人工股関節は、長期間使用すると関節部分が摩耗し、ゆるみが生じる場合があります。ゆるみが生じると、患者さんによっては10~20年で入れ換えのための再置換手術が必要となりますが、高齢になるにつれ再手術も難しくなってきます。
人工股関節はライナーと骨頭ボール部が接触しながら動くため、摩擦で材料の摩耗粉が発生します。摩耗粉を異物と認識した生体(細胞)は反応し、人工股関節の周囲の骨を溶かしてしまう骨吸収が起こります。そうすると、しっかり固定していたはずの人工股関節周辺に隙間ができてしまいます。これが、ゆるみの原因です。
人工股関節のゆるみに対して、様々な対策が考えられてきています。例えば、ゆるみの原因となるポリエチレンライナーを、摩耗粉が出ないように、異なる素材にしてしまおうという考え方があります。ポリエチレン・ライナーを金属ライナーやセラミック・ライナーにする方法です。また、ライナーにガンマ線を照射してポリエチレン分子のつながりを強めたり、ポリエチレンにビタミンEを加えて酸化による劣化を抑えたりして、摩耗粉を発生しにくくする方法もあります。最近では、ライナー表面に細胞膜類似の構造を再現して、従来のポリエチレンに比べて99%も摩耗粉を減少させる技術「Aquala®」(アクアラ)も開発され、臨床応用が始まっています。