを切除するので組織のダメージが少ないのが特長です。手術時間は約1時間、出血も10cc程度です。従来の術式では手術翌日には歩けない人も多かったのですが、内視鏡手術の場合はほぼ皆さんが手術翌日から歩くことができ、術後の痛みも非常に少なく回復も早くなりました。そうした点で、患者さんも喜ばれています。

Q. 内視鏡で進歩したところはありますか?

A. 平井先生:内視鏡が導入されて30年近く経ちますが、当初は画面が粗くて見づらかったのが、最近は4Kモニターで画像が鮮明になり、細かい血管まで拡大してくっきりと見えるようになりました。肉眼でみるよりもより近くで、鮮明に見ることができるので、安全性が非常に高くなったと思います。私たちは手術の様子をすべて録画しているので、術後患者さんに詳しく説明することもできるようになりました。

Q. 内視鏡手術と従来法で手術のリスクに違いはないのでしょうか?

A. 平井先生:内視鏡手術は従来法とほぼ同じ操作を内視鏡下で行うので、術式による手術リスクの差はあまりないと思います。内視鏡手術は鮮明な画像を見ながら手術をするので、視野が非常に良いのですが、小さい創の中で手術操作をするので、手術技術を習得するまでは細かい操作がしにくいというデメリットがあります。
吉田先生:従来法は、傷が大きく術者の手が術野に入るので、創部感染(傷が膿んでしまうこと)や創部離開(傷が治らない)などのリスクがありました。内視鏡手術は傷が小さいので創部感染など創部のトラブルは非常に少ないので、関節リウマチや皮膚疾患がある方でも安心して手術を行えるメリットがあります。一方で内視鏡手術は傷が小さいために手術した部位に手術後に血が溜まり神経を圧迫する「術後血腫」が起こることが従来法と比べると多いことがデメリットだと思います。

Q. 内視鏡手術はどの病院でも可能ですか?

A. 平井先生:脊椎内視鏡手術の件数は年々増加していて、導入する病院が増えていますが、全国の病院への導入が進んでいないので実情です。患者さんへの負担は少なく、従来法と比較して手術成績も差がないことが報告されていますが、まだ実施している医療機関は限られています。全国的に多くの病院で行われていない原因として、内視鏡手術機器が非常に高額であるという経済的な側面と、内視鏡の手術技術が安定して行えるよう技術を習得するまでに時間がかかるという技術的な側面があると考えています。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 吉田 祐一 先生、平井 志馬 先生Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いします。

A. 平井先生:現在、当院では腰椎の手術の約9割を内視鏡手術で行っています。多くの患者さんに受診していただいておりますが、私自身も痛いことが苦手ですし、どのような病気であってもできる限り手術はしないで治すことが望ましいと考えています。当院ではいきなり手術を勧めることはありませんし、手術以外に治療法がなかったとしても、できる限り自分自身が受けたいと思う治療を提供することを信条としていますので、お困りの方はぜひ一度ご相談下さい。
吉田先生:「年だから」「持病があるから」と痛みをあきらめている方も多いですが、何よりも大切なのは治したいという意欲です。背骨の手術について悪いイメージを持っている方もいらっしゃるかと思いますが、いまは治療の選択肢が増え、内視鏡手術など医療機器の進歩で安全で身体への負担の少ない手術ができるようになっていますので、ぜひ専門医に相談してみてください。

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 | 脊椎治療センター

独立行政法人国立病院機構 相模原病院 | 市民講座(腰の痛みとしびれに対する脊椎内視鏡手術 傷口2cmの最新治療) - YouTube

リモート取材日:2023.1.23

*本文、および動画で述べられている内容は医師個人の見解であり、特定の製品等の推奨、効能効果や安全性等の保証をするものではありません。また、内容が必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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